スベリヒユの閉鎖花、そして自家受粉について考える
スベリヒユの閉鎖花について、質問をいただきました。
閉鎖花というのは、花が開かないままで種子を作る花です。 閉鎖花に対して、“ちゃんと”咲く花を開放花といいます。
閉鎖花といってもいろいろで、例えばスミレ類などのように開放花とは異なる閉鎖化をつくる植物もあります(下の写真)し、オシベもメシベも成熟しているのに花を開くだけの“元気”が無いといったケースもあるでしょう。
タチツボスミレの閉鎖花の果実(2013.6.8.撮影)
この場合、花が開くか開かないかの前に、その植物が自家受粉を拒否するのか許すのかという問題があります。 自家受粉とは、メシベに同一の花のオシベの花粉がついて種子ができることを言います。
植物の中には、メシベの柱頭に同じ花の花粉がついても、自己の花粉の花粉管を伸ばすことを抑制する物質を出し、自家受粉を不可能にしているものもあります。 自家受粉が許されないなら、閉鎖花の意義はありません。 閉鎖花は自家受粉を積極的に行うためのひとつの手段でしょう。
なぜこのような自家受粉を拒否しようとする植物も、自家受粉を積極的に行おうとする植物もあるのか、それは、自家受粉には長所も短所もあるからでしょう。
自家受粉の長所:
花粉媒介をしてくれる昆虫などがいなくても種子生産ができる。
自家受粉の短所:
さまざまな形質を持った多様な子孫を作り、より環境に適応した子孫誕生に期待するという有性生殖の意義が制限される。
この問題をさらに掘り下げると、有性生殖の意義や、生物に寿命があることの意義などにも関ってきますが、とりあえずはここで止めておく事にします。
スベリヒユの花と種子
スベリヒユに話を戻します。 スベリヒユについて閉鎖化の存在を確認する実験を行ったわけではありませんし、文献も見当たりませんでしたので、以下は私見になります。
スベリヒユの場合は、開花している時間が短いことや、花のつくりを見るとオシベとメシベが接していることからも、自家受粉している可能性が高いと思います。 またスベリヒユの生えている場所を見ても、そんなに昆虫相が豊かだとは思えません。
スベリヒユは、昆虫に花粉を運んでもらうことを期待しながらも、花粉を運んでもらえない場合は自家受粉で種子を生産し、秋に気温が低くなるなど、花が開けない場合には、閉鎖花のようなふるまいをするのではないでしょうか。
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コメント
こんにちは。
早速、詳細なご説明を頂きまして有り難うございました。大変よく理解できました。とても参考になるブログで、有り難い存在です。
投稿: 多摩NTの住人 | 2013年8月 2日 (金) 07時50分
閉鎖花と自家受粉の関係については、どこかで書きたいと思っていました。
きっかけを与えていただき、ありがとうございました。
投稿: そよかぜ | 2013年8月 2日 (金) 22時17分