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2012年7月31日 (火)

特別展「のぞいてみよう ハチの世界」

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 大阪市立自然史博物館で、開催中の特別展「のぞいてみよう ハチの世界」に行ってきました。 とても奥の深いハチの世界の多様性、少なくとも私にとっては、なかなかおもしろい特別展でした。
 解説書(下の写真)も、写真が多く、ハチの世界の最新の情報がうまくまとめられていて、なかなかのものです。

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 今の時期なら、博物館を出て植物園に入れば、ハーブ園などで実際のハチを観察することもできます。

 オンブバッタの情報がほしいとのリクエストをいただきました。 今日の記事にしようかとも思ったのですが、日付と内容がずれるのも後日の検索等にも混乱をきたすでしょうから、空いていた2010年10月27日の記事とすることにしました。(こちら

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2012年7月30日 (月)

カワラサイコ

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 カワラサイコは河原などの砂地に生えるサイコ(柴胡)に似た植物。 柴胡は生薬の名で、ミシマサイコなどの根がその原料となります。
 河川の増水時に運ばれてきた砂が堆積した場所は、いくら水が近くにあるとはいえ、砂地は保水力が弱く、乾燥しやすい場所です。 そのような所に生えるカワラサイコは、乾燥に耐えるため、地上部はたくさんの毛を生やして水分の蒸散を防ぎ、地下にはまっすぐに下に伸びる太い根を持ち、そこに水分を貯えます。 その根が柴胡に似ているということなのですが、ミシマサイコはセリ科で、カワラサイコはバラ科のキジムシロ属、持っている成分も違い、カワラサイコの根は柴胡の代用にはなりません。(一時は代用にしたこともあったようですが・・・。)
 河川改修などで、適度に安定した河原の砂地が減少するにつれ、カワラサイコは減少してきています。

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 花は6月~8月に咲きます。 キジムシロ属の花には副ガク片がありますが、咲いた花を上から見ると、副ガク片は花弁に隠れて見えません。 しかし、ツボミの時にはその様子がよく分かります。 カワラサイコの副ガク片は線楕円形をしています。
 ガク片、副ガク片、花弁は各5枚、オシベ・メシベは多数あります。

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 葉は細かく裂けた羽状複葉です。

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2012年7月29日 (日)

アメリカミズアブの触角の運動

 アメリカミズアブについては以前記事にしました(こちら)が、夕方(午後6時前)、葉にとまっているアメリカミズアブが、さかんに触角を動かしていました。
 この運動、いったいどんな意味があるんでしょうね。 犬が鼻をクンクンさせるようなものかな、とも思いましたが、 とにかく、風が吹いて葉が揺らされると触角を動かす頻度が多くなるようです。

 触角の運動に合わせて音をつけてみました。 きれいに合わせたつもりでしたが、音データが重なって消えてしまった所が何箇所かできてしまいました・・・(-_-;)

(追記)
 9月25日朝、交尾しているアメリカミズアブがとまっていました。 撮影する時間がなかったのですが、つながったまま、オス・メス共にパチンパチンとやっていました。

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2012年7月28日 (土)

ミミズバイ

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 ミミズバイは日本の照葉樹林の構成樹種です。 名前の「ミミズ」は、この果実の形が少しいびつで、ミミズの頭に似ているところからで、「バイ」はハイノキの仲間だからです。

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 花は7~8月、薄暗い林内で育つ木だけあって、そんなに明るくない場所の枝にも、たくさんの花をつけます。 花は葉腋に集まってつきます。
 ガクには赤褐色の綿毛が生えています。 花冠は5深裂し、オシベは多数、メシベもオシベと同じ白色で見分けにくいのですが、柱頭は緑色をしています。

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 下はオシベも花冠も失われた状態ですが、こうなると蜜腺の存在が分かります。

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 ところで、これまでの写真は、午前9時過ぎに撮ったものですが、下はその3日前の午後2時半頃に撮ったもので、ツボミと咲き終わった花ばかりです。 この場所には数本のミミズバイがあるのですが、どの木も同じ状態でした。
 花の咲き方にはリズムがあるのか、午後にはしおれる花なのか、何らかの条件でその日がたまたまそうなったのか、よく分かりません。 調べてみてもこのようなことに関する記載は見つけることができませんでした。 何度も見に行くには少し遠いし・・・。

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(以下、2014.1.22.追加)
 下がミミズバイの果実です。 ミミズの頭がたくさん並んでいるように見えるでしょうか。 2014.1.7.に岸和田市の神於山(こうのやま)で撮りました。
 果実は熟すには少し時期が早く、緑色をしていますが、熟せば黒っぽい色になります。(写真はクリックで拡大します。)

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2012年7月27日 (金)

チャバネアオカメムシの卵に寄生する蜂

 公園のクロガネモチにたくさんのチャバネアオカメムシがいました。

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 上の写真では、左右の枝に各5頭ずつ、計10頭のチャバネアオカメムシがいます。 写真をクリックして拡大し、数えてみてください。
 そして、たくさんの卵も産み付けられていました。 多くは下の写真のように葉に産み付けられていますが、上の写真では右上のチャバネアオカメムシの横の、クロガネモチの実の上にも卵が産み付けられています。 上の写真には、もう1ヶ所卵が産み付けられている実があるのですが、分かりますか?

