ハイイロチョッキリの卵
台風が来たわけでも無いのにコナラの枝先がたくさん落ちている場所がありました。
よく見ると、落ちている枝には、数枚の葉に、必ずドングリが1つついています。 それに枝の断面は、折れたのではなく、切られたような断面です(下の写真)。 下は上とは別の枝ですが、状況はとてもよく似ています。(写真は2枚とも、枝の断面にピントを合わせています。)
これはハイイロチョッキリのしわざにちがいありません。 ハイイロチョッキリはドングリに産卵し、幼虫はドングリを食べて成長します。
切り落とされた枝についていたドングリを調べてみると、産卵の跡と思われる小さな穴があります。
ドングリの殻斗(=いわゆる「お椀」)から出ている部分は、内部を守るために表面は硬くなっています。 しかし硬いと成長はできません。 ドングリが成長する柔らかい部分は殻斗で保護しています。 ハイイロチョッキリが狙う場所は、この殻斗の縁、つまりドングリの表面がまだ柔らかく、殻斗の厚みの薄い部分です。
上の写真で、殻斗に覆われていた部分は緑色が薄くなって黄色っぽくなっています。 その緑色から黄色になった所に穴が開けられています。
上は穴が開けられていた場所の断面です。 ドングリの殻(果皮)と種子との間にある隙間は断面を作る時にできたものです。
穴はハイイロチョッキリが口吻で開けたものですから、穴の底は平らになっています。 その穴の底に卵が見えます。
この後、卵から孵った幼虫はドングリを食べて育ち、秋に老熟幼虫がドングリから出て土に潜り、土中で越冬し、蛹化は年を越してからになります。
ところで、なぜハイイロチョッキリは、産卵したドングリのついている枝を切り落とすのでしょうか。 枝を切り離すと、コナラの木からドングリへの栄養の補給を断つことになります。 幼虫が食べるドングリへの物質の補給を断ってしまうのはマイナスのようにも思えますが・・・。
植物は組織を食べられたり傷つけられると、組織を食べる幼虫の成長を阻害する物質など、組織を守るための物質を生産します。 枝を切り離してしまえば、この阻害物質生産に必要な原料も生産に使うエネルギー源も断ってしまうことになります。
オトシブミの仲間で、作った揺籃を切り離すのも、これと同じ理由でしょう。 チョッキリの仲間とオトシブミの仲間とは、きわめて近い関係にあります。
| 固定リンク
「昆虫08 甲虫」カテゴリの記事
- アオバネサルハムシ(2014.07.07)
- マツノシラホシゾウムシ(2014.06.28)
- アリモドキ科の一種(2014.06.27)
- センノキカミキリ(2014.06.21)
- ヤツメカミキリ(2014.06.10)
コメント
こんにちは。これは参考になることを教えていただきました。こういう習性を受け継いでいるのも面白いですね。
投稿: kanageohis1964 | 2012年9月21日 (金) 23時07分
本能による行動というのは、ほんとうにおもしろいものですね。
この場合も植物と昆虫との“互いを意識した”進化があります。
ハイイロチョッキリの“作戦”は、結果的にドングリが大きくなったこの時期にしか産卵できないという結果を招いています。
投稿: そよかぜ | 2012年9月22日 (土) 23時16分