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2013年12月 2日 (月)

蛾の眼はなぜ光らないのか

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 上はナカウスエダシャクの顔を正面から撮ったものですが、今回は複眼に注目したいと思います。
 暗い所でフラッシュを使用して人を撮影すると、目が赤く写っていまったり、このブログでは犬の“青目”についても書いています。 多くのほ乳類の目は、このように暗い所でフラッシュなどを使用すると、光ります。 これに対して昆虫では、光る複眼は美しいので、このブログでもムラクモハマダラミバエなどを取り上げていますが、総体的にはあまり光りませんし、特に蛾の複眼は光りません。 上の写真も、フラッシュを使用していますが、光ってはいません。
 犬の“青目”の所でも書いたように、ほ乳類の目が光るのは、光を有効に利用して周囲の様子(=餌などの情報)を得るためです。 一方、昆虫の複眼が光りにくいのは、瞼の無い複眼が光ると、見つかりやすく、餌にされてしまう可能性が高くなるからではないでしょうか。
 光源でないものが光るのは、光を反射しているからです。 反射している場合でも、乱反射であれば、そんなに光っているようには感じません。 つまり、光っているように見えるのは、顕微鏡的レベルで表面が滑らかな場合でしょう。
 昆虫の複眼が光りにくいのは、複眼が多数の個眼の集合体であり、各個眼の中央は、レンズとしての役割を果たすため、盛り上がっているためでしょう。 つまり、複眼の表面は凸凹しています。 また、昆虫の複眼には、個眼の間に毛の生えているものが多い(例えばこちらの1枚目の写真)のですが、この毛も乱反射に役立っていると思わます。
 初めに書いたように、昆虫の複眼のなかでも、特に蛾の複眼は光りません。 これは蛾の複眼の表面が、ナノスケール(下の)の微小な突起で覆われた状態になっているからです。
※ 1nm(ナノメートル)=0.001μm(マイクロメートル)=0.000001mm

 生物がもつ優れた性質を、新たな材料や製品の開発に生かそうという取り組みが、多様な分野で行われています。 これらは biomimetics(バイオミメティクス:生物模倣)と呼ばれています。 このブログの記事にしたゴボウの実をヒントに作られた面ファスナー(マジックテープ)も、初期のバイオミメティクス製品の1つです。
 最近の実用的なバイオミメティクス製品の1つに、光をほとんど反射しない無反射フィルムがあります。 これは蛾の複眼表面の構造を模倣したもので、「モスアイ・フィルム」と呼ばれています。 モス(moth)は蛾、eye(アイ)は眼ですから、モスアイ・フィルムは「蛾の眼フィルム」という意味になります。
 透明フィルムは今までもいろいろ作られていますが、従来の透明フィルムは表面が光りました。 三菱レイヨンは「モスマイト」の商品名で、無反射透明フィルムを販売しています。
 テレビ画面のサイズが大きくなると、天井の照明などの映り込みが気になります。 シャープは大日本印刷と共同開発したモスアイ・フィルムを貼ったモスアイ・パネルのテレビを、昨年の冬から販売しています。 モスアイパネルは、外光の反射を大幅に抑え、パネルからの光はほとんど拡散させずに透過するため、本来のコントラストを引き出すことができるとのことです。

(12/3追記) 言い訳と補足
 夕菅さんから、夜の蛾の眼はヘッドライトの光で光るというコメントをいただきました。 夕菅さんのブログには、夜に花に来ているいろんな蛾の写真が載せられていて(こちら)、たしかによく眼が光っています。
 上で私が「蛾の眼は光らない」と書いたのは、以下の理由によります。 私のほとんどのマクロ撮影では、フラッシュを使用しています。 また、できるだけ眼にピントを合わせるようにしています。 私の写真はほとんど昼間に撮ったものですが、このようにして撮った場合、蛾の眼は光りませんし、フラッシュと眼の位置関係をしっかりチェックしておかないと、眼の所が真っ黒になってしまいます。 他の昆虫の眼に比較して、蛾の眼の反射はほんとうに少ないと思っています。
 ただし、全く反射が無いとは書いていません。 蛾の複眼からの反射が全く無いのなら、私たちは蛾の複眼を見ることができません。 私たちが蛾の複眼を認識することができるのは、蛾の複眼の反射光が私たちの目に届いているからです。 ただその反射光の量が、他の昆虫の複眼の反射光より少ないということです。 ですから、強い光を当てると、蛾の複眼も光るでしょう。 また、私たちの目の瞳孔が暗い所で広がるように、蛾の複眼も昼と夜とでは何らかの違いが生じているのかもしれません。
 ところで、蛾と一口に言っても、蛾の種類はとても多く、その生態も簡単にはまとめられません。 昼に活動する蛾もいれば、夜に活動する蛾でも、光に集まる蛾もいれば、光をほとんど無視する蛾もいます。 花に来る蛾もいれば、樹液に集まる蛾もいます。 蛾の複眼の機能も、その生態に応じて異なるはずで、複眼表面からの光の反射も異なると思われます。 生態と関連付けて眼の反射を調べてみても、おもしろいかもしれませんね。

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コメント

昨秋フウセントウワタと蛾について記事にした時「モスアイ構造」を初めて知りました。
このとき月光では光らない蛾の眼がLED電灯色のヘッドライト(panasonic BF-AH11)に白色〜ルビー色に光りました。
私は最初に例外に遭遇したようですね。
http://yuusugenoniwa.blog.so-net.ne.jp/2012-11-15

投稿: 夕菅 | 2013年12月 3日 (火) 08時10分

さっそくのコメント、ありがとうございます。
長くなるので、記事の後ろに書き足しました。

投稿: そよかぜ | 2013年12月 3日 (火) 21時51分

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