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 よく見ると、ほとんどの卵塊に、体長1mmほどの小さなハチがいます。 下の写真では、隣り合った2枚の葉のどちらの卵塊にも小さなハチがいます。

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 これはカメムシの卵に寄生するハチでしょう。 ここにいるのは産卵に来たメスバチか、ひと足早く羽化したオスバチが、カメムシの卵を食べて育ったメスバチの出てくるのを待っているのだと思われますが、ハチの行動を見ていると、どうも後者の方だと思われます。

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 ハチの種類は分かりません。 体長1mmとなると、お手上げです。

 おちゃたてむしさんから、このハチはトビコバチ科のものだろうと教えていただきました。(詳しくはコメントを見てください。)

 下は脱出の済んだ卵塊です。 カメムシの幼虫が出てきたのなら、きれいに蓋が開いているはずですので、寄生していたハチが殻を食い破って脱出した跡だと思われます。

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2012年7月26日 (木)

タイサンボク

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 タイサンボクにはいろんな漢字が充てられますが、いちばん多いのは「泰山木」でしょう。 泰山はもちろん中華人民共和国にあるユネスコの世界遺産に登録されている山です。
 以前、私は、こんな名前がついているのだから、泰山付近に自生する木なのだろうが、それにしては、常緑で、葉の表の厚いクチクラ層や、水分の蒸散を防ぐ葉の裏の毛は、泰山付近の気候に合わない、もっと暑くなる所の木のはずだが・・・と、不思議に思っていました。
 調べてみると、北米中南部原産です。 ずっと昔に日本に入ってきていて、原産地を中国大陸と間違ってしまった歴史があるのかとも思いましたが、これも調べてみると、明治6年に日本に入ってきています。 どうも樹形や葉などの大きくて立派な様子を泰山に喩えたということのようです。

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 最初の写真は5月に、上の写真は7月に撮ったもので、花はこの頃に咲きます。 大きく立派な花で、いい香りもします。
 タイサンボクはモクレン科に分類されていて、学名は Magnolia grandiflora です。 属名の Magnolia はフランスの植物学者の名前からきていますが、種小名の grandiflora は「大きい花」を意味しています。
 花はガク片が3枚、花弁が6枚なのですが、どちらも白色ですので、よく見ないと区別できません。 オシベもメシベもたくさんあります。

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 花が終われば、タイサンボクは上のような姿になります。 モクレン科の植物の芽は、花芽も含めて苞でしっかり守られているのですが、その苞の落ちた跡が確認できます。 ガク片と花弁も、落ちた跡では、はっきりと区別できます。
 そしてたくさんのオシベの落ちた跡が乱れた螺旋形に確認できます。 これから果実に変化していこうとするメシベもたくさんあります。 下の写真には、1つのメシベの柱頭と子房を示しておきました。
 このようにたくさんのオシベやメシベが“整理されずに”ついていることは、モクレン科の原始的な性質の1つとされています。

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 Magnolia属については、ホオノキやコブシなどもこの属で、花の基本的なつくりは互いによく似ています。 これらの花のメシベやオシベがたくさんあることは、ホオノキの冬芽の所でも触れました。 また、同じモクレン科に分類されるユリノキのところでも、モクレン科の花のつくりについて書いています。 モクレン科の花の特徴の共通性が理解いただけると思います。

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2012年7月25日 (水)

昆虫の脚はなぜ6本か

 ここにあった記事はこちらに引っ越しています。

 

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2012年7月24日 (火)

タケトアゼナ

 アゼナ(畔菜)は水田の畔などに生える在来の一年草ですが、これに似て明治以降に渡来した北アメリカ原産の帰化植物にアメリカアゼナがあります。 アゼナの葉にはきょ歯がありませんが、アメリカアゼナの葉にはきょ歯が見られます。
 このアメリカアゼナには、CタイプとRタイプと呼ばれる2つのタイプがあります。 Cタイプの葉の基部は細くなっていますが、Rタイプの葉の基部は丸く広がっています。 このアメリカアゼナのRタイプ(下の写真)は、タケトアゼナとも呼ばれています。 なお、「タケト」の意味は不明とされています。

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 タケトアゼナの花は、対生した葉の葉腋につき、長い柄があります。 花冠は2唇形で、多くの場合、下唇の基部には紫色の斑紋があります。 オシベは4本ありますが、そのうちの2本は退化して花糸のみとなり、葯は無くなっています。

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 アゼナもアメリカアゼナもアゼトウガラシ属に分類されています。 アゼトウガラシ属は、従来はゴマノハグサ科になっていて、APG分類体系ではオオバコ科に移されていましたが、最新のAPG分類体系第3版(2009年)ではアゼナ科として独立しています。

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2012年7月23日 (月)

クロヤマアリ

 クロヤマアリは体長5mm程度と適度に大きく、肉眼で種の見当がつけられるアリの中では、最もよく見かけるアリと言ってよいでしょう。 よく鳥の世界で「スズメより大きい」など、身近なスズメやハトと比較した表現が使われますが、クロヤマアリはアリを理解するときの基準として適しているのではないでしょうか。

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 上はミミズの死骸に集まっていたクロヤマアリですが、まずはクロヤマアリの体のつくりから見ていくことにします。
 アリはハチの仲間(膜翅目)です。 アリをはじめハチの仲間で“腰”のくびれた種類はたくさんいて、このくびれが胸部と腹部の境であると思いがちですが、じつはこのくびれは腹部の第1節と第2節との間になります。 腹部第1節は胸部と融合し、見かけ上は胸部の一部のようになっています。 このように胸部と融合した腹部第1節は「前伸腹節」と呼ばれ、腹部第2節以下を「膨腹部」と呼んでいます。 また、くびれから前を「中体節」、くびれから後を「後体節」という言い方もあります。
 しかし常識的にはくびれから後を腹部と見てしまいがちで、膨腹部の最初の節(正式には腹部第2節)を腹部第1節と言う事もあるようなので、下の写真にはこちらの名称を使っています。
 昆虫の胸部は、前胸、中胸、後胸の3節からなり、そのそれぞれから1対の足が出る(だから昆虫の脚は6本)ことは前にも書きました(こちら)が、下の写真にはそのことに関する名称も入れておきました。

