フカイドロバチ
フカイドロバチは地上の既存孔を利用し、土を使って巣を作ります。 幼虫の餌にするのは、メイガやハマキガなどの蛾類の幼虫です。
写真は長居植物園のハーブ園で撮りました。 エンジュの所でも書きましたが、人の目には美しく見える園芸的に改良された植物は、概して蜂たちには人気がありません。 野生に近い植物の方が蜂たちには好まれるようです。
ハーブの種類は、上2枚はオレガノ、下はサマーサボリです。
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フカイドロバチは地上の既存孔を利用し、土を使って巣を作ります。 幼虫の餌にするのは、メイガやハマキガなどの蛾類の幼虫です。
写真は長居植物園のハーブ園で撮りました。 エンジュの所でも書きましたが、人の目には美しく見える園芸的に改良された植物は、概して蜂たちには人気がありません。 野生に近い植物の方が蜂たちには好まれるようです。
ハーブの種類は、上2枚はオレガノ、下はサマーサボリです。
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ナニワトンボの名前は、最初に大阪で発見されたことによります。 未熟なオスやメスは黒と黄色を基調とした色をしていますが、成熟したオスは写真のように青い色になります。 分類学的には赤トンボの仲間になりますので、「青い赤トンボ」などと言われています。
このトンボは不思議な分布をしていて、見つかっているのは、瀬戸内式気候でため池の多いような所、具体的には、近畿二府四県と、三重、福井、岡山、広島、鳥取、香川、愛媛の各県に限られています。
ナニワトンボの生活史は次のように考えられています。 秋に産卵された卵は春に孵化し、7月頃に羽化します。 成虫は池の近くの林の中で隠れるように生活し、9月頃になると、成熟したオスは池に接する林の枝先などに止まってメスを待つようになります。
写真はちょうどこの時に撮ったもので、カメラを近づけて飛び立たれても、2~3m飛ぶだけで、元の場所か、その近くにとまります。
この後、林から出てきたメスと交尾し、産卵後は林の中に戻ります。 産卵はオスとメスがつながったまま、空中から水の無い所に卵をばら撒きます(連結打空産卵)。 これらのことと関係すると思われますが、ナニワトンボの生息地は、秋に水を抜くなどで土が現れ、ヤゴの時期にはヤゴの育つ浅瀬ができる池で、池と林が接している所に限られています。 もちろんナニワトンボは人間がため池の水を抜いたりする作業を行う以前から存在していたわけですが、元は夏に日照りで水位が低下することに適応していたのではないかと考えられます。 またこのことと、分布が瀬戸内式気候の場所であることと関係するのかもしれません。
上記のように生育環境が限られているからか、ナニワトンボはレッドデータブック(2007年度版)の絶滅危惧Ⅱ類にリストアップされています。
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ナミモンクモバチは、幼虫の餌として、コガネグモ科などの網を張るクモを狩る狩蜂です。 そのナミモンクモバチのメスがヤブガラシの蜜を求めて来ていました(堺自然ふれあいの森にて撮影)。 なお、ナミモンクモバチはメスとオスで模様が大きく異なり、オスは黒地に白い模様です(こちら)。
この蜂の属するクモバチ科は、以前はベッコウバチ科と呼んでいました。 しかしこの科の蜂で鼈甲色をしているのは、ベッコウバチなどほんのわずかで、またこのグループの蜂は、一部の労働寄生する蜂を除いて、全ての蜂がクモを狩ることから、科の名称が変更されました。 それに伴い、ベッコウバチはベッコウクモバチになり、ナミモンクモバチも以前のモンベッコウという名前から変りました。
クモはよく知られているように、虫などを捕えて餌にしています。 そのクモを餌にするのですから、上には上があるものです。
クモを狙う蜂はクモバチ科の蜂だけではありません。 ギングチバチ科ケラトリバチ亜科のクモカリバチの仲間や、ヒメバチ科のクモヒメバチの仲間も、クモを幼虫の餌にしています。
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ミヤマチドメ Hydrocotyle japonica は、人家近くには無く、山の陰地に生えるチドメグサの仲間です。 写真は岩湧山の登山道で撮ったもので、あちこちにたくさん生えているのですが、花が咲いても気がつく人はほとんどいないようです。
前にオオチドメを載せましたが、 チドメグサの仲間の多くは、花がたくさんかたまって球状につきます。 しかし、このミヤマチドメと下に書くヒメチドメの花は、3~5個の集団です。
上の写真では、咲いている花の後ろに、花が終わって果実になりかけのものが3つ写っています。 花は、花弁が5枚、オシベ5本で、メシベは2本です
上はミヤマチドメの葉を拡大したものです。 ミヤマチドメに似たチドメグサの仲間にヒメチドメがありますが、ヒメチドメでは成葉の基部の切れ目が左右に広く開きます。
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タケニグサの葉の裏にいたハネナガウンカの仲間、調べてみるとマダラハネナガウンカのようですが、模様には個体差があるようです。
ハネナガウンカの仲間(ハネナガウンカ科)は熱帯地方に分布の中心を持つ昆虫で、日本のような温帯では、気温が高くなってから本格的に成長するのか、成虫が見られるのは夏~秋です。
以前、アカハネナガウンカを載せましたが、マダラハネナガウンカも愛嬌のある顔をしています。 複眼でマークを作っているのもいいですね。
警戒すると翅を閉じると書かれてあるのですが、この時は葉を揺らしてしまった瞬間に、この姿勢からそのまま飛び去ってしまいました。
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夏も終わりに近づき、夏の花の代表ヒマワリも夏バテぎみです、と言いたいところですが、花が下を向いているのは種子が充実してきて重くなってきたからでしょう。 ヒマワリは観賞用だけではなく、種子を食用や油を取る目的で育てる作物でもあります。
