ホタルブクロの花が咲いてきました。 この花の花色には白色のものと赤紫のものとがあり、関西では白色が多く、関東では赤紫が多いようです。
ホタルブクロはキキョウ科の多年草です。 キキョウ科の花の多くは、自家受粉を避けるために、次のような変化をします。
① メシベの花柱の周囲ににオシベの葯が集まり、花粉を花柱の周囲につける。
このとき、柱頭は閉じたままで、受粉はできない。
② この花粉を訪花昆虫に運んでもらう。
③ メシベの柱頭が開き、訪花昆虫が運んでくる花粉を受粉できるようになる。
このことはキキョウのところで詳しく書きましたし、ツリガネニンジンやソバナ、シデシャジン、キキョウソウなどもキキョウと同様の変化をします。 また、全く違った花のように見えるミゾカクシやサワギキョウでも、雄性先熟であることやメシベの周囲に花粉を出しておくことなどの基本は同じです。(だからミゾカクシもサワギキョウもキキョウ科です。)
これらのことをホタルブクロで確認しようと、花の断面を作ってみました(上の写真)。 咲いたばかりの花を切ったつもりで、たしかに柱頭はまだ開いていないのですが、既にオシベは花柱から離れています。 それに花粉がついている所とオシベの長さが違いすぎます。
それならばと、下のようなまだ開いていない花の断面を作ってみることにしました。
上のツボミの断面が下です。 開いている花の断面の様子と、ほとんど変りません。
それならばと、もっと若い、下のようなツボミの断面を作ってみることにしました。
下が上のツボミの断面です。 こんな時期に花粉をメシベの花柱につけていたんですね。 花柱にはたくさんの毛が生えています。 この毛でオシベから出される花粉を剥ぎ取りながら、花柱は伸びていくのでしょう。 そしてこの後、花冠も横に膨れながら長く伸びていきますが、花粉を出し終えたオシベは伸びずに、次の役割に専念するようです。
ホタルブクロの花は、ちゃんと花粉を運んでもらう準備を整えてから開花するようです。
もうひとつ、ホタルブクロの花で、おもしろい特徴があります。 オシベの花糸の根元付近が幅広くなるとともに湾曲し、ドーム状の部屋を形成しています。 このドームの入口にはたくさんの毛が生えています。 このドームは蜜を貯めておく部屋なのでしょう。 このドーム形成がホタルブクロのオシベの第二の役割です。 このような傾向は他のキキョウ科の花でも見ることができますが、下向きに咲くホタルブクロの花では、たいへんはっきりしているようです。
花が下向きに咲くことは、花粉などを雨から守るためには有効でしょう。 しかしそのままなら、虫を呼ぶ蜜も下に流れて落ちてしまいます。 このようなドームを形成し、その出入り口を毛で塞いでおけば、蜜は表面張力でこぼれませんし、昆虫は毛の隙間から口を差し込んで蜜を吸う事ができます。
ホタルブクロの花冠は長く、花の外から口を伸ばして蜜を吸う事はできません。 虫たちは花の中に入り、花粉のついた長い花柱につかまって蜜を吸おうとし、その時に花粉が体に付くのでしょう。 虫が花柱ではなく花冠の内側にとまらないように、花冠の内側には毛が生えています。
最近のコメント