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2012年2月29日 (水)

アオキコナジラミ?の幼虫

Aokikonajirami120224_1

 昨日に続いて、コナジラミの幼虫です、シャリンバイの葉の裏にいました。 昨日紹介した Hepotaさんのコナジラミ写真集によるとアオキコナジラミのようですが、下の論文、
 Takahashi Ryoichi : SOME SPECIES OF ALEYRODIDAE FROM JAPAN (Homoptera). 昆蟲 31(1), 49-57, 1963-02-28.
に記載されているナチグロコナジラミともよく似ています。
 この論文にはアオキコナジラミとの違いも書かれてあるのですが、体長0.6mmの体のつくりを詳しく見ることは、私の今の機材ではお手上げです。

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2012年2月28日 (火)

ツバキコナジラミの幼虫

 ツバキの葉の裏にたくさんいたツバキコナジラミの幼虫です(2月19日、枚岡公園にて撮影)。 体長は1mmほどです。 左右の胸部の孔と尾部の窪みの計3ヶ所から白いロウ物質(と思います)を出しています。 水で濡れたように光っていますが、粘り気のある透明な物質で体を覆っているようで、指で幼虫をはがすと、松脂を触ったような感触でした。

Tsubakikonajirami120219_1

 上で「幼虫」と書きましたが、コナジラミは卵から孵化後、1~4齢を経て、4齢幼虫の殻の中で蛹になります。 ですから4齢幼虫なのか蛹なのかは外見上は分かりません。

Tsubakikonajirami120219_2

 コナジラミはアブラムシやキジラミなどに近い仲間です。 幼虫も成虫も植物の葉に口針を差して吸汁します。 成虫も1mmほどしかなく、白い粉状のロウ物質で覆われているので、まさしく「白い粉」です。

 このほどHepotaさんがコナジラミ写真集をつくられました(こちら)。 日本には60数種のコナジラミがいると言われていますが、そのうちの21種類の幼虫の画像が載せられています。 こういう写真集の存在は、ほんとうに助かります。 もちろんツバキコナジラミも載せられています。

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2012年2月27日 (月)

フレイキネティア・ムルチフローラ

 このところ植物の記事が少ないので、春を感じさせてくれる温室の花をひとつ。

Freycinetia110305_1

 上の写真、オレンジ色の花弁、と思ってよく見ると、オレンジ色の先端が緑で葉のような印象、そしてその中を見ると・・・。

Freycinetia110305_2

 この緑色の球形のもの、もちろんオシベでもメシベでもありません。 たくさんの花が集まったもの、つまり花序です。 このような花序を肉穂花序と呼んでいます。 ですからオレンジ色のものは、複数の花序を囲む「苞」ということになります。
 この植物は、タコノキ科に分類されていて、和名がつけられていないので、学名の Freycinetia multiflora を、そのままカタカナ読みしています。 写真ではよく分かりませんが、木本性のツル植物です。 フィリピン原産ですが、美しい植物なので、ハワイなど暖かい場所でよく植えられています。 また、この植物から取れる繊維は、マットやバスケット、サンダルなどに加工されます。 なお、属名の Freycinetia は、フランスの海洋探検家フレシネの名にちなんだものです。
 この肉穂花序は春に形成されます。 この写真は、じつは昨年の3月5日に京都府立植物園の温室で撮ったものですが、今年ももう咲いている頃でしょう。

 Freycinetia属は熱帯アジアからポリネシアを中心に分布し、世界で100種以上があります。 日本ではツルアダンが八重山諸島の石垣島と西表島、小笠原諸島の父島と母島に分布していて、5~6月に黄色い苞が見られ、肉穂花序が立ち上がります。 また、西表島にはヒメツルアダンが分布しています。
 下は西表島のツルアダンです。 細長い葉がそうですが、12月に撮ったので、残念ながら花はありません。

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 なお、ツルアダンなどの繁る西表島の亜熱帯照葉樹林の様子は、こちらに載せています。

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2012年2月26日 (日)