ヒマワリの茎の先についているのは、1つの花ではなく、たくさんの花(小花)が集まった花序(頭状花序)であり、頭花と呼ばれていることは、はキク科の特徴として、このブログでも何度も書きました。
花は、ある葉は花弁に、ある葉はオシベに、ある葉はメシベに、といったぐあいに、複数の葉が変化したもの、つまり、複数の葉をつける枝がまるごと変化したものと考えることができます。
枝のスタートは芽です。 腋芽を花に変化させながらその上に新しい腋芽を次々と作っていったものを上からギュッと押しつぶして平らにしたものがヒマワリの頭花だとすれば、ヒマワリの花(の集団)では、外側が古い花で、頭花の中心部ほど新しい花ということになります。 逆に言えば、中心部から周辺部への変化を見れば、花が時間と共にどのように変化していくかが分かる、ということになります。 ヒマワリのような大きな頭花ともなると、中心部と周辺部との花の“年齢差”は大きく、このような観察にはとても適した花ということができます。
頭花(=花の集団)のいちばん外側には、花弁のような舌状花が並んでいますが、これは虫を呼ぶための飾りのようなものと考え、その内側にたくさんある筒状花の変化を見ていくことにします。
上は若い頭花で、中心部の筒状花はまだツボミです。 中心部から周辺部に向かうにつれ、花粉を出している小花があり、周辺部に近い筒状花ではメシベを開いて花粉を受けているのですが、オシベから出ている花粉もメシベについた花粉も同じ黄色ですから、この違いはこの倍率では分かり難いですね。
下はもう少し古くなった頭花です。 頭花の中心部では花粉が出されていて、周辺部に向かうにつれてメシベの柱頭が開き、周辺部の筒状花ではメシベもオシベも役割を終えて枯れてしまい、5裂している花冠が星型に目立っています。 つまりヒマワリの小花(ほんとうの1つの花)は、花粉を出してからメシベを開く雄性先熟の花ということになります。
下は小花(筒状花)の集団をもう少し拡大したものです。
上の写真では、右上が頭花の中心部側になります。 右上の若い花では、メシベを取り囲んでいるオシベから、花粉がメシベ側に出され、メシベが花粉を押し出しながら伸びだしてきています。 これらの花粉は訪花する虫たちによって運ばれることが期待されている花粉です。 そして左下では、メシベの柱頭が左右に開き、虫たちによって運ばれてきた花粉を受け取るようになっています。 ただ、メシベの柱頭の開く方向は、頭花の中心部側と周辺部側に、つまり上の写真では右上と左下方向に分かれていますので、柱頭が2裂しているのがとても分かりにくくなっています。
下に、撮影の角度を変えて、メシベが2裂しているのがよく分かる写真を載せておきます。
下の頭花は、花の時期は終わり、舌状花もしおれています。 筒状花の黄色~黄緑部分は、花冠と、その花冠の基部をふっくらと取り囲むガクですが、これらも散ってしまい、黒褐色の子房の部分だけが残されているところもあります。 この子房内で種子が作られていきます。
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昨日のイヌザンショウの写真にも写っていたルリチュウレンジです。 本来の色は昨日の写真のように黒っぽいのですが、今日載せている写真は、金属光沢を伴った瑠璃色を強調するため、ハイキーぎみに撮っています。
ハチの進化を大きく眺めてみると、成虫のエネルギー源が蜜を中心としていることに変化はありませんが、幼虫の餌が、植物の葉や材 → 動きの乏しい虫など(卵や幼虫)への寄生 → 動きのある虫などへの寄生や捕食 → 植物の花粉 というように変化しています。
ルリチュウレンジはミフシハバチ科に分類されています。 「ミフシ」というのは、この仲間の触角が3節からできていることによります。 写真で分かるように第3節が第1・2節に比べてとても長くなっているのが特徴です。 そして「ハバチ」は「葉蜂」で、ルリチュウレンジの幼虫はツツジ類の葉を食べて育ちます(下の写真)。 つまり、進化の進んでいないハチのグループです。
◎ ルリチュウレンジの産卵の様子はこちらに載せています。
ヒラドツツジの葉を食べるルリチュウレンジの幼虫
ハチといえばアシナガバチのように腰のくびれを連想しがちですが、これは腹部を自由に動かして虫の急所に正確に針を差し込むための形態で、進化の進んでいないハバチなどでは、腰のくびれは見られません。
ルリチュウレンジは年に3~4回発生し、成虫は4月~10月頃に見られます。 上に書いたように、幼虫はツツジ類の害虫で、地面に降りて土の中でサナギになります。 越冬は、サナギの状態で過ごします。
※ 同じミフシハバチ科で体が黄褐色のアカスジチュウレンジは、こちらに載せています。
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サンショウに似て、葉にも果実にも香りがサンショウよりずっと少ないイヌザンショウ。 でも、花は虫たちには人気があるようで、カミキリの仲間、ハチの仲間、ハエの仲間、ガの仲間など、いろんな虫が集まっていました。 上はアカハナカミキリです。
葉を見ていると、イヌザンショウとサンショウはたしかによく似ています。 両者はトゲのつき方で区別できることを11月のイヌザンショウのところで書きましたが、花を見ても違いがよく分かります。 といっても小さな目立たない花ですが・・・。
まず、花の時期が違います。 サンショウの花は4~5月頃ですが、イヌザンショウの花は7月の終り頃から8月にかけてです。
上がイヌザンショウの雌花です。 雌花にはメシベだけで、オシベはありません。 サンショウもイヌザンショウも雌雄異株であることは同じですが、 イヌザンショウのメシベは3心皮が集まり、共通の円盤状の柱頭があります。 このメシベは果実になる時には3つ(以下)に分かれるのですが、サンショウのメシベは最初から分かれています(下の写真)。
