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2012年9月25日 (火)

チャイロスズメバチ

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 写真は樹液に来ていたチャイロスズメバチです。 腹部が黒一色ですので、他のスズメバチとの見分けは簡単です。
 チャイロスズメバチは、国内では北海道や本州の低山帯の林に生息していますが、生息地は限られていて、個体数も少ないスズメバチです。 世界的に見ても、分布はアジアに限定され、分布域においてもやはり稀な種です。

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 分布地や個体数が少ないだけではなく、このチャイロスズメバチは、スズメバチ属では唯一、社会寄生をする蜂です。
 チャイロスズメバチの女王蜂が越冬から目覚めるのは、他のスズメバチに比較すると遅く、5~7月頃です。 目覚めたチャイロスズメバチは、キイロスズメバチやモンスズメバチの女王バチが営巣している所を襲い、これらの女王バチを殺してしまいます。 そして、生まれてくるキイロスズメバチモンスズメバチの働きバチを従え、自らの卵を産み、巣の拡張を行っていきます。
 スズメバチの仲間は、女王バチのみが越冬します。 春には働きバチがいないので、女王バチ単独で、1から巣作りを行い、産卵し、幼虫の世話をしなければなりません。 チャイロスズメバチはこの苦労を回避しようとしているわけです。 もっともそのためには寄生先の女王蜂に勝たなければななりませんが・・・。

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 ところで、チャイロスズメバチは、どうして攻撃されずに簡単にキイロスズメバチやモンスズメバチに近づくことができるのか。 ミツバチやアシナガバチなどの社会生活をする蜂では、体表にあるメチル側鎖のついた炭化水素で仲間同士の認識を行っているようですが、チャイロスズメバチはこの量がたいへん少ないとのことです。 ただし完全にゼロにして化学的に“透明”になっていないのは、チャイロスズメバチ間の認識に必要であるるからではないかと考えられています。
 もうひとつおもしろいのは、このチャイロスズメバチの炭化水素組成が、ヒメスズメバチのそれによく似ているということです。 ヒメスズメバチは、アシナガバチの巣から幼虫と蛹を奪い取り、自らの幼虫に与えるということをします。 ヒメスズメバチも、やはり攻撃される引き金となる物質を少なくしているのでしょう。


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コメント

これまた凄い生態を持ったスズメバチがいるんですねぇ。初めて知りました。

ということは、チャイロスズメバチが寄生したばかりの巣では、生まれたばかりのチャイロスズメバチの働き蜂と、女王蜂が入れ替わったことに気付かないキイロスズメバチの働き蜂が、一緒になって巣を維持していることになるんですか。

投稿: kanageohis1964 | 2012年9月26日 (水) 00時50分

写真は樹液を吸いに来ているだけで、巣はどこにあるのか分からず、見ることはできませんでした。 しかし、乗っ取られた方の働きバチが死に絶えるまでは、2種類の働きバチが出入りする変な巣のようですよ。

投稿: そよかぜ | 2012年9月26日 (水) 23時19分

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