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2012年10月31日 (水)

ヨモギの花

 ヨモギはとても身近な野草です。 また、身近にみられるだけでなく、草餅にしたり、新芽をおひたしや汁物の具や天ぷらにしたりもしますし、ヨモギ風呂、せんじ薬など民間薬としても使われてきました。 灸に使う艾(もぐさ)も、葉の裏側の綿毛から作られます。
 このような身近な野草であるにも関わらず、夏から秋にかけて咲く花は、小さすぎるためか、ヨモギの利用はほとんど葉であるためか、あまり注目されません。 しかし、植物理解の基礎として分類学的に理解しようとすれば、花を見ないわけにはいきません。

Yomogi121015_2_2    花を咲かせているヨモギ

 上が花をたくさん咲かせているヨモギです。 しかし、このように花を咲かせている状態は、1つの株についてみれば、きわめて短期間です。

Yomogi121019_2    花の終ったヨモギ

 私たちがヨモギの花を見ようと目を近づけて観察した場合、多くは上のような状態です。 でも、これでも、ヨモギの花はいくつかの小さな花がひとまとまりになっている、専門用語を使いますと、小花(ほんとうの1つの花)が集まった頭状花序(=頭花)をつくっていることが分かります。 この状態を見ると、ヨモギはキク科であることが分かります。

Yomogi121104_1    ヨモギの雄性期の花

 上の写真の中央が咲き始めた状態です。 小花の中央から花粉が出ています。 花粉を出している小花からは、まだメシベは出ていません。 雄性期です。 よく見ると、この花粉を出している小花の花弁は5裂していることも分かります。

Yomogi121013_1    ヨモギの雌性期の花

 花粉を出し終えた花はメシベを伸ばし、花粉を受け取る状態になります(上の写真)。 雌性期です。 メシベの柱頭は2裂しています。
 よく見ると、頭花の中心部の小花と周辺部の小花が違っています。 つまり1つの頭花には2種類の小花があります。

Yomogi121015_1    ヨモギの2種類の小花

 上は頭花をバラバラにして2種類の小花(ほんとうの1つの花)を取り出し、並べたものです。 左が周辺部にある小花で、右が中心部にある小花です。
 まずは分かりやすい右の中心部にある小花から見ていくことにします。 いちばん下には子房があり、そこから上に花筒が伸びています。 このような花を筒状花と呼んでいます。 頭花ではたくさんの小花の集まりを総苞が保護しているのですが、その総苞から外に出ている花弁の部分は赤褐色になっています。 花弁の先端は、この写真でははっきりとは確認できませんが、5裂しています。
 花弁の中央からは柱頭が2裂したメシベが伸び出しています。 オシベは、この状態では花粉を出し終えていますが、花弁の中に隠れていて見えません。
 次に、左の、周辺部にある小花を見ていくことにします。 小花のいちばん下に子房があることは同じですが、ずいぶんほっそりとしています。 長く伸びているのはメシベで、2裂している柱頭も中心部の小花より長くなっています。 花弁はというと、このメシベの花柱(メシベ一部で、柱頭と子房との間の部分)の下半分にくっついているのが分かるでしょうか。 薄緑色の花柱にくっついている花弁も薄緑色ですから、分かりにくいのですが・・・(写真はクリックで拡大します)。
 周辺部の小花のオシベは・・存在する場所がありません。 周辺部の小花がほっそりしているのはオシベが無くなっているからです。 つまり周辺部の小花はオシベの無い雌性花で、中心部の小花はオシベとメシベが揃っている両性花です。 両性花は、上に書いたように、雄性期を経て雌性期へと変化しますが、もちろん雌性花には雄性期は存在しません。
 種子は、ちゃんとした子房があることからもわかるように、どちらの小花からもできます。

Yomogi121020_1    ヨモギの冠毛

 花が終われば種子生産へと向かいます。 冠毛が伸び、同じキク科のタンポポなどと同じように、風に乗って種子は広がっていきます。

※ 同じヨモギ属に分類されているクソニンジンはこちらに載せています。

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2012年10月30日 (火)

サメハダツブノミハムシ

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 小さな穴がいっぱい開いているアカメガシワの葉(上の写真)、開けたのは・・・と探すと、体長2mmほどの小さな甲虫が目につきました(下の写真)。 あちこちに何頭もいますし、葉をかじっている個体もいたので、この穴を開けた犯人に間違いないでしょう。

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 後脚の腿節が太いのでノミハムシの仲間だろうと思い、食草がアカメガシワであるノミハムシを探すと、サメハダツブノミハムシだとすぐ判りました。
 いちどみつけてしまうと、自然と目がアカメガシワの葉に行きます。 この秋は、あちこちのアカメガシワで、1枚目の写真のようなたくさんの穴はなくても、サメハダツブノミハムシを見かけました。

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 上は手に乗せて撮ったサメハダツブノミハムシです。

 アカメガシワはこの先落葉します。 その時にサメハダツブノミハムシは?
 おちゃたてむしさんのブログには、12月17日にアラカシの葉の裏にいるサメハダツブノミハムシが載せられています。 またtukikuiさんのブログでは、暖かい宮崎市ではありますが、3月19日にアオキのガクを食べているサメハダツブノミハムシが載せられています。 どうやら別の植物に移って成虫越冬するようです。
 産卵は新しいアカメガシワの葉が出てからになるのでしょうね。

