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2012年9月30日 (日)

ホタルイ

 ホタルイの名前はホタルのいるような水辺に生えるイグサという意味でしょうか。 ただし、ホタルイはイグサ科ではなく、カヤツリグサ科に分類されています。

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 ホタルイは地下茎を短く伸ばしながら、たくさんの花茎を伸ばします。 花茎の途中に数個の小穂がついているようですが、小穂は花茎の先端についていて、その先は苞です。

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 葉は花茎の基部の鞘になっています。 上は1本の花茎を引き抜いたものですが、右下の白い部分が鞘に覆われていた部分で、写真にはもう1枚、鞘になった葉が花茎に密着して写っています。

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 花茎の断面を作ってみました(上の写真)。 カヤツリグサ科の茎の断面は三角形であるものも多いのですが、ホタルイの花茎は、陵のために多角形のようになりますが、基本的には円形と言っていいでしょう。
 花茎の内部はスポンジ状になっています。

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 上でホタルイはイグサ科ではなくカヤツリグサ科だと書きました。 たしかに姿はイグサ科の植物に似ているのですが、イグサ科の植物とは花のつくりが違います。 イグサ科の花は6枚の花被片を持っていますが、カヤツリグサ科では1枚の鱗片に覆われているだけの花に退化することで、たくさんの花を重ねるようにしてつけています。
 鱗片からはオシベやメシベの柱頭が外に出ています。 新しい柱頭は白い色をしていますが、古い柱頭は褐色になっています。 1つの花のオシベは3本、メシベの柱頭は3裂しています。 なお、ホタルイに似たイヌホタルイの柱頭は2裂です。

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写真等の追加について

・ 2012年6月24日 (日)のツチアケビの記事に、ツチアケビの実の写真を追加しました。

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2012年9月29日 (土)

ヒラアシキバチ

 ハチの進化を見た場合、原始的なハチの幼虫の餌は植物組織です。 つまり葉を食べるハバチや材を食べるキバチなどの仲間です。
 キバチ科は針葉樹を利用するキバチ亜科と広葉樹を利用するヒラアシキバチ亜科に分けられます。 ヒラアシキバチ亜科のヒラアシキバチは、卵を枯れたエノキの辺材部に産み付け、幼虫は辺材を食べて育ち、材の中で羽化した成虫は幹に穴を開けて出てきます。
 そんな知識が思い込ませるのでしょうか、ヒラアシキバチの顔からは、アシナガバチやスズメバチなどの狩蜂の顔の獰猛さは感じられず、私には穏やかな顔に思えました。

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 そんなヒラアシキバチの産卵に出会いました。

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 硬い木に産卵管を差し込むのですから、たいへんなようです。 体を左右にねじりながら、徐々に産卵管を幹に差し込んでいきます。 上の写真で、腹部の中央付近から出ているように見える黒いものが産卵管で、腹部の端から後ろに突き出ているのは、産卵管をしまっておく産卵管鞘です。
 産卵管は、ゆっくりと錐をもむように差し込まれていきます。 産卵管を差し込んだ所からは木屑がこぼれ出ています(下の写真)。

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 当日は何頭かのヒラアシキバチの産卵を見ましたが、そのうちの1頭は羽化したばかりのようで、体には木屑がついていて、まだ飛び立つこともできないようでした(こちら)。 しばらく見ていると、そのヒラアシキバチが産卵管を幹に差し込みはじめましたが、周囲にはオス(産卵管鞘は無いはずです)らしき姿は見当たりませんでした。
 じつはヒラアシキバチのオスはおらず( この点についての詳細はこちら )、ヒラアシキバチは産雌性単為生殖を行っているのだと考えられています。

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 ヒラアシキバチが産卵している枯れたエノキには、産卵管が差し込まれたままちぎれた腹部があちこちにたくさん残されています(上の写真)。 これはどのような理由によるものなのでしょうか。 産卵途中で敵に襲われたのでしょうか。 それとも産卵で力尽きて死んでしまった体が、その一部を残して落下してしまったのでしょうか。 古いものでは産卵管だけが残っている場合もありますが、新しいもののほとんどが、産卵管の位置から後ろが残されているのですが、このことは何を意味しているのでしょうか。

 ところで、オオホシオナガバチやエゾオナガバチタカチホヒラタタマバチなどの幼虫は、このヒラアシキバチの幼虫に寄生することを前に書きました。 つまりこれらの蜂もヒラアシキバチも同じ木に産卵しているのですが、その枯れたエノキにはミダレアミタケというキノコが生えています。

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 上の写真に写っている蜂はエゾオナガバチですが、たくさん生えているキノコがミダレアミタケです。 このミダレアミタケは、ヒラアシキバチが運んできた胞子から育ったものと考えられています。
 ヒラアシキバチの産卵管の付け根には1対の菌嚢(きんのう)があり、その中にはミダレアミタケの胞子が入っています。 近くにはミューカスと呼ばれる粘液の入った袋もあり、産卵時には同時に菌嚢に貯えた胞子を接種します。 胞子から発芽したミダレアミタケの菌糸は材を分解し、ヒラアシキバチの幼虫が利用しやすくしてくれます。 蜂と菌の共生です。

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2012年9月28日 (金)

オオオナモミ

 下は4月初旬に撮ったオオオナモミですが、オオオナモミは、いわゆるひっつき虫の代表と言ってもいいような存在です。

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 そのオオオナモミの花は9月頃から咲きはじめます。 といっても小さな花ですので、咲いていても気づかない人も多いでしょうが・・・。

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 上が咲いている状態です。

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 上は花の部分を拡大したものです。 オオオナモミは風媒花で雌雄異花です。 キク科ですので、複数の花(小花)が集まって1つの花のようになります(頭状花序=頭花)。

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 上は雄頭花を拡大したものです。 雄頭花ではたくさんの筒状花が球形に集まっています。 1つの雄小花(ほんとうの花)は5裂した花冠から、束になった5本のオシベの花糸だけを外に出しています。