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 クロヤマアリの体つきの特徴としては、横から見ると、前胸と中胸が1つの山状に盛り上がり、前伸腹節の高さはそれより低いことが挙げられます。

 アリは社会生活をする昆虫ですが、その社会の形態は様々で、1つの巣に1頭の女王がいる場合や、同じ巣に複数の女王がいる場合、例外的には女王が存在せず、働きアリが産卵もする場合もあります。
 クロヤマアリのケースでは、関東型と関西型があり、関東型は1つの巣に1頭の女王がいて、関西型は複数の女王が同じ巣で暮らしている( Wikipedia より)とのことです。

※ クロヤマアリはこのブログではこちらにも登場しています。

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2012年7月22日 (日)

ホルトノキ

 ホルトノキの花が咲いていました。

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 ホルトノキ、なんだか原産地が外国の木のような名前ですが、日本に自生する照葉樹林の高木層構成樹です。
 一説によれば、平賀源内がオリーブの木と間違えたためと言われています。 江戸時代、薬用に使われていたオリーブ油はポルトガルから運ばれてきており、ホルト油と呼ばれていました。
 ホルトノキはモガシという別名もあります。 ホルトノキの特徴のひとつとして、古い葉は年間を通して少しずつ落葉していきますが、落葉前には紅葉します。 つまり、年間を通して、いつも赤い葉が少しだけ混じっていることになります。 この赤い葉を、緑に混じる模様(紋)に見立てた「紋ガシ」「模様ガシ」がモガシになったと考えられます。
 ホルトノキはホルトノキ科に分類されています。 なお、ホルトノキ科は熱帯・亜熱帯に分布の中心があります。

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 ホルトノキの花は6~7月に咲きます。 花は両性花で下向きに咲き、5枚の花弁は糸状に裂けています。

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 上は若い花で、オシベがたくさん見られます。 これらのオシベは花粉を出しつくすと、枯れて落ちていきます。 下の写真の花はオシベがほとんど無くなり、橙色の蜜腺が目立っています。

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 下の写真の花はオシベも花弁も落ちてしまっています。 メシベに関しては、終始あまり変化は無いようです。 受粉能力は変化しているのでしょうか。

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 下は11月下旬に撮ったホルトノキです。 オリーブに似た青い実がついています。 この実は熟すと藍黒色になります。

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 上の写真でも、上に書いた赤い葉が混じっています。

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2012年7月21日 (土)

チャイロチョッキリ

 チャイロチョッキリがクモの巣に引っかかっていました(堺自然ふれあいの森)。 ここで何があったのか、このクモの巣は同じ写真に写っているクモのものなのか別のものなのか、チャイロチョッキリの左上翅は欠けて下翅が折りたためない様子ですが、体にクモの糸は巻きつけられていませんし、脚を動かしています。

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 クモの餌を取り上げるのならクモに悪いのですが、状況から見てそうでも無さそうなので、チャイロチョッキリを助けることにしました。
 ところが、葉の上に載せてやると、すぐに葉の裏に回ってしまいました。 チャイロチョッキリはよく飛ぶのですが、飛び去ってしまわないだけで、良しとしましょう。

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 しかし改めてよく見ると、毛深いですね。 脚から触角まで、長毛の見当たらないのは下翅と複眼くらいです。

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 チャイロチョッキリはクリ、コナラ、カシ類の葉にいるところはよく目撃されていますが、自然状態での産卵行動は、まだ知られていないようです。

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2012年7月20日 (金)

ノギラン

 ノギランは年間を通して湿った場所に生育するユリ科の多年草です。 蘭でない「○○ラン」はたくさんあります。 ノギランの場合は、葉に比較して花がよく目立つからでしょうか。

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 葉が目立たないのは、根生葉だけだからです。 根生葉だけですと、多くの植物が育つ条件のいい場所では、上を覆われて光合成できなくなってしまいます。 湿地では根が呼吸しにくく、多くの植物にとって生育に適した条件とは言えません。 ノギランは競争を逃れて生活しているのでしょう。
 花期は6~8月、花被片6枚(ガク片3枚と花弁3枚)、オシベは6本です。 人の目には派手さは感じない花ですが、いろんな虫が来ていました。

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 虫たちが来ているのは蜜を求めてでしょう。 メシベの子房の上部に緑色の部分があります。 変な位置ですが、蜜はここから分泌されているのでしょう。

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 ノギランを漢字で書くと「芒蘭」です。 芒(のぎ)とはイネ科植物の果実の穎(えい)に見られる針状の突起です。 ネットで見ると、ノギランの花の細長い花被片が芒に似ているからと書かれているものがあるのですが、私はノギランの花からは芒を感じることはできません。
 ノギランの花被片は花が終わっても残存します。 果実を守っている枯れた花被片こそ芒に似ているのではないでしょうか。

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2012年7月19日 (木)

ナガヒラタムシ

 写真は堺市の鉢ヶ峯公園墓地にいたナガヒラタムシです。 ナガヒラタムシは甲虫のなかで最も原始的なグループ(始原亜目)に分類されています。 化石も古生代の終わりのペルム紀の地層から見つかっているそうです。

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 体は細長く、体の両側は平行です。 長く糸状の触角は11節からなっていますが、基部から2つめの節が小さく、見落としてしまいそうです(下の写真)。 前胸背板は前角が尖っていて、前後に伸びる中央隆起の両側は窪んでいます。 上翅には格子状の点刻列があります。
 幼虫は朽木(の中にいる腐朽菌?)を食べていますが、成虫が何を食べているのかは、よく分かっていないようです。
 ナガヒラタムシ科の昆虫は、日本にはナガヒラタムシとヒメナガヒラタムシの2種しかいません。 ヒメナガヒラタムシもよく似た体型をしていますが、ヒメナガヒラタムシの上翅には細長い斑紋が散らばっています。