下はイヌザンショウの雄花です。 オシベは5本です。 退化したメシベもあるのですが、写真にははっきり写っていません。
イヌザンショウの雄花
余談になりますが、「○○に似てつまらない植物」という意味で「イヌ○○」という名前が他にもあります。 なぜ犬がつまらないものの代表として扱われるのか、愛犬家にとってはやりきれないところですが、一説には、犬は関係なく、「非(イナ)」が転訛して「イヌ」になったとも言われています。
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ヘクソカズラグンバイは、ヘクソカズラにつくグンバイムシです。
正面から 口吻をヘクソカズラの葉に刺し込んでいます
グンバイムシは被写体として好きなのですが、このヘクソカズラグンバイは、翼突起と前突起がよく発達していて、特におもしろい形態であるように思います。 特に翼突起は、他の多くのグンバイムシではほぼ水平に広がっているのに対し、ヘクソカズラグンバイの翼突起は立体的で、球を半分に割ったような形をしています。
上のグンバイムシの長さは、翅を含めて測定しても、約2.5mmでした。 もちろんこれで立派な(?)成虫で、見ていると交尾を始めました(下の写真)。
グンバイムシの仲間も、在来のものと外来のものがいます。 このヘクソカズラグンバイは外来昆虫で、大阪府の池田市で1996年に最初に発見されました。 伊丹空港の近くですので、東南アジアからの貨物に紛れて侵入したのではないかと考えられています。 最初は伊丹空港周辺のみで見つかっていたのですが、2002年には80km離れた地点でも見つかっています。 現在はどこまで広がっているのでしょうか。 ちなみに、写真のグンバイムシは堺市南区(伊丹空港から約33km)で撮ったものです。
外来のグンバイムシとしては、他にはアワダチソウグンバイとプラタナスグンバイが知られています。
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「カズラ」は「ツル植物」の意味です。 多くの植物は光合成を行うための器官(つまり“生産工場”)である葉を有利な位置に展開するために、葉を支える茎や幹を丈夫にしますが、茎や幹を発達させると、これらを構成する細胞による消費が大きくなります。 多くのツル植物は、他のものに巻きつくことにより、茎を細くして消費を少なくしながら、葉を上の方で展開しようとしています。 ところが、ヒカゲノカズラはツル性でありながら、他のものに頼って高い所をめざすつもりは毛頭無いようです。
ヒカゲノカズラはシダ植物です。 ツル性のシダ植物は種子植物のツル植物とは生き方が違うのかといえば、そうでもないようで、例えばカニクサもツル性のシダ植物ですが、ちゃんと(?)上をめざします。
ヒカゲノカズラの仲間は、みんなこのような生き方をしているわけでもありません。 化石植物になりますが、古生代に存在していたリンボク(鱗木)は、幹の直径は1m以上もあり、高さは30mに達するものもあったようです。
ヒカゲノカズラのこのような生き方は何を狙っているのか、なぜ高い所をめざそうとしないのか、いつも疑問に思います。
上で、ヒカゲノカズラはシダ植物だと書きましたが、上の写真のように、ウラジロやワラビなどとはかなり様子が違います。 シダ植物を大別すると小葉類と大葉類とに分かれますが、ヒカゲノカズラは前者に、ウラジロやワラビなどは後者に分類されます。
今の時期、ヒカゲノカズラは胞子を散布する時期になります。 さすがの地を這って生きるヒカゲノカズラも、胞子は風に乗せて遠くに飛ばさなければなりませんから、胞子を入れておく胞子のうをつける胞子のう穂を立ち上げ、その高さは10~20cmほどになります。
上は胞子のう穂を手で揺らしてみた時の様子です。 たくさんの胞子が飛んで行きます。
上はヒカゲノカズラの胞子のう穂の縦断面です。 胞子を入れておく胞子のうは、ウラジロやワラビなどでは大きな葉の裏にたくさんつきますが、ヒカゲノカズラでは胞子のう穂の鱗片の腋ごとに1つの胞子のうがつきます。
断面を作る時に出してしまった胞子がたくさん断面についています。
下は胞子のう穂の横断面です。 胞子のうの口が大きく開き、胞子は既に飛散してしまったようです。
ヒカゲノカズラは、乾燥しても、元の形や色を比較的長期間保ち続けます。 そのことと関係するのでしょうか、ヒカゲノカズラはあちこちで祭事に用いられているようです。 古事記では、アメノウズメが「日影を襷にかけ」天岩戸の前で踊ったとありますが、この「日影」はヒカゲノカズラだろうと考えられています。
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植物に寄生し、その汁(師管液)を吸って生活している場合、光合成で作られた糖類はたくさん吸収できるのですが、その他の栄養素が不足ぎみになります。 わずかしか含まれない栄養素を取り込むためには、たくさん師管液を吸って、余った糖は捨てなければなりません。 アブラムシの仲間は甘露として捨てていますし(こちら)、カイガラムシやキジラミなどの仲間には、糖から合成したワックスを分泌するものがたくさんいます(例えばこちら)。
最初、オトコエシの茎で上の写真のような状況を見た時に、コナカイガラムシの一種がいて、クロヤマアリが甘露をねだって来ているのだろうと思いました。 このカイガラムシらしきものは、写真には写っていませんが、近くにもう2個体いました。
しかしこのカイガラムシらしきもの、茎に密着していません。 そこで、横からも、と思い、撮ったのが下の写真です。
この時、ファインダーを通して小さなアブラムシが目に入りました。 肉眼ではとても見えない大きさです。
これを見た時は、アブラムシの親が子を産んでいるのだと思いました。 こんなにたくさんのワックスを分泌するアブラムシもいるのかと、少し疑問に思いながら・・・。
帰宅後、上の写真をPCで拡大して見ると、お尻だと思っていたところに眼らしきものがあることに気づきました。 アブラムシを食べている!?
