キランソウ・タチキランソウ
キランソウは日当たりのよい山野に生えるシソ科の多年草です。 葉は対生で粗い鋸歯があり、葉にも茎にもガクにも白毛が密生しています。 多くのシソ科は茎の断面が四角ですが、このキランソウの茎の断面は丸くなっています。
花冠は下唇は3裂して大きく開いていますが、上唇がほとんど無く、オシベもメシベも外に突き出しています。 ちなみに、キランソウの仲間の属名は Ajuga(アジュガ)ですが、これは「対にならない」の意味で、この上唇と下唇の関係から来ています。
べったりと地面を這っているところから、「地獄の釜の蓋(じごくのかまのふた)」という別名を持っています。 この意味には2とおりの説があって、ひとつは(整備されて土が見えない墓地ではなく)昔の墓地などにもキランソウがよく生えていて、彼岸の頃にも目立つことからで、もうひとつの説は、薬効があるため、地獄へ行く釜に蓋をして、病人を追い返すからだと言われています。
薬効については、生葉の汁はあせもや切り傷に効き、陰干ししたものを煎じて服用すれば、高血圧、胃腸病、胆石、神経痛や発熱など、様々な病気に効き目があるとされています。 イシャコロシの別名もあり、特に九州では民間薬としてよく用いられているとのことです。
しかし、上に書いたように地面にくっつくように育つ植物ですから、定期的に草刈りをしている場所など、上を覆われてしまわない所に生えていて、そんな場所が少なくなってきましたので、この植物も今では薬草にするためにたくさん集めることは慎みたい時代になってきました。
このキランソウによく似た植物に、タチキランソウがあります。 タチキランソウは、名前のとおり、キランソウより少し立ち気味で、花の上唇が大きくなっています(下の写真)。
タチキランソウはキランソウと異なり、山地の落葉樹林下などの日陰ぎみの所に見られます。 分布も、関東地方から東海地方にかけての地域に限られていると言われているのですが、写真は藤原岳の三重県側で撮ったものです。
ところで、園芸店で下のような植物が、キランソウやジュウニヒトエなどの名前で売られている場合もあり、野生化しているケースもあちこちで見られます。
この植物はヨーロッパ原産の多年草で、ツルジュウニヒトエまたはセイヨウジュウニヒトエという名前です。 茎が立ち、地表に走出枝(ランナー)を出して増える性質は日本に自生のジュウニヒトエに似ていますが、ジュウニヒトエの花は白っぽい色をしています。
※ 同じキランソウ属のツクバキンモンソウはこちらに載せています。
| 固定リンク
「草1 合弁花」カテゴリの記事
- ウラジロチチコグサ(2014.06.26)
- ハルジオンとヒメジョオン(2014.05.31)
- ヤセウツボ(2014.05.22)
- フナバラソウ(2014.05.19)
- オオカワヂシャ(2014.05.05)
コメント