キイロカタビロコバチ

 アラカシの葉の裏にいたキイロカタビロコバチ( Sycophila variegata )です。 前翅前縁に黒紋があることや、胸部下面に淡色の部分がある(下の写真でも少し見えています)のが特徴です。 ナラ類に寄生するタマバチ等に寄生するようです。 写真は1枚撮ったところで、葉を揺らしてしまい、逃げられてしまいました。

Kiirokatabirokobachi120119_1

◎ キイロカタビロコバチはこちらにも載せています。

 コバチは、ハチ目細腰亜目コバチ上科の昆虫の総称で、さまざまな植物や動物に寄生する寄生蜂です。 このキイロカタビロコバチの体長が翅端までが約4mm、よく見るニッポンオナガコバチの体長も約4.5mmなど、「小蜂」の名前のとおり、ほとんどの種で体長が数mm以下です。 体長0.2mmほどのコバチもいて、これは全昆虫のうちで最小です。 小さいために翅脈は単純化し、時に翅が縮小したり消失している種もあります。 このブログで取り上げたイチジクコバチでは、オスには翅がありません。

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2012年2月25日 (土)

ヤマギシモリノキモグリバエ

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 24日の昼、近くの公園のアラカシに写真のような小さなハエがいました。 近くの数枚の葉に分散し、1枚の葉の(裏ではなく)表面に2~4頭、この日は暖かかったせいもあるのか、カメラを近づけただけで飛び立ち、すぐ近くの葉にとまる個体も多く、結局何頭いたのか分からなくなってしまいましたが、15頭前後だったと思います。
 昔に一度、1枚の葉にびっしりと並ぶ大きな集団を見たことがあるのですが、その時は不注意に顔を近づけて葉を揺らしてしまい、クモの子を散らすように逃げられてしまった経験がありますが、たぶんその時と同じ種類だと思います。

※ BABAさんがすばらしい集団の写真を載せておられます(こちら)。

 また、これと同種または近縁種と思われるものが樹皮の下にいるのを観察したことがあります(こちら)。

Yamagisimorinokimoguribae120224_2

 体長は翅端までが3mmほど、小盾板(しょうじゅんばん)に剛毛が2本あります(上の写真)。 翅脈の様子(下の写真)や脚の色、眼の色などから、キモグリバエ科 Rhodesiella属のヤマギシモリノキモグリバエだと思われます。 ただし、キモグリバエ科は九州大学の目録で150種、Rhodesiella属だけでも8種記録されていて、まだ増える可能性もあり、断定はできませんが・・・。

Yamagisimorinokimoguribae120224_3

 キモグリバエは「木に潜るハエ」の意味で、たしかに幼虫が木の皮を食べる種類もいるようですが、それはほんの一部で、単子葉植物の茎などや、キノコ、腐食質、動物食(虫の卵や腐肉など)もいて、キモグリバエ科全体とすれば食性は多様です。

※ ヤマギシモリノキモグリバエ( Rhodesiella yamagishii )に関する記載のある文献:
 上宮 健吉:赤坂御用地のキモグリバエ科(双翅目)
    国立科学博物館専報 39, 337-345, 2005

◎ ヤマギシモリノキモグリバエらしきハエはこちらにも載せています。

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2012年2月24日 (金)

クモガタテントウ

 東大阪市にある枚岡公園のタイザンボクの葉の裏で越冬中のクモガタテントウです(2月19日撮影)。 撮影していると歩き出しました。

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 クモガタテントウはカビクイテントウ族に分類され、キイロテントウなどに近いテントウムシです。 大きさは2.5mmほどで、子のう菌を餌としています。

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 クモガタテントウは帰化種で、1984年に東京港付近で見つかったのが最初で、原産地は北米です。 帰化種だけあって、大阪付近の分布(こちら)を見ても、山には少なく、都市部の公園などでよく見つかっているようです。

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2012年2月23日 (木)