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2012年10月29日 (月)

マミチャジナイ

 堺市の大泉緑地(10月27日)にいたマミチャジナイです。 大泉緑地の鳥に詳しい人の話によると、もう1週間ほど居付いているようです。 ただ、森林に生息するツグミの仲間で、林床には降りてきてくれますが、用心深い鳥で、明るい所にはなかなか出てきてくれないようです。

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 マミチャジナイは日本では主に秋に渡来する旅鳥ですが、少数が西日本~南西諸島で越冬します。 渡りの時期には群れるようですが、普段は主に単独でいるようです。
 背面や翼は褐色で、腹部は白く、胸部から体側面にかけてオレンジ色をしており、白い眉斑があります。 写真はオスの成鳥ですが、メスでは頭部の褐色味が強く、ノドの白い部分に暗い縦縞が入り、眉斑もオスの成鳥ほどははっきりしていません。
 体の色や大きさは同じ属のアカハラに似ていますが、アカハラには明瞭な眉斑がありません。

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 マミチャジナイは漢字では眉茶■(■は即の下に鳥と書く漢字ですが、表示できないようです)と書きます。 ■(即の下に鳥の漢字)はシナイと読み、ツグミの古語ですから、マミチャジナイは「眉のある茶色のツグミ」ということになります。

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2012年10月28日 (日)

10月下旬の大泉緑地の鳥たち

 この秋の渡りの時季は、大阪付近でも、例年に比較して、いろんな鳥たちがたくさん出現しています。 10月中旬には、とても珍しい迷鳥イナバビタキが枚方水辺公園で見られたようですし、これも珍しいクロハラアジサシが大阪城公園、服部緑地、奈良の水上池などあちこちで見られたようです。 大阪城公園では10月20日にキクイタダキが30羽前後出現し、数は減ったものの、現在でもまだいるようです。
 鳥のみのブログではない私には「○○がいるよ」と連絡を入れていただける方も無く、入ってくる情報は遅れ気味で、行ったものの既にいなくなっていたというのも落胆が大きいので、珍鳥を狙って出かけることはあまりしないのですが、地元堺市にある大泉緑地はどのような状況だろうと、昨日行ってきました。
 27日の大泉緑地は、結論から書くと、やはりいろんな鳥が来ていました。 土曜日で人が多く、いるはずだが出てこない鳥もあったようですが、私が見た鳥に加えて早朝に見たという人の話などを総合すると、下のような鳥がいたようです。(メジロやシジュウカラなど、よく見られる鳥は省略しています。)
※ 夏鳥・冬鳥などは、近畿地方においての区分です。
(去ろうとしている夏鳥たち)
 クロツグミノゴマコサメビタキ
(日本を通過点とする旅鳥たち)
 マミチャジナイムギマキ
(渡ってきた冬鳥たち)
 アリスイアトリの群マヒワの群シメ
(山から下りてきた漂鳥)
 コマドリ
(留鳥)
 オオタカ(幼鳥)

 この他、カワセミは公園内のどこかにいるはずですし、最近では、キクイタダキメボソムシクイイカルなども見られています。

Nogoma121027_1    ノゴマ(オス) 2012.10.27.大泉緑地にて

Kurotsugumi121027_1    クロツグミ(メス若鳥) 2012.10.27.大泉緑地にて

Atori121027_1    アトリ 2012.10.27.大泉緑地にて

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2012年10月27日 (土)

クソニンジン

 クソニンジンはキク科ヨモギ属の1年草で、道端や荒れ地に生え、高さは0.8~1.5mになります。

Kusoninjin121013_1    クソニンジン(全体)

 名前の「クソ」は、葉をもむと強いにおいがすることからでしょうが、英名では Sweet Annie です。 sweet は「芳香のある」や「かわいい」のような意味ですし、Annie は女の子の名前ですから、所変われば・・ですね。

Kusoninjin121013_2    クソニンジンの葉と花

 名前の「ニンジン」は、葉が深く切れ込み、ニンジンの葉に似ているからでしょうが、クソニンジンはキク科ですし、ニンジンはセリ科ですから、似ているのは葉だけで、花を見ると全く違う植物です。

Ninjin110618_1   (参考)ニンジン

 クソニンジンは古い時代(江戸時代以前)に薬用植物として中国から渡来したものが野生化したもので、原産地は東ヨーロッパ~アジアと言われています。 クソニンジンの葉から発見されたアーテミシニンはマラリアに効果があることが分かっています。

Kusoninjin121013_4    クソニンジンの頭花(横から)

 上でクソニンジンはヨモギ属だと書きましたが、ヨモギの花同様、小さな頭花で、頭花の花期は短く、すぐ茶色くなってしまいますが、上は咲いている頭花を横から見たところです。

Kusoninjin121013_3    クソニンジンの頭花(正面から)

 小さい頭花であっても、ちゃんとキク科の特徴は守っています。 上の写真は1つの頭花を斜め正面から撮ったものですが、中心部はツボミで、その周囲に雄性期の花(小花)があり、外側には雌性期の花(小花)が咲いています。

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2012年10月26日 (金)