他の背側から撮った写真も拡大して見ると、6本の脚が確認できました(下の写真)。 脚の位置からしても、下が頭です。
アブラムシを食べるとくれば、まっ先に思い浮かぶのはテントウムシ。 調べてみると、ヒメテントウの一種の幼虫らしいと分かりました。 よくいるのはコクロヒメテントウということで、これもそうかもしれません。 とても小さなテントウムシで、白いワックス状のものは、アリにカイガラムシだと思わせ、攻撃されなための偽装のようです。
それにしても、食事中だったからかもしれませんが、撮影中の動きはほとんどありませんでした。 テントウムシの幼虫なら、速く動けるはずなのですが・・・。 速く動けばアリにカイガラムシではないと見破られるからなのでしょうか。
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明石付近の地層に残る化石から、今から250万年~80万年前、明石象やアケボノゾウが生息していた時代に、サイカチやナワシログミなどトゲを持つ植物が多かった時代があったことがわかっています。 これらの地層に見られる植物を、明石植物群と呼んでいます。 この明石植物群は第三紀周北要素や中国大陸要素の植物との関係で注目される植物群なのですが、ハマナツメもこの明石植物群の1メンバーです。
ハマナツメの現在の分布は、本州東海以西、四国、九州、沖縄の、海岸近くの湿地や海跡湖周辺に生えています。 種子が海流に乗って運ばれる海流散布植物なのですが、種子が流れ着いて育つことができるような場所が少なくなってしまい、環境省のレッドリスト(2007)では、「絶滅の危険が増大している種」であるとして、絶滅危惧II類(VU)に登録されています。 ここに載せた写真も、自生地のものではなく、長居植物園で撮ったものです。
ハマナツメはクロウメモドキ科の落葉低木です。 葉は互生で卵形、長さは5cmほどで、つけ根から伸びる3本の葉脈が目立ちます。
枝にはたくさんの鋭い棘があり、トリトマラズという別名を持っています。
花は7月から9月のはじめ頃までで、径5mmほどの小さな花を咲かせます。 ガク片は三角形で比較的大きいのですが、5枚の花弁は小さく、早落性のようです。 オシベは5本で、花の中央には大きな蜜腺があり、下の写真ではクロヤマアリが蜜を舐めにきています。
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まずは下の写真2枚、これ何だと思いますか。
タイトルが「シャチホコガの幼虫」ですから、そうなんですが、じつは幼虫の腹部の端を撮ったものです。 触角を生やした何かの頭部に見えませんか? これだけでも捕食者を脅かす効果はあるのでしょうね。
体全体を撮ると下のような姿です。
シャチホコガの幼虫は、脅かすと、反り返って鯱鉾(しゃちほこ:下の(注)を参照してください)に似たポーズをとります。 名前はこのことに由来するのですが、この姿はよく知られていて、あちこちに載せられているので、ここでは省略。 今回は歩いている姿にしました。
この姿だけでも、ガの幼虫とは思えない姿で、十分驚かされます。 姿が奇異に感じられる原因は、上に書いた腹部の末端の様子もそうですが、もうひとつ、胸脚の長さも大きな要因でしょう。
ガの幼虫の脚は、胸部に3対の胸脚と、第3~6腹節に各一対の腹脚(一部のガでは少なくなっています)、そして第10腹節に尾脚があります。 幼虫が別の枝に移ろうとする時などには、尾脚だけで今いる枝につかまり、体を伸ばしている姿をよく見ます。 このように、一般的には尾脚がいちばんしがみつく力が強いのですが、シャチホコガの幼虫の場合は、これが触角のように伸び、歩行に役立っているとは思えません。 また、胸脚の中脚と後脚もたいへん長くなっています。 これも捕食者を驚かせるためだとしか考えられません。 本来の脚の機能を低下させてまでのこのような形態、何かに擬態しているのでしょうか。
(注) 鯱鉾(しゃちほこ)について
ここで言う鯱(しゃち)とは、水族館にいるシャチではなく、インドの想像上の動物で、姿は魚で頭は虎、背中には鋭いとげが並んでいます。
この鯱が、鴟尾(しび)と一体化し、シャチホコ(「鯱」または「鯱鉾」)となりました。 鴟尾は、魚が水面から飛び上がった姿を具象化したもので、火除けのまじないとして屋根の最上部に設置されていたものです。
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春の「みょうがたけ」に夏~秋の「花みょうが」、ミョウガの独特の香りは、薬味として、また天ぷらや味噌汁の具などの食材として、私たちを楽しませてくれます。
「みょうがたけ」はミョウガの若芽で、「花みょうが」はミョウガの花穂です。 ただし、ハナミョウガという名前の別の植物もありますので、注意が必要です。
ミョウガはショウガ科ショウガ属(Zingiber)の多年草です。 ミョウガの生えている所を見ると、自生しているように見える場所もあるのですが、染色体を調べてみると、5倍体であるために種子ができることは稀で、昔に大陸から持ち込まれて栽培されてきたものだと考えられています。
ミョウガの名前の由来も、大陸からショウガと共に持ち込まれた時、香りの強い方を「兄香(せのか)」、香りの弱い方を「妹香(めのか)」と呼び、後にセノカがショウガに、メノカがミョウガに転訛したとの説が有力です。
ミョウガに似た植物にヤブミョウガがあります。 たしかに葉だけを見ていると雰囲気は似ていますが、ミョウガの葉は2列互生である(下の写真)ことに注意すれば区別できます。
今の時期、ミョウガの根元に花を見ることができます(下の写真)。
花は地面から咲いているように見えますが、ほとんど地中に隠れた花穂から咲いています。 下が取り出した花穂で、咲いている花が1つと、しおれた花が3つついています。
