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2012年6月30日 (土)

ゴムタケ

 いろんな生物が住む里山は人の手が加わってこそ維持が可能です。 「堺自然ふれあいの森」では里山復元をめざした維持管理が行われている(と私は思っている)場所です。
 堺自然ふれあいの森の中には、切り倒されて、榾木(ほだぎ)の長さほどに切断された木の幹もたくさん置かれています。 そのうちのコナラに、たくさんのゴムタケが発生していました。

Gomutake120622_1

 上の写真、手前は若いゴムタケで、側面は鱗片で覆われたように見えますが、生長するに伴い、上面の黒い部分が全体を覆うようになります。
 ゴムタケはナラ類の倒木などに発生するキノコで、子のう菌類のズキンタケ科に分類されています。 触ってみると、弾力があり、まさに「ゴム」です。 断面を作ってみると、子のう盤全体が寒天質の菌組織からなっています(下の写真)。

Gomutake120622_2

 何冊かのきのこの図鑑を見ると、ゴムタケは食用キノコでも毒キノコでもないと書かれています。 しかし少し調べた結論からすると、ゴムタケは食用になるし、ガンにも効くようだが、食用にするには外見が邪魔をしている、ということのようです。 ゴムタケには紛らわしい毒菌はありませんし、ガンに効くムコ多糖類がとてもたくさん含まれている、ということのようです。 しかし私の体には今のところガン組織は見つかっていませんので、プニュプニュ感を楽しむに留めておきたいと思います。

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2012年6月29日 (金)

オオムラサキ(オス)

 やっとオオムラサキのオスの成虫の写真を撮ることができました。

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 上は、クヌギの幹の低い場所で出ている樹液に来た時の写真ですが、翅の表を撮るには、飛んで来てクヌギの幹にとまり、樹液の所へ行くまでが勝負のようです。 しかし、この時の移動は速くてシャッターチャンスとなる時間は短く、またこの時に下手に近づきすぎると、すぐに逃げてしまいます。

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 樹液を吸いはじめると、かなり近づくことができるのですが、翅は開いてくれません・・・。

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 飛んでいるところも何度か見たのですが、高い所で、とまるのも木の高い所です。 オオムラサキのオスはメスよりも少し小さく、飛んでいる様子もメスの方が力強く感じました。

※ オオムラサキのメスはこちらで、越冬幼虫の様子はこちらで記事にしています。

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2012年6月28日 (木)

ビロードモウズイカ

 ビロードモウズイカは、ヨーロッパの地中海沿岸が原産で、日本には明治時代初期に渡来し、観賞用に栽培されていましたが、現在は各地に野生化しています。 野生化は日本だけではなく、アジア、南北アメリカ、オーストラリアでも見られるとのことです。 高さは2mにも達する大型の草ですが、多年草ではなく、2年草です。

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 写真は舗装道路の脇で咲いていますが、堤防のコンクリートの隙間や自動車道の法面などの乾燥しやすい所にも見られます。 地中海性気候は冬に雨が多く夏は乾燥するので、乾燥には強いようです。
 乾燥に耐えるしくみのひとつが「ビロード」で、全体に白色の綿毛がたくさん生えています。 下は葉の裏を撮ったものですが、この毛で葉面などに直接風が当たるのを防ぎ、気孔からの水の蒸散を防いでいるのでしょう。

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 下は葉の裏の毛を拡大したものですが、この毛は輪生状に枝を分けた特異な姿をしています。

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 もっとも、この毛は乾燥に対するしくみではあっても、日本の夏の暑さが気になるところです。 実際、日本での野生化の状況を見ると、北海道や東北に多いようで、私がはじめてビロードモウズイカを見たのも、2004年の北海道でした。

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 花は多少の例外はあるものの、下から上に咲いていきます。 上の写真では、下の方では咲き終わり、突き出したままのメシベの先が黒くなっています。 上の方はまだツボミです。
 ところで、「モウズイカ」とは? 網目の入ったスイカ?? 頭に毛の生えたイカ?? じつは「毛蕊花」で、雄蕊(ゆうずい=オシベ)の花糸に長い毛が生えているところからの名前です。

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 オシベは5本ありますが、そのうちの上方にある3本の花糸には長い毛が密生しています。 また、下方の2本の花糸にも、1方向にだけ長毛があります。
 花弁の内面には毛はありませんが、外面には星状毛を密生しています。 下は上の写真の花弁の縁を拡大したものですが、星状毛が確認できます。

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2012年6月27日 (水)

ゼフィルス

 シジミチョウ科の蝶の一群に、翅の表が青~緑色の金属光沢をもった美しい蝶がいて、その多くは「○○ミドリシジミ」という名で呼ばれています。 これらのミドリシジミ類の幼虫は、いずれもブナ科などの高木になる樹木の新芽を食べ、成虫も幼虫の食餌植物である樹木の樹冠付近を飛び回ることが多く、低い所にはあまり飛来しません。
 これらのミドリシジミ類は、かつては1つのミドリシジミ属( Zephyrus属 )に分類されていました。 現在はかつての Zephyrus属はいくつかの属に分けられているのですが、「ゼフィルス」という名称は、樹上性のシジミチョウの一群(25種)を指す言葉として残っています。

 大阪府の北部、能勢町に三草山という山があり、その一角に「三草山ゼフィルスの森」があります。 この場所は日本のゼフィルス25種のうちの10種の生息が確認されていて、特にヒロオビミドリシジミの大阪府下唯一の生息地であり、日本の分布の東限になっています。 そのため、この場所は大阪府自然環境保全条例にもとづき、緑地環境保全地域に指定され、動植物の採集が禁止されています。
 保全活動は公益財団法人大阪みどりのトラスト協会が実施していて、特にヒロオビミドリシジミはナラガシワの葉しか食べないため、ナラガシワ林の管理に力を入れているようです。

