オリンパス TG-2 スーパーマクロ
2月8日に、オリンパス TG-2 というコンパクトデジカメが発売されました。 このカメラは、防水防塵、耐衝撃、耐低温、GPS・電子コンパス搭載などの特徴がありますが、私の最大関心事は小さな虫を大きく撮れるということで、購入し、使ってみました。
オリンパス TG-2 にはスーパーマクロモードというのがあって、画質劣化をおさえて光学ズームより大きく撮れる超解像ズームというのがついています。 これを使うと、ほぼ3.2mm×2.4mmの範囲(私の実測で、正確ではありません)が、3968×2976ピクセルの画像となります。
今までの私の手持ちの機材でこれと同様の倍率を得るには、3倍テレコンに28mm広角レンズを逆向きに付けていました(方法a)が、これだと暗いし、写せる面積も狭くて被写界深度も浅く、被写体を探すのもピント合わせも大変でした。(ですから、ほとんど使っていません。)
TG-2 のスーパーマクロモードでは、カメラの液晶モニタには電気的に増幅された明るい像が映し出されますし、ズームがついていますから、被写体を探すのもたいへん楽です。
しかし、小さなものを大きく撮るのは、そんなに簡単ではありませんでした。 最大のネックになるのは、最大倍率を得る場合の被写体とレンズとの距離は1cmしか無いということでしょう。
このカメラは光軸折り曲げ式ズームですので、この距離は被写体とカメラ本体との距離ということになります。 カメラで被写体を覆い隠してピントを合わせることになりますから、活動している虫に1cmまでカメラを近づけて撮ることは諦めなければならないようです。
次にライティングです。 小さな面積をこれだけ拡大して撮るということは、そこに当たっている光を広げることになりますから、かなり暗くなります。 シャッタースピードを遅くするとブレますし、ISO感度を上げるとノイズが多くなります。 しかし被写体とレンズとの距離は1cmしかありませんから、フラッシュなどの光を当てようとしても、横からしか当てられません。 きれいに撮ろうとすれば、レンズに近い位置から光を当てる必要があります。 そういうことも考慮されてのことだと思いますが、このカメラには、フラッシュとは別に「スーパーマクロLED」というのが付けられていて、シャッター半押しで光らせることができます。 しかしこれが中途半端です。 被写体とカメラ本体との距離を1cmまで近づけるとかなり横からの光になり、光量も不足ぎみです。 もっとレンズの近くに持って来るべきでしょう。
メーカーもこの問題には気付いているようで、フラッシュの光をレンズの周囲に導く仕様のリングライトを参考商品として作成しています。 しかしまだ商品化されていないところをみると、まだ性能が十分ではないのでしょうね。 TG-3(?)の発売に合わせて、別売のシステムアクセサリーとして販売されるのでしょうか。
つぎに、これはコンパクトデジカメの宿命でしょうが、フィルムに相当する撮像素子は 1/2.3型、つまり約6.2mm×4.6mmです。 今私の使っている1眼デジカメは、フルサイズではありませんが、それでも撮像素子は23.6mm×15.8mmあります。 小さな面積に当たる少ない光の情報量で画像を作るわけですから、やはり限界があります。 特に感じるのは階調表現で、上に書いた光を横から当てると明暗差が大きくなることと関連して、なかなかいい画像が得られません。
もうひとつ、このカメラにはファインダーはありません。 ピント合わせはもちろんカメラが自動的にやってくれますが、浅い被写界深度ですので、思い通りの所にきれいにピントを合わせるには微調整が必要です。 それにはピントを固定してカメラを少し前後させればいいのですが、液晶モニタでは細かいピントの確認がとても難しくなります。
いろいろ不便な点も書いてきましたが、メーカーとしてはたくさんのユーザーに購入してもらわねばならず、ほんの一握りのスーパーマクロファンのためだけにカメラを設計するわけにはいかないでしょうから、スーパーマクロはカメラの持つ多機能のうちの1つに限定されるのは止むを得ないことでしょう。 しかし単独でこんな顕微鏡的な写真の撮れるカメラははじめてです。
最近はスマートフォンや携帯などで写真を撮る人が増え、コンパクトカメラは何らかの特徴を持たさないと売れなくなってきています。 このようなスーパーマクロも1機種発売されれば、他のメーカーからも似た機能を持ったものが発売されるでしょうし、今後もいろいろ改良されると思いますので、それに期待したいと思います。 私も、無理せず気長に撮り方を工夫したいと思います。(上に書いたように、野外で動く虫は撮りにくいですし、今後このブログが TG-2 の写真でいっぱいになることは無いでしょう。)
下は TG-2 で撮った、体長2mmのヒメコバチ科 Apleurotropis sp.です(トリミングしています)。
それと個人的には、これだけ拡大して撮れるなら深度合成を!と試みてみたのですが、何十枚もの深度合成用の写真を用意するには微動装置(持っていません・・・)が必要だということが分かりました。
下は、たった2枚で深度合成したヒメコバチ科Tetrastichinae亜科の一種(これも体長2mm)の写真です。 ライティングなど課題が多い写真ですが、最初の深度合成記念として載せておきます。
※ その後、 TG-2 の使用に関して、ライティングも工夫しましたし、微動装置を購入して深度合成にもチャレンジしました。 これらの取り組みについては、こちらに載せています。
| 固定リンク
「ノート」カテゴリの記事
- 「昆虫博士入門」の紹介(2014.07.08)
- レンリソウの保護について考える(2014.05.14)
- ヤツデの葉に虫たちが集まる理由(2014.01.12)
- TG-2のスーパーマクロ(2013.12.29)
- 蛾の眼はなぜ光らないのか(2013.12.02)
コメント
レンズの脇にLEDをもたせるという所だけであれば、ペンタックスに類似の機能がありましたね。ただ、ペンタックスは私も少し前の機種を持っているんですが、どうも暗所撮影のノイズが綺麗でなくて、あまり使わなくなったんですよね…。
オリンパスではその辺がどうか気になりますが、撮影結果を見る限りでは結構良さそうですね。
投稿: kanageohis1964 | 2013年2月25日 (月) 23時40分
ペンタックスの Optio W90 からはじまるシリーズですね。
1cmマクロはいろんなメーカのコンデジについていますが、W90も含め、どれもズームが効かず、そんなに高倍率にならないはずです。ただ、W90のLEDの位置はいいですね。TG-2ではその位置がコンバーターレンズをつける場所になっています。
ノイズに関しては、載せた写真はISOを100に固定して撮っています。ISOを自動にすると、手ぶれ防止のためにかなりISO感度を高めてしまいますので、ノイズがひどくなります。
投稿: そよかぜ | 2013年2月26日 (火) 00時11分