フナバラソウ
フナバラソウはキョウチクトウ科( 旧分類ではガガイモ科 )カモメヅル属( Vincetoxicum )の多年草です。 写真はたくさんの花には少し早い時期に撮ったもので、多くはまだ蕾で、もちろん果実は見当たりませんが、大きな紡錘形の果実(袋果)ができます。
ガガイモの仲間の果実は、みんな似た形をしていますが、フナバラソウの果実は特に前後が対称的ですので、この果実の形を船を底から見た形に喩えて「舟腹草」としたものでしょう。
カモメヅル属の植物は、これまでにもスズサイコ、タチカモメヅル、クサタチバナなどを載せていますが、花のつくりは基本的には同じで、スズサイコのところに少し書きましたが、とにかく複雑です。 しかしその複雑さがうまく受粉に活かされているかといえば、花に対する果実の数からすると、かなり疑問が残ります。 もっとも、あんな大きな果実がたくさんできると、栄養分が種子生産に取られて、自身の生存が危うくなるでしょうが・・・。
上の花の写真にも虫が写っていますが、いろんな虫が来ていました。 しかしそのほとんどの虫は、花粉媒介に役立つ虫ではなく、葉を食べたり植物の汁を吸ったりする、フナバラソウに害を及ぼす虫たちでした。
ガガイモの仲間を食草としているチャバネツヤハムシ
マルカメムシ
オジロアシナガゾウムシ
体長2mmほどの小さなゾウムシ
手の上に落ちて来たのでそのまま撮影したゾウムシの一種
少しですが、フナバラソウに味方する虫もいました。
上のウスイロクビボソジョウカイは肉食性の昆虫です。 害を及ぼす虫を捕食し、フナバラソウを守っているというよりは、フナバラソウにいると餌となる虫がたくさん来るからでしょうが・・・。
これだけの種類の虫が、最初の写真の2本のフナバラソウにいました。 もちろんフナバラソウも自身を虫たちから守るしくみを持っています。 フナバラソウを傷つけると白い液体が出てきます。 この液体は細い口吻で汁を吸おうとする虫たちの口吻の中で固まり、口吻を詰まらせることを狙ったものかもしれません。 また茎や葉を覆っている毛も、虫によっては防衛に役立つでしょう。 しかし私の印象としては、これだけいろんな虫たちがいるのはフナバラソウの防衛力不足によるものだと思いました。
フナバラソウも絶滅が心配されている植物です。 その理由の第一としては、フナバラソウは安定した丈の低い草地にのみ生えます。 これはレンリソウの生育場所とも似ていますが、そのような場所がたいへん減ってしまったことが挙げられるでしょう。 しかし私の勝手な思いつきかもしれませんが、上記のように虫たちにうまく花粉媒介をしてもらえていないようですし、虫たちから自身を守るしくみが不十分のようだということも、フナバラソウが少ない原因の1つになっているのかもしれません。
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コメント
観察会仲間の情報によりますと、たった2ケ所ですがフナバラソウが咲いてるのを・・・
どちらも1枚目の写真のようにシュッと二本が揃って立って居るそうです。
フナバラソウの特徴かな?って話してたんですけど・・・
投稿: わんちゃん | 2014年5月23日 (金) 21時28分
二本が揃って立っているのは偶然だと思いますよ。
投稿: そよかぜ | 2014年5月23日 (金) 23時57分