 この「三草山ゼフィルスの森」がどんな場所なのかいちど見てみたいと思い、行ってきました。 特にオスのゼフィルスは樹上でなわばりを形成し、なかなか下には降りてこないことは分かっていましたし、活動が活発になるのは夕刻になる種が多いのも知っていましたので、たくさんのゼフィルスの写真が撮れることは、はじめから期待していませんでしたが・・・。
 結果は、写真に撮れたのは以下の3種でした。

Hiroobimidorisijimi120623_1

 上の写真が、上に書いたヒロオビミドリシジミです。 林の上の方で、なわばりを守るためにさかんに飛び回っているのですが、ついに下には降りてきませんでした。 とまったところを、300mmの望遠に1.4倍のテレコンをつけて撮ったものを大トリミングしたのですが、これじゃ証拠写真にもなりませんね・・・。

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 上はウラミスジシジミ。 翅の表も撮りたかったのですが、この1枚で逃げられました・・・。

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 上はミズイロオナガシジミ。 これはたくさんいて、簡単に撮れるのですが、私の家の近くの「堺自然ふれあいの森」などでも見ることのできる蝶です。

※ ゼフィルスの一種アカシジミは、こちらで記事にしています。

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2012年6月26日 (火)

タシロラン

 タシロランは、田代善太郎氏が長崎県諫早で発見されたことに因んで牧野富太郎博士により命名された、ラン科の「菌従属栄養植物」です。 従来は「腐生植物」と呼ばれていましたが、菌根菌との関係が明らかになるにつれ、このような名前で呼ばれるようになりました(詳しくは下に書いています)。
 分布は関東以西の主に太平洋側と考えられます。 地上には花茎のみが現れます。 花期は6月下旬から7月上旬にかけての約2週間です。 種子は開花後1週間ほどで散布されます。 つまりタシロランは1年の大半を地中で過ごし、地上に姿を見せるのは1ヶ月も無いということになります。

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 花序は最初、上の写真のように、うなだれた姿で出現します。 まるでツル植物のような姿ですが、これは花茎が硬くなる前にどんどん伸びてくるという、生長の速さを示しているのでしょう。 全体に白っぽく、葉緑素は持っていません。

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 花序は間もなく直立し、下方から順次花が咲いていきます(上の写真)。 花柄の基部には、薄質の苞があります。 花被片は披針形で、距の長さは約5mm、唇弁には淡紅色の斑点があります。

Tasiroran120626_5    花:側面から

Tasiroran120626_6    花:正面から

 上で、タシロランは「菌従属栄養植物」であると書きました。 このことについて、もう少し詳しく書いておきます。
 多くの植物は、地下組織において、菌類(=キノコやカビの仲間)と共生し、菌根を形成していることが次第に分かってきました。 菌根とは菌類が植物の根に侵入して形成する共生体です。 通常、この菌根共生では、植物は光合成できない菌類に光合成産物である炭水化物(=生きるためのエネルギー源)を提供し、菌類は窒素やリン酸などを植物に提供しています。 植物の根よりも細い菌糸は土の間に入り込みやすく、これらの土壌中の栄養塩類を取り込みやすいようです。
 ところが、タシロランなどの光合成を放棄した植物では、炭水化物菌類からもらっています。 タシロランはナヨタケ科の菌類と菌根を形成しています( Yamamoto et al. 2005 )。 ナヨタケ科の菌は腐生菌ですから、落葉や落枝などを分解して炭素化合物を得て生活しています。 つまりタシロランは、ナヨタケ科の菌類が存在しないと生きていけず、ナヨタケ科の菌類に寄生しているとも言えるのですが、ナヨタケ類は「寄生」というほどには被害は少ないようで、「従属栄養」という言葉が使われています。 ちなみに私たちも、他の生物由来の「食物」を食べ続けなければ生きられない従属栄養の生物です。

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2012年6月25日 (月)

チクシトゲアリ

 堺自然ふれあいの森にいたチクシトゲアリです。 体長は約6mmです。

 

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   横から

 

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   上から

 

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   正面斜め上から

※ 写真は3枚とも、クリックで拡大します。

 

 きれいな背景になっていますが、スタジオ撮影ではありません。 堺自然ふれあいの森には、樹間を観察するのが目的だと思いますが、3階の高さの所に、下の写真のような橋が設けられていて、チクシトゲアリを撮ったのは、その手すりの上です。

 

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 日本産アリ類画像データペースを見ると、チクシトゲアリは比較的まれなアリで、大阪府下の分布は確認されていないのですが、他に似たアリもいないので、間違いは無いと思うのですが・・・。
 チクシトゲアリは樹上性のアリで、巣も樹上にあり、枯れ枝や、幼虫の吐き出す糸で葉などをつむいで作るようです。 木と橋はあちこちで接していますから、そこを伝って橋の手すりにいたのでしょう。
 手すりの上には数十頭のチクシトゲアリがいました。 そのうちの約半数は動き回り、約半数は写真のような姿で、腹部を折り曲げ、口を手すりに接していました。 上の3枚の写真は別個体なのですが、みんな同じ姿勢です。 何をしているのかよく分からないままに、動き回っている方の撮影はあきらめ、じっとしているものばかりを撮ったのですが、いったい何をしているのでしょうね。
 帰ってから調べてみると、「振動などがあると、すぐ腹部を持ち上げ威嚇の体制になるなど、凶暴な面も持ち合わせている」(Wikipedia)とありましたが、カメラをかなり近づけてもフラッシュを光らせてもそのような様子も無かったので、2日後に確認しようと思い、同じ場所に行ってみたところ、チクシトゲアリは1頭も見つけることができませんでした。 こうなると、上の写真の姿勢がよけいに気になります。