カワウの日光浴

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 波も立てずに穏やかに泳ぐカワウ、しかし餌の魚を捕える時は水中で俊敏な行動を見せます(はずです:私が水に潜って見たわけではないので・・・)。 なにしろ泳いでいる魚を泳いで捕えるのですから。
 カワウは上記のように水中の行動が得意です。 上の写真はカワウの水面に浮かんでいる普段の姿ですが、体の大部分が沈んでいます。 まるで潜水艦が浮上して進んでいるような姿です。
 水面採餌をするカモなどの羽の表面には脂質成分があり、水をはじきます。 このために羽の内側には水が入ってこず、空気が貯えられて、体温を保つ働きをしています。 しかしこのような状態では空気による浮力が大きく、浮き上がってしまい、水中で俊敏な行動を取る事はできません。
 水中で俊敏な行動を取るウやカイツブリなどでは、羽にたくさんの空気を蓄えることはせず、羽は水に濡れます。 しかしやはり羽がいつも濡れたままというのも、具合が悪いのでしょう。 飛ぶにも水に濡れた翼では重いことでしょう。
 下のように翼を広げているカワウの姿をよく見ます。 このまま長時間じっとしたり、小刻みに翼を震わせたりしています。 目的は翼を乾かすためなのでしょう。

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 よくこの姿は虫干しだと言われます。 布団を虫干しするように、羽に付く寄生虫を陽に当てて殺しているのだというわけです。 しかし羽に付く寄生虫を防ぐのなら、他の鳥たちと同様、水浴びの方が有効でしょう。 カワウも水面で激しく暴れている姿をよく見ます(下の写真)。

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※ これまでに載せたカワウの記事
 カワウの顔のアップ
 婚姻色のカワウ

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2012年2月22日 (水)

トゲキジラミ

 シロダモの葉の裏にトゲキジラミがいました(2月19日)。 成虫、卵、複数の齢の幼虫が揃っています。 下の写真(クリックで拡大します)で、白っぽい小さな粒が卵、黄色いのが幼虫です。

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 トゲキジラミは、なかなかおもしろい虫で、成虫はその名のとおり、頭にも胸部にも、そして透明な翅の翅脈上にも剛毛を生やし、触角は黒と白の斑です(下の写真)。 ただし体長は2mmほどと、キジラミの中でも小型ですので、その形態のおもしろさは、私のカメラでは、うまく伝わらないかもしれませんが・・・。

Togekijirami120219_2

 トゲキジラミは1949年に発見されたキジラミで、比較的まとまっていてインターネットで読むことのできるものとしては、宮武頼夫氏が1970年に「大阪市立自然史博物館研究報告」に書かれたものがあります(こちら:ただし英文です)。

 「キジラミ」とは「木の虱」、つまり木の汁を吸って生きるアブラムシやカイガラムシに近い仲間です。 このブログではこれまでに、キジラミの成虫としては、ヤツデキジラミムクノトガリキジラミを載せています。 多くのキジラミでは、これらのように翅を山形(屋根型)にたたみますが、トゲキジラミは翅を平らにたたみます。 この点でも、トゲキジラミはキジラミの中でも“変わり者”です。
 上の写真で、成虫は白色のロウ物質をさかんに分泌し、それが糸状になっています。 上に書いたように、キジラミは葉の維管束を流れる汁を吸っているのですが、葉は光合成の“工場”ですから、この汁は栄養的にはかなり炭水化物(元素としては C,H,O )に偏ってしまいます。 ですから、わずかしか含まれない他の栄養素(元素としては N など)を摂るためには、たくさん植物の汁を吸い、摂りすぎた炭水化物をこのような形に変えて捨てなければならないのでしょう。 下のトゲキジラミは、白いロウ物質以外に、お尻からは、アブラムシの甘露のようなものを出しています。 これも同様の理由でしょう。

Togekijirami120219_1

 最初の写真で、白い糸状の物質は、成虫の体から離れた所にも散らばっています。 成虫の体についているものも、動けば取れてしまうでしょう。 ですから、写真のような状態は、活動が盛んでない寒い時期にしか見られないものでしょう。

 下は幼虫です。 左上の幼虫は、やはりロウ物質を出しています。 また大きな幼虫では、よく見ると、体の周囲に細い糸状のものが見られます。 これもロウ物質だと思いますが、もしかしたら錨のような役割もしているのかもしれませんね。
 キジラミの幼虫としては、前にカシトガリキジラミの幼虫を載せていますが、体の扁平さなど、よく似た点も見られます。

