ガマの穂綿
ガマの生える湿地も、すっかり晩秋の色になりました。
前にヒメガマの穂絮について書きましたが、ガマの穂もほぐれてきつつあります。 穂綿(ほわた)は正式には「穂絮」と書くのですが、ここでは「絮」のかわりに「綿」の漢字を使うことにします。
ほぐれかけた穂があったので、上の写真の水色の●あたりを両側から指で軽く押してみました。 下の2枚の写真は、その時の変化です。 上の写真の赤い矢印(⇒)あたりに注目して下の写真を見てください。
この変化は、指で押されたために⇒の所がはみ出るように少し膨らむや否や、極めて短時間に起こります。 穂の一部が、これだけの体積に膨れ上がることができるとは驚きです。
ガマの穂の褐色に見える表面は、とても小さな果実が互いに押しあい、両横から強く押されているために身動きできない状況にあります。 そこに何らかのきっかけがあって力のかかり方に不均衡が生ずると、そこが突破口になって、一挙に膨れ上がります。 膨れようとする力は、果実の下についている毛が横に広がろうとする力です。 毛の横に広がろうとする力はとても弱いものですが、たくさん集まれば、これだけ急激に膨らむ力になるんですね。
上の3枚目と4枚目の写真は、クリックで拡大します。 拡大して1つの果実に注目すると、果実の下に細い棒状の軸があり、毛はその軸にブラシ状についていることが分かります。 この毛はもちろん、果実を風に乗せて遠くに運ぶためのものです。
上は明治38年に作られた唱歌「大黒様」ですが、この歌詞では、毛をむしり取られた白兎に大黒様はガマの穂綿にくるまるように薦めます。 これだけ膨張してフワフワの穂綿にくるまれば、気持ちは良いかもしれません。 しかし寝るには気持ち良くても赤裸になった皮膚を治療することにはなりません。 赤裸の皮膚には果実がチクチクするかもしれませんし・・・。
本来(?)の因幡の白兎の説話(古事記)では、大国主は、蒲黄(ほおう)、つまり生薬としても知られているガマの花粉を体につけるように助言しています。 花粉と穂綿、穂から飛散するものとして、両者は混同されていたのでしょうね。
なお、花粉を出す雄花の集まりは穂の上半分にあり、この時期は花粉を出すという役割を終え、落ちてしまって軸だけが残っています。
ガマの花粉や花のことは、またの機会に・・・。
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コメント
先日はリンゴの件で失礼をいたしました。
子供の頃、家に持ち帰った数本のガマの穂を飾っておいたら、ある日盛大に弾けておりました。
窓を閉めておけば被害は無かったんですが、風により部屋中に穂綿が散乱し、それはそれは酷い有様でした。
まだ姿を保っている穂を片付けようとすると、もこもこと穂綿が開いていまい、追い討ちをかけてしまった。
それ以来、ガマの穂は室内持ち入れ禁止となりました。
投稿: 日野@愛媛 | 2012年12月 8日 (土) 10時28分
日野さんもHPを作っておられたんですね。
ガマの穂綿はたいへんでしたね。わずかな風にも乗りますし、あの量ですからね。
ガマの穂は花材としても使われていますが若い穂限定なんでしょうね。
投稿: そよかぜ | 2012年12月 8日 (土) 23時05分