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2012年7月18日 (水)

オオアブノメ

 オオアブノメは水田などに生える1年草です。 とは言っても、東北地方には多いとも聞いていますが、少なくとも近畿地方では、水田ではほとんど見ることができなくなっています。 原因は農薬の使用でしょうか、それとも、水田の管理形態が変化し、その変化に植物が対応できないからでしょうか。 いずれにしても、絶滅が危惧されている植物は、美しい花を咲かせて盗られてしまう植物だけではなく、あまり目立たない植物が知られないままに絶滅に向かっているケースもたくさんあります。

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 オオアブノメの茎は太く円柱形で、葉は対生で葉柄がなく、基部は茎を抱いています。 葉柄に1つずつ付く花は小さく、花の内部の様子は、そのままではなかなか写真には撮れませんが、2本のオシベと、2本の仮オシベがあります。

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 上に書いたように、小さな花はあまり開かず、訪花昆虫もあまり見られないのですが、1枚目の写真のように、ほとんどの葉腋に、つまりほとんどの花の後に果実ができています。 もしかしたら自家受粉しているのかもしれません。
 オオアブノメの名前は、この1本溝の入った蒴果が褐色になった時の様子が虻の目に似ているところからと言われています。

 オオアブノメは、従来はゴマノハグサ科に分類されていました。 しかし、ツタバウンランキクガラクサのところに書いたように、APG植物分類体系ではオオアブノメ属もオオバコ科に移されています。

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2012年7月17日 (火)

クサモグリガの一種のダンス

 クサモグリガは幼虫が草の葉に穿孔して育つ小さな蛾の仲間です。 そのクサモグリガ(種名は分かりません:頭から翅端までの長さは4.2mm)が、公園のベンチの上でダンスをしていました。
 写真を撮ろうとして一度は逃げられたのですが、この場所に惹かれる何かがあるのか、しばらくするとほとんど同じ場所に飛来してダンスを始めました。

 上の動画のように、しばらく踊っていましたが、踊るのを止めると全く動かなくなりました。 下の写真は、動かなくなってから撮ったものですが、特に何かをしているようには見えません。

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 あまり動かないので指で触れてみると、パッと飛んでいきました。

 これに似た行動は、たぶん別種だと思いますが、同じクサモグリガの一種で、Hepotaさんが記録されています(こちら)。 また、YouTube を探してみると、下のように、いろんな小蛾の同様な行動がいくつかみつかりました。
 カザリバの一種 
 ヒメハマキの一種 
 クロオビシロフタオ 

 これらの小蛾がダンスをする理由については謎ですが、私は配偶行動の可能性もあると思っています。 その理由の1つは、これらの蛾の触角はいずれも細いもので、性フェロモンを効率よく受け取れるとは思えないことです。 もう1つは小さい蛾であることです。 小さいことは鳥などの捕食者の眼を逃れるのにはいいのでしょうが、同種の仲間からも認識されにくいでしょう。 これらのダンスが目立つ場所で行われていることも理由の1つに挙げられます。
 多くの蛾では、オスがメスの所に行きます。 もしもオスがダンスでメスを呼んでいるのだとしたら、おもしろい現象です。

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2012年7月16日 (月)

ヒメクグ

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 ヒメクグは湿地に多い多年草です。 地下茎が走り、その節ごとに茎が地上に伸び、茎の先に丸い花序が1つついています。 花序の基部には細長い苞葉が3枚ほどついています。

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 小穂は雌性先熟です。 下の写真では二股に分かれた柱頭が伸びています。 オシベはまだ見当たりません

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 下の写真では、細長いオシベの葯から花粉が出ています。 よく見ると、ほとんどのメシベの柱頭は縮れてしまっています。

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 ところで、ヒメクグの「クグ」とは何でしょうか。 ヒメクグは漢字では「姫莎草」と書かれています。 「姫莎草」は「小さな莎草」ですが、「莎」は「沙」の「草」でしょう。
 漢和辞典で「沙」を調べると、「砂」や「水辺」の意味のようです。 「沙」は同じ「サ」の「砂」とつながり、さんずい(シ)ですから、水辺の砂地などを指すようです。 つまり「莎草」は水辺の砂地に生えるある種の草を指すと考えられます。
 一方、「クグ」はハマスゲの古名のようです。 ハマスゲの古名と「莎草」という漢字が意味する植物とが結びつき、「莎草」を「クグ」と読むようになったと考えられます。
 当初ハマスゲを意味していた「莎草(クグ)」は、その後に意味が広がり、同様な形態のカヤツリグサの仲間も指すようになっていったと思われます。

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2012年7月15日 (日)

イシノミの一種

 シロウツボホコリに近づく何やらあやしげな虫、写真を撮ろうとファインダーを覗くと、姿はどこにも無い・・・。 しばらくすると、少し離れた所から、またシロウツボホコリに近づいてきます。
 そんなことを何回か繰り返して分かりました。 驚くと、腹面を打ちつけてジャンプしてしまいます。 石の上にいて(この場合は朽木の上ですが・・・)、蚤のようにジャンプするのでイシノミ(の仲間)です。 種名は調べたのですが分かりませんでした。
 調べてみると、イシノミの仲間は陸生の微細な藻類を食べるとありましたので、粘菌も食べるのか、粘菌といっしょに生えている朽ち木上の微細藻類が目当てなのか・・・。