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 上は雌頭花の断面です。 雌頭花は、たった2つの小花からなります。 総苞片(複数の小花からなるグループを取り囲む複数の苞)は先の曲がったトゲ状で、その基部は合着して壺状になり、その中に2つの雌小花が入っています。 雌小花には花冠がなく、クチバシ状になった花冠の先端から2裂した花柱だけを外に出します。
 この後果実になる時は、総苞全体が2つの果実を包み込んだ果苞となります(下の写真)。

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 オオオナモミは北アメリカ原産の帰化植物で、日本では1929年に岡山県で最初に記録されています。 現在では従来からあったオナモミにとってかわる勢いで、外来生物法にもとづき、要注意外来生物に指定されています。

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2012年9月27日 (木)

ハギメンガタカスミカメ

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 前にメンガタカスミカメについて書きましたが、今回はそれと同属のハギメンガタカスミカメです。
 両者は互いによく似ていますが、ハギメンガタカスミカメの「面形」つまり前胸背の目玉模様は、はっきりせず、よく見ないと分かりません。
 ハギメンガタカスミカメの幼虫は、名前のとおり、萩の汁を吸って育つのですが、成虫は萩にいるとは限りません。 写真の成虫がいるのも、萩の葉ではありません。

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2012年9月26日 (水)

ミヤギノハギ・ニシキハギ

 萩の美しい季節です。 今日はよく植えられている栽培種の萩を2種、載せることにします。

● ミヤギノハギ

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 ミヤギノハギは、本州中部以北に自生するケハギから作られた園芸種です。 枝先は垂れ下がり、葉は表面は無毛で、裏面には伏毛があります。
 花は紫紅色で、8~10月頃に咲きます。

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● ニシキハギ

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 ニシキハギは野生種のビッチュウヤマハギが他の種と交雑して生じたものと考えられています。 枝先はあまり垂れ下がりません。 葉は両面に毛があるのが良い特徴ですが、ルーペがないと分からないような毛です。
 ニシキハギを漢字で書くと錦萩ですが、二色萩と言いたくなるような花で、蝶弁と翼弁は色濃く、竜骨弁の色は淡いのが普通です。

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2012年9月25日 (火)

チャイロスズメバチ

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 写真は樹液に来ていたチャイロスズメバチです。 腹部が黒一色ですので、他のスズメバチとの見分けは簡単です。
 チャイロスズメバチは、国内では北海道や本州の低山帯の林に生息していますが、生息地は限られていて、個体数も少ないスズメバチです。 世界的に見ても、分布はアジアに限定され、分布域においてもやはり稀な種です。

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 分布地や個体数が少ないだけではなく、このチャイロスズメバチは、スズメバチ属では唯一、社会寄生をする蜂です。
 チャイロスズメバチの女王蜂が越冬から目覚めるのは、他のスズメバチに比較すると遅く、5~7月頃です。 目覚めたチャイロスズメバチは、キイロスズメバチやモンスズメバチの女王バチが営巣している所を襲い、これらの女王バチを殺してしまいます。 そして、生まれてくるキイロスズメバチモンスズメバチの働きバチを従え、自らの卵を産み、巣の拡張を行っていきます。
 スズメバチの仲間は、女王バチのみが越冬します。 春には働きバチがいないので、女王バチ単独で、1から巣作りを行い、産卵し、幼虫の世話をしなければなりません。 チャイロスズメバチはこの苦労を回避しようとしているわけです。 もっともそのためには寄生先の女王蜂に勝たなければななりませんが・・・。

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 ところで、チャイロスズメバチは、どうして攻撃されずに簡単にキイロスズメバチやモンスズメバチに近づくことができるのか。 ミツバチやアシナガバチなどの社会生活をする蜂では、体表にあるメチル側鎖のついた炭化水素で仲間同士の認識を行っているようですが、チャイロスズメバチはこの量がたいへん少ないとのことです。 ただし完全にゼロにして化学的に“透明”になっていないのは、チャイロスズメバチ間の認識に必要であるるからではないかと考えられています。
 もうひとつおもしろいのは、このチャイロスズメバチの炭化水素組成が、ヒメスズメバチのそれによく似ているということです。 ヒメスズメバチは、アシナガバチの巣から幼虫と蛹を奪い取り、自らの幼虫に与えるということをします。 ヒメスズメバチも、やはり攻撃される引き金となる物質を少なくしているのでしょう。


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2012年9月24日 (月)

ウスバキトンボ

 大阪付近ではお盆の頃からウスバキトンボの群が飛んでいるのをあちこちで見かけます。 ちょっとした草原などで群で飛び続けているのは、たいていはこのウスバキトンボです。

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 ウスバキトンボは、気温のせいなのか餌不足のためなのか、日本の冬を越せる場所は、沖縄や小笠原などに限られます。 しかし、今全国的に見られているウスバキトンボが南下することは確認されていません。 冬を越せないウスバキトンボは全て死んでしまうものと考えられています。

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 では、今飛んでいるウスバキトンボはどこから来たのか。 ウスバキトンボは毎年、南からの北上を繰り返しているのだと考えられています。 ウスバキトンボが見られるのは、鹿児島県では3月下旬から、高知県では4月上旬、熊本県や千葉県では5月上旬というふうに南方や海岸沿いの地方ほど早く見られ、中部山岳地帯や東北地方では7~8月になり、9月には北海道の北の端にまで達します。

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 上記の北上は世代交代を繰り返して行われます。 産み落とされた卵は数日で孵化し、早ければ1ヶ月ほどで成虫になります。 成虫の体は、頑丈ではありませんが軽く、翅は体に比較して大きく、長時間飛び続けることができます。

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2012年9月23日 (日)

ミズキンバイ

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 ミズキンバイはアカバナ科の多年生草本で、昨日のチョウジタデとは同じ属(Ludwigia)です。 チョウジタデ同様、史前帰化植物と考えられています。

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 花は花弁5枚の1日花です。

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 上は果実です。 この果実は成熟しても裂けず、このままの姿で落ち、土の中で果皮が腐って分解され、種子がこぼれ出ます。

