エントツドロバチ
エントツドロバチは、以前はオオカバフスジドロバチと呼ばれていましたが、最近ではこう呼ばれる方が多いようです。 この名前は、下に書くように、営巣習性を表した名前です。 ちなみにオオカバフスジドロバチの名前は、形態から来ていて、漢字で書けば「大樺斑条泥蜂」、つまり大きな(と言っても2cmたらず)樺色の斑条を持った泥蜂です。
ドロバチの仲間は泥を利用して巣を作り、卵を産んでおいて、その中に蛾などの幼虫を運び入れます。(狩りの様子はこちらに載せています。)
上のエントツドロバチの口周辺の土の色が他と少し違っています。 吸ってきた水を吐き出し、土を湿らせ、巣作りの材料とする土を掻き取ろうとしているようです。 取っているのは酸化鉄を含む黄色い粘土のようでした。
巣は下のような形をしています。 出入り口が下向きの煙突のようで、これがエントツドロバチの名の基になっています。
上の写真の巣、作っていたのは下の赤い円で示したところです。 横道にそれますが、この小杜神社は古事記を編纂した太安万侶を祭っている神社で、今年(2012年)は古事記が時の天皇に献上されてから1300年目にあたります(詳しくはこちらでどうぞ)。
下は大阪市にある長居植物園内で撮ったエントツドロバチです。
長居植物園の中に東屋が作られていて、その柱は石を積み重ねて隙間をセメントで埋めたようなつくりになっています。 上の写真は、この柱の上にいたエントツドロバチなのですが、この柱の内部には隙間があちこちにあるらしく、その隙間に巣を作り、外からは“煙突”だけが見えています(下の写真)。 このような“煙突”が柱のあちこちに見られ(写真はほんの一部です)、エントツドロバチのマンションのようになっていました。
エントツドロバチは古事記の時代とは比べものにならない昔から“煙突”を作り続けると同時に、人間が作った新しい環境にも柔軟に対応しているようです。
この立派な“煙突”は、何度も出入りするために作られています。 つまりエントツドロバチは、卵と餌を入れて蓋をしてしまうのではなく、幼虫がある程度成長するまで、継続的に餌を供給し続けます。
ミツバチなどのように、①複数世代の同居、②不妊カーストの存在、③共同育児が行われる、の3条件が揃っている場合は真社会性昆虫と呼ばれています。 エントツドロバチのように親が幼虫を育てるのは、亜社会性の段階だとされています。
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コメント
先日、ドロバチかな?っというのに出会いまして、エントツドロバチかもしれないっと教えていただきました、ひょっとして↑のような立派な煙突がそばにあったかもしれないっと思うと・・・
リンクお願いします。
投稿: わんちゃん | 2014年8月 5日 (火) 20時39分
わんちゃんの写真も巣材の土をかじり取っているところですから、きっと作りかけの巣が近くにあるんでしょうね。
リンクは了解です。
投稿: そよかぜ | 2014年8月 5日 (火) 23時34分