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 イシノミの仲間は、体は鱗粉に覆われ、長い触角と3本の尾を持っています。 翅はありません。 一見古い本などにいるシミ(衣魚、紙魚)に似ていますが、別系統であることが分かっています。 体つきもシミのように扁平ではありません。
 イシノミの仲間は原始的な形質を持つ昆虫です。 イシノミ以外の昆虫の大顎は頭蓋と2ヶ所で関節しているのですが、イシノミの仲間だけは、大顎が頭蓋と1ヶ所だけで関節しています。 また、上に書いたように翅を作れませんし、幼虫と成虫の姿はほとんど同じです。 寿命は長くて、約3年生きるとのことです。
 交尾器も持っていません。 生殖に関していえば、形態の不備を行動で補っています。 オスは糸を分泌し、その上に精液を点々と落としておき、複雑な配偶行動でメスの生殖口から精液が取り込まれるようにメスを誘導します。

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※ 写真はクリックで拡大します。

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2012年7月14日 (土)

シロウツボホコリ

 写真は変形菌のシロウツボホコリだと思います。 堺自然ふれあいの森の朽ち木の上で、たくさんの子実体を形成していました。(写真は2枚ともクリックで拡大します。)

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 最近は生物を植物と動物に二分する分類はほとんど行われなくなりましたが、この変形菌を植物・動物のどちらかに入れるとすれば、動物に入ります。
 変形菌については、このブログでもこれまでに、ムラサキホコリツヤエリホコリツノホコリタマツノホコリなどを載せてきました。 生活環などについてはそちらに書いてきましたので、今回は重複を避けます。

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 写真の子実体は、高さが約2mm、幅は0.7mmほどです。 国立科学博物館のHPによると、高さは4mmくらいにまでなるものもあるようですが、子実体の高さは変形体の状態により変ってくるものでしょう。

※ 大阪府の変形菌の様子を知ることができる調査記録として、下記のものがあります。
 大阪府河内長野市で採集された変形菌類とその子実体の季節性
 田中久美子・佐久間大輔  大阪市立自然史博物館研究報告58号

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2012年7月13日 (金)

ルリハムシ

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 上はヒメヤシャブシにいたルリハムシです。 このハムシ、カメラを近づけると逃げ出しました。 飛ぼうとはしないのですが、止まってくれません。 で、家まで連れて帰って撮ったのが下の写真です。 なお、上の写真も下の写真もフラッシュを使用しています。
 写真はクリックで拡大します。

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 下は別の日に撮った、ケヤマハンノキ上のルリハムシです。 こちらは自然光での撮影です。

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 このようにルリハムシは金属光沢のある美しいハムシですが、このハムシには色彩変異が多いようで、上の2個体を比較しても、少し違います。 名前は瑠璃色のハムシということですが、ネットで見るかぎり、そのような黒っぽいものは東北地方などに多いようで、近畿地方では赤銅色~金緑色のものが多いようです。
 上でなかなか飛ばないと書きましたが、そのせいもあるのでしょうか、地理的な分化が進んでいるようです。 少なくとも近畿中央部では上の写真のように脚の黒っぽい個体が多いのですが、本州太平洋岸では脚が黄褐色、四国・九州では前胸と脚が橙黄色の個体が多いとのことです。
 食餌植物は、上の写真のように、ハンノキやヤシャブシなどのカバノキ科の葉のようです。

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2012年7月12日 (木)

オオバノトンボソウ

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 このブログで前にコバノトンボソウを載せましたが、今回はオオバノトンボソウです。 コバノトンボソウは湿原に生育しますが、オオバノトンボソウは丘陵や低山の林縁や明るい林床に生育します。
 名前のとおり下方には比較的大きな葉をつけますが、上方になるにつれ、葉は次第に小さくなります。 「大葉」と言われながらも、花に比べて葉が少ない印象ですが、これもこれまで何度か書いてきたように、ラン科の植物は菌類と深い共生関係にあり、効率よく肥料分の供給を受けているからでしょう。
 オオバノトンボソウは、コバノトンボソウなどと共に、ツレサギソウ属に分類されています。 ややこしいですが、別にトンボソウ属があって、トンボソウやヒロハトンボソウなどがこれに属します。

 下は1つの花を撮ったものですが、トンボが飛んでいるように見えるでしょうか。

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 花のつくりを見ていくことにします。 ラン科は単子葉類で、基本的にはガク片3枚、花弁3枚、オシベ3本なのですが、花は左右相称になり、さらに特殊化して分かりにくくなっています。

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 花の基本からすれば、花の向きは花柄の伸びる方向つまり上向に咲くのですが、多くのラン科の花は左右相称となり横向きに咲きます。 ところがオオバノトンボソウの花は、さらに曲がって下向きに咲きます。 多くのラン科では、3枚の花弁のうちの1枚が、他の2枚と異なる姿となり、唇弁と呼ばれています。 この唇弁は、横向きに咲く場合には、本来は上に来る花弁です。 ところが多くのラン科の花では花の下方にある子房の部分が180°ねじれて、唇弁は下方に位置することになります。 オオバノトンボソウの場合は、上に書いたように花は下に向いていますから、唇弁は茎の方に伸びることになります。 唇弁の一部は長く伸び、蜜を貯めておく距(きょ)になっています。
 唇弁以外の2枚の花弁(側花弁)は、1枚のガク片(背ガク片)と共に、蕊(ずい)柱(=オシベとメシベが合着したもの)をドーム状に覆うようになります。 他の2枚のガク片は左右に開き、“トンボの翅”になります。