 ミズキンバイは地面を這うように生育しながら根を出し、茎が折れると、そこから別個体として生育します。 このような生育パターンは、上を他の植物に覆われると光をめぐる競争に負けてしまいますが、水の氾濫や耕作などによる撹乱で他の植物がダメージを受ける時こそ仲間を増やすチャンスということになります。 しかし最近は、河川改修や農薬などの影響か、個体数が減ってしまい、絶滅危惧種となってしまいました。
 最近ではこのミズキンバイに替わるようにして、アメリカミズキンバイが増えてきています。

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2012年9月22日 (土)

チョウジタデ

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 チョウジタデは、湿地や休耕田などに生育するアカバナ科の1年草で、稲作の伝来と共に入ってきた史前帰化植物ではないかと言われています。
 水のあまり動かない沼地のような場所では、根が必要とする酸素が不足しがちですが、チョウジタデの根はスポンジ状で、そのような場所でもよく根を張ることができ、その根の外見がゴボウに似ているというので、タゴボウ(田牛蒡)の別名があります。

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 花は夏に咲き、径は5mmほどで、花弁・ガク裂片が4枚で、オシベは4本です。 しかし花弁・ガク裂片が5枚の花も多く混じり、この場合はオシベも5本になります(下の写真)。 時には花弁6枚の花もあります(いちばん下の写真)。

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 チョウジタデの名の「チョウジ」は、花後に2cmほどに伸びる果実の姿(下の写真)がスパイスに使われるチョウジ(=クローブ)に似ているところからで、「タデ」は、チョウジタデはタデ科ではないのですが、花の無い時期の全体の姿や特に葉の様子がタデの仲間に似ているからでしょう。

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 上の写真の果実は赤みを帯びていますが、これから秋が深まってくると全体が紅葉します。

 チョウジタデ(=タゴボウ)の茎の断面は四角形ですが、これによく似て同じ属の植物に、この茎の角が伸びたヒレタゴボウ(=アメリカミズキンバイ)があります。

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2012年9月21日 (金)

ハイイロチョッキリの卵

 台風が来たわけでも無いのにコナラの枝先がたくさん落ちている場所がありました。

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 よく見ると、落ちている枝には、数枚の葉に、必ずドングリが1つついています。 それに枝の断面は、折れたのではなく、切られたような断面です(下の写真)。 下は上とは別の枝ですが、状況はとてもよく似ています。(写真は2枚とも、枝の断面にピントを合わせています。)

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 これはハイイロチョッキリのしわざにちがいありません。 ハイイロチョッキリはドングリに産卵し、幼虫はドングリを食べて成長します。

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 切り落とされた枝についていたドングリを調べてみると、産卵の跡と思われる小さな穴があります。
 ドングリの殻斗(=いわゆる「お椀」)から出ている部分は、内部を守るために表面は硬くなっています。 しかし硬いと成長はできません。 ドングリが成長する柔らかい部分は殻斗で保護しています。 ハイイロチョッキリが狙う場所は、この殻斗の縁、つまりドングリの表面がまだ柔らかく、殻斗の厚みの薄い部分です。
 上の写真で、殻斗に覆われていた部分は緑色が薄くなって黄色っぽくなっています。 その緑色から黄色になった所に穴が開けられています。

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 上は穴が開けられていた場所の断面です。 ドングリの殻(果皮)と種子との間にある隙間は断面を作る時にできたものです。
 穴はハイイロチョッキリが口吻で開けたものですから、穴の底は平らになっています。 その穴の底に卵が見えます。
 この後、卵から孵った幼虫はドングリを食べて育ち、秋に老熟幼虫がドングリから出て土に潜り、土中で越冬し、蛹化は年を越してからになります。

 ところで、なぜハイイロチョッキリは、産卵したドングリのついている枝を切り落とすのでしょうか。 枝を切り離すと、コナラの木からドングリへの栄養の補給を断つことになります。 幼虫が食べるドングリへの物質の補給を断ってしまうのはマイナスのようにも思えますが・・・。
 植物は組織を食べられたり傷つけられると、組織を食べる幼虫の成長を阻害する物質など、組織を守るための物質を生産します。 枝を切り離してしまえば、この阻害物質生産に必要な原料も生産に使うエネルギー源も断ってしまうことになります。
 オトシブミの仲間で、作った揺籃を切り離すのも、これと同じ理由でしょう。 チョッキリの仲間とオトシブミの仲間とは、きわめて近い関係にあります。

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2012年9月20日 (木)

ムモンホソアシナガバチ

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 枯葉の下にムモンホソアシナガバチの巣がありました。 枯葉が屋根のようです。 トックリバチなどのドロバチの巣と違って、齧り取ってきた木の繊維と唾液を混ぜて作ったアシナガバチの仲間の巣は、ある程度の耐水性はあるのですが、それでもできるだけ雨には濡れない方がいいのでしょうね。 もちろん枯葉と枝との間は、ムモンアシナガバチがしっかり補強していて、枯葉が落ちてしまわないようにしてあります(下の写真)。
 巣の形はアシナガバチの種類によって少しずつ違います。 ムモンホソアシナガバチの巣は、柄が他の多くのアシナガバチの巣のように黒光りしておらず、あまり丈夫そうではありませんが、そのかわり太くなっています。 また独房の並べ方も、少し雑な感じがします。

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 ムモンホソアシナガバチはスズメバチ科ホソアシナガバチ属に分類されていて、低山や里山に分布し、林縁の低木の葉裏などに営巣します。 最盛期の働きバチの数は100頭位になるということですが、9月16日(15時頃)に撮った写真の巣では、写っている2頭と、もう1頭が写真の後に加わっただけでした。 巣の蓋も全くされていませんから、何らかの理由で新しく作られた巣なのでしょうし、まだ幼虫の世話も必要のない時期で、外出中の働きバチも多いのかもしれません。

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 ムモンアシナガバチは体長が1.5~2cmほどのほっそりした蜂ですが、攻撃性はやや強い方です。