アカホシテントウ

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 アカホシテントウは、黒色に滲むような赤い紋を持つ、強い光沢のあるテントウムシです。 幼虫も成虫もタマカタカイガラムシを捕食しているようです。

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 このアカホシテントウがアオギリの葉の裏にたくさんいました(上の写真)。 どの個体もじっとしています。 写真を撮ろうと葉を引き寄せると、ボトボトと落下します。

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 アオギリの隣のソメイヨシノの葉の裏にもたくさんついていました(上の写真)。 周囲に餌となるカイガラムシがいないか、かなり熱心に探したのですが、見つけることはできませんでした。
 写真は10月8日に撮ったものですが、これだけ集まっているのは、もう越冬の準備に入っているのでしょうか。 アカホシテントウは成虫越冬します。
 アカホシテントウさんの「テントウムシ観察記」(平成12年、八尾市久宝寺緑地での観察)によれば、アカホシテントウは、
 12月も終わりになると交尾しているテントウムシをよく目にするようになり、
 2月に入って産卵し、
 4月に入って孵化が始まり、
 5月の終り頃に羽化するとのことです。

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2012年10月25日 (木)

アオアシシギ

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 アオアシシギは、春と秋の渡りの時に全国的に渡来する旅鳥です。 10月中旬、留鳥のカルガモや冬鳥のマガモなどに混じって、アオアシシギがいました(上の写真手前中央の2羽)。

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 アオアシシギは、その名のとおり、足が緑青色~黄緑色で、幼鳥では黄色が強くなるようです。 嘴は先端が黒く基部は灰緑色で、少し上に反っています。 冬羽では体の上面は灰色で、下面の白さが目立ちます。 なお、夏羽では体の上面に黒い斑が出てきて、ノドにも黒い縦斑が見られます。

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 上の写真、少しだけ羽を広げた様子も見せてくれました。

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2012年10月24日 (水)

タニジャコウソウ

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 タニジャコウソウは谷間のジャコウソウ、分布は南関東以西となっていますが、日照や空中湿度など、生育条件は限られているのでしょうね。 しかし生育条件に適した場所ですと、たくさんの株が大きく育ってよく目立つようになります。

Tanijakousou121001_2    タニジャコウソウ

 タニジャコウソウの葉は対生で、秋に葉腋に紅紫色の花をつけます。 ジャコウソウとの外見上のいちばんの違いは、ジャコウソウの花柄がとても短い(下の写真)のに対し、タニジャコウソウには長い花柄がある(上の写真)ことです。 タニジャコウソウの学名は Chelonopsis longipes ですが、この種小名 longipes は「長柄の」という意味で、この花柄が長いところからきています。

Jakousou121006_1   (参考) ジャコウソウ
   今回は脇役ですので花の終った姿で・・・。 ガクの様子はよくわかります。

 ちなみに、ジャコウソウの学名は C.moschata で、この種小名は「麝香(じゃこう)の香りがする」という意味で、茎や葉に麝香の香りがあることからです。 タニジャコウソウも、ジャコウソウと同じ属ですし、シソ科には香りの強い植物が多いのですが、残念ながらタニジャコウソウには麝香の香りはありません。

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 タニジャコウソウの花は筒状で、先が2唇形になっています。 毛の束のようなものが少し顔を覗かせています(上の写真)が、これがオシベの葯です。
 ガクは、上の写真でははっきりしませんが、上のジャコウソウのガクとほとんど同じで、上下2唇の上側が浅く3裂、下側が2裂し、果実の時期まで残り、やや大きく膨れて中の果実を保護します。

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 上はタニジャコウソウの花筒の内側を撮ったものです。 長いオシベが2本とそれより少し短いオシベが2本、いずれの葯にも毛が生えています。 メシベの柱頭は2裂しています。

 春や秋は載せたいものが多くて、記事が遅れがちになります。 タニジャコウソウの写真も10月はじめに撮ったもので、今は花もすっかり終っていることでしょう。

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2012年10月23日 (火)

ヒラヤマシマバエ

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 アケボノソウは花弁に蜜腺があります(詳しくはこちら)。 この蜜腺の蜜を求めてヒラヤマシマバエが来ている・・・と思ったのですが、

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 花弁の裏や(上の写真)、花柄も舐めています(下の写真)。

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 花弁の裏や花柄にも蜜が染み出したり伝わって流れていることがあるのでしょうか。 それとも口吻を引っ込めないままにカメラを避けているだけなのでしょうか。 花弁の裏や花柄に他に餌となるようなものがあるとは思えませんが・・・。

 ヒラヤマシマバエはミパエにも似ていますが、ミバエの仲間なら翅を開いてとまるはずで、このように翅をたたんでとまることはしないはずです。
 ヒラヤマシマバエは花の蜜や腐った果実などを餌としているようです。

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2012年10月22日 (月)

ハナタデ

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 ハナタデは、葉の形や花序の長さなどに変化が多く、花の色も濃淡がありますが、大雑把に言えば、イヌタデの花をまばらにしたような印象のタデです。 イヌタデより花穂が長い場合が多いようですが、ボントクタデのように垂れることはありません。
 葉の先は急に細くなっていますから、次第に細くなるイヌタデと区別できます。 上の写真のように葉の中央部に黒斑のあるものが多いようです。