 

※ 冬のチクシトゲアリの巣の様子はこちらに載せています。

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2012年6月24日 (日)

ツチアケビ

ここにあった記事は、大幅に書き換えたうえで、こちらに引っ越しています。

 

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2012年6月23日 (土)

フサヤガ

 フサヤガのアクロバティックなとまりかた、何をどうしているのか・・・。 写真は平面ですが、人間の脳はすばらしい能力を持っていて、同じ物体の平面的な図を複数枚用意すれば、それらから立体的な姿を脳は理解することができる・・・。
 で、とまっているフサヤガの写真を3枚用意しました。 これらは、翅を壁にピタッとくっつけて腹部を上に反らして静止しているフサヤガを、撮る角度を少しずつ変えて撮影したものです。

Fusayaga120622_1  斜め前から 右が頭で、複眼も見えています

Fusayaga120622_2  ほぼ真上から

Fusayaga120622_3  斜め後から 扁平な腹部の下面が見えています。 腹部の先端の左右には毛の束があります。

 フサヤガは年2化で、成虫で越冬します。 そのため、ほぼ1年中見ることができます。 幼虫の食餌植物としては、ウルシ科やブナ科が報告されています。
 フサヤガによく似たものに少し小さなコフサヤガがいます。 大きさは相対的なものですし、両者の違いは、後翅の基部の色が、コフサヤガの白に対し、フサヤガでは黄色みを有しているとされているのですが、写真のようにとまっている状態では、それも見えません。 つまり写真のものもコフサヤガかもしれません。

 蛾は蝶よりずっと種類数が多く、生態的にも多様性に富んでいます。 とまり方1つ取り上げてみても、オオウスベニトガリメイガなどのように頭を持ち上げて体を反らすものから、このフサヤガのように頭を低くして腹部を高く持ち上げるものまで、なぜそんな姿勢をとるのかはともかくとして、とにかく見る者を楽しませてくれます。

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2012年6月22日 (金)

クサイ

 最近記事にした植物は減少しているものが多かったので、今日はきわめてありふれた植物にします。 ただし、花の小さな植物は、足元にあっても見向きもされないものが多いのですが・・・。

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 クサイは湿り気味のよく踏まれた所に多い植物です。 踏圧に強い植物の“三役”は、オオバコ、カゼクサと、このクサイだそうです。
 クサイといっても、においをかいで臭いわけでもありません。 漢字で書けば「草藺」で、草のイ(=イグサ)です。 ではイ(以下イグサと書きます)は草ではなく木か、ということになってしまいますが、茎の根元にある褐色の鱗片葉以外の葉を持たないイグサに対し、クサイはちゃんとした葉を持っていて、普通の草らしい草だ、ということでしょう。
 細長い葉は茎の下の方につきます。 そして茎の先端で枝を分け、その先に小さな花をつけます。 下の写真では、もうほとんどの花は終わり、果実の完成へと向かっています。
 枝を分ける所からも、また細い葉のようなものが出ていますが、これは苞です。

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 これまでに何度か書きましたが、イグサ科の花は、イネ科の花のように特殊化していません。 下はクサイの花の拡大ですが、花被片が6枚(ガク片にあたる外花被片が3枚と花弁に相当する内花被片が3枚)で、オシベはそれぞれの花被片の内側に位置していて、計6本あります。 メシベは1本で柱頭は3裂しています。 柱頭は淡いピンクで、風媒花ですので、風に乗って運ばれてきた花粉を受け止めるために、ふさふさとした毛がたくさん生えています。 下の写真をクリックして拡大して見ていただくと、この毛にひっかかったたくさんの花粉も分かると思います。

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2012年6月21日 (木)

ヒトオビアラゲカミキリ

 ムクゲの葉の上にいたヒトオビアラゲカミキリです。

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 ヒトオビアラゲカミキリは、体長1cm足らずで、カミキリムシ科フトカミキリ亜科に分類されています。 上から見ると、前翅の先端(上の写真では右端)は中央でえぐられたようになっていて、その左右が尖っています。
 名前を漢字で書けば「一帯荒毛髪切」で、「一帯」は1本の黒い帯状の斑のことでしょう。 ちなみに、「一帯(ひとおび)」とはあまり使わない言葉ですが、これはこのカミキリと同じ属にフタオビアラゲカミキリがいて、フタオビに対するヒトオビです。
 上の写真では「荒毛」の意味はよく分かりませんが、下の写真(クリックで拡大します)のように拡大してみると、たしかにたくさんの毛が生えています。

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2012年6月20日 (水)

オオミクリ

 オオミクリは大きなミクリ、ミクリの変種です。 ミクリは漢字で書けば「実栗」です。 ミクリの果実は球形に集まってつきますが、その様子がイガに覆われた栗の実に似ているところからの名前でしょう。

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 ミクリの仲間(ミクリ属)は、多年生の抽水性水草で、主として北半球の温帯~寒帯に20種ほどが分布しています。 日本には9種ほどが分布していますが、いずれも絶滅が心配されています。

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 ミクリの仲間はみんなよく似ていて分類が難しく、オオミクリを他のミクリの仲間と区別する点も、果実が大きく、1つの果実の幅が5~8mmもある、ということぐらいです。 オオミクリを含む多くのミクリの仲間では、茎は少し枝分かれし、茎の上方に雄花序を、下方に雌花序を、いずれも数個ずつつけます(上の写真)。 雄花序も雌花序も球状の頭状花序です。

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 上が雄花序です。 1つの花には3~6本のオシベがあるのですが、どれが1つの花のオシベなのか分かりませんね (-_-; 風媒花の例に漏れずたくさんの花粉を出し、花の下方の葉にもたくさんの花粉がついています。
 そして下が雌花序です。 柱頭は2裂しています。