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 カメラを近づけると、こちらを向いて翅を持ち上げました。 “飛んで攻撃するゾ”との意思表示でしょう。 これ以上は近づけません。

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 ホソアシナガバチ属には、このムモンホソアシナガバチによく似たヒメホソアシナガバチがいますが、ヒメホソアシナガバチの頭楯には黒っぽい縦線があります。

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2012年9月19日 (水)

ホソバヒメミソハギ

 昨日ミソハギについて書きましたが、日本には同じミソハギ科のヒメミソハギも分布しています。 ところがこのヒメミソハギを見ることは、近年とても少なくなり、替わって外来植物のホソバヒメミソハギを見ることが多くなりました。

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 上の写真は家の近くの田に生えているホソバヒメミソハギですが、このような田が近くに数箇所あります。
 ホソバヒメミソハギはアメリカ大陸原産の1年生植物で、最初の報告は長崎産のものについて1952年になされています。 当初は沖縄や九州などの温暖な地域のみに分布していましたが、現在は埼玉県以西で普通に見られるようになってきました。

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 茎の断面は四角形で、葉は細長く対生です。 葉の基部は両側に円く張り出して茎を抱いています。
 花期は夏~秋で、花は葉腋につきます。 花弁は4枚、オシベは4本です。

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 上の写真にはツボミも花も果実も写っています。 果実はほとんどガク筒に包まれていて、頂部のみ露出しています。

 日本在来のヒメミソハギは、花弁が小さく、葉の基部は張り出さず、果実は半分以上がガクより露出します。

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2012年9月18日 (火)

ミソハギ

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 盆花などによく使われるミソハギ、名前の由来は、禊(みそぎ)に使うハギに似た植物つまり禊萩からとも、溝に生える溝萩からとも言われています。

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 ミソハギはミソハギ科の多年草です。 葉は対生で、茎の断面は四角形です。 花はお盆の前後に咲きます。 花弁は6枚(上の写真では花弁が散って5枚以下になった花も見られます)、ガク片は水平に開く花弁の間から上に伸びだしていますが、このガク片の間には、横に張り出す付属体があります。

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 上はミソハギの花の中心部を拡大したものですが、メシベが長く伸び、その後にオシベがあります。 オシベの本数は、上の写真では重なっていてよく分かりませんが、緑色の花粉のオシベが6本あり、その奥に黄色い花粉のオシベが6本あります。
 この上の写真と2枚目の写真の花とを比較してみてください。 オシベとメシベの位置関係はどうですか?

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 上の写真のミソハギの花は、6本のオシベがいちばん前に出て、メシベはほぼ花弁やガクと同じ位置にあります。 この奥にはさらに6本のオシベがあるのですが、上の写真では写っていません。 この花は2枚目の写真と同じタイプの花です。
 じつは写真には撮れていないのですが、ミソハギの花には、長いオシベ-短いオシベ-メシベ の順に並ぶもうひとつのタイプの花があります。 つまりミソハギの花には、オシベとメシベの位置関係から、長花柱花、中花柱花、短花柱花の三つのタイプがあることになります。
 一般的に、このように同種内でオシベやメシベの長さが異なることをを「異型花柱性(=異形ずい性)」と呼び、このような花を「異形花柱花(=異形ずい花)」と呼んでいます。 特にミソハギのように三つのタイプがある場合は三異形花柱性と呼んでいます。
 このようなしくみは自家受粉を防ぐためだと考えられます。 一般的に、異形花柱花には自家不和合性があり、種子生産は異なるタイプの花の間でのみ可能であるとされています。

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2012年9月17日 (月)

タケフクロカイガラムシ

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 ササにタケフクロカイガラムシがついていました。 虫体は白い被覆物で覆われています。 前にも書きましたが、カイガラムシが摂取する篩管液は栄養素的には著しく糖に偏っていますので、この虫体被覆物は過剰な糖を処理する意味もあります。 また、傍にヒメアリがいますが、フクロカイガラムシも、甘露のようなものも分泌しているのかもしれません。
 なぜ「フクロ」カイガラムシという名なのかというと、虫体が袋状になっているからです。 これは「殻のう」と呼ばれていますが、割ってみると、たくさんの橙色の卵が入っていました(下の写真)。 もう少しすれば幼虫になるのでしょう。 このあたりの様子はイセリアカイガラムシなどともよく似ています。

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2012年9月16日 (日)

ミチヤナギ

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 ミチヤナギは適度に水分を含んだ路傍などに生育するタデ科の1年草です。 茎は少し地を這った後に立ち上がり、高さは30cmほどになります。

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 イヌタデやサクラタデなど「○○タデ」と呼ばれる植物とは見かけはかなり違いますが、同じ属(Polygonum)で、さや状托葉を持つことや、花被片はガク片のみで花弁が無いことなどはよく似ています。 ただ花の数が少ないので見かけが異なると考えればいいのでしょう。

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 花はは5~10月頃に葉腋につきます。 花被片(ガク片)は縁が白色または紅色を帯び、中央部は緑色をしています。 オシベは6~8本です。

 近年、ヨーロッパ原産の帰化種であるハイミチヤナギが増えてきているようです。 ハイミチヤナギは、地面を這い、節の間が短くて葉も小さいので、結果的に花が目立ちます。
 また、海岸に生えるアキノミチヤナギはこちらに載せています。

 2枚目の写真で、ミチヤナギの葉が食べられていて、葉の上には糞が落ちていますが、その犯人が左端の方に写っているのを気づかれたでしょうか。
 犯人はハグロハバチ(羽黒葉蜂)というハチの一種の幼虫です。 下にピントのあった写真を載せておきます。

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 なお、このハグロハバチの幼虫は特にミチヤナギが好物だというわけではなく、いろんな植物を食べます。

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2012年9月15日 (土)