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 ボントクタデのところにも書いたように、花には花弁が無く、花弁のように見えるのはガク片で、このガク片は花後も残り果実を保護することは、この仲間の特徴です。 上の写真でも、紅色に育った果実がガク片の上に少し見えています。 この果実は完熟すると黒色になります。

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2012年10月21日 (日)

シマハナアブ

 ソバの花にシマハナアブが来ていました。

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 シマハナアブはナミハナアブと共に普通に見られるハナアブで、いろんな花をよく訪れています。 平地では春と秋によく見られますが、夏期は涼しい高地へ移動しているようです。

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上の写真といちばん下の写真では、蜜を吸うために口吻を伸ばしています。 体には花粉があちこちについています。 花にとっては、良いポリネーター(花粉媒介者)です。

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 ハナアブの仲間の識別はなかなか難しいものです。 下にナミハナアブとの比較で、シマハナアブの特徴を整理してみました。 腹部背面の模様は、目につきますが、個体差が大きいようです。

  • シマハナアブの胸部背面には明瞭な横帯がある(上の写真)。 ナミハナアブではあっても不明瞭。
  • シマハナアブの後脚脛節は細く、前半が黄色(上の写真)。 ナミハナアブの後脚脛節は黒一色で太い。
  • 顔を正面から見たときの縦の黒いラインが、シマハナアブの方が細い(下の写真)。
  • ナミハナアブの複眼には、よく見ると、縞状の模様がある。
  • シマハナアブの方がナミハナアブより少し小さい。

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 幼虫は汚水中で腐食物を食べて育ちます。

(2012.10.5.「堺自然ふれあいの森」にて撮影)

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2012年10月20日 (土)

ホソバノウナギツカミ

 ホソバノウナギツカミは水辺に生える一年草です。

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 前にこのブログでアキノウナギツカミを載せました(こちら)。 両者は同属で、比較すると、茎は細く延びてに逆刺があることや、葉の基部が矛形であること、托葉は鞘状に茎を抱くことなどはよく似ていますが、ホソバノウナギツカミの方が小さな植物で、アキノウナギツカミの花が頭状につくのに対し、ホソバノウナギツカミの花はまばらな穂状につきます。

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 開発で湿地が少なくなり、ホソバノウナギツカミも少なくなりつつある植物です。

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2012年10月19日 (金)

スズキハラボソツリアブ

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 堺自然ふれあいの森で、ヒメジソにハラボソツリアブが来ていました。 ニトベハラボソツリアブに載せたハラボソツリアブの検索表に従えば、後胸腹板が黒色で、後脚の第1付節は全体が黄色ですので、スズキハラボソツリアブでしょう。
 残念ながら左の後脚が失われていますが、優雅に飛び、ヒメジソの蜜を吸っていました。

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 ここに載せた写真を撮った日は、ニトベハラボソツリアブも数頭ヒメジソに来ていました。 ニトベハラボソツリアブは小さく細く、すぐに見失ってしまいます。 それに比べて、スズキハラボソツリアブは個体数は少ないものの、見失うことの無い大きさです。

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2012年10月18日 (木)

ヒメジソ

 ヒメジソはシソ科の1年草です。 葉は対生で、花は9~10月に咲きます。

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 よく似た植物に、同じ属のイヌコウジュがあるのですが、イヌコウジュの葉のきょ歯は浅くて6~13対であるのに対し、ヒメジソのきょ歯は4~6対です。
 茎は四角形で、茎やガクにはあらい毛があります。

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 花を正面から見ると、上唇にくっつくようにオシベが2本とその間に柱頭が2裂したメシベがあります。 下唇側にもオシベが2ほんあるのですが、退化して小さくなっています。

 花の少なくなりつつあるこの季節、たくさんの花のある場所には、蜜を求めていろんな虫が集まります。

Himejiso121005_3     キンケハラナガツチバチ

Himejiso121005_4     キマダラセセリ

Himejiso121005_5     シマハナアブ

 他にもいろいろな虫たちが来ていましたが、明日はそのうちのハラボソツリアブを取り上げます。

(撮影地:堺自然ふれあいの森)

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2012年10月17日 (水)

コサメビタキ

 鳥たちの秋の渡りの季節です。 もう冬鳥のカモたちもたくさん来ています。 一方で夏鳥たちは南へ旅立ちます。 ビルに囲まれた中にある大阪城公園はそんな旅の途中の鳥たちの一時の休息の場として賑わっています。 コサメビタキ、エゾビタキ、サメビタキなどのヒタキ類もそんな大阪城公園を通過していく夏鳥です。
 写真はコサメビタキだと思うのですが・・・。 飛んで餌を取り、元の場所に戻ることを繰り返していました。

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2012年10月16日 (火)

イヌハギ

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 イヌハギは河川敷や堤防などの日当たりの良い草地に生えるハギの仲間(Lespedeza属)です。 草本状の小低木であることや、互生の葉は3小葉からなることなどは、他の多くのハギの仲間と同じです。 「イヌ」とつくのは、花の色が白色主体で地味なためでしょう。
 地味であまり注目されず保護されないままに、このイヌハギも堤防の整備などで生育環境が狭くなり、減少しつつある植物のようです。