ショウガ科の植物の花は特殊化していておもしろく、このブログでもこれまでにシュクシャやハナミョウガの花のつくりを載せてきました。 ショウガ科の花のつくりは、基本的には同じなのですが、シュクシャ、ハナミョウガ、ミョウガはそれぞれ属が別で、少しずつ違いますので、ミョウガの花のつくりも載せておきます。 単子葉植物ですので、花の基本数は3です。
ガク筒は花冠に密着していて、写真ではよく分かりません。 花冠は3裂しています。
いちばん特殊化の激しいのはオシベでしょう。 オシベは本来6本あるはずですが、花粉を出しているのはそのうちの1本です。 残りのオシベのうちの2本は退化して小さくなり、花冠の内側に隠れています。 そして、ミョウガの花の中でいちばん立派な花弁らしい唇弁も、オシベが変化したものです。 唇弁は3裂していて、中央の裂片が特に大きくなっています。
1本の花粉を出しているオシベは大きく、目立ちます。 一般的に、1本のオシベには、花粉を入れておく葯が左右1対あり、葯の間には葯隔と呼ばれる部分があります。 ミョウガの花粉を出しているオシベの葯隔は長く伸び、メシベの花柱を左右から挟みこんでいます。
ところで、ミョウガを食べ過ぎると物忘れがひどくなるとの俗信があります。 これは釈迦の弟子で物忘れのひどい者がいて、自分の名前を忘れないように首から名荷(みょうが)つまり名札をぶら下げていたという話に由来するもので、ミョウガ(漢字では茗荷)とは関係ありません。 それどころか、ミョウガの香り成分には集中力を増す効果があることが明らかになっています。
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昨日の記事の後半に載せた、イヌビワの雄株の、まもなく口を開こうとする果のうを割ってしばらくすると、イヌビワコバチなどが羽化してきました。 果のうを割ることによって羽化が促進される理由は、新鮮な空気に触れるからなのか、果のうの内部が次第に乾燥してくるからなのか、いろいろ考えられるでしょうが、分かりません。 とにかく、無理に羽化したようで、少し“未熟児”ぎみなところが感じられます。
上はイヌビワコバチのメスが、雌花(虫えい花)の子房壁を破って出てきたところです。
顔を拡大してみました。
上は、光の当て方で、頭部が変な色になってしまいましたが、後脚で翅を掃除しているところです。 イヌビワコバチの腹部の第7腹板には花粉を収める溝(花粉ポケット)があり、新しい果のうに潜り込む時に、花粉が全て落ちてしまわずに、果のう内に花粉が持ち込まれるようになっているのですが、このような掃除などの過程で花粉が花粉ポケットに集められるのでしょう。
歩きだしたイヌビワコバチのメスです。
イヌビワコバチのオスも羽化してきました(下の写真)。
イヌビワコバチのオスの体色は明るい褐色で、翅もありません。 生まれた果のうの中でメスと交尾し、果のうの外に出ることも無く、一生を終えます。
イヌビワコバチに寄生して育つイヌビワオナガコバチもいました(下の写真)。
下はイヌビワオナガコバチのオスだと思われます。
上の写真は、当初イヌビワコバチのオスとしていたのですが、おちゃたてむしさんからコメントをいただき、訂正したものです。 イヌビワコバチのオスと比較すると、たしかに頭部が大きく、立派な牙を持っています。 この発達した口でイヌビワコバチを食べるのでしょうか。
体つきも、イヌビワコバチのオスよりも全体的にしっかりしていたように思います。
果のうの中には下のような幼虫もいました。
イヌビワの果のうには外から穴を開けて潜り込んだ跡はありませんから、この幼虫も、果のうの中に生みつけられた卵から育ったものでしょう。 もしかしたらイヌビワシギゾウムシの幼虫かもしれません。
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イヌビワは日本に自生するイチジクの仲間です。 多くの植物では、雌株は雌花を咲かせ雄株は雄花をつけます。 ところが、イヌビワを含むイチジクの仲間では、このことは当てはまりません。
私たちが「イチジクの実」と言っているのは「果のう(=花のう)」と呼ばれていて、イヌビワを含む野生のイチジクの仲間では、この果のうの中で花が咲きますが、雄株の果のうの中にも雌花が咲きます。
では、雌株と雄株はどう違うのかといえば、雌株の果のうでは種子ができますが、雄株の果のうでは種子ができません。
イヌビワの外からは見えない果のうの中で咲く花に花粉を運ぶのは、イヌビワコバチです。 花粉をつけたイヌビワコバチのメスは、雌株の若い果のうにも雄株の若い果のうにも潜り込み、子房に産卵しようとします。 しかし、雌株の雌花と雄株の雌花はメシベのつくりが違っていて、雄株の雌花には産卵できるのですが、雌株の雌花には産卵できません。 つまり雌株の雌花はイヌビワコバチが運んできた花粉により受粉し、種子を形成していくのですが、雄株の雌花の子房では、イヌビワコバチが子房の組織を食べて育ちます。
イヌビワはイヌビワコバチがいないと受粉できません。 イヌビワの雌株は種子を作り、雄株は花粉を運んでくれるイヌビワコバチを育てます。
イヌビワにとっては、イヌビワコバチは必ずイヌビワの花粉を運んできてくれますから、とても頼りになる花粉媒介者です。 また、イヌビワコバチにとっても、イヌビワがあるからこそ、子孫を残すことができるのです。
今の時期、雌株の果のうは次々と黒っぽく熟していきます(上の写真)。 この熟した果のうは人が食べてもおいしいのですが、鳥たちにとってもご馳走です。 もちろん鳥たちは、この果のうを食べる時に種子も食べるわけですから、食べられることによって種子散布が可能になるわけです。 上の写真では、食べ残された熟した果のうの周囲には、たくさんの種子が見えます。
一方、雄株の果のうは雌株の果のうのようにおいしくはなりません。 中で育ったイヌビワコバチが旅立ちやすいように、果のうの口を大きく開きます。 そしてイヌビワコバチが出てしまった果のうは、茶色く枯れていきます(上の写真)。
ちょうど口が開きかけた雄株の果のう(上の写真)があったので、持ち帰って断面を撮ってみました(下の写真)。
