トネハナヤスリ
昨日は鵜殿のノウルシについて書きましたが、この鵜殿では、シダ植物のトネハナヤスリを見ることもできました。
名前の「トネ」は利根川水系を意味するのだろうと思いますが、現在このトネハナヤスリが見られるのは、淀川の鵜殿以外では、千葉県の利根川と、栃木県の渡良瀬川の遊水地のみで、環境庁のレッドデータブックのカテゴリーで絶滅危惧ⅠB類に指定されています。
ハナヤスリの仲間は、フユノハナワラビなどのハナワラビの仲間に近縁です。 栄養葉と胞子葉、つまり光合成用の葉と生殖用の葉が、向かい合うように1枚ずつあるのは共通ですが、ハナワラビの仲間は栄養葉も胞子葉も羽状に裂けているのに対し、ハナヤスリの仲間では、栄養葉も胞子葉も裂けていません。
ハナヤスリの名前は、「ハナ」については、この突き出した目立つ胞子葉を、光合成用の葉ではない花に見立て(生殖用の器官という意味では、たしかに花です)、その様子がヤスリに似ているところからでしょう。
ハナヤスリやハナワラビの仲間は、新しく出る葉がゼンマイ状に巻いていないなど、多くのシダ植物とはかなり異なった系統にあると考えられていて、植物組織学的にはなかなか興味ある植物です。 前葉体は、多くのシダ植物とは異なり、地下で菌類と共生して菌根状になりますし、胞子葉と栄養葉との共通の茎に似た部分(写真では地中に隠れています)は、担葉体または担根体と呼ばれていますが、他のシダ植物のどの部分に相当するのか、または相当する部分が無いのかなど、いまだ定説がありません。
鵜殿のトネハナヤスリの生活型はノウルシにとてもよく似ています。 つまり春になると葉を出し、ヨシが芽吹いて地表が暗くなる6月頃には、地上部を枯らして休眠に入ります。 しかしノウルシよりもずっと小さなトネハナヤスリが生育する所は、地面に枯葉などが厚く積った場所などではダメで、毎年野焼きを行っている場所など、より地表に光が届く場所に限られているように思えました。
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