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 花は長い総状花序にたくさんつきます。 枝には黄褐色の軟毛を密生しています。
 上の写真で、枝分かれの基部などに、まるで虫えいのような丸いかたまりがついています。 じつはこれは閉鎖花が集まった部分です。 閉鎖花には花弁が無く、オシベとメシベだけで、花開くことなく自家受粉をして種子を作ります。

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 上が開いている有弁花です。 多くのマメ科の花同様の蝶形花です。 旗弁には赤い斑紋があります。
 有弁花のガク裂片は細長く、先が尖り、長い毛が生えています。

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2012年10月15日 (月)

コブオトシブミ

 9月下旬、コアカソに揺籃がついているのを見つけました(下の写真)。

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 たくさんついていたので、いくつか持って帰りました。
 幼虫が揺籃の中を食べて育っていたらしく、10月4日には揺籃はボロボロになり、中が見ています。

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 揺籃の中では既に羽化が終わり、たくさんの糞が残されています。

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 揺籃から出てきたのはコブオトシブミでした。

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 コブオトシブミはコアカソやクサコアカソなどのイラクサ科の葉で揺籃を作ります。 北海道のものをオオコブオトシブミ、本州以南のものをヒメコブオトシブミと分ける説もあります。 北海道での食草はニレ科のオヒョウだということです。
 成虫はヒメゴマダラオトシブミに似ていますが、頭部も黒一色ですし、上翅の“コブ”はヒメゴマダラオトシブミよりも少し低めです。 またヒメクロオトシブミにも似ていますが、コブの有無と、コブオトシブミの脚は黄色で後脚の腿節の端が黒いことで区別できます。
 コブオトシブミは春から何度か世代を重ねるようですが、この時期に羽化した成虫は、このまま越冬するのでしょうか。

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2012年10月14日 (日)

ネナシカズラ

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 ネナシカズラは、自ら光合成をせず、寄生根を他のいろんな植物に刺し込み、養分を吸収するツル植物です。 種子から発芽したネナシカズラは、最初は地中に伸ばす根がありますが、寄主植物のにおいを感じ、寄主植物に取り付くと、その名のとおり、地面に伸びていた根は枯れて無くなってしまいます。
 以前は独立したネナシカズラ科の植物とされていましたが、APG植物分類体系ではヒルガオ科とされています。

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 以前このブログにアメリカネナシカズラを載せましたが、アメリカネナシカズラに比較して、ネナシカズラはオシベもメシベも短く、花全体としてはスマートな感じがします。

 このネナシカズラの写真は岩湧山で撮ったものです。 金剛山などでも時々見るのですが、1年性の植物ですので、翌年同じ場所で見られるとは限らず、神出鬼没です。

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2012年10月13日 (土)

アシダカグモは果物も食べる!?

 これまで何度か み。さんからいただいた情報を基に、アシダカグモの行動について書いてきましたが、これまでのアシダカグモのイメージを変える内容が数多くありました。 今回は少し情報不足のところがあるのですが、またおもしろい情報をいただきました。
 今回は、アシダカグモは果物の梨の皮から汁を吸う、または梨の皮をかじるのではないか、という内容です。

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 上は、三角コーナーに捨てられた梨の皮の上でじっとしているアシダカグモです。 アシダカグモの口の周辺の梨の皮が少し凹んでいるようにも見えます。 なお、このアシダカグモは猫に襲われたのか、脚が6本しかありません。
 クモは一般的に動くものにしか反応を示さないと言われています。 ところが、アシダカグモは置いてある砂糖水を飲むことを書きました(こちら)。 砂糖水を飲むのなら、梨の汁を吸っても不思議はありません。

Asidakagumo121007_2

 上は1枚目と同じアシダカグモを、角度を少し変えて撮っています。 口が梨の皮に接しています。

 一般的に言われているクモの食事方法は、捕まえた餌の体内に消化液を注入し、餌の組織を液体にして吸うのだと言われています。 ところがアシダカグモはゴキブリを齧るようです(こちら)。
 下は1枚目と同じ状況を上から撮ったものですが、左上の梨の皮が齧られています。(1枚目の写真からも分かります。) 目撃されていませんから、ゴキブリが齧った可能性もあるのですが、写真のアシダカグモが齧った可能性も否定できません。

Asidakagumo121007_3

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2012年10月12日 (金)

ツルリンドウ

 ツルリンドウはツル性の多年生草本です。 ツルはあまり長く伸びませんから、何かに巻きついて高い所まで登ることはありません。 葉は対生し、3本の脈が目立ちます。

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 花は8月~10月に咲きます。 花の基本的なつくりはリンドウなどによく似ています。 以前リンドウの自家受粉を防ぐしくみについて書きました(こちら)が、ツルリンドウでも同様のことが起こります。 簡単にまとめておくと、柱頭の開いていない(=受粉できない)メシベにオシベがくっついて花粉を出し、花粉を出し終わったオシベが離れてから、メシベの柱頭が開きます。 しかし、これで受粉できなかったら・・・。

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 上の写真では、開いてねじれた柱頭とオシベがくっついています。 花の終盤になると、オシベが再度メシベに寄って来て自家受粉を行うようです。 できるだけ自家受粉を避けながらも、それで受粉できない場合も想定し、最後には自家受粉のしくみも用意する作戦のようです。 ですから、ツルリンドウの結実率はかなり高いように思います。