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2012年6月19日 (火)

ゴホントゲザトウムシ

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 ゴホントゲザトウムシは、神奈川県以西の本州と、四国、九州に分布しますが、人里周辺の竹林や雑木林でしか見つかっておらず、分布地もかなり限定的なようです。 幼虫で越冬し、成虫は5~6月に見られます。

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 大型のザトウムシで、体長(脚を除く)は1cmほどあります。 ザトウムシにしては脚は短めです。 もっとも、よく見るザトウムシの仲間のように、とても細く長い脚で体を持ち上げてゆらゆらと歩くには、体が重すぎるようです。 名前は、体の中心軸に沿って、5本の赤いトゲが見られるところからです。 なお、4対の歩脚のうちの前から2番目の1対は特に長いことや、頭胸部の中央付近に小さな突起があり、その側面に1対の眼があることなどは、他のザトウムシの仲間と同じです。 

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※ トゲが前方に3本のトゲザトウムシはこちらに載せています。

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2012年6月18日 (月)

キクガラクサ

 キクガラクサは、近畿、中国、四国地方に分布する多年草です。 キクの葉に似た葉がいちめんに地表に広がる様子が唐草模様に似ているところからの名前でしょう。

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 湿地を好む植物で、写真の場所も、手入れされたスギの植林地内にある溝の縁でした。 茎は細く地上を這い、まばらに葉をつけます。 小さな地表に接して育つ植物ですから、上を他の植物などに覆われてしまうと、光合成ができなくなって生きていけなくなるでしょう。 限られた場所でしか生きていけない植物のようです。

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 花の径は1cmほどで、特に美しい色があるでもなく、目立つ大きな花でもなく、植物に詳しい人でないと見過ごしてしまうような植物です。 そして、そんな目立たない植物で生育環境が限定されている植物が、気づかれないままに生育環境を変えられたり除草されてしまったりと、絶滅に向かうことがよくあります。 キクガラクサもあちこちの府県で絶滅危惧植物に指定されています。

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 拡大してみると、茎にも葉にも花径にもガクにも花冠の内側にもたくさんの毛が生えています。
 花期は5~6月とされていますが、5月26日にはまだ花は咲いていませんでした。 写真は6月17日に撮ったものです。 もっとも今年はいろんな植物で花の時期が例年とずれていますが・・・。
 花冠は5深裂していますが、合弁花です。 花弁が5深裂していて放射相称の花のようですが、オシベは4本しかありません。 つまり、放射相称と左右相称の中間的な花と言ってよいでしょう。

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 キクガラクサは、従来はゴマノハグサ科に分類されていました。 しかし、例えばオシベに注目すると、ゴマノハグサ科の花のオシベは2本か、4本のうちの2本が短くなっています。 しかしキクガラクサのオシベは4本ともほぼ同長です。 これらのことから、キクガラクサ科を独立させる考えもありました。 しかし、最近の遺伝情報の解析によるAPG植物分類体系では、ツタバウンランの所にも書いたように、従来ゴマノハグサ科に分類されていたいくつかの属がオオバコ科に移されており、キクガラクサ属もオオバコ科に移されました。

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2012年6月17日 (日)

コオニヤンマ

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 コオニヤンマの名前は小さなオニヤンマの意味です。 しかしコオニヤンマは、オニヤンマ科でもなく、カトリヤンマやヤブヤンマなどが属するヤンマ科でもありません。 コオニヤンマはサナエトンボ科に分類されています。 体長は8~9cmで、サナエトンボ科の中では日本最大ですが・・・。
 たしかにコオニヤンマの体の色は、遠くから見るとオニヤンマによく似ています。 しかしオニヤンマのようになわばりを行ったり来たりとパトロールする様子はあまり見られず、よく静止していますし、その静止する姿も、オニヤンマのようにぶら下がった姿勢ではなく、腹部を少しだけ下げてほぼ水平にとまっています。 もちろんていねいに見れば、オニヤンマとは胸部の模様は違っています。
 成虫は5月上旬から羽化し、9月ごろまで見られます。 複眼の色は、未熟の時は深緑色で、成熟するにしたがって澄んだ緑色に変わるとされています。

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2012年6月16日 (土)

オオバウマノスズクサ

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 オオバウマノスズクサは関東地方以西の山地に生えるツル性の木本です。 ウマノスズクサと同じ属に分類されており、葉形は変化に富んでいますが、名前のとおりかなり大きくなります。

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 花の時期には少し遅かったのですが、まだ少し花が残っていました。 花はガクが筒状になり、においでハエなどを誘い込み、花粉を媒介してもらいます。(ウツボカズラなどのような食虫植物ではありません。) 花弁は退化してありません。 オシベ6本は花柱に合着しています。
 下は花の断面で、花粉媒介者の侵入経路を矢印で示しておきました。

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2012年6月15日 (金)

ホソミオツネントンボ

 ホソミオツネントンボは、トンボ目イトトンボ亜目アオイトトンボ科オツネントンボ亜科に分類されるイトトンボの仲間で、低山地の水草の多い池などで見られます。
 漢字で書けは「細身越年蜻蛉」、ホソミオツネントンボは体長約4cm、腹部の径は1mmほどです。 この細身の成虫の姿で冬を越すとは驚きですが、成虫で越冬するトンボの仲間は、他にもホソミイトトンボとオツネントンボがいて、いずれも小さなイトトンボです。 冬のホソミオツネントンボは、オス・メス共に褐色で、枯草に紛れてじっとしているようです。
 そのホソミオツネントンボが美しいブルーに変わり、連結していました。 活動は4月中旬頃から盛んになるようです。 下の写真は上がオス、下がメスです。

