ウスバフユシャク、クロテンフユシャク、ウスモンフユシャク
冬に現れ、オストメスとで異なる形態を持つ蛾(例えばシロオビフユシャクのオスとメスはこちら)である冬尺(ふゆしゃく)については、これまで何度か書いてきました。
冬尺と呼ばれているのは1種類ではなく、フユシャク亜科の14種、ナミシャク亜科の6種、エダシャク亜科の15種の合計35種が知られていることも何度か書きましたが、このうちのフユシャク亜科のウスバフユシャク、クロテンフユシャク、ウスモンフユシャクは、いずれも普通種であり、オスもメスも互いによく似ています。 今回はこの3種のオスの比較をしてみました。
さて、下の4枚の写真は、この3種を並べたものです。 ということは、どれかの種の写真が2枚あるということですが、分かりますか?
後の説明のために左上の写真には番号をつけていますが、番号の所も着目ポイントとして見てください。 なお、上に書いたシロオビフユシャクもフユシャク亜科で、フユシャク亜科の冬尺たちは、いずれもこのように翅を重ねてとまりますが、左の翅と右の翅のどちらが上にくるかは、種によって決まっていません。
では、この3種の違いを整理していくことにします。 まず、蛾の翅の紋様で、①のように横に走るものを外横線と呼んでいます。 この外横線の、ちょうど①の番号のあたりの前縁付近で、ウスバフユシャクはほぼまっすぐなのですが、クロテンフユシャクとウスモンフユシャクでは曲がっています。 また、ウスバフユシャクでは外横線の外側が白くなる傾向があります。 なお、この外横線の内側にもうひとつの横線模様(これを内横線と呼んでいます)が見られる場合があります。 右上や左下の写真で、ぼんやりと内横線の存在が分かりますが、この模様は個体による違いが大きく、あまり同定には役立たないようです。
次に、上の写真の①の黒斑については、ウスバフユシャクでは黒斑はあるのですが、薄くなることもあります。 クロテンフユシャクでは、その名前のとおり、多くの場合明瞭な黒斑があります。 ウスモンフユシャクでは、この黒斑は小さいか、ほぼ消失しています。
③で示した翅頂から斜めに外横線に近づく黒線は、ウスバフユシャクやクロテンフユシャクにはあるのですが、ウスモンフユシャクでは消失しているケースが多くなります。
以上を簡単に下の表にまとめてみました。
ウ ス バ | クロテン | ウスモン | |
①前縁付近の外横線 | 一直線 | 曲がる | 曲がる |
②黒点 | 有 | 有(明瞭) | 無~小 |
③翅頂からの黒線 | 有 | 有 | (無) |
3種の違い、理解いただけたでしょうか。 右上の写真と左上の写真は、どちらもウスバフユシャクですが、模様も違うように見えますし、少し翅を広げただけで違った印象になりますね。 そして左下はクロテンフユシャク、右下がウスモンフユシャクということになります(と思います : 少し不安・・・)。
なお、メスはもっとよく似ていて、メスだけでは生殖器を調べなければ種名は分からないようです。
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コメント
ウスバフユシャクはクロテンフユシャクと似ていて迷いました。
でも,内横線や外横線の曲がり方が違っていました。
更に,それらの線を縁取るように白い線がありました。
ウスバフユシャクの雌を見つけたいと願っています。
投稿: itotonbosan | 2014年1月10日 (金) 20時17分
冬尺のオスも個体変異があるので難しいですが、冬尺のメスは似たものが多く、ほんとうに難しいですね。
投稿: そよかぜ | 2014年1月10日 (金) 23時20分