ミョウガ
春の「みょうがたけ」に夏~秋の「花みょうが」、ミョウガの独特の香りは、薬味として、また天ぷらや味噌汁の具などの食材として、私たちを楽しませてくれます。
「みょうがたけ」はミョウガの若芽で、「花みょうが」はミョウガの花穂です。 ただし、ハナミョウガという名前の別の植物もありますので、注意が必要です。
ミョウガはショウガ科ショウガ属(Zingiber)の多年草です。 ミョウガの生えている所を見ると、自生しているように見える場所もあるのですが、染色体を調べてみると、5倍体であるために種子ができることは稀で、昔に大陸から持ち込まれて栽培されてきたものだと考えられています。
ミョウガの名前の由来も、大陸からショウガと共に持ち込まれた時、香りの強い方を「兄香(せのか)」、香りの弱い方を「妹香(めのか)」と呼び、後にセノカがショウガに、メノカがミョウガに転訛したとの説が有力です。
ミョウガに似た植物にヤブミョウガがあります。 たしかに葉だけを見ていると雰囲気は似ていますが、ミョウガの葉は2列互生である(下の写真)ことに注意すれば区別できます。
今の時期、ミョウガの根元に花を見ることができます(下の写真)。
花は地面から咲いているように見えますが、ほとんど地中に隠れた花穂から咲いています。 下が取り出した花穂で、咲いている花が1つと、しおれた花が3つついています。
ショウガ科の植物の花は特殊化していておもしろく、このブログでもこれまでにシュクシャやハナミョウガの花のつくりを載せてきました。 ショウガ科の花のつくりは、基本的には同じなのですが、シュクシャ、ハナミョウガ、ミョウガはそれぞれ属が別で、少しずつ違いますので、ミョウガの花のつくりも載せておきます。 単子葉植物ですので、花の基本数は3です。
ガク筒は花冠に密着していて、写真ではよく分かりません。 花冠は3裂しています。
いちばん特殊化の激しいのはオシベでしょう。 オシベは本来6本あるはずですが、花粉を出しているのはそのうちの1本です。 残りのオシベのうちの2本は退化して小さくなり、花冠の内側に隠れています。 そして、ミョウガの花の中でいちばん立派な花弁らしい唇弁も、オシベが変化したものです。 唇弁は3裂していて、中央の裂片が特に大きくなっています。
1本の花粉を出しているオシベは大きく、目立ちます。 一般的に、1本のオシベには、花粉を入れておく葯が左右1対あり、葯の間には葯隔と呼ばれる部分があります。 ミョウガの花粉を出しているオシベの葯隔は長く伸び、メシベの花柱を左右から挟みこんでいます。
ところで、ミョウガを食べ過ぎると物忘れがひどくなるとの俗信があります。 これは釈迦の弟子で物忘れのひどい者がいて、自分の名前を忘れないように首から名荷(みょうが)つまり名札をぶら下げていたという話に由来するもので、ミョウガ(漢字では茗荷)とは関係ありません。 それどころか、ミョウガの香り成分には集中力を増す効果があることが明らかになっています。
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