オニビシ
上はオニビシですが、オニビシやヒシに水面を埋め尽くされているため池を見る季節になりました。 オニビシやヒシは1年草ですから、水面に広がるまでに時間がかかります。 まず、春に水底に沈んでいる種子が発芽し、根を下ろし茎を伸ばして水面に達してからでないと、十分な光合成ができません。 しかし、水面で葉が増えだすと、それだけたくさん光合成が可能になり、その光合成産物を使ってたくさんの葉を作り・・・と、どんどん成長できるわけです。 葉柄には膨らみがあり、中はスポンジのようになっていて(下の写真)水に浮きますから、葉を支える茎(=光合成産物を消費する部分)は丈夫である必要はありません。
オニビシの名前は、「鬼のようなヒシ」の意味ですが、何が鬼のようなのでしょうか。
水面に浮かぶオニビシはヒシとよく似ているうえに、両者とも葉の大きさは変異が大きく、上から見ても区別はつきませんが、果実の形が違います。
上はヒシの果実です。 完熟した果実は、ゆでるとクリのような味わいで、もちろん食べることができます。 英語でも water chestnut(水中の栗)です。
ちなみに、ヒシの形が「菱形」なのですが、ヒシのどの部分の形なのかについては、葉の形だとも、この果実の形だとも言われています。
これに対して、下がオニビシの果実です。 ヒシの果実のトゲが2本なのに対し、オニビシの果実には4本のトゲがあります。 この刺々しさが「鬼」なのでしょう。
オニビシの果実
なお、ヒシの仲間にはヒメビシというのもあって、これもトゲが4本なのですが、全体にオニビシより小さく、各地で個体群が消滅し、絶滅危惧種に指定されています。
オニビシの果実も食べることはできるのですが、それより有名な?用途として、忍者が使う撒菱(まきびし)があります。 乾燥させたオニビシ(やヒメビシ)の実を竹筒に入れておき、逃げる時に追っ手が来る所などに撒き散らします。 ヒシの実を撒いてもトゲは地面と並行に左右に向くだけですが、オニビシのトゲは立体的に4方向を向いていますから、この実を撒けば、どれかのトゲは上を向いていることになり、歩けば足の裏に刺さります。
1枚目の写真にも4枚目の写真にも花が写っていますが、オニビシの花を拡大したのが上の写真です。 オニビシの果実のトゲも本来は果実が食べられてしまうことから守るためで、花は鬼どころか控えめな花です。 ガク片と花弁は各4枚、オシベも4本です。
受粉を終えた花は花茎を曲げて水中に入り、葉の下で果実を形成していきますから、果実は上からは見えません。
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