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 果実は11月頃に赤く熟します。 鳥に食べてもらって種子を運んでもらわなければなりませんから、花が垂れ下がりぎみなのに対し、果実は持ち上げられています。 結果として、ツルリンドウは花より果実の方が目立つようです。

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2012年10月11日 (木)

オオトビサシガメ

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 オオトビサシガメは、その名のとおり、体長2cm余りで、脚も長い大型のサシガメです。 昆虫などに刺して体液を吸う長い口吻は、他のサシガメ同様、普段は体の腹側に曲げています(下の写真)。

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 指でつかむなどすると防衛のために人も刺します(かなり痛いようです)が、自分から人を襲うような何のメリットも無いことはしませんし、強さに自信のあるものは素早く逃げるようなこともしませんから、撮影は楽です。

 下はオオトビサシガメの幼虫です。 成虫は褐色で地味ですが、幼虫は派手な色をしています。

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 幼虫と成虫の体色を比較しても、ほとんど共通点が見つかりません。 少し似ていると言えるのは、触角の色くらいです。 成虫は気づかれずに獲物に近づくために周囲に溶け込む色を、幼虫は餌にされないための警戒色をしているのでしょうか。

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2012年10月10日 (水)

アカバナ

 このブログでも今までに、ユウゲショウアメリカミズキンバイミズタマソウや、その他にも多くのアカバナ科の植物を載せてきました。 しかしアカバナ科の代表であるアカバナは今回はじめての登場となります。

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 アカバナは高さ50cm前後になる多年草です。 葉は、下部では対生し、上部では互生していて、しばしば茎を抱いています。
 花の色は真っ赤というわけではなく、アカバナの名前は、秋に葉や茎が紅葉して赤くなることからだとも言われています。
 アカバナ科の多くは、ガク片、花弁、オシベの数など、花の基本数は4です。 しかしこの数は変異しやすいように思います。 例えば、オオマツヨイグサではメシベの柱頭が4裂しているとは限らないことを書きましたし、チョウジタデでも、ガク片・花弁・オシベの数が変化しやすいことを書きました。
 アカバナも基本的には、ガク片・花弁・オシベの数は4ですが、下の花の右上のオシベでは、腋芽でも伸びるかのように、1本のオシベの両脇から、少し小さいオシベが伸びています。
 メシベの柱頭はこん棒状です。 ガクの下に続く子房は細長く、まるで花柄のようです。 この子房は、花が終わった後にさらに伸び、1枚目の写真のように、長~い果実になります。

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2012年10月 9日 (火)

ニシキリギリス

 キリギリスがよくいるのは、ススキの群落など、背の高い草むらです。 体の色には、緑色型と褐色型があります。
 私の子供の頃は、よくキリギリスを捕まえて虫かごで飼っていたものでした。 そんな身近であったキリギリスも、最近はあまり見かけなくなり、鳴き声を聞くことも少なくなった気がします。

 このキリギリス、研究が進むにつれて、地域ごとに異なる特徴を持った個体群が存在することが知られるようになり、少なくとも2種は明らかに別種だということになって、1997年にヒガシキリギリスとニシキリギリスと名付けられました。 分子系統解析が進むと、もっと多くの種に分かれるかもしれません。
 ヒガシキリギリスの分布は青森県から岡山県にかけてで、ニシキリギリスの分布は近畿地方から九州にかけてだとされています。 つまり近畿地方では、両者が混在していることになります。
 ニシキリギリスはヒガシキリギリスに比較して翅が長く、発音器官が小さいとのことです。 また、ヒガシキリギリスの側面には黒斑が多くあるのに対し、ニシキリギリスでは黒斑は1列程度または全く無いとのことです。
 この特徴に照らし合わせると、下はニシキリギリスのメスのように思います。

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 上は岩湧山の茅場で9月下旬に撮ったものです。 普段は草むらの中に潜んでなかなか姿を見せないのですが、この日は理由は分かりませんが、あちこちでメスもオスも、よく日の当たる場所でじっとしていました。
 下のオスは、後脚が左右とも失われています。

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2012年10月 8日 (月)

ミズワラビ

 ミズワラビは熱帯地方に広く分布するシダ植物で、日本では本州中部以南に分布します。 本来は多年生ですが、日本の本州では冬を越せない場合が多く、一年草として暮らしているケースも多いようです。
 名前のとおり水中または湿地に生え、よく育つ地域では葉を食用にしたそうです。 昔は水田にも多かったようですが、現在では、除草剤のためか、稲作の形態が変化したためか、水田で見ることも少なくなってしまいました。
 その水田のミズワラビに、久しぶりに会えました。

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 上のミズワラビは、除草された後に生えたのか、少し小さい株です。 下は大阪市立大学付属植物園で9月22日に撮ったもので、さすがに大きく育っています。

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 ミズワラビの葉には栄養葉と胞子葉があります。 栄養葉が下部に、胞子葉が上部に繁ります。 夏以降は胞子葉が目立ってきます。

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 上は栄養葉と胞子葉が同じ株から出ていることを示しています。

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 胞子葉は、胞子のうを保護するように、葉の縁が巻き込んでいます。 上は胞子葉の一部の断面を作ったものですが、球形のものが胞子を入れておく胞子のうです。

