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2012年9月 8日 (土)

ミドリババヤスデ種複合体の1種

Kishayasude120710_1

  (2012.7.10.堺自然ふれあいの森にて撮影)

 

 この記事のタイトルは、当初キシャヤスデとしていましたが、BITTZUさんから連絡いただきました。
 それによると、キシャヤスデ Parafontaria laminata armigera は現在はオビババヤスデ P. laminata のシノニムとされていますが、写真のものは模様が異なり、ミドリババヤスデ 種複合体 P. tonominea species complex の1種だろうということです(詳細は下のBITTZUさんからのコメントをご覧ください)。 この仲間の分類は未解決で、生化学的あるいは分子データが解決する可能性はあるものの、形態によらない分類は識別において実用的ではないため、現在は操作上ミドリババヤスデ単一の種類として扱うことになっている(Tanabe, 2002)ようです。
 ということで、上の写真はキシャヤスデではないようですが、知る人ぞ知る有名なキシャヤスデについて、少し書いておきます。 このヤスデが知られるようになったのは、1976年の秋の小海線での大発生からで、列車に轢かれたヤスデの体液で車輪がスリップし、列車が急勾配を登れなくなりました。 このことから、このヤスデは「汽車ヤスデ」と名付けられました。 このヤスデによる列車妨害は、その後も、福井県、岐阜県、長野県、山梨県などで報告されています。
 この大発生は、ほぼ8年の周期があることが分かってきました。 この大発生は、滋賀県から栃木県にわたる範囲で観察されています。
 キシャヤスデは、年1回の脱皮で、8年目に成虫になります。 幼虫のうちは土の中で暮らしていますが、成虫になると雌雄の出会いを求めて地表に出てきます。

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 ヤスデとムカデは、どちらも多足類で、互いによく似ています。 ムカデとヤスデの簡単な見分け方は、ムカデの仲間は体節に1対の脚があるのに対し、ヤスデの仲間では各体節に2対の脚があります。

Kishayasude120710_2

 肉食性のトビズムカデなどは、溶血性の毒を持ち、咬まれないようにしなければなりません。 しかしヤスデの場合は、上の写真のように頭部を拡大しても、牙は見当たりません。 ヤスデは腐食食性で、主な食べ物は森林中の落葉などで、森林の優れた分解者です。 外敵に襲われても、体を丸めて防衛します。 ただし、この時に出す臭液の毒性は強いようです。
 多足類の分類については、イッスンムカデのところでまとめておきました。

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コメント

こちらは、ミドリババヤスデ 種複合体 Parafontaria tonominea species complexの1種だと思います。オビババヤスデ P.laminataとは模様が異なります。

投稿: BITTZU | 2021年10月 4日 (月) 00時26分

BITTZUさん、ありがとうございました。
記事を書き改めるにあたり、一部貴ブログからも引用させていただきました。ご了承ください。

投稿: そよかぜ | 2021年10月 4日 (月) 09時25分

キシャヤスデについて、補足させてください。キシャヤスデP. laminata armigeraは現在、オビババヤスデP. laminataのシノニムとして扱われています。一般にヤスデは雄の生殖肢により分類が行われています。オビババヤスデとキシャヤスデは生殖肢による識別が困難で、体長や歩肢の基節の突起の有無といった微妙な差異によって識別されていました。従来の分類による狭義オビババヤスデはキシャヤスデを挟むように飛び地状に分布しているため、この分類が系統を反映しているとはいいがたい、と考えています。なお、大発生は従来のオビババヤスデで4年と6年、従来のキシャヤスデで8年の周期があることがわかっています。調査されていない地域も多いので、それ以外の発生周期の個体群もいるかもしれません。

投稿: BITTZU | 2021年10月 5日 (火) 21時14分

BITTZUさん、ありがとうございました。
ヤスデもなかなか奥が深くておもしろそうですね。

投稿: そよかぜ | 2021年10月12日 (火) 22時26分

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