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 ホソミオツネントンボは、上の写真のように翅を閉じて止まりますが、翅を閉じた時、前翅と後翅の縁紋が重なるのも特徴のひとつです。
 この後、産み落とされた卵は、ヤゴの生活を経て、6月末頃に羽化し、褐色の未成熟成虫として冬を迎えます。 現在産卵中のものは8月頃まで生きますので、このトンボは、褐色の場合も模様に注意して見分けることができれば、年中見ることができるということになります。

 昆虫の体は外骨格で、体表は硬く、体色の変化は脱皮時にしか見られないように思われがちですが、このホソミオツネントンボの春の変化は、脱皮しなくても昆虫は体色を変えることが可能であることを示してくれています。

 上の写真、メスにピントが合っていてオスは少しボケぎみですので、ピントの合ったオスの顔を下に載せておきます。

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2012年6月14日 (木)

マメヅタラン

 マメヅタランはシダ植物のマメヅタによく似たラン科の植物です。 花の無い時期のマメヅタランと、胞子葉の無いマメヅタとを見分けるには、慣れないと、なかなか難しいものです。
 マメヅタランが花を咲かせている今の時期は見分けるチャンスです。 ただし、マメヅタランは、関東以西の岩や樹木などに着生しているというものの、そんなにあちこちにある植物ではありません。

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 上はたくさんの黄色い花を咲かせているマメヅタランです。 写真の上方には乾燥に強いヒトツバが見えますから、マメヅタランも乾燥にも強く丈夫なようにも思えますが、じつは環境適応力に乏しく、そのことがマメヅタランの生育地を限られたものにしているようです。
 花の色は色は淡い黄色が普通ですが、稀に紅色を帯びた花を咲かせるものがあるようです。

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 花のつくりは、ラン科の花としては分かりやすい方でしょう。 ガク片は3枚、ガク片より小さい花弁3枚のうちの1枚は唇弁となり、その唇弁と向かい合う形で、オシベとメシベが合わさったずい柱があります。

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2012年6月13日 (水)

オオホシカメムシ

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 オオホシカメムシは、よくアカメガシワに群れています(上の写真:7月下旬撮影)が、今回はたまたまでしょうか、ノアザミの葉に1頭でいました。

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 オオホシカメムシによく似たカメムシにヒメホシカメムシがいます。 両者の模様はよく似ていて、違いは、体の幅はほぼ同じなのに、体長がオオホシカメムシの方が長いことです。 オオホシカメムシの体長は17mm前後、ヒメホシカメムシの体長は12mm前後といわれていますので、メジャーをあてて撮影しておきました(上の写真 : 1目盛は1mm)。 その他、翅の丸い黒紋や革質部末端にある黒紋も、オオホシカメムシの方が発達しています。

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 腹側は上のようになっています。

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 オオホシカメムシとヒメホシカメムシはオオホシカメムシ科に分類されています。 オオホシカメムシ科のカメムシは、ヘリカメムシ科やナガカメムシ科に似ていますが、単眼がありませんし(上の写真)、膜質部には細かい翅脈があります(下の写真)。

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 模様の比較的よく似たヒメジュウジナガカメムシと比較してみてください。 上がオオホシカメムシ、下がヒメジュウジナガカメムシ(ナガカメムシ科)です。

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2012年6月12日 (火)

イグサ

 畳表の材料などに使用されるイグサの和名は「イ」ですが、「イ」だけでは、かえって文章に誤解が生じそうなので、ここではあえて「イグサ」と書くことにします。

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 イグサは湿地に自生する多年草で、休耕田などでもよく見かけます。 葉は茎の根元に褐色の鱗片葉があるだけです。
 畳表の材料にするために栽培されているイグサは草丈が1m以上にもなりますが、これは品種改良されてきた結果で、野生のイグサはそんなに大きくなりません。 それに栽培されているものは、ほとんど花をつけませんが、野生のものでは5~6月頃に花を咲かせます。 下の写真では、既に花は終わっています。

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 花は茎の頂につき、その上に茎とよく似た苞葉が上に伸びているのは、一昨日書いたカンガレイなどと同じです。
 下は花を拡大したものです。 小さな花ですが、花被片が6枚確認でき、オシベもメシベもある“普通の”花で、イネ科やカヤツリグサ科のような特殊化した花ではありません。 これがイグサ科の花の特徴です。

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 上の写真(クリックで拡大します)で見ると、メシベの柱頭は3本あり、細かい枝を羽状に分けています。 オシベは上の写真で見ると、3本のように見えます。 しかし、保育社の『原色日本植物図鑑』などにはイグサのオシベは6本とあり、ネットで調べても6本と書かれています。
 3本と6本では大違い、私が今までイグサと思って見てきたのはイグサではない? たしかに、例えばスズメノヤリのような、もう少し大きな花を咲かせるイグサ科の植物のオシベは6本ですので、イグサ科の花のオシベは6本という思い込みがあったのではないでしょうか。 そして、イグサの花はとても小さいですので、ほとんどの場合は確かめずに他に書かれてある内容をそのまま引用しているのではないでしょうか。 ネットで探しても、イグサの花を拡大した写真を見つけることはできませんでした。

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2012年6月11日 (月)

アカガネサルハムシ

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 金属光沢の美しいサルハムシです。 中心となる色は赤と緑ですが、細かく見れば、虹の七色はほぼ揃っているようです。 色は光のあたり方で微妙に変化します。 体長は6~8mmほど、6月7日に堺自然ふれあいの森で撮りました。
 つかまっているのはノブドウの茎で、上の写真では齧った跡がみえます。

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 このブログでは過去にイモサルハムシを載せています。 「サルハムシ」の意味についても、そちらに書いています。

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2012年6月10日 (日)