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 上はオオバノトンボソウの花を下から覗き込んだものです。 ラン科の花はオシベとメシベが合着して蕊柱となっていることは上に書きました。 オオバノトンボソウの蕊柱は半筒形をしています。
 もうひとつ、このオオバノトンボソウの花を理解するにあたっては、オシベについての知識が必要になります。 一般的に1本のオシベの葯には花粉を入れておく葯室が左右2ヶ所あり、左右の葯室をつないでいる部分を葯隔と呼んでいます。 ふつうはこの葯隔は幅の狭いものなのですが、オオバノトンボソウの葯隔は、たいへん幅の広いものになっていて、葯室は左右に離れて位置します。
 オオバノトンボソウの学名は Platanthera minor ですが、この属名はギリシャ語の platys(広い)+anthera(葯)に由来しています。 これは上に書いたように、葯に相当する部分が幅広いことを意味しています。 ちなみに種小名の minor は、「小さい」という意味ですが、これは同じ属のツレサギソウ(これが属の基本となっていて、学名も P. japonica です)と比較して、小さな花をつけるところからきています。
 花のつくりに話を戻します。 最初の方で、ラン科の花のオシベは本来は3本あると書きました。 そのうちの1本は退化して蕊柱の形成に使われ、葯はみあたりません。 残りの2本のオシベを重ねて左右に引き伸ばします。 そのうちの後方に位置するオシベの葯は退化し、仮オシベとなります。 手前に位置するオシベが受粉に役立つ花粉を作ります。
 ラン科の花粉は塊になっていて、まとめて虫に運んでもらいます。 花粉を媒介する昆虫が蜜を求めて、上の写真の距の入口から口を差し込みます。 もしこの昆虫が花粉塊を体につけていたら、その花粉塊は柱頭にこすりつけられるでしょう。 この時、虫の体が粘着体(上の写真)に触れると、粘着体は虫の体にくっつきますが、この粘着体は小柄で葯室にしまわれている花粉塊につながっています。 こうして花粉塊は虫に運ばれることになります。
 下は花の中心部を正面から撮ったものですが、写真に向かって右側の葯室が空になっています。 もちろん粘着体も見当たりません。

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2012年7月11日 (水)

ニセクロホシテントウゴミムシダマシ

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 小さい体なのに長い名前を持っています。 ただ、この長い名前は、この虫の名前が長いというよりは、この虫の属するグループの名称が長いのです。
 ニセクロホシテントウゴミムシダマシは、ゴミムシダマシ科テントウゴミムシダマシ亜科に分類されている甲虫です。 ただ「テントウゴミムシダマシ」という亜科名の意味を考えると、和名は、「ゴミムシの仲間に似たゴミムシダマシの仲間がいて、そのなかにテントウムシに体型が似ているグループがあり、そのグループの中に黒い斑紋(星)のあるもの(クロホシテントウゴミムシダマシ)がいて、それに似ているが少し違うもの」ということになります。 軽視されたものほど名前は長くなるんですね・・・。
 クロホシテントウゴミムシダマシに翅の模様や大きさはよく似ていますが、本種は前胸背面の翅に近い所が黒くなっています。

 

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 ゴミムシダマシ科の多くは、腐植や菌類などを食べる動きの遅い昆虫です。
 写真のニセクロホシテントウゴミムシダマシは、金剛山の山頂付近の石柱にたくさんいました。 石柱の表面に生えた古いコケを食べているのか、コケに育つ菌類を食べているのか・・・。
 大きさは、約3.5mm、小さいですが、光沢があり、眼を凝らすとなかなか美しい虫です。

 

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2012年7月10日 (火)

ツキヨタケ

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 上は金剛山で撮ったツキヨタケです。 新鮮なツキヨタケですと、暗くなるとボヮ~と光るのでしょうが、昼間だと“普通の”キノコです。 なお、光るのは、ツキヨタケ中に含まれるランプテロフラビンという成分によるもののようで、菌糸も光るそうです。
 ツキヨタケは、夏から秋に、ブナやミズナラなどの枯れ木に群生する毒キノコです。 表面は若いうちは黄橙褐色ですが、成熟すると紫褐色~暗紫褐色となります。 ひだは柄に垂生します。 柄は傘のほとんど横につき、ひだの付け根との境に隆起帯があります。

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 上で“普通の”と書きましたが、シイタケ、ムキタケやヒラタケなど、食用となるキノコとよく似ていて、日本での毒キノコ中毒例の半数以上がツキヨタケによるもの(毎年数十人)と言われています。
 ツキヨタケを誤食しますと、食後約30分から3時間ほどで嘔吐や下痢などの症状が現れ、最悪の場合は脱水症状などで死に至ることもあるそうです。
 よく言われている見分け方は、ツキヨタケの柄を裂くと、基部にシミのような黒っぽい部分が見られることです(下の写真)。 ただし若いキノコでは、この黒っぽい部分が不明瞭なものや無いものもあるので、注意が必要です。

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2012年7月 9日 (月)

オオウロコチャタテ

 ここにあった記事は、他の記事と合わせ、こちらに引っ越しています。

 

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2012年7月 8日 (日)

オオチドメ

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 オオチドメは山際の湿り気のある道端などに群生する夏緑の多年草で、地面を這うように枝分かれしながら茎を伸ばしていきます。
 名前は、チドメグサに似て全体が少し大きいからですが、よく似た名前のものにオオバチドメがあり、これはチドメグサの仲間でいちばん葉が大きく、葉の径は3~6cmにもなります。

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 花は6月から夏にかけて咲きます。 多くのチドメグサの仲間は花を葉より低くつけるのに対し、オオチドメの花柄は長く、花は葉の上に突きだして咲きます。
 オオチドメはセリ科です。 小さくても他の多くのセリ科の植物同様、散形花序(1ヶ所にたくさんの花がいろんな方向に向いてつく)です。 ただし多くのセリ科は複散形花序ですが、さすがにこれだけ小さな草では複散形花序は無理で、単散形花序です。
 花のつくりも他のセリ科と同じで、花弁が5枚、オシベ5本で、メシベは2本です。

