カテゴリー「魚」の3件の記事

2010年8月29日 (日)

オイカワ・カワムツ・ヌマムツ

 以前に小さなオイカワヌマムツの1月の様子を記事にしましたが、婚姻色は小さなうちははっきり出ません。
 夏はオイカワなどの婚姻色がきれいになる季節ですので、淡水魚の生態展示で有名な琵琶湖博物館に行ってきました。 予想通り大きく育ったオイカワなどが美しい婚姻色になっていて、追星(おいぼし:産卵期の雄に現れる白色の瘤状小突起物)もよく出ていました。

Oikawaetc100811_2

 オイカワ、カワムツ、ヌマムツは、いずれも尻びれが発達していて、よく似た体型をしています。 特にカワムツとヌマムツは、どちらも体側に黒い縦帯があるなどよく似ていて、最近まで1種だと考えられていました。 しかし、大きく育ったこの時期のオスでは、カワムツとヌマムツは色も違いますし、追星の配列も違います。

Oikawa100811_1    オイカワ

Kawamutu100811_1    カワムツ

Numamutu100811_1    ヌマムツ

 上の写真のとおり、カワムツはヌマムツに比較して、体側の縦帯の色がやや濃く、鱗が大きく、またヌマムツの胸びれと腹びれの前縁が赤いのに対し、カワムツは黄色です。

 まだカワムツとヌマムツが区別されていない頃、当時京都大学におられた川那部浩哉先生が、滋賀県の宇川で、オイカワとカワムツの関係について調べられています。
 この研究によると、カワムツとオイカワの両方が生息する川では、オイカワが流れの速い瀬にいるのに対し、カワムツは流れのゆるい淵の川底にいます。 ところが、この両者にアユが混じると、両者の位置関係はなんとみごとに逆転してしまい、アユとカワムツが川の浅瀬部分に分布し、オイカワは淵に集まります。
 河川が改修されて平瀬が増えると、オイカワが増えてカワムツが減る事が知られています。 つまり、瀬ではオイカワの方が有利なのです。 これらのことから、オイカワとカワムツの分布の逆転現象は次のように考えられます。
 アユのいない状況では、オイカワがどんどん餌の流れてくる瀬を独占し、カワムツは淵に追いやられている。 ところがそこに力の強いアユが加わると、アユが浅瀬を占め、オイカワは淵に追いやられ、淵にいたカワムツは瀬に追い出されて、アユに“遠慮”しながら生活しているのではないかと考えられます。
 この研究のカワムツは、たぶんヌマムツではないカワムツだったのでしょうね。

※ この記事との関連で、以前のオイカワやヌマムツの記事は書き直しています。

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2010年1月16日 (土)

ヌマムツ

 ヌマムツは体型はオイカワなどとよく似ていますが、体側には太い紺色の縦帯があります。

Kawamutu100109_1

 なお、よく似た魚にカワムツがいて、2003年まではカワムツとヌマムツはどちらもカワムツという名前で呼ばれていましたが、ヌマムツの方が側線鱗数が多いことや体側の縦帯がやや薄いこと、胸びれと腹びれの前縁が黄色ではなく赤いことなどの違いがあります。 また、カワムツが河川上中流などに住むのに対し、ヌマムツは湖や大河川などの緩やかな流れを好みます。
 渡辺昌和氏の越辺川での研究では、河川が護岸されたり堰が増えたりして流れが緩やかになると、オイカワが減ってヌマムツが増えることが判ってきています。

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2010年1月15日 (金)

オイカワ

 寒い日が続いています。 水の中はさぞ冷たかろうと思うのですが、その中に暮らす魚にとっては、それがあたりまえの環境です。 そればかりか、もう婚姻色が出はじめているものもあります。 そんな様子を見ると、春が一歩一歩近づきつつあるようです。

Oikawa100109_1

 オイカワは、ウグイ、カワムツやヌマムツなどと共に、「ハヤ」と呼ばれることの多い魚です。
 町の中の川で魚を見かけた場合、いちばん可能性の高いのは、このオイカワでしょう。 オイカワは日当たりがよく、止水よりも水流のある所を好みます。 町の中を流れる川は河川改修で河床が平坦になり、流れが緩やかです。 このような環境はオイカワの好むところですし、オイカワは水の汚れにも比較的強く、ある程度の生活排水の流れ込む川にも住むことができます。
 橋の上などから下を泳ぐオイカワを見ると、灰青色で、背鰭の前に少し白っぽい斑が見える程度ですが、横から見るとなかなか美しい魚です。
 オイカワは生長すると体長が15cmほどになる魚で、写真のオイカワはその半分くらいの体長ですので、まだ濃い婚姻色を出せるまでにはなっていないのですが、それでもこれから春の終わり頃の繁殖期に向けて、ますます美しくなっていくことでしょう。

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