ヒメナガカメムシ・ブチヒゲヘリカメムシ

 ヒメムカシヨモギに来ていた小さなカメムシたちです。 カメムシたちの狙いは、花が終わってすぐの、まだ液状の胚乳だと思います。

● セスジヒメナガカメムシ
 ナガカメムシ科 ヒメナガカメムシ亜科

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 体長は4~5mm、ヒメナガカメムシの小楯板は側縁を除き全体的に黒色となるのに対し、セスジヒメナガカメムシの小楯板はT字状の黒色紋が見られます。

● ブチヒゲヘリカメムシ
  ヒメヘリカメムシ科

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 体長は7mm前後、体色には変異があるようです。

 ヒメムカシヨモギには下のようなのも来ていました。

Himekamenokotentou120905_1  ヒメカメノコテントウ

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2012年9月14日 (金)

ヒメムカシヨモギ

 いたって普通に見られる植物で、普通すぎて今まできっちり見ようとしなかったのですが、そろそろ登場させることにします。 詳しく見ることになったきっかけは、小さなカメムシがいろいろいたからですが・・・。
 ヒメムカシヨモギは1867年頃に入ってきたと考えられる帰化植物です。 1868年が明治元年、帰化後に急速に広まったようで、御維新草、世代わり草などとも呼ばれていたようです。 各地の路傍、放棄畑、荒れ地などに見られ、外来生物法で要注意外来生物に指定されています。

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 ヒメムカシヨモギは秋に発芽し、ロゼットで冬越し、春から背が高くなり、8月に花を咲かせる2年草です。 茎の高さは80~180cmほどになり、花を咲かせる頃になると横枝を伸ばし、大きな円錐形の花序を作り、小さな頭花をたくさんつけます。

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 茎には立った荒い長毛が生えています。 葉にも縁や裏の主脈に同様の長毛が見られます。 ただし、この主脈の長毛は無い場合もあるようです。
 ヒメムカシヨモギと似た植物にオオアレチノギクがあるのですが、オオアレチノギクの葉の裏は、全面に短毛が生えています。

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 頭花は長さが5mmほどの小さな花です。 もちろんキク科ですので、この頭花は、たくさんの本当の花(小花)が集まってできています。 細かくなりますが、総苞片の背に一列の毛があるのも、特徴のひとつです。
 ヒメムカシヨモギの頭花には、白い舌状花がはっきりと確認できますが、よく似たオオアレチノギクの頭花には明瞭な舌状花はありません。

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2012年9月13日 (木)

トサカグンバイ

 ネジキの葉に小さな白い斑がいっぱい。 これは何かに汁を吸われた跡です。

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 葉の裏を見ると、トサカグンバイがいました。

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 トサカグンバイはツツジ科のアセビやネジキなどにつくグンバイムシの仲間です。 他のグンバイムシと比較した場合の特徴的な点を挙げると・・
   黒い模様が明瞭
   前胸背板に黒い網目模様がある
   翼突起は発達しない
   前突起が発達
 特に横から見ると(下の写真)、前突起が大きく膨らんでいることが分かります。 これが和名の由来にもなっているのでしょう。

Tosakagunbai120909_2

 2枚目の写真にも写っていますが、脱皮後の抜け殻もたくさんありました(下の写真)。 幼虫はこんなにトゲがたくさん生えているんですね。

Tosakagunbai120909_3

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2012年9月12日 (水)

サネカズラ

 古くから親しまれてきたサネカズラ、百人一首にも、三条右大臣の歌、
   名にし負はば 逢坂山のさねかづら 人に知られで くるよしもがな
が入っています。 昔はこのツルから出る粘液を整髪料に使ったため、ビナンカズラの別名もあります。

 このサネカズラの花は8月です。 多くは雌雄異株ですが、下に載せた雌花は、同じツルに雄花が咲いていて、雌雄同株でした。

 下は雄花です。

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 写真のように、ガクと花弁がはっきりと区別できません。 花被片は外側から内側へ次第に大きくなります。

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 上は下向きに咲いている雄花を下から見たものです。 といっても、一般的な花とはかなりイメージが違っていて、オシベがどうなっているのか、よく分かりません。
 じつは球形の花床の表面全面にたくさんのオシベの葯が張り付いています。葯は葯隔が広くて赤く、その両側に少し上に反り返った小さな葯室がついています。
 下は雄花の断面です。

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 雌花は雄花より少なく、きれいに咲いている花に出会えませんでした。 下は花被片が落ちてしまった雌花ですが、これに雄花と同様の花被片がついたのが雌花だと思ってください。 やはり球形の花床の表面にたくさんのメシベが張り付いています。 茶色の部分が柱頭ですが、これは若い花では白色です。

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 雌花ではこの後、それぞれのメシベが独立して果実になっていきます。 つまり、花時よりも膨れた球形の花床の表面に、たくさんの球形の果実が付くことになります(下の写真)。

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 このサネカズラはマツブサ科に分類されていますが、このマツブサ科は原始的な被子植物とされています。 サネカズラの花でも、上に書いたように、ガク片と花弁の違いがはっきりしていない、オシベもメシベも整理されていない(=たくさんある)、などの原始的と考えられる形質が見られます。
 なお、上の実の写真の球形の花床を細長く引き伸ばし、赤い果実を黒い色にしたものが、同じマツブサ科のマツブサの実に相当すると考えることができます。

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2012年9月11日 (火)

オオホシオナガバチのオス

 今年の6月2日に撮ったオオホシオナガバチとエゾオナガバチの産卵の様子を、6月3日に載せました(こちら)。
 その後も気になって、同じ場所に、6月10日、7月28日、9月1日に、様子を見に行きました。 6月10日は、オオホシもエゾも、2日の半数程度に減ってはいましたが、産卵していました。 7月28日は6月2日の1割ほどの数になっていましたが、オオホシの産卵行動を見ることができました。 9月1日には6月2日の3割程度のオオホシの産卵を観察することができました。 つまり、3ヶ月に4度行ったのですが、数の増減はあるものの、いつも産卵行動が観察できたことになります。
 これはどのように考えればいいのでしょうか。 オオホシは材の中にいるヒラアシキバチの幼虫に寄生すると考えられますが、ヒラアシキバチは年1化性で、9月中旬から10月に羽化します。 ヒラアシキバチの幼虫が蛹になるのはいつ頃なのでしょうか。 ヒラアシキバチ以外の幼虫にも寄生しているのでしょうか。