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 上の花序では下半分は花が終わり、果実になりかけています。 果実の様子も他の多くのセリ科とよく似ています。

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2012年7月 7日 (土)

オオヒラタシデムシ

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 オオヒラタシデムシは、春から秋まで、平地から山地まで普通に見られるシデムシの仲間です。 オオヒラタシデムシはヒラタシデムシによく似ていますが、ヒラタシデムシは北海道にしか分布しないので、近畿に住んでいる者にとっては、分類に悩まなくても済みそうです。
 このブログでは以前にヨツボシモンシデムシを取り上げていますが、シデムシの仲間は、生き物の死骸を餌にしている虫で、死体があると出てくる虫というわけで、漢字で書くと「死出虫」です。

 下は上と同じ日に別の場所で撮ったオオヒラタシデムシで、このような、腹部が翅から出ているオオヒラタシデムシもよく見ます。 最初は雌雄の違いかなとも思っていたのですが、そうでもなさそうです。 オオヒラタシデムシの腹部は伸び縮みするのでしょうか?

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 ところで、ヒラタシデムシの仲間は、交尾のときに、上にいるオスが下にいるメスの触角をくわえて動きを制限するようです。 おちゃたてむしさんBABAさんなどのブログにはその様子が載せられています。
 最初の写真のオオヒラタシデムシは右の触角が途中で切れていますが、交尾の時に切れてしまったというのは想像を逞しくしすぎかな?

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2012年7月 6日 (金)

イチヤクソウ

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 林床で咲くイチヤクソウ、撮影の時期が少し遅れて、散りかけの花が茎の先端部分に少し残っているだけ。 上の写真の花も花弁が揃っていないのですが、花の内部が見えていいかと、花弁の欠けている側から撮ったものです。 なお、イチヤクソウの花は合弁花で、不思議なことですが、花弁はこのような散り方をします。

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 上は全体を撮ったものですが、葉に比較して、花や花をつけている茎の割合が大きく見えます。 これでもこのイチヤクソウの生えている場所は暗すぎて、イチヤクソウとしては花が少ない方です。 よほど効率のいい生産活動(=光合成)をしているはずで、じつはイチヤクソウは菌類と共生し、アーブトイド型菌根を形成していることが知られています。
 タシロランの所でも書きましたが、植物と菌類の共生では、植物は光合成産物を菌類に提供し、菌類は土中の無機塩類を効率よく集め、植物に提供しています。 ところがイチヤクソウの場合は、自身の光合成では、生きていくのに十分な有機物を合成できていないようです。 つまりイチヤクソウは、自身でも光合成をしますが、有機物も菌から提供してもらっているようです。 ですから、上で「共生」と書きましたが、正しくは「半寄生」と書くべきです。
 イチヤクソウは葉に比較して花の量が多く、花も純白で、仲間のベニバナイチヤクソウなどと共に山草愛好家に人気のある植物です。 しかしイチヤクソウを育てるには、菌類が元気に育つ環境が必要で、鉢植えや庭植では不可能です。 販売されているイチヤクソウは山から取ってきたものですし、購入しても次第に小さくなり、2~3年育てるのがやっとのようです。 イチヤクソウは、鉢で育てることは止めて、自然の中で楽しむだけにしたいものです。
 なお、イチヤクソウの種子も、とても細かく、単独で育つための栄養分の貯えも持っていません。 種子の発芽初期から菌類の助けを得ています。

 イチヤクソウの名前は、この草のみで多くの薬効があることからの名前のようです。
 なお、イチヤクソウは従来はイチヤクソウ科に分類されていましたが、APG植物分類体系では、シャクジョウソウ科とともに、ツツジ科シャクジョウソウ亜科とされています。

(参考)シャクジョウソウ

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 キシメジ科キシメジ属の菌類に寄生する菌従属栄養植物です。

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2012年7月 5日 (木)

モートンイトトンボ

 モートンイトトンボは春の盛りから秋の初めにかけて出現するイトトンボです。 イトトンボの中でも小型で、体長は3cm前後ですが、とても細いので、すぐに見失ってしまいます。
 ちなみに、モートンとはイギリスの昆虫学者 Kenneth j Morton(1858-1940)に由来します。

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 上は成熟したオスで、胸が青緑色、腹部は明るいオレンジ色で、なかなか美しいイトトンボです。 上の写真はお食事中です。

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 上は成熟オスを斜め後から撮ったものです。 青い眼後紋は「へ」の字型をしています。

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 上は成熟したメスです。 頭部・胸部・腹部とも青緑色で、腹部背面には黒条があります。

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 上は未成熟メスで、体全体が橙黄色です。 腹部が少し曲がっていますが、どうしたんでしょうね。

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2012年7月 4日 (水)

サジオモダカ

 

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 サジオモダカは湿地や水辺に生えるオモダカ科の大型の多年草で、盛んに分枝する花茎は高さ1mを超えます。 和名は、葉の形が、葉身と葉柄がはっきり区別できるさじ(スプーン)型であることによります。

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 地中に大きな塊茎がありますが、この塊茎は漢方では沢瀉(たくしゃ)と呼ばれ、抗腎炎作用があるようです。
 自生地は北日本で、西日本などで見られるものは、薬用植物として栽培されているものが逸出したものと考えられています。

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 花は夏、花の色は白~桃色です。 多くの単子葉植物がそうであるように花は3数性で、ガク片3、花弁3、オシベは6本(3+3)です。 メシベはたくさんあり、細い柱頭が束のようになって伸びだしています。

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2012年7月 3日 (火)

オオセンチコガネの色彩変異

 このブログでは、前に奈良公園のオオセンチコガネ(ルリセンチコガネ)を載せています。 その時に、オオセンチコガネの色は地域によって変異がることを書きましたが、今回は北摂で赤色~金色~緑色の混じったオオセンチコガネを撮ることができました。(写真は3枚とも、クリックで拡大します。)