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2012年10月 7日 (日)

ヒロヘリアオイラガの幼虫

 昨日からのトゲつながりで・・・

 ヒロヘリアオイラガは、1920年頃に日本に入ってきた外来種で、本州中部以南に広がっています。
 幼虫は広食性で、様々な樹種を加害します。 また、この幼虫の肉質突起に生えるトゲに触れると、激しい痛みに襲われます(経験済)。 日本生態学会が定めた日本の侵略的外来種ワースト100にも入っています。

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 卵はかためて産み付けられ、孵った幼虫は2齢ごろまでは集団でいますが・・・

Hiroheriaoiraga120919_2     ヒロヘリアオイラガの若齢幼虫(左が頭)

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 齢が進むと単独行動になり、ますますトゲだらけになっていきます。 トゲの色も緑色と一部オレンジ色に変わります。

Hiroheriaoiraga120919_3     ヒロヘリアオイラガの終齢幼虫(右が頭)

 冬は硬い繭の中で前蛹態で過ごします。 木の幹などに作られる繭はうまくカモフラージュされ、表面が少し膨らんでいるくらいにしか分かりません。 下は羽化後長期間経過していない抜け殻ですが、フタの開いた跡の穴(写真の中央)がなければ、繭の存在にはほとんど気づきません。 この繭の作成工程、いちど見てみたいものです。

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 羽化後、月日を経てはじめて、繭の殻の存在がはっきり分かるようになります(下の写真)。

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2012年10月 6日 (土)

ナベナ

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 ナベナはマツムシソウ科の越年性の1年草です。 高さは1mを超えますが、私がよく見るのは山地の渓流沿いで、写真のように横に倒れてから上を向いている場合です。 光が足らないのでしょうか。
 対生する葉は深く切れ込んでいます。

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 花のつき方は、キク科同様、頭状花序です。 ツボミの時(上の写真)を見るとよく分かりますが、総苞の上にたくさんの花が集まっています。 それぞれの花は鱗片の上に咲きますが、総苞にも鱗片にも長いトゲがあります。

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 花は9月に咲きます。 筒状の花(小花)は先端が4裂しています。 オシベは4本で、オシベが花粉を出し終わり、葯がなくなった後に、白色のメシベが目立ってきます。

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 茎にも鋭いトゲがたくさん生えています(上の写真)。

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 上は果実の様子です。 写真は10月下旬に撮ったものですが、痩果はなかなかバラバラにはなりません。 縁に毛の生えたガク片は、ツボミや花の時には小さくて目立たなかったのですが、果実を覆うように保護しています。

※ 同じマツムシソウ科のチーゼルはこちらに載せています。

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2012年10月 5日 (金)

アオマツムシ

 アオマツムシは明治時代に日本に帰化した外来種で、特に1970年代から数が増え始めました。 体型が平たく動きが素早いため、アオゴキブリとも呼ばれます。

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 マツムシ科の虫たちの多くは褐色系ですが、このアオマツムシは、その名前のとおり、オス・メス共に緑色で、オスは背中の中心部に褐色部分があります(こちら)が、メスは写真のように体全体が緑色です。 緑色であることは、樹上性であることとも関係するのでしょう。 なお写真のアオマツムシは、左の後脚が失われています。

Aomatsumusi120922_2     アオマツムシのメス  この角度から見ると、産卵管が見えます。

 アオマツムシのオスは大きな「声」でよく鳴き、メスを呼びます。 もちろん鳴き声は口から出すのではなく、翅をこすり合わせるわけで、私たちの出す声とは異なります。 一方、その声を聞く耳も、人のように目の後ろにあるわけではありません。
 昆虫の聴覚器官の場所はいろいろです。 同じ直翅類でも、バッタの仲間の聴覚器官は後脚の付け根付近にありますが、コオロギやマツムシなどの仲間の聴覚器官は前脚の脛節にあります。

Aomatsumusi120922_3     アオマツムシの聴覚器官(赤い矢印のところ)

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2012年10月 4日 (木)

チチコグサ

 チチコグサはハハコグサの仲間( Gnaphalium属)です。 この仲間には、ウスベニチチコグサ、チチコグサモドキ、タチチチコグサ、ウラジロチチコグサなどの帰化植物があるのですが、これらは1(~2)年草で、多年草である在来種のチチコグサのように根がよく張っていませんから、簡単に引き抜くことができます。 また、同じキク科の同じ属ですから、頭花のつくりは基本的によく似ていますが、植物全体の姿も違います。

Chichikogusa120917_1     チチコグサ

 チチコグサは花の時期にも細長い根出葉(下の)が残っています。 そこから立ち上がる花茎は分枝せず、途中につく茎葉は根出葉よりも短く、枚数もそんなに多くありません。
 頭花は茎葉の先端に集まってつき、その下には数枚の苞葉が放射状に広がります(下の写真)。

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 この様子はエーデルワイスにも似ているのですが、小さすぎるのでしょうか、注目されませんね・・・。
 小花はすべて管状花で、中心には両性花、周囲には雄性花があるのですが、小さな花弁で、よほど注意をしないと、咲いているのを見落としてしまいます。 断面を作ってみた下の頭花も既に花が終わって、種子ができていました(下の写真)。

