タイサンボク
タイサンボクにはいろんな漢字が充てられますが、いちばん多いのは「泰山木」でしょう。 泰山はもちろん中華人民共和国にあるユネスコの世界遺産に登録されている山です。
以前、私は、こんな名前がついているのだから、泰山付近に自生する木なのだろうが、それにしては、常緑で、葉の表の厚いクチクラ層や、水分の蒸散を防ぐ葉の裏の毛は、泰山付近の気候に合わない、もっと暑くなる所の木のはずだが・・・と、不思議に思っていました。
調べてみると、北米中南部原産です。 ずっと昔に日本に入ってきていて、原産地を中国大陸と間違ってしまった歴史があるのかとも思いましたが、これも調べてみると、明治6年に日本に入ってきています。 どうも樹形や葉などの大きくて立派な様子を泰山に喩えたということのようです。
最初の写真は5月に、上の写真は7月に撮ったもので、花はこの頃に咲きます。 大きく立派な花で、いい香りもします。
タイサンボクはモクレン科に分類されていて、学名は Magnolia grandiflora です。 属名の Magnolia はフランスの植物学者の名前からきていますが、種小名の grandiflora は「大きい花」を意味しています。
花はガク片が3枚、花弁が6枚なのですが、どちらも白色ですので、よく見ないと区別できません。 オシベもメシベもたくさんあります。
花が終われば、タイサンボクは上のような姿になります。 モクレン科の植物の芽は、花芽も含めて苞でしっかり守られているのですが、その苞の落ちた跡が確認できます。 ガク片と花弁も、落ちた跡では、はっきりと区別できます。
そしてたくさんのオシベの落ちた跡が乱れた螺旋形に確認できます。 これから果実に変化していこうとするメシベもたくさんあります。 下の写真には、1つのメシベの柱頭と子房を示しておきました。
このようにたくさんのオシベやメシベが“整理されずに”ついていることは、モクレン科の原始的な性質の1つとされています。
Magnolia属については、ホオノキやコブシなどもこの属で、花の基本的なつくりは互いによく似ています。 これらの花のメシベやオシベがたくさんあることは、ホオノキの冬芽の所でも触れました。 また、同じモクレン科に分類されるユリノキのところでも、モクレン科の花のつくりについて書いています。 モクレン科の花の特徴の共通性が理解いただけると思います。
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