Oohosionagabachi120901_3    オオホシオナガバチの産卵行動  2012.9.1.撮影

 一方、オスバチは、6月2日と10日には、いることは確認したのですが、時々飛んでいるのを見る程度で、写真に記録することはできませんでした。 それが9月1日には、メスとほぼ同数のオスバチが集まっていました。 下はそのうちの1頭です。 傍にいるメスバチは全てオオホシオナガバチでしたから、このオスバチも、オオホシオナガバチのオスだと思います。

Oohosionagabachi120901_1

 下の写真では5頭のオスが集まっていて、彼らの関心は1点に集まっているようです。 そして1頭の腹部が幹に差し込まれようとしています。

Oohosionagabachi120901_2

 同様な様子はおちゃたてむしさんのブログに載せられていて、枯れ木の中で羽化したメスが外界に向かって脱出口を貫通させた瞬間に、そのメスと交尾しようと、オスが腹部を脱出口に差し込んでいます。
 私の写真の場合は、すこし高い位置でしたので、脱出口の様子は分かりませんが、しばらく見ていてもこのままでしたので、脱出口はまだ開いておらず、開くであろう位置に腹部の先端を当てて待ち構えているのかもしれません。
 おちゃたてむしさんの上記の観察日は2012年の6月13日で、同様の観察は2010年の6月2日にもされています。 これに対して、上の私の写真は、9月1日の撮影です。
 おちゃたてむしさんの撮っておられるのは、同じヒラアシキバチの幼虫に寄生するオナガバチの仲間ですが、オオホシオナガバチとは別種のようです。 メスの羽化の時期が種によって異なるのか、それとも両種とも年に何度か羽化しているのでしょうか。 前半に書いたように産卵期間が長いようですので、私は後者の可能性が高いように思います。

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2012年9月10日 (月)

セイバンモロコシ

 大型の単子葉類を続けます。 今日はイネ科のセイバンモロコシです。
 セイバンモロコシは、ユーラシア大陸の熱帯から亜熱帯に分布する多年草で、日本では1940年代に帰化していることが確認されています。 南方原産の植物らしく、暑くなると急激に成長し、高さは2m近くにもなります。
 一時は収量の多い牧草として喜ばれたこともあったようですが、若葉が青酸化合物を含むことがあり、現在は使われていません。

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 イネ科の葉は一般的に茎を抱く葉鞘と茎から離れて広がる葉身とからなります。 セイバンモロコシの葉は、大型のイネ科ということもあって、長い葉鞘を持ちます。 上の写真のaの葉の始まりは1の節からで、1~2が葉鞘、2から先が葉身です。
 また、これもイネ科の一般的な話として、葉鞘と葉身との境(2の位置)には葉舌と呼ばれる出っ張りがあり、この葉舌の様子が分類のひとつの着目点になります。 セイバンモロコシの葉舌は低く、長毛が生えています(下の写真)。

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 花序は枝が横に広がり、その先の方にたくさんの小穂をつけます(下の写真)。

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 下は小穂の集まりを拡大して撮ったものです。

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 1つの小穂から左右に出ているブラシのようなものは、2裂した柱頭です。 1つの花のオシベは3本あります。
 上の写真をよく見ると、ノギのある小穂とノギの無い小穂があります。 が、小穂が互いにくっつきあって、どうなっているのかよく分かりません。 そこで、各小穂間を少し広げてみたのが下の写真です。 下の写真の小穂が上の写真に比べて色が濃いのは、光によく当たっていた側を撮ったからです。

Seibanmorokosi120905_1

 上の写真を見ると、1つの無柄の小穂と1~2の有柄の小穂がセットになっています。 無柄の小穂は両性で、ノギがあります。 有柄の小穂は、無柄の小穂よりほっそりとしていてノギは無く、オスの機能しかありません。

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2012年9月 9日 (日)

アブラガヤ

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 カヤと呼ばれている植物は、細長い葉と茎を地上から立てる植物のことで、分類学的にはイネ科とカヤツリグサ科が混じっています。
 アブラガヤはカヤツリグサ科で、その名の由来は、花穂が油色であるためだとか、花穂に油臭があるためだと言われています。 少し湿り気の多い場所に育ち、夏の終わり頃から、葉の間から花茎を伸ばし、高さは1mを超えることもよくあります。

Aburagaya120830_2

 花茎の先端や上部の節から花序が出ます。 花序は散房花序で、花序の先から出た細い柄は、その先でさらに多数の枝分かれをします。

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 小穂は長さ4~8mm、楕円形をしていて、ここにたくさんの花がつきます。 花は鱗片で保護されていて、その隙間からオシベやメシベが顔を出します。

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2012年9月 8日 (土)

ミドリババヤスデ種複合体の1種

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  (2012.7.10.堺自然ふれあいの森にて撮影)

 

 この記事のタイトルは、当初キシャヤスデとしていましたが、BITTZUさんから連絡いただきました。
 それによると、キシャヤスデ Parafontaria laminata armigera は現在はオビババヤスデ P. laminata のシノニムとされていますが、写真のものは模様が異なり、ミドリババヤスデ 種複合体 P. tonominea species complex の1種だろうということです(詳細は下のBITTZUさんからのコメントをご覧ください)。 この仲間の分類は未解決で、生化学的あるいは分子データが解決する可能性はあるものの、形態によらない分類は識別において実用的ではないため、現在は操作上ミドリババヤスデ単一の種類として扱うことになっている(Tanabe, 2002)ようです。
 ということで、上の写真はキシャヤスデではないようですが、知る人ぞ知る有名なキシャヤスデについて、少し書いておきます。 このヤスデが知られるようになったのは、1976年の秋の小海線での大発生からで、列車に轢かれたヤスデの体液で車輪がスリップし、列車が急勾配を登れなくなりました。 このことから、このヤスデは「汽車ヤスデ」と名付けられました。 このヤスデによる列車妨害は、その後も、福井県、岐阜県、長野県、山梨県などで報告されています。
 この大発生は、ほぼ8年の周期があることが分かってきました。 この大発生は、滋賀県から栃木県にわたる範囲で観察されています。
 キシャヤスデは、年1回の脱皮で、8年目に成虫になります。 幼虫のうちは土の中で暮らしていますが、成虫になると雌雄の出会いを求めて地表に出てきます。

