ヒカゲノカズラ
「カズラ」は「ツル植物」の意味です。 多くの植物は光合成を行うための器官(つまり“生産工場”)である葉を有利な位置に展開するために、葉を支える茎や幹を丈夫にしますが、茎や幹を発達させると、これらを構成する細胞による消費が大きくなります。 多くのツル植物は、他のものに巻きつくことにより、茎を細くして消費を少なくしながら、葉を上の方で展開しようとしています。 ところが、ヒカゲノカズラはツル性でありながら、他のものに頼って高い所をめざすつもりは毛頭無いようです。
ヒカゲノカズラはシダ植物です。 ツル性のシダ植物は種子植物のツル植物とは生き方が違うのかといえば、そうでもないようで、例えばカニクサもツル性のシダ植物ですが、ちゃんと(?)上をめざします。
ヒカゲノカズラの仲間は、みんなこのような生き方をしているわけでもありません。 化石植物になりますが、古生代に存在していたリンボク(鱗木)は、幹の直径は1m以上もあり、高さは30mに達するものもあったようです。
ヒカゲノカズラのこのような生き方は何を狙っているのか、なぜ高い所をめざそうとしないのか、いつも疑問に思います。
上で、ヒカゲノカズラはシダ植物だと書きましたが、上の写真のように、ウラジロやワラビなどとはかなり様子が違います。 シダ植物を大別すると小葉類と大葉類とに分かれますが、ヒカゲノカズラは前者に、ウラジロやワラビなどは後者に分類されます。
今の時期、ヒカゲノカズラは胞子を散布する時期になります。 さすがの地を這って生きるヒカゲノカズラも、胞子は風に乗せて遠くに飛ばさなければなりませんから、胞子を入れておく胞子のうをつける胞子のう穂を立ち上げ、その高さは10~20cmほどになります。
上は胞子のう穂を手で揺らしてみた時の様子です。 たくさんの胞子が飛んで行きます。
上はヒカゲノカズラの胞子のう穂の縦断面です。 胞子を入れておく胞子のうは、ウラジロやワラビなどでは大きな葉の裏にたくさんつきますが、ヒカゲノカズラでは胞子のう穂の鱗片の腋ごとに1つの胞子のうがつきます。
断面を作る時に出してしまった胞子がたくさん断面についています。
下は胞子のう穂の横断面です。 胞子のうの口が大きく開き、胞子は既に飛散してしまったようです。
ヒカゲノカズラは、乾燥しても、元の形や色を比較的長期間保ち続けます。 そのことと関係するのでしょうか、ヒカゲノカズラはあちこちで祭事に用いられているようです。 古事記では、アメノウズメが「日影を襷にかけ」天岩戸の前で踊ったとありますが、この「日影」はヒカゲノカズラだろうと考えられています。
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