山々が美しく色づいています。 日本の森林は構成樹種が多く、照葉樹林や植林地を除くと、様々な色が混じることでは、世界的にも稀な紅葉です。
この様々な色は、イチョウのような黄色系、タカオカエデのような赤色系、クヌギやコナラのような褐色系の3種類に大別され、それぞれ別の色素が関係しています。
葉が黄色になるのは、クロロフィル(葉緑素)が分解されて無くなってしまうのが原因です。
葉は光合成で光エネルギーを吸収するために、光合成色素と呼ばれる色素を持っています。 この光合成色素には、緑色のクロロフィルと、カロチノイド系色素である黄色のキサントフィルがあります。 つまり、どの葉も光合成のために黄色の色素を持っているのですが、普段は緑の方が濃いために目立たないのです。
ところが寒さで葉の働きが弱まり、クロロフィルが分解されてくると、カロチノイドの分解の方が遅いため、今まで隠されていた黄色の色が目立ってきます。 これが「黄葉」です。
葉が「紅葉」するのは全く別のしくみによります。 落葉樹が葉を落とす準備として葉の付け根に離層を形成し始めると、昼間光合成で作られた糖が、葉から運び出されにくくなり、葉に蓄積します。 蓄積した糖は化学変化を受け、赤いアントシアニン( もう少し詳しく書くと、多くの紅葉ではアントシアニン系色素のクリサンテミン )という色素に変えられます。 もう少し詳しく書くと、葉にはもともとアントシアニジンという物質があるのですが、このアントシアニジンが糖と結びつき、赤いアントシアニンに“変身”します。 なお、花や果実の赤っぽい色も、このアントシアニン系の色素によるものです。 なお、分解されたクロロフィルも、アミノ酸を経て、アントシアニンへと変化していきます。
ところが、イチョウなどのように、この糖からアントシアニンを形成する反応を触媒する酵素を持たない植物では、赤いアントシアニンを作ることはできません。
つまり「紅葉」するためには、アントシアニンを作る酵素を持つことと、糖が十分あることが条件になります。 アントシアニンを作る酵素を持っている植物でも、光があまり当たらない葉では、上記のキサントフィルによる黄色にしかなりません。 つまり、「紅葉」できる葉は「黄葉」もできます。
昼夜の気温の差が大きいと、昼間盛んに糖が合成され、夜間に離層の形成が進み、糖がたくさん葉に取り残され、アントシアニンがたくさん作られることになります。
上はヒナタイノコズチの葉が誰かに破られたのか、一部だけでくっついています。葉脈の走り方からして、くっついている部分から糖が回収できる部分では緑ですが、糖が回収できない部分ではアントシアニンが作られ、紅葉しています。
葉が褐色に「褐葉」するのは、タンニン系の色素でアルコールの一種であるフロパフェンという物質によります。 葉に糖が蓄積されるのは「紅葉」の場合と同じ理由によるのですが、この糖が発酵して茶色いフロバフェンが作られると「褐葉」することになります。
もちろんアントシアニンもタンニンも作る植物も多くあり、その年の条件によって、同じ木が紅葉したり褐葉したりすることもよくあることです。
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