カンガレイ

 「寒ブリ・寒ボラ・寒ガレイ」という言葉があります。 ブリ、ボラやカレイは、寒の季節が旬でおいしいのですが、タイトルのカンガレイは魚ではなく植物です。 下がそのカンガレイですが、どんな漢字でしょう。
(こんな書き方をすると検索の上位には上がってこないと思いますが・・・。)

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 カンガレイは池や沼などの水辺に生える多年草です。 茎は断面が三角形で、なかなかしっかりと立っています。 葉は退化して葉鞘だけが見られます。
 カンガレイを漢字で書くと「寒枯藺」となります。 「藺」は畳表などに使われるイ(=イグサ)のことですから、「寒枯藺」は「冬に枯れた枝が残存するイに似た植物」という意味になります。
 ところがイ(藺)はイグサ科ですが、カンガレイはカヤツリグサ科です。 たしかに茎の途中に小穂(=花の集まり)がつく(これも間違い:後述)ように見える姿は両者共通ですが・・・。
 両者の本質的な違いは花のつくりにあるのですが、カンガレイの花のつくりを調べようとすれば、ピンセットで鱗片をはずして、という細かい作業になります。 しかしカンガレイがイグサ科で無いことは簡単に言えます。 カンガレイのような茎の断面が三角形の植物は、イグサ科にはありません。
 上で小穂が茎の途中についているように見えますが、そうではないと書きました。 じつは小穂は茎の頂端につきます。 小穂より先にあるのは苞です。 ただ、苞の断面も三角形ですので、茎と連続して見えます。
 カンガレイによく似た植物にサンカクイがあります。 これこそ茎が三角形のイという名前ですが、やはりカヤツリグサ科です。 両者の違いは、カンガレイの小穂には柄が無く、メシベの柱頭は3裂しています(下の写真)が、サンカクイの小穂には短い柄があり、柱頭は2裂です。

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2012年6月 9日 (土)

トホシテントウ

 真上から撮った下の写真、黒い星(=斑紋)はいくつあるでしょうか、数えてみてください。

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 知っている人は除いて、タイトルに「トホシテントウ」とあるのだから、星(=斑紋)の数は10個だろうと予想はつくでしょうが、ほんとうに10個あったでしょうか。
 ずんぐりしていて球を半分に切ったような体は、特に写真で星を数えようとすると、誤って数えそうです。 つまり、このテントウムシの名前を知らない人が名前を調べようとした時に、すんなりと名前にたどりつけないかもしれません。

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 テントウムシの仲間を食性から分けると、肉食性のもの、草食性のもの、菌食性のものに分けられます。 トホシテントウは草食性で、成虫も幼虫も、スズメウリ、カラスウリ、アマチャヅルなどのカラスウリ類の葉を食べています。 ニジュウヤホシテントウをはじめ、草食性のテントウムシの体の表面には毛が生えているために、ナナホシテントウのような光沢がありません。 上の写真はクリックで拡大しますから、ぜひ拡大して毛を確かめてみてください。 幼虫の姿もなかなかのものです → こちら

 さて、最初に書いた星の数、どうしても10個数えられなかった人のために、解説しておきます。 下の写真の水色の数字で、「2」は左右にある、つまり2個ずつある斑紋です。 「1」は中央にあって、1つずつしかない斑紋です。 これらの数字を全て合計すると10個になります。 前胸背にある「0」をつけた斑紋は数えません。 写真のトホシテントウでは、比較的はっきりした斑紋のようですが、なかにはぼやけてしまって、前胸背全体が黒っぽくなっていて、とても斑紋とは言えないような個体もいるからです。

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2012年6月 8日 (金)

スイショウ

 前にメタセコイアラクウショウが似ているということで、その違いを両方の記事の中で少し書きましたが、今回はその話をいっそうややこしくする話です。 もちろん書こうとしたねらいは、読まれた方を混乱させることにあるのではなく、違いを認識してスッキリしてもらおうということですが・・・。

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 上の写真はスイショウの5月下旬の様子ですが、スイショウ(水松)はラクウショウ(落羽松)=ヌマスギ(沼杉)とよく混同されているようです。 漢字で書いても「松」という漢字が使われていたり、スイショウも秋に黄葉し落葉(ほんとうは落枝)します(つまり羽のような葉を落とす“松”です)し、葉の様子も遠目にはよく似ています。 また、どちらも水辺に生育するので「水」や「沼」という漢字が入っていたりします。 なお、上で「松」という漢字が入っていると書きましたが、スイショウもラクウショウもマツ科ではなく、スギなどと同じくヒノキ科です。
 しかしスイショウとラクウショウは、もちろん属も違いますし、よく見れば全く違った木です。
 スイショウの葉は長枝につく葉と短枝につく葉で様子が違います(長枝と短枝については「メタセコイアの1枚の葉は」をご覧ください)。 長枝の葉は鱗片状で基部は茎に長く沿下しますが、短枝の葉は針状です。
 球果の様子もラクウショウとはかなり違っています。 上のスイショウの写真では、種子を飛ばした後の球果がたくさん残っています。 スイショウの球果はラクウショウのように落ちてバラバラにはなりません。
 幹の様子も異なります。 下の写真で、左手前がラクウショウの幹で、中央と右奥がスイショウです。 スイショウの方が幹は細いのに荒れています。 スイショウは現在の日本では、あまり大木には育たないようです。

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 現在のスイショウの自生地は中国南部に限られていて、日本のスイショウは全て植えられたものです。 しかし過去には日本にも自生していたようで、鮮新世の地層からはたくさんのスイショウの植物遺体がみつかっています。

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2012年6月 7日 (木)

イヌビワオナガコバチ

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 上はイヌビワの花嚢(かのう)に来ていたイヌビワコバチのメス(右上)とイヌビワオナガコバチのメス(下)です。

