シロバナマンテマ-ホザキマンテマとの関係について-
あちこちのブログを見ていると、ヨーロッパ原産の帰化植物であるマンテマの仲間の名前が混乱しているようです。 特に混乱しているようなのが、シロバナマンテマとホザキマンテマです。 メールで質問もいただいていたので、整理してみました。
江戸時代に、暗赤色で縁の白い5弁の花をつけるマンテマが観賞用に持ちこまれ、後に逸出し野生化しました。 なぜ「マンテマ」という名前になったのかは、よく分かりません。
シロバナマンテマは、先に「マンテマ」の名前があったので、その白花ということでしょうが、学名からすれば、このシロバナマンテマが基本種で、マンテマはその変種ということになります。 平たく言うと、学名からすれば、マンテマは「シロバナマンテマのちょっと変わったもの」です。
シロバナマンテマ:Silene gallica L. var. gallica
マンテマ:Silene gallica L. var. quinquevulnera
ちなみに、属名の Silene はギリシャ神話のシレネス(Silenes)に因んだもので、種小名の gallica は「ゴール地方の」という意味です。
毛と腺毛
シロバナマンテマの花の色は白とは限らず、多くの場合は、多少はありますが、紅色が混じっています。 マンテマ( 花は下に載せています )と比較すると、シロバナマンテマの花弁がやや細長い傾向はありますが、荒い毛が多く、上部には短い腺毛が混じることや、花が一方向を向く傾向があることなどは変わりません。 両者は変種の関係、つまり同じ種ですから、本質的な違いは見当たりません。 花の色が違うと印象が違ってきますが、同じバラにもいろんな色があるように、花の色が違うだけでは別種とは言えません。
これに対してホザキマンテマは上の2種とは別種です。 ホザキマンテマが最初に採集されているのは1950年に北海道においてです。 今ではホザキマンテマも全国に帰化し、市街地の中央分離帯から山地まで広く分布しているようですが、比較的新しい帰化植物です。 新しい植物は古い図鑑等には載っていないため、白っぽい花のマンテマの仲間ということで、シロバナマンテマと間違われ、一方でホザキマンテマという植物があることが知られるにつれ、両者がどう違うのか、それぞれの観察体験に基づく判断がなされ、混乱が広がったのではないでしょうか。 帰化植物には、いつもこのような危険性が伴うように思います。
ホザキマンテマの学名は Silene dichotoma Ehrh. ですが、この種小名の dichotoma は「2つから成る」という意味です。
ホザキマンテマはフタマタマンテマとも言われます。 この植物の花序は2出集散花序で、花序の枝が二叉状に長く伸びるのが特徴で、さらにそこから花序の枝が出ることもあります。 英語でも、マンテマは、腺毛があってベタベタするからでしょうが、Catchfly と言われていますが、ホザキマンテマは Forked Catchfly です。
花の色は白色または淡紅紫色でシロバナマンテマに似ていますが、ホザキマンテマの1枚の花弁は深く切れ込んでいます。
ホザキマンテマのこれらの様子のよく分かる写真は手元に無いのでこちらを見てください。
ホザキマンテマの写真を載せられない理由の言い訳を・・・。 最初に書いたように、今回は質問をいただいての記事で、これを書くための“撮影取材”はしていません。 シロバナマンテマの写真も2010年に撮ったものを使っています。
マンテマの花
(撮影:2014.5.28. 泉南市 樫井川河口)
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