上の写真で、たくさんある球形のものがメシベの子房です。 黒っぽく見えるのは、中でイヌビワコバチや、そのイヌビワコバチの幼虫を食べて育ったイヌビワオナガコバチなどが育っているからです。 つまり、雄株の果のうの雌花の子房は虫えいになるために存在するわけで、雄株の雌花は「虫えい花」とも呼ばれます。
このイヌビワコバチたちは間もなく羽化するでしょう。 イヌビワがイヌビワコバチを育てているのは、繰り返しますが、花粉を運んでもらうためです。 羽化して果のうを出て行く時には花粉をつけて出て行ってもらわなければなりません。 果のうの出口付近には、たくさんの雄花が咲き、花粉を出しています(下の写真)。
この果のうの中にいた虫たちは、こちらに載せています。
※ イヌビワとイヌビワコバチの冬越しについては、こちらに書いています。
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エントツドロバチがヤハズソウの群落を、縫うように飛んでいました。 何かを探しているような飛び方です。 所々に咲いているヤハズソウの花は無視して飛んでいますので、目的は蜜ではなさそうです。 もっともヤハズソウの花はエントツドロバチには小さすぎるでしょうが・・・。
急に姿が見えなくなったので、そのあたりを注意深く探すと・・・
さかんにヤハズソウを糸で綴った何かの巣を壊しにかかっていました(上の写真)。
しばらく見ていると、緑色をした細長いいもむしを引きずり出し、針を刺しました。
この後、麻痺させたイモムシをかかえて飛び去りました。 幼虫の餌にするのでしょうね。 飛び去った方向で巣を探したのですが、見つけることはできませんでした。
同じヤハズソウの群落にはオオフタオビドロバチもいました。 このヤハズソウの群落には、糸で綴られた蛾の幼虫の巣がたくさんあります。 オオフタオビドロバチも、あちこちでエントツドロバチと同様の行動をとっていました。
オオフタオビドロバチは、カミキリムシの脱出孔などの樹木に開いた穴などに泥で仕切りをして営巣するドロバチです。
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ヤハズソウはマメ科の1年草です。 葉は三出複葉で、各小葉には羽軸がありません。 小葉の葉脈には、ほぼ並行して走る側脈がたくさんあります。 このため、小葉を強く引っ張ると、側脈に沿ってちぎれて、矢筈(やはず)状になり(下の写真)、和名はこのことに由来します。 ちなみに、矢筈(単に筈とも言います)とは、矢の末端の、弦につがえるための窪んだ部分です。
茎には、下向きに密着する毛が生えています。
花は7~9月に咲き、葉腋につきます。 花は長さは5mmほどで、赤みを帯びた紫色をしています。
このヤハズソウの群落には、下のような、葉が食べられ、糸で綴られたヤハズソウがあちこちに見られました。 この巣の住人はたぶん蛾の幼虫で、黒い小さな粒はこの巣の住人の糞でしょう。
この場所は、じつは1年前に整地された場所で、そこに1年草のヤハズソウが広がりました。 特定の植物がたくさんあると、それを食料にするものが増えます。 そして同種の虫が増えると、それを餌にするものが集まります。 そのことについてはこちらをどうぞ。
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エントツドロバチは、以前はオオカバフスジドロバチと呼ばれていましたが、最近ではこう呼ばれる方が多いようです。 この名前は、下に書くように、営巣習性を表した名前です。 ちなみにオオカバフスジドロバチの名前は、形態から来ていて、漢字で書けば「大樺斑条泥蜂」、つまり大きな(と言っても2cmたらず)樺色の斑条を持った泥蜂です。
ドロバチの仲間は泥を利用して巣を作り、卵を産んでおいて、その中に蛾などの幼虫を運び入れます。(狩りの様子はこちらに載せています。)
上のエントツドロバチの口周辺の土の色が他と少し違っています。 吸ってきた水を吐き出し、土を湿らせ、巣作りの材料とする土を掻き取ろうとしているようです。 取っているのは酸化鉄を含む黄色い粘土のようでした。
巣は下のような形をしています。 出入り口が下向きの煙突のようで、これがエントツドロバチの名の基になっています。
上の写真の巣、作っていたのは下の赤い円で示したところです。 横道にそれますが、この小杜神社は古事記を編纂した太安万侶を祭っている神社で、今年(2012年)は古事記が時の天皇に献上されてから1300年目にあたります(詳しくはこちらでどうぞ)。
下は大阪市にある長居植物園内で撮ったエントツドロバチです。
長居植物園の中に東屋が作られていて、その柱は石を積み重ねて隙間をセメントで埋めたようなつくりになっています。 上の写真は、この柱の上にいたエントツドロバチなのですが、この柱の内部には隙間があちこちにあるらしく、その隙間に巣を作り、外からは“煙突”だけが見えています(下の写真)。 このような“煙突”が柱のあちこちに見られ(写真はほんの一部です)、エントツドロバチのマンションのようになっていました。
エントツドロバチは古事記の時代とは比べものにならない昔から“煙突”を作り続けると同時に、人間が作った新しい環境にも柔軟に対応しているようです。
この立派な“煙突”は、何度も出入りするために作られています。 つまりエントツドロバチは、卵と餌を入れて蓋をしてしまうのではなく、幼虫がある程度成長するまで、継続的に餌を供給し続けます。
ミツバチなどのように、①複数世代の同居、②不妊カーストの存在、③共同育児が行われる、の3条件が揃っている場合は真社会性昆虫と呼ばれています。 エントツドロバチのように親が幼虫を育てるのは、亜社会性の段階だとされています。
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ヒガンバナと同じリコリス属( Lycoris )に、キツネノカミソリがあります。 オオキツネノカミソリは、このキツネノカミソリの変種になります。