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 ところで、ここに載せた写真の舞台はシロダモの葉の裏だと書きました。 今までに幼虫も含めたトゲキジラミが観察されている葉は、シロダモ以外には、カナクギノキ、アブラチャン、ヤマコウバシなどのクスノキ科の植物です。 しかし成虫のみに限れば、クスノキ科以外でも、たまたま飛んできたとは考えられないケースもあるようで、別の科の植物に二次寄生している可能性も捨て切れません。
 インターネットや上記の文献でも、トゲキジラミは虫えいを作るとあります。 しかし上の写真では、虫えいらしきものは形成されていません。 たぶん幼虫が動き回らずに時間をかけてゆっくり成長する段階では、虫えいを作ることもあるのだと思います。

 上記のように、トゲキジラミは比較的最近に発見された昆虫で、まだまだその生活史は分かっていない部分も多くあります。 一方でその特徴的な姿は、小さな虫を撮る人たちの間では“人気者”で、いろんなブログの記事として取り上げられています。 そこで、生活史を知る助けになるかと思い、他のブログやHPで取り上げられている(私の目にとまった)トゲキジラミについて、観察日順に整理してみました。(工夫された機材ですばらしい写真を撮っておられる人の何と多いことか・・・)
 これをまとめるに当たっては、うまくコメントが送れなかったりで、無断でデータとして使用させてもらう形になってしまったり、写真から私の判断で書いた内容もありますので、誤り等がありましたら、ご連絡ください。 データとして利用させていただいた皆様には、この場を借りてお礼申し上げます。 なお、撮影月日で( )は撮影された日ではなく記事の日付です。

撮影月日    段階    ロウ物質   植物名    記載ブログ等
12月08日    成 虫       無     (飛来)      成城の動植物
12月29日    成虫・卵    有     (無記載)  ご近所の小さな生き物たち
01月25日    幼虫・成虫 有      シロダモ    路上ネイチャー協会
01月29日    卵~成虫   有     クスノキ    ムシをデザインしたのはダレ?
02月04日    卵 ・ 成虫   有     シロダモ    星庵徒然
02月12日    卵~成虫   有     シロダモ    どっこい生きてる
( 03/16 )    卵~成虫   有     シロダモ    いもむしうんちは雨の音
04月11日    成 虫       無     (無記載)    長池公園生き物図鑑
04月12日    幼虫・成虫 有      シロダモ    むしなび
04月13日    成 虫       無      シデ類に複数  長坂蛾庭
04月25日    成 虫       無      アベマキに1頭  明石・神戸の虫 ときどきプランクトン
05月01日    成虫(交尾) 無    アブラチャン(標高1,000m)    むしなび
05月15日    成 虫       無     (無記載)    ご近所の小さな生き物たち

 フッカーSさんからは、上のデータを補強する観察記録をいただきました(コメント欄)。 ありがとうございます。

 これを見ると、成虫は12月~5月に観察されています。 そして4月になれば、成虫の行動が活発化し、ロウ物質を体につけている状態を脱するようです。 しかし生活史については、次のように、いろいろ疑問が残ります。

  • 他の時期には成虫はいないのか、ブログなどに載せられていないだけなのか。 もし夏に成虫がいないとするなら、幼虫で夏を過ごしているのか。
  • 成虫は年1回の発生で、12月に出現しはじめ、5月まで生き延びる個体もいるのか、それともこの間、何回か発生しているのか。 私の撮った写真では、卵も様々な段階の幼虫も成虫も混じって写っていますが、産み落とされた卵はすぐに孵化し、幼虫は脱皮を繰り返しで成長し、ある程度齢が進んだ段階で長い休みに入ることも考えられます。

 これまでのデータを見る限り、寒い時期に幼虫が脱皮を繰り返し、かなりのスピードで成長しているようです。 もしかしたら、光合成が活発でない寒い時期こそ、植物の篩管液中の炭水化物濃度が下がり、相対的にアミノ酸等の濃度が高くなり、成長には都合がいいのかもしれません。(栄養成分を分析してくれる所が無いかな~)