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 ヤスデとムカデは、どちらも多足類で、互いによく似ています。 ムカデとヤスデの簡単な見分け方は、ムカデの仲間は体節に1対の脚があるのに対し、ヤスデの仲間では各体節に2対の脚があります。

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 肉食性のトビズムカデなどは、溶血性の毒を持ち、咬まれないようにしなければなりません。 しかしヤスデの場合は、上の写真のように頭部を拡大しても、牙は見当たりません。 ヤスデは腐食食性で、主な食べ物は森林中の落葉などで、森林の優れた分解者です。 外敵に襲われても、体を丸めて防衛します。 ただし、この時に出す臭液の毒性は強いようです。
 多足類の分類については、イッスンムカデのところでまとめておきました。

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2012年9月 7日 (金)

オトコエシの花陰で

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 たぶんコハナグモがキンモンガを捕え、食事中に、傍にいたカメムシの幼虫が、そのキンモンガの腹部に口吻を刺して体液を吸っているところだと思います。
 カメムシの種名は分からないまま放置していますが、体型からしてサシガメの仲間ではないでしょう。 つまり、ふだんは植物の汁を吸っているカメムシでも、チャンスさえあれば、栄養価の高い虫の体液を吸うこともあるのだ、と、おもしろく思いました。
 Hepotaさんから、写真のカメムシの幼虫は、口器が太いのでクチブトカメムシの仲間の幼虫ではないか、クチブトカメムシの仲間は主に肉食だとのコメントをいただきました。 調べてみると、カメムシ科にも肉食のものがいろいろいるようで、クチブトカメムシ類は主にイモムシなどの肉食で植物からも吸汁し、スコットカメムシやウシカメムシなどでは草食を主に肉食を交えるようです。

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 犠牲になっているのは、翅の裏から見ているので、キンモンガらしくありませんが、キンモンガであることは確認しています。

 この日はキンモンガをたくさん見ました。 葉にとまっている時などは前翅を少し下げて後翅との重なりが大きくなっていますが、吸蜜中のキンモンガは前翅と後翅の重なりがほとんど無く、まるで蝶のようです。

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2012年9月 6日 (木)

クロタマムシ

 クロタマムシの活動期は6月~9月、タマムシのような派手さはありませんが、光沢はあります。

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 飛んできて枝にぶつかって墜落、力強くて不器用な飛び方はタマムシそっくりです。

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 指を出すと、素直に登ってきてくれました。 上から見たのではよく分かりませんが、顔面にオレンジ色の模様があります。

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 腹板にもオレンジ色の斑紋があります。
 (以上、2012.8.30.岩湧山にて撮影)

 ネットで調べると、体色も、顔面にオレンジ色の模様の大きさも、腹板にもオレンジ色の斑紋の大きさも、かなり個体差があるようです。

 クロタマムシの幼虫は、アカマツやモミなどの材を食べて育ちます。

※ タマムシやクロタマムシとほぼ同じ大きさのクロマダラタマムシはこちらに載せています。

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2012年9月 5日 (水)

アマチャヅル

 アマチャヅルは林縁などに生育するウリ科の多年生ツル植物です。 葉をかむと、かすかに甘いのですが、それよりも、1977年に日本生薬学会で、アマチャヅルがオタネニンジン(薬用朝鮮人参)と同様の有効成分を有することが発表され、一時はブームになりました。

Amachazuru120830_1

 葉は互生する鳥足状複葉で、ヤブガラシに似ていますが、ヤブガラシよりも葉質は薄くて柔らかく、葉の表にも裏にも毛があり、手触りはヤブガラシの葉とはかなり違います。

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 上は葉の表の拡大で、葉脈に沿って短い毛が並び、葉脈とは無関係に長い毛が生えています。 また下は葉の裏の様子で、葉脈に沿って長い毛があります。

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 アマチャヅルの花は8月から9月に咲きます。 雌雄異株で、雄花雌花とも星状の小さな花ですが、拡大して見ると、なかなか趣のある花です。

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 上は若い雄花で、オシベ5本からの花粉はまだ出ていません。 深く5裂する花冠の先は長く伸びています。
 下は花粉を出し始めている雄花です。

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 近くを探したのですが、雌花は見つかりませんでした。 雌花にはオシベは無く、メシベが1本あります。

※ アマチャはアマチャヅルとは全く別の植物で、ガクアジサイの変種です。

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2012年9月 4日 (火)

オオシマカラスヨトウ

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 朽木の隙間に、腹の横縞模様からすると蜂らしきものがいました(上の写真)。 巣を作っているのか、幼虫の餌を狩っているのかと、そっと近づいてしばらく眺めていましたが、全く動きません。
 不思議に思いながら、そっと木の反対側に回ってみると・・・

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 めくれかかった樹皮に半ば隠れるように、蛾の姿が目に入りました。 蜂はこの蛾の何かを狙っているのか、それとも蜂と蛾は無関係か・・・ などと思いながら、この枯木の上や下を見ると、あちこちに同種の蛾がいます。

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 チラッと見える後翅の赤い色、シタバガの仲間かな、などと思いながら、樹皮をはがして蜂を調べる前に、まずは蛾をいろんな角度からと、撮り始めると、

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 腹部に見える縞模様。 蜂だと思っていたのも、この蛾でした。 正体はシタバガの仲間でもなく、オオシマカラスヨトウ(ヤガ科カラスヨトウ亜科)でした。

