サネカズラ
古くから親しまれてきたサネカズラ、百人一首にも、三条右大臣の歌、
名にし負はば 逢坂山のさねかづら 人に知られで くるよしもがな
が入っています。 昔はこのツルから出る粘液を整髪料に使ったため、ビナンカズラの別名もあります。
このサネカズラの花は8月です。 多くは雌雄異株ですが、下に載せた雌花は、同じツルに雄花が咲いていて、雌雄同株でした。
下は雄花です。
写真のように、ガクと花弁がはっきりと区別できません。 花被片は外側から内側へ次第に大きくなります。
上は下向きに咲いている雄花を下から見たものです。 といっても、一般的な花とはかなりイメージが違っていて、オシベがどうなっているのか、よく分かりません。
じつは球形の花床の表面全面にたくさんのオシベの葯が張り付いています。葯は葯隔が広くて赤く、その両側に少し上に反り返った小さな葯室がついています。
下は雄花の断面です。
雌花は雄花より少なく、きれいに咲いている花に出会えませんでした。 下は花被片が落ちてしまった雌花ですが、これに雄花と同様の花被片がついたのが雌花だと思ってください。 やはり球形の花床の表面にたくさんのメシベが張り付いています。 茶色の部分が柱頭ですが、これは若い花では白色です。
雌花ではこの後、それぞれのメシベが独立して果実になっていきます。 つまり、花時よりも膨れた球形の花床の表面に、たくさんの球形の果実が付くことになります(下の写真)。
このサネカズラはマツブサ科に分類されていますが、このマツブサ科は原始的な被子植物とされています。 サネカズラの花でも、上に書いたように、ガク片と花弁の違いがはっきりしていない、オシベもメシベも整理されていない(=たくさんある)、などの原始的と考えられる形質が見られます。
なお、上の実の写真の球形の花床を細長く引き伸ばし、赤い果実を黒い色にしたものが、同じマツブサ科のマツブサの実に相当すると考えることができます。
| 固定リンク
コメント