キツネノカミソリもそうですが、オオキツネノカミソリの花の時期には、ヒガンバナ同様、葉は見当たりません(上の写真)。 細長い葉は早春から地上に現れ、他の植物の葉が繁る前にしっかり光合成を行って栄養分を球根に貯え、夏には葉を落としてしまっています。
なお、キツネノカミソリの名は、この葉を狐の剃刀に例えたものですが、特に葉縁が鋭いわけでもなく、柔らかい葉です。 狐はそんなに柔肌だったのでしょうかね。
そして夏にこの貯えた栄養分で花を咲かせ、虫を呼びます。 花は花被片が6枚(ガク片3+花弁3)で、オシベは6本です。
オオキツネノカミソリはキツネノカミソリよりも大きいのですが、その差はわずかで、並べてみないと分からない程度です。 それよりもはっきりするのはオシベの長さで、花を横から見ると、オオキツネノカミソリのオシベは花被片より長いのですが、キツネノカミソリのオシベの長さは、花被片とほぼ同じ長さです(下の写真)。
オオキツネノカミソリとキツネノカミソリは生態的にも少しずつ違っていて、オオキツネノカミソリの花期は7~8月で、キツネノカミソリの花期は8~9月、オオキツネノカミソリの分布は関東以西であるのに対し、キツネノカミソリの花は青森県でも見ることができます。
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暑い夏に白い花をたくさん咲かせるエンジュ、大きなエンジュの木の下は、散った花で真っ白です。
エンジュはマメ科の木で、花は多くのマメ科植物と同じ蝶形花です。 学名は Styphnolobium japonicum (シノニムは Sophora japonica )で、種小名は「日本の」となっていますが、元は中国原産で、日本には仏教伝来の頃に入ってきているようです。 古くからあるので、すっかり日本の植物のような顔をして、イヌエンジュやハリエンジュなど、「○○エンジュ」というエンジュに似た植物の名前の元にもなっています。 なおイヌエンジュもハリエンジュも複葉で花の色も白いのですが、これらの果実が乾果であるのに対し、エンジュの果実は、数珠状にくびれた特徴のある液果です(下の写真:8月18日撮影・追加)。
ちなみに、中国名は「槐(ファイ)」で、中国では昔から尊貴の木として尊重されており、また学問と権威のシンボルとされているそうです。
エンジュの変種にシダレエンジュがあります(上の写真)。 上でエンジュは中国で大切にされてきたと書きましたが、なかでもシダレエンジュはその最高種とされ、庭木などとして珍重されてきました。 日本でも公園などに植えられているのをよく見ます。
夏は、園芸植物を除くと花の少ない季節ですが、蜂の活動期でもあります。 園芸的に品種改良された植物は人の目には美しくても、蜜などが少ないのでしょうか、蜂には人気がありません。 エンジュは植えられていても花はそんなに改良されていないようで、ネジロハキリバチ(下の写真)など、いろんな蜂のいい蜜源になっています。
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アシダカグモに関する情報をいただいている み。さんから、脚の再生に関する写真を送っていただいたので、紹介します。
み。さんの家では、今年は猫が住み着き、アシダカグモにとっては危険がいっぱいの状況になっているようです。 下の写真のアシダカグモも、たぶん猫にやられたのでしょう、脚が4本しかありません。
上は7月17日の撮影ですが、このアシダカグモが脱皮した後の8月5日に撮ったのが下の写真です。
脚がみごとに再生し、元の8本に戻っています。 よく見ると、脚の模様はまだ元には戻っていませんが、長さは残っていた脚とほぼ同じにまで回復しています。
以前、アシダカグモの脱皮について書いた時に、再生についても触れていますが、1回の脱皮で、これだけのたくさんの根元から失われていた脚がこれだけ見事に再生するとは驚きです。
下は脱皮殻です。 もちろん脚は4本しかありません。
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下は観賞用に植えられていたチーゼルで、7月22日に撮ったものです。 チーゼルの原産地は、ヨーロッパ~中東と北アフリカです。
8月4日に見に行くと、花は終わり、下のような姿になっていました。 花に隠れていた鋭い小苞が目立ち、その下の長く伸びた総苞とあいまっておもしろい姿になっています。 これはドライフラワーにして楽しむことができます。
上のチーゼルは、オニナベナとも呼ばれています。 たしかに同じマツムシソウ科のナベナ(下の「参考」)に似ていて、巨大です。 このオニナベナの仲間で、小苞が鉤状に曲がるものがあり(下の写真)、ラシャカキグサまたはラシャカキソウと呼ばれています。 チーゼル(teasel)とは、オニナベナやラシャカキグサなどの仲間を総称する英名です。
羅紗(ラシャ)とは毛織物の一種で、密に織った厚地の生地を起毛させたものです。 羅紗は最近ではビリヤードの台や乗馬服など、用途は限られたものになっていますが、丈夫で保温性も高く、少し前までは様々な用途の衣類の生地として使用されていました。
ラシャカキグサはこの起毛に使われていました。 大阪府の南部、泉州地域で織物工業の盛んな時代にはたくさんのラシャカキグサが植えられていたそうです。 今では起毛もほとんどが針金起毛機で行うようになってしまいましたが、現在でも高級毛織物の仕上げにはラシャカキグサが使われているようです。
参考 花の終ったナベナ
2010.10.23.岩湧山にて撮影
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タマムシの成虫は6~8月に出現し、餌はエノキやケヤキなどのニレ科の葉です。 幼虫は広葉樹の幹の中で材を食べて育ちます。
標準和名は「タマムシ」ですが、タマムシの仲間もいろいろいて、「タマムシの仲間」の意味と混同してはいけないというので、「ヤマトタマムシ」とも言われます。