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 撮影中この蛾は、パッと動くことはあっても飛び立つことは無く、ほとんどじっとしていましたが、表に出ていた蛾も短い距離の移動を繰り返しながら、次第に樹皮の裏に入って行ってしまいました。
 おちゃたてむしさんへのYAMKENさんの話によれば、上記のようにオオシマカラスヨトウの成虫が今の時期に不活発なのは、夏眠状態にあるからだということです。 樹皮の下から出ていた個体もいたということは、そろそろ夏眠から目覚める時期だということでしょうか。

※ オオシマカラスヨトウ(かナンカイカラスヨトウ)の幼虫の写真は、こちらに載せています。

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2012年9月 3日 (月)

メンガタカスミカメ

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 上は堺自然ふれあいの森のイヌザンショウの花に来ていたメンガタカスミカメです。 「メンガタ」は、前胸背に目玉模様があることから、「面形」としたのでしょう。 また、「カスミカメ」は科の名称で、これまでも何種類かこのブログに載せてきましたが(下の「参考」)、「小さなカメムシ」を意味しているのでしょう。
 メンガタカスミカメの体長は7~8mmほどで、春から秋に見られ、それぞれの季節に咲く花によく来ています。 4節からなる触角の第1節にも細かい模様をちりばめるなど、派手さはありませんが、なかなか凝った模様です。

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 カメムシの仲間の多くは、以前は半翅目と呼ばれていたように、前翅は、根元側の硬い革質の部分と、その先の柔らかい膜質の部分とからなっています。 この革質の部分をもう少し詳しく見ると、外側の縁部と内側の爪状部(そうじょうぶ)に分けられますが、カスミカメの仲間では、革質部の先端近くに切れ込みがあり、その先の三角形の部分は楔状部(けつじょうぶ)と呼ばれています。 この楔状部は、膜質部といっしょになって下に折り曲げることが出来るようになっています。 カスミカメの仲間にも、種によって、よく折り曲げているものと、そうで無いものがいるのですが、私の会ったメンガタカスミカメは、いつも折り曲げていました。 折り曲げることにどのような意味があるのでしょうね。

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(参考)このブログでは、これまでに下のカスミカメの仲間を載せてきました。
 アカアシカスミカメ
 ウスモンミドリカスミカメ
 ケブカカスミカメ
 ケブカキベリナガカスミカメ
 コブヒゲカスミカメ

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2012年9月 2日 (日)

ヌスビトハギ

 この土日、大阪付近ではヌスビトハギの花盛りで、何種類かのコハナバチなどが訪れていました。

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 ヌスビトハギの葉は、長い葉柄を持つ三出複葉です。 花穂は長く、3~4mmほどの小さなピンクの花をたくさんつけます。

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 上は、咲いてまだ虫が訪れていない花を正面から撮ったものです。 メシベもオシベも隠されています。

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 小さな花には小さな虫が訪れます。 上はコハナバチの一種が隠された蜜を求めてヌスビトハギの花に頭を突っこんだところで・・・

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 コハナバチが蜜を吸い終わって顔を上げると、オシベとメシベが上に持ち上がっています(上の写真)。 なお、上2枚の写真は、黒っぽいコハナバチをはっきり撮るために、プラス側に露出補正していますので、ヌスビトハギの花は実際よりも白っぽく見えています。
 コハナバチの体には全身に毛が生えていて、そこに花粉がついています。(上の写真はクリックで拡大します。) コハナバチは同じ種類の花を訪れる傾向がありますから、コハナバチの体についている花粉は、他のヌスビトハギの花の花粉である確率が大です。
 メシベとオシベが持ち上がった時には、メシベの柱頭はコハナバチの体に既についていた花粉で受粉し、オシベはコハナバチの体に新しく花粉をつけたことでしょう。
 コハナバチの後脚には、体についた花粉が集められています。 この花粉は幼虫の餌とされます。

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 上はコハナバチが去った後の花を正面から撮ったものです。 2枚目の写真と比較してみてください。
 受粉した花は種子形成へと向かいます。 上の写真のヌスビトハギでは、まだ果実が確認できませんでしたので、下に過去に撮ったヌスビトハギの果実を載せておきます。

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 ヌスビトハギの名前は、この果実の形が盗人(ぬすびと)の足跡に似ているところからと言われています。 人の足跡の形とは似ていないようにも思えますが、牧野富太郎博士によれば、ちゃんとした(?)盗人は、足音を立てないように足裏の外側だけを地面に着けて歩くので、このような足跡になるのだそうです。 私も確かめてみましたが、足裏の外側だけで足音を立てずにそっと歩こうとすると、体が左右に揺れてうまく歩けません。 足腰が弱ってきているんですね・・・。

※ ヌスビトハギは変化性に富んだ種類で、下のような変種または別種があります。
 小葉の幅が広い ・・・ マルバヌスビトハギ
 葉が茎の下方に集まってつき、柄が長く小葉の幅は狭い ・・・ ヤブハギ
 葉が茎の下方に集まってつき、小葉は大きく、多毛 ・・・ ケヤブハギ

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2012年9月 1日 (土)

フジカンゾウ

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 フジカンゾウは、高さ50~150cmほどの、林内に生えるマメ科ヌスビトハギ属の多年草です。 葉は2~3対の小葉をもった奇数羽状複葉です。
 「フジ」は「富士」ではなく「藤」、つまり花が藤の花に似ているというのですが・・・。 「カンゾウ」は、ヤブカンゾウなどの「萱草」ではなく、葉が漢方薬として使用するマメ科の「甘草」に似ているというのですが、これも小葉の数は甘草の方がかなり多いのですが・・・。

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 草丈を見るとヌスビトハギよりはかなり大きいのですが、花を拡大してみると(上の写真)アレチヌスビトハギヌスビトハギなどによく似ていますし、果実(下の写真)を見ても、ヌスビトハギの果実によく似ています。 果実はヌスビトハギの果実同様、いわゆる「ひっつき虫」です。

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 果実ほどではありませんが、茎にもマジックテープのような毛が生えていて、指を押しつけると、粘液は無いはずなのに、指にくっつくような触感があります。

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