 イヌビワオナガコバチのことを書こうとすると、イヌビワコバチにも触れないわけにはいきません。

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 上はイヌビワコバチを拡大したものですが、イヌビワとイヌビワコバチは深い共生関係にあります。 イヌビワコバチはイヌビワが無いと生きられませんし、イヌビワはイヌビワコバチがいないと種子ができません(詳しくはこちら)。 イヌビワコバチが花嚢に潜り込む時に落とした翅が、あちこちの花嚢に残っていました(下の写真)。

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 イヌビワの雄株の花嚢の中では、潜り込んだイヌビワコバチが産卵し、幼虫が育ちます。 イヌビワオナガコバチは、花嚢の外から長い産卵管を突き刺して産卵し、このイヌビワコバチの幼虫に寄生します。

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 上は、イヌビワオナガコバチと花嚢の大きさを比較できるように撮ったものです。

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 上はイヌビワオナガコバチを拡大して撮ったものです。 下は翅の様子が分かるように撮ったものです。

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2012年6月 6日 (水)

ツタバウンラン

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 ツタバウンランはヨーロッパ中部~南西部原産で、大正年間に観賞用として導入されたものが帰化し、次第に増えてきているようです。
 観賞用に導入されただけあって、葉の形も端正で、花もなかなかかわいいものです。 図鑑などでは花期は夏と書かれているものが多いのですが、厳冬期を除いて花を咲かせているような気がします。
 石垣の隙間に土のあるような所でよく育つので、近年はグランドカバーや石垣の緑化に利用されつつあるとも聞いています。

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 花は唇形で、普段は上唇と下唇はくっついて雨などから花粉を守っていますので、メシベやオシベは外からは見えません。 花を横から見ると(下の写真)蜜を貯めた距があり、この蜜を求めて虫が上唇と下唇の間から潜り込む時に花粉媒介が行われます。
 花が終わると、果実の柄は、石垣の隙間などの暗い所を求めて長く伸び、そこにある土に潜って結実します。
 下の写真のツタバウンランの背後は、セメントの壁面で、果実が潜り込む隙間が無く、たくさんの果実が垂れ下がっていました。

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 ツタバウンランなどのウンラン属は、従来はゴマノハグサ科に分類されていました。 ゴマノハグサ科は多様で、以前からさまざまな系統が寄せ集められた科ではないのかと言われていたのですが、最近の遺伝情報の解析によるAPG植物分類体系では、ウンラン属を含むいくつかの属は、オオバコ科に移されています。

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2012年6月 5日 (火)

タカチホヒラタタマバチ

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 一昨日にオナガバチが枯れたエノキの中にいるキバチの幼虫に産卵している様子を記事にしました(こちら)が、同じ枯れたエノキの幹で産卵していたのが、このタカチホヒラタタマバチでした。 タカチホヒラタタマバチもキバチの幼虫に卵を産み付けて寄生することが知られています。
 上は産卵中のものを横から撮ったものですが、上から撮ったもの(下の写真)と比較すると、腹部がとても扁平であることが分かります。 これがヒラタタマバチの仲間の特徴です。

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 タカチホヒラタタマバチ( Ibalia jakowlewi )はタマバチ上科ヒラタタマバチ科に分類されています。 ヒラタタマバチ科はタマバチ上科の中では最大ということですので、メジャーを置いた写真も載せておきます。 メジャーは下(写真では右)がメートルですので、体長はこの写真では1.7cmほどということになります。

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 ちなみに一昨日記事にしたオナガバチの体長は、寄生した幼虫の状況にもよるのでしょうか、かなりの幅があるのですが、多くは3cmほどです。 このことが関係するのか、たまたまなのか、この日の観察では、タカチホヒラタタマバチは枯れたエノキの地際から30cmほどの所を中心に、2種のオナガバチは50cm以上の所で産卵していました。

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2012年6月 4日 (月)

キキョウソウ

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 キキョウソウは、北アメリカ原産のキキョウ科の帰化植物で、1931年に横浜市で報告されたのが最初です。 徐々に広がり、今ではあちこちでよく見ます。
 和名はキキョウに似た草ということですが、もちろんキキョウも木ではなく草です。 小さくて、キキョウよりも、より“草的”な植物ということなのでしょう。
 キキョウソウは虫を呼ぶ(=目立つ)花の前に閉鎖花をつけるのですが、ここでは5月中旬くらいから咲きはじめる虫を呼ぶ花に注目することにします。

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 花(虫媒花)は、大きさこそ小さいですが、花粉を受け渡しする仕組みは、本物のキキョウとそっくりです。 つまり、最初、オシベはメシベにくっついていて、オシベから出された花粉をメシベの周囲にくっつけてから、オシベはメシベから離れます(上の写真)。 この時、メシベの柱頭はまだ開いておらず、受粉することはできません。 この花粉を花に来た虫に運んでもらいます。 そしてその後、メシベの柱頭が開き(下の写真)、他の花の花粉を受け取ることができるようになります。 このようにしてキキョウソウは自家受粉を防いでいます。

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 キキョウソウの特徴的なのはここからです。 下は花が終わったところですが、花筒に何やら楕円形の模様が見えます。

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 種子が完成すると、この楕円形の部分が、窓のカーテンを巻き上げるように開き、中から種子がこぼれ出ます(下の写真)。
 キキョウソウの葉は無柄で、茎を抱いています。 こぼれ出た種子は、この葉の上に溜まります。

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 この葉の上に溜まっていた種子や、まだ“窓”から外に出ていなかった種子は、キキョウソウが風に揺られたりすることによって飛ばされます。 種子をだれかに運んでもらうのではなく、小さい草が自力でできるだけあちこちに種子をばら撒こうとする巧妙なしかけです。
 下は種子がばら撒かれてほとんどなくなってしまった状態です。