私はこれまでにタマムシを何度も見ていますが、そのほとんどはエノキやケヤキの樹冠近くを飛ぶ姿で、低い所へ来る事は少ないようです。 下の写真は、枚岡公園でたまたま枯れたエノキの幹にいたところを撮ったものですが、数枚撮った段階で飛ばれてしまいました。
上に書いたように、タマムシはよく飛びます。 タマムシの体の色は光のあたり方で変化しますから、飛んでいる時の姿はいっそう美しく見えます。 いちど私がじっとしているとタマムシが飛んできて、1m位の距離をすり抜けて行ったことがありましたが、翅を広げた時に見えるて腹部背面は赤銅色で、やはりキラキラ輝いていました。
目立つ体で飛んでいると鳥などに狙われて危険なようですが、鳥はキラキラ輝き色が変わるものは苦手なようです。
この美しい色は光の干渉による構造色ですので、時を経てもなかなか変化しません。 下は1969年に標本にしたタマムシで、光の当て方が違うので、上とは少し違って見えますが、美しさは変わりません。
このタマムシはケヤキの並木を歩いている時に、足元に落ちてきたものです。 タマムシの飛翔は力強いものですが、飛び方は華麗ではありません。 このタマムシも幹への“着地”に失敗して落下したようです。 こんなことはよくあるようです。
私は小学校の頃に作った昆虫の標本を中学校の時に虫に食われ、それ以降標本をほとんど作らないでいるのですが、このタマムシを拾ったときは、これだけは標本にしようと思いました。 タマムシにはそれだけの美しさがあります。
※ 8月5日の毎日新聞の「くらしナビ」には、「千年の輝き-ヤマトタマムシ生育の秘密」(知玄社)の著者である芦澤氏のタマムシの飼育の様子などについて書かれていました。
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堺自然ふれあいの森で、切られたコナラに生えていたヒイロタケです。
ヒイロタケ(緋色茸)は、春から秋に広葉樹の枯れ木や切り株などに発生する白色腐朽菌です。 白色腐朽菌とは、木材のリグニンを分解することができ、木材を白く腐朽させる菌です。
木材の主成分は、セルロース、ヘミセルロースとリグニンです。 細胞壁の主成分であるセルロースをヘミセルロースが取り囲み、リグニンが接着剤のように隙間を埋めることで強固な構造を構成しています。 特にリグニンはたいへん安定な物質で、これを分解することのできる生物は限られています。
白色腐朽菌は褐色のリグニンを分解することで、セルロースなどの成分を自らの栄養源として利用すると共に、生態系の中で、分解者としての大切な役割を果たしているのですが、ヒイロタケの木材腐朽力はたいへん高いことが知られています。
上は傘の裏を拡大して撮ったものです。 傘の裏は表より濃い朱色であることと、微細な孔がたくさん開いていることが分かります。 この孔は管孔とよばれ、胞子の出てくる孔です。 上の写真は、写真の幅が1cmですので、この管孔は肉眼ではほとんど見えません。
ヒイロタケとよく似た色のキノコにシュタケがあります。 シュタケは本州の高地や北海道などの涼しい所に分布するキノコですが、ヒイロタケと見分けるポイントとして、シュタケの管孔は肉眼ではっきり見える大きさです。
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コロギスの名前は、体型はコオロギに似て色はキリギリスのようだというので、コオロギ+キリギリスからきていす。
とても長い触角を持っています。 翅は質が薄く、飛翔にはほとんど役立ちませんし、後脚も特に発達しているわけではなく、すばらしいジャンプができるわけでもありませんので、逃げる時は走ることが中心になります。
樹冠部で暮らし、夜行性で警戒心が強く、昼間は糸を出して葉を綴り、その中に潜んでいますので、コロギスをあまり目にする機会はありません。 そのうえオスも鳴きませんので、存在に気づくこともあまりありません。
そのコロギス( 産卵管があるので、メス )が、どういう理由か、地上から 1.5mほどの高さの木の幹にじっとしていて、カメラを近づけても逃げません。
前脚と中脚の脛節には、獲物を捕える時に役立つのでしょう、鋭い棘が並んでいます。
複眼は黄褐色をしています。 額には3つの円い白斑があります。
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オオフタバムグラは北アメリカ原産の帰化植物です。 「フタバ」というと種子から出てきた葉を想像してしまいますが、この場合は葉が対生であることを意味しています。
生育場所は海岸や河川敷などの砂地を好むようです。 特に鳥取砂丘では増えすぎるなど、問題も出始めていて、外来生物法によって要注意外来生物に指定されています。
草丈は10~30cmほどで、葉は無柄で、表も裏も硬く短い毛があってざらついています。 葉の縁も硬い刺状の毛があり、ざらつきます。 左右の托葉は合着し、その縁から数本の針状のものが伸びています。
花は7~8月、淡桃色の花冠は4裂しています。 オシベは4本、メシベは1本で、柱頭は2つの球をくっつけたような形をしています。
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オニベニシタバの成虫の出現月は7月から9月、幼虫はクヌギやミズナラなどのコナラ属の植物の葉を食べて育ちます。
オニベニシタバの前翅は、コシロシタバなどの他のカトカラ(Catocala属)同様、樹皮に似た色の複雑な模様で、翅を閉じて樹幹にとまっているといい保護色になっています。
後翅には派手な色がついています。 危険が迫った時にはパッとこの色を見せ、敵を驚かせる効果があるのでしょうか。 しかしこの美しい後翅は、なかなか見せてくれません。
オニベニシタバとコシロシタバが、どちらも数頭ずつ、樹液を吸いに集まっているクヌギの木がありました。 樹液を吸うことに夢中になっている個体では、少しだけ後翅を見せてくれるケースが多くなるようです。
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