奈良公園に行って来ました(こちら)。 主目的は虫や花でしたが、奈良公園といえば鹿です。 奈良公園に糞虫が多いのも鹿の糞が多いからですし、公園の植生も大きく鹿の影響を受けています。 これからしばらくは、それらのことを記事にしていく予定ですが、まずは鹿、正式にはニホンジカです。
奈良公園の鹿の歴史を遡れば、奈良時代、平城京鎮護のために藤原氏の氏神を祀る春日大社に、祭神を鹿島神宮(茨城県)より勧請したところ、神は白鹿の背に乗って来られた(春日大社社伝)ことから、鹿は神鹿(しんろく)として神聖視されたとのことです。 藤原氏が力を失った後も興福寺が神鹿保護に力を注ぎました。 藤原氏と同様、権力を民衆に誇示するための“広告塔”として使われたようです。 しかしこのように長期に渡り保護されたことにより、奈良の鹿は、大型の野生動物でありながら人によく馴れている、世界にも類例のない貴重な存在となりました。
浮雲園地にて 後ろは奈良県新公会堂
とにかく、奈良公園の鹿には容易に近づくことができますから、その生態についてはよく調査されています。 私の知人で当時大阪府の高校の生物の教諭をしていた人は、郊外学習時に生徒1人ひとりに鹿を1頭ずつ担当させ、1日中その1頭の鹿の行動を記録させていました。
とにかく、奈良公園の鹿の生態については、たいへん詳しく調べられていますが、ここではその簡単な概略を・・・。
鹿のような草食動物の食事は夜が中心になることが多いようです。 奈良公園の鹿も、それぞれが決まった「夕方の泊り場」を持っていて、日没後にそこで2~3時間休息した後、午前2時頃まで採食し、その後明け方まで「朝の泊り場」で休憩します。 日の出少し前から再び1~2時間採食し、その後は日中休息する「休み場」へ移動します。 私たちが奈良公園で普通に見る鹿は、人に慣れていて「休み場」を人の多い所に設定している鹿です。 人の近くの方が安全ですし、鹿煎餅ももらえます。 人に慣れていない鹿は茂みの中などで休んでいます。 ですから、明らかに下草が鹿に食べられているような林の中には、昼間はほとんど鹿の姿を見ることはありません。 そして夕方近くになると、採食したりしながら「夕方の泊り場」に向かいます。
体毛は春と秋の2回換毛します。 夏毛は鹿の子模様で、木漏れ日のある林の中で目立ちにくくなっています。 冬毛は無斑で灰褐色です。 この記事の写真を撮った10月中旬では、ほとんどの鹿が冬毛になっていました。
角はオスだけに見られ、毎年生え変わります。 4月頃から袋角と呼ばれる柔らかい角が成長し始めます。
まだ袋角の鹿も、ほんのわずかですが、いました。
8月中旬頃、袋角の先端から表皮が取れはじめ、鋭い角は完成へと向かい、早春の頃に根元から落角します。 角は年齢と共に変化し、満1才では一本角ですが、満2才で一叉角または二叉角、満3才で二叉角または三叉角となり、満4才以上で三叉の大きな角となります。
昨年生まれた鹿
角が完成すると発情期となります。 発情期にはメスを巡って攻撃的になります。 この立派な角を持ち攻撃的になった鹿は危険だということで、奈良公園では「鹿の角きり」が行われています。
明日は発情期に見られる行動などを載せる予定です。
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