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 上と下は同一個体なのですが、上はフラッシュ使用、下はフラッシュを使っていません。

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 フラッシュを使えば赤っぽくなるのかといえば、そうでもなく、下はフラッシュを使っていますが、緑っぽい色になっています。 もちろん下も同一個体です。

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 このように体の色は見る角度によって、つまり光の反射する角度によって変ります。 これは発色に構造色(光の干渉による色)が関係しているからでしょう。

 オオセンチコガネの色については、紀伊半島~奈良に生息するものは青味が強く、近畿中央部には緑色が多く、それ以外の場所では赤色が多い傾向があるようです。 とにかく、オオセンチコガネは近畿地方において様々な色彩のものが見られるのですが、このような色彩の違いが生ずる理由については、よく分かっていません。

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2012年7月 2日 (月)

ホタルブクロの花

 ホタルブクロの花が咲いてきました。 この花の花色には白色のものと赤紫のものとがあり、関西では白色が多く、関東では赤紫が多いようです。

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 ホタルブクロはキキョウ科の多年草です。 キキョウ科の花の多くは、自家受粉を避けるために、次のような変化をします。
 ① メシベの花柱の周囲ににオシベの葯が集まり、花粉を花柱の周囲につける。
   このとき、柱頭は閉じたままで、受粉はできない。
 ② この花粉を訪花昆虫に運んでもらう。
 ③ メシベの柱頭が開き、訪花昆虫が運んでくる花粉を受粉できるようになる。
 このことはキキョウのところで詳しく書きましたし、ツリガネニンジンやソバナシデシャジンキキョウソウなどもキキョウと同様の変化をします。 また、全く違った花のように見えるミゾカクシサワギキョウでも、雄性先熟であることやメシベの周囲に花粉を出しておくことなどの基本は同じです。(だからミゾカクシもサワギキョウもキキョウ科です。)

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 これらのことをホタルブクロで確認しようと、花の断面を作ってみました(上の写真)。 咲いたばかりの花を切ったつもりで、たしかに柱頭はまだ開いていないのですが、既にオシベは花柱から離れています。 それに花粉がついている所とオシベの長さが違いすぎます。
 それならばと、下のようなまだ開いていない花の断面を作ってみることにしました。

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 上のツボミの断面が下です。 開いている花の断面の様子と、ほとんど変りません。

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 それならばと、もっと若い、下のようなツボミの断面を作ってみることにしました。

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 下が上のツボミの断面です。 こんな時期に花粉をメシベの花柱につけていたんですね。 花柱にはたくさんの毛が生えています。 この毛でオシベから出される花粉を剥ぎ取りながら、花柱は伸びていくのでしょう。 そしてこの後、花冠も横に膨れながら長く伸びていきますが、花粉を出し終えたオシベは伸びずに、次の役割に専念するようです。

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 ホタルブクロの花は、ちゃんと花粉を運んでもらう準備を整えてから開花するようです。

 もうひとつ、ホタルブクロの花で、おもしろい特徴があります。 オシベの花糸の根元付近が幅広くなるとともに湾曲し、ドーム状の部屋を形成しています。 このドームの入口にはたくさんの毛が生えています。 このドームは蜜を貯めておく部屋なのでしょう。 このドーム形成がホタルブクロのオシベの第二の役割です。 このような傾向は他のキキョウ科の花でも見ることができますが、下向きに咲くホタルブクロの花では、たいへんはっきりしているようです。

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 花が下向きに咲くことは、花粉などを雨から守るためには有効でしょう。 しかしそのままなら、虫を呼ぶ蜜も下に流れて落ちてしまいます。 このようなドームを形成し、その出入り口を毛で塞いでおけば、蜜は表面張力でこぼれませんし、昆虫は毛の隙間から口を差し込んで蜜を吸う事ができます。
 ホタルブクロの花冠は長く、花の外から口を伸ばして蜜を吸う事はできません。 虫たちは花の中に入り、花粉のついた長い花柱につかまって蜜を吸おうとし、その時に花粉が体に付くのでしょう。 虫が花柱ではなく花冠の内側にとまらないように、花冠の内側には毛が生えています。

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2012年7月 1日 (日)

オトシブミ

 このブログでは、これまでに、ヒメクロオトシブミヒゲナガオトシブミカシルリオトシブミヒメゴマダラオトシブミゴマダラオトシブミアシナガオトシブミなどのオトシブミの仲間を記事にしてきましたが、今回は“本家本元”の、オトシブミというオトシブミです。 クリの木にいました。

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 上がオス、そして下がメスです。

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 オトシブミにはいくつかの色彩型が知られていて、上の色が最も普通ですが、全体が黒色のものや、両者の中間のものも知られています。 九州では前胸の一部か赤いものもいるようです。

 オトシブミは2つの型の揺籃を作ります。 ひとつは円柱形に近い両裁型で、これは切り落とされます。 もうひとつは単裁型で、これは切り落とされずに樹上に残ります。
 今回、写真のオトシブミのいたクリの木に、下のような揺籃がありました。 揺籃作りは見ることができなかったので、これがオトシブミの揺籃であるという自信はありませんし、オトシブミの揺籃にしては少し粗すぎる気もするのですが、クリのような細長い葉で作るオトシブミの単裁型の揺籃は、写真のようになるのかもしれないと思い、いちおう載せておくことにします。

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※ オトシブミの仲間の揺籃の作り方や揺籃の様子は、それぞれの種で少しずつ異なるのですが、一例としてアシナガオトシブミの揺籃づくりの顛末(てんまつ)はこちらに載せています。

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