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2012年6月 3日 (日)

エゾオナガバチとオオホシオナガバチの産卵

 この記事は、当初「エゾオナガバチの産卵」として書きましたが、記事を書いている途中で2種が混じっているのではないかと思い、大阪市立自然史博物館のハチを専門とされている学芸員の方にお聞きした結果、やはりエゾオナガバチ( Megarhyssa jezoensis )とオオホシオナガバチ( M. praecellens )が混じっていることが分かりました。 2種が混じっているということを意識してよく観察すれば、どこか行動に違いがあるのかもしれませんが、そんなに大きな違いはないと思いますので、とりあえずは元の文の変更は最小限に留め、2種をまとめて「オナガバチ」として書き、写真の下にそれぞれの種名をいれることにしました。
 なお、この変更に伴い、タイトルも変更しています(6月5日)。

Ezoonagabachi120602_1    エゾオナガバチ

   ※ この写真と次の写真はクリックで拡大できます。

 立ち枯れたエノキの幹に、オナガバチが産卵に来ていました(6月2日撮影)。 オナガバチの仲間(ヒメバチ科オナガバチ亜科)は長い産卵管を持ち、幹の中にいて材を食べて育っているキバチの幼虫に卵を産みつける寄生蜂です。 この枯れたエノキではヒラアシキバチが育っているようですので、このオナガバチのターゲットはヒラアシキバチの幼虫かもしれません。

 上の写真、何がどうなっているのか、分かりにくいので、順を追って説明することにします。 下の写真は産卵管を幹に差し込む前の状態です。 触角で幹をトントンと叩くような行動をとっています。 この行動で幹に潜むキバチの幼虫の位置を探っているのだと言われています。 硬い木の幹を触角でたたいてキバチの幼虫の位置が分かるとは驚きですが、ちゃんとキバチの幼虫に寄生できているのですから、位置が分かっているのでしょうね。

Ezoonagabachi120602_5    オオホシオナガバチ

 産卵管を差し込む位置が決まったら、腹部の端を高く持ち上げ、産卵管の先端を目的の位置にセットします(下の写真の下にいる個体)。

Ezoonagabachi120602_6    下:オオホシオナガバチ  上:エゾオナガバチ?

 このまま腹部の端をゆっくりと押し下げ、産卵管を幹に挿入していくのですが、幹に挿入される前の産卵管は、その左右を産卵管鞘とよばれるもので保護されています。 産卵管鞘は幹に入っていきませんから、産卵管が幹に挿入されるにつれて、産卵管鞘は産卵管から離れ、左右に分かれてループ状に取り残されることになります。
 産卵管を挿入する速度は、硬い材に挿入していくのですから、本当にゆっくりですが、こんな細い産卵管が挿入できるというのは驚きです。

Ezoonagabachi120602_4    エゾオナガバチ

 上の写真で、産卵管はaからd・eを経て幹の中に挿入されています。 もう大部分の産卵管は幹の中にあります。 そして、この産卵管を保護していた産卵管鞘は、aからb・cを経てdで産卵管といっしょになり、eで終っています。 つまり、幹の中にある産卵管の長さは、
   (a-b-c-d-e の長さ)-(a-d-e の長さ)
 ということになります。

※ オオホシオナガバチのオスはこちらに載せています。

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2012年6月 2日 (土)

コウモリカズラ

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 コウモリカズラはツヅラフジ科(ツズラフジ科)の落葉性ツル植物です。 和名は葉(葉身)の形が飛んでいるコウモリに似ているツル植物だからでしょう。 浅く(3~)5~9裂する葉身は葉柄に楯状についています。
 雌雄異株で、写真は雌株です。 かなり大きな群落だったので、雄株も探したのですが、見つかりませんでした。 群落全体が1つの株から出発しているのかもしれません。
 下は雌花です。 頂生の花では、ガク片6枚と、それより少し小さい花弁が9~10枚あると書かれてある(保育社「原色日本植物図鑑」)のですが、どちらも白っぽい色で、よくわかりません。 それよりも上記の図鑑には書かれていないのですが、細長い仮オシベがあるように見えます。 メシベは3(~4)心皮から成り、それぞれの柱頭は2分しています。

Koumorikazura120526_2

 実は青黒く熟しますが、アルカロイドを含んでいますので、食べると神経障害や痙攣などが起こります。

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2012年6月 1日 (金)

ヘラクヌギカメムシ(?)

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 日本のクヌギカメムシ類(クヌギカメムシ科Urostylis属)には、クヌギカメムシ、ヘラクヌギカメムシ、サジクヌギカメムシの3種がいます。 互いによく似ているのですが、次のようになります。

 気門が黒色 → クヌギカメムシ
 気門は体色と同じ
   オスの生殖器の縁は左右に広がらずにほぼ並行でヘラ状 → ヘラクヌギカメムシ
   オスの生殖器の先端は左右に広がり、さじ状 → サジクヌギカメムシ
  ※ メスは専門家でないと同定困難

Herakunugikamemusi120530_2

 写真のものは気門が黒くありません。 腹節末端の様子は撮れていませんが、ヘラクヌギカメムシは個体数が多く、クヌギの他にもコナラやカシワなどのブナ科の落葉樹にも来るのに対し、サジクヌギカメムシは、クヌギ以外ではあまり見かけず、個体数も少ないようです。 このカメムシのいた近くにはコナラはありますがクヌギはありませんので、とりあえず、「?」付きでヘラクヌギカメムシとしておきます。

※ クヌギカメムシ類(たぶんヘラクヌギカメムシ)の産卵、卵、幼虫の様子などは、こちらこちらに載せています。

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