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 上の写真には冠毛を持つ種子が並んでいますが、その手前には雄性花に由来すると思われる不稔種子(しいな)が1つ写っています。

 チチコグサの根出葉
 根につながる短い茎から出た葉で、まるで根から出たように見える葉を根出葉と呼んでいます。 チチコグサの根出葉は細長く、裏面には白毛を密生しています。

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 花の無い時期はこの根出葉だけで育ちますから、強い光の好きなチチコグサの育つ場所は、芝生や背の低い草原など、上を他の植物に覆われない所に限られます。

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2012年10月 3日 (水)

モリオカメコオロギ

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 オカメコオロギの仲間は、触角の付け根から付け根に白い線があります。 森林の落ち葉の下を好むモリオカメコオロギ、草地や畑などに住むハラオカメコオロギ、湿地や田んぼに住むタンボオカメコオロギがいて、いずれも正面から見たオスの顔の左右が膨らんでいて、「おかめ」の名前はここから来ています。
 写真のモリオカメコオロギもオスで、正面から撮りたかったのですが、自然の中で動き回るモリオカメコオロギでは、側面から撮るのがやっとです。

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 写真の個体は左側の後脚が失われていますので分かりませんが、後脚には長い棘が並んでいます。
 モリオカメコオロギとハラオカメコオロギはよく似ているのですが、生息環境の違いの他に、モリオカメコオロギのオスでは、ハラオカメコオロギよりも、前翅の端部がやや長いこと、腹面がやや赤みを帯びていることなどで区別できます。

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2012年10月 2日 (火)

オニビシ

Onibisi120922_1     オニビシ

 上はオニビシですが、オニビシやヒシに水面を埋め尽くされているため池を見る季節になりました。 オニビシやヒシは1年草ですから、水面に広がるまでに時間がかかります。 まず、春に水底に沈んでいる種子が発芽し、根を下ろし茎を伸ばして水面に達してからでないと、十分な光合成ができません。 しかし、水面で葉が増えだすと、それだけたくさん光合成が可能になり、その光合成産物を使ってたくさんの葉を作り・・・と、どんどん成長できるわけです。 葉柄には膨らみがあり、中はスポンジのようになっていて(下の写真)水に浮きますから、葉を支える茎(=光合成産物を消費する部分)は丈夫である必要はありません。

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 オニビシの名前は、「鬼のようなヒシ」の意味ですが、何が鬼のようなのでしょうか。
 水面に浮かぶオニビシはヒシとよく似ているうえに、両者とも葉の大きさは変異が大きく、上から見ても区別はつきませんが、果実の形が違います。

Hisi120922_2     ヒシの果実

 上はヒシの果実です。 完熟した果実は、ゆでるとクリのような味わいで、もちろん食べることができます。 英語でも water chestnut(水中の栗)です。
 ちなみに、ヒシの形が「菱形」なのですが、ヒシのどの部分の形なのかについては、葉の形だとも、この果実の形だとも言われています。
 これに対して、下がオニビシの果実です。 ヒシの果実のトゲが2本なのに対し、オニビシの果実には4本のトゲがあります。 この刺々しさが「鬼」なのでしょう。

Onibisi120922_2     オニビシの果実

 なお、ヒシの仲間にはヒメビシというのもあって、これもトゲが4本なのですが、全体にオニビシより小さく、各地で個体群が消滅し、絶滅危惧種に指定されています。

 オニビシの果実も食べることはできるのですが、それより有名な?用途として、忍者が使う撒菱(まきびし)があります。 乾燥させたオニビシ(やヒメビシ)の実を竹筒に入れておき、逃げる時に追っ手が来る所などに撒き散らします。 ヒシの実を撒いてもトゲは地面と並行に左右に向くだけですが、オニビシのトゲは立体的に4方向を向いていますから、この実を撒けば、どれかのトゲは上を向いていることになり、歩けば足の裏に刺さります。

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 1枚目の写真にも4枚目の写真にも花が写っていますが、オニビシの花を拡大したのが上の写真です。 オニビシの果実のトゲも本来は果実が食べられてしまうことから守るためで、花は鬼どころか控えめな花です。 ガク片と花弁は各4枚、オシベも4本です。
 受粉を終えた花は花茎を曲げて水中に入り、葉の下で果実を形成していきますから、果実は上からは見えません。

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2012年10月 1日 (月)

クロタマゾウムシ

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 壁にくっついていたゾウムシです。 色や形からするとクロタマゾウムシのようです。 ネットで調べると、クロタマゾウムシの体長は8~10mmということですが、写真のゾウムシは5mmほどしかありません。 幼虫の時に十分食べることができないまま成虫になったのだと思いますが・・・。

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 以下、クロタマゾウムシについて少し書いておきます。
 口吻の長いゾウムシの多くは、その長い口吻を産卵時にも利用し、植物組織に穴を開け、そこに卵を産み付けます(例えばイヌビワシギゾウムシ)。 しかしタマゾウムシの仲間やタコゾウムシの仲間などは、幼虫が植物組織外で生活します。
 クロタマゾウムシの幼虫は粘液に覆われていて、キリの葉に張り付いて葉をかじっては移動することを繰り返します。 このため、キリの葉には小さな穴がいっぱい開くことになります。

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