 アーチャーンさん(成城の動植物)やHepotaさん(長坂蛾庭)から、似た近縁種がいることを知らせていただきました。 そのことを踏まえ、生活史についても今後もう少し慎重に検討する必要がありそうです。

※ トゲキジラミの幼虫(と思われるもの)の3月の様子をこちらに載せました。('12年3月26日)

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2012年2月20日 (月)

ヤマコウバシ-落葉樹とは-

 セツブンソウバイカオウレンなど、早春の花が咲きだしている今日このごろ、山道を歩くと、まだ茶色くなった葉をたくさんつけている木に出会います。 ヤマコウバシです。
 ヤマコウバシはクスノキ科に分類される低木で、葉をもんでみたり枝を折ると、香気があります。 「山にある香ばしいかおりのする木」です。

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 もちろん立ち枯れているわけではありません。 クスノキ科らしい丸みを持った芽をみると、春に備えて準備万端と言わんばかりです。

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 光合成を行うには細胞内の化学反応が進行する必要があります。 温度が低い冬は酵素反応である化学反応が進みにくく、光合成の効率が落ちます。 光合成がちゃんとできないのに表面積の大きな葉をつけていると、葉の表面から生命維持になくてはならない水分が蒸発し、危険です。 寒さで根の細胞の働きも弱くなって十分吸水できない条件では、なおさらです。 それならいっそ葉を落としてしまおう・・・ これが夏緑樹の生存戦略です。
※ 落葉樹には冬に葉を落とす夏緑樹や、乾季に葉を落とす雨緑樹があります。
 夏緑樹の葉は寒くなると落ちてしまうのではなく、夏緑樹は積極的に葉を落とします。 再利用できる物質は枝や幹に回収し、葉の付け根に「離層」という壁を作り、枝と葉の連絡を断ちます。
 常緑のままで冬を越そうとすると、葉を厚く丈夫にし、葉からの水分の蒸散を防ぐために葉の表面にワックスの一種であるクチクラ層を発達させるなど、工夫が要ります。
 このように夏緑樹の落葉は、葉に元手をかけずに冬を乗り切ろうとする植物の適応戦略の一つです。 ところが、暖かい所に分布の中心を持つ植物のグループで、日本のような所に分布を広げてきた植物のグループのなかには、「完全に落葉樹になりきれていない落葉樹」があります。 ヤマコウバシもそのうちの一種です。 ヤマコウバシの属するクスノキ科は、暖温帯熱帯、特にアジア南東部やブラジルに分布の中心を持つグループです。
 タブノキやクスノキなどのクスノキ科と共に日本の高木を代表するブナ科も、亜熱帯や暖温帯に分布の中心を持つグループです。 ブナ科の木でも落葉できないでいる落葉樹を見ることができます。 茶色い葉をたくさんつけているクヌギやコナラを見ることがありますし、ブナだって条件によっては葉をつけたままで冬を迎えることがあることは、こちらで紹介しています。

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2012年2月19日 (日)

アトコバネコナカゲロウの幼虫?

 家の近くの公園にいたコナカゲロウ科の幼虫です。

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 千葉大学園芸学部のサイトに脈翅目コナカゲロウ科(Coniopterygidae)の図鑑があります(こちら)。 ここでの絵合わせでは、アトコバネコナカゲロウ( Conwentzia pineticola )に似ているような気がします。
 触角を除いた体長は2.4mm、特にこのように白っぽい虫は、マクロレンズを普通に使用していたのでは、このあたりが限界ですね。
 コナカゲロウの成虫は、白い粉をまぶしたような姿です。

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2012年2月18日 (土)

カルガモの水浴び

 年中水の上で暮らす水鳥だって、水浴びをします。 それにしても派手にやりますね~。 浮力があって水中に沈めないはずのカルガモの体が、ほとんど水中に没します。
  写真をクリックして拡大して見ていただくと、水が美しく撮れていますよ (^-^)v

 水浴びは羽虫や汚れを取るのに必要な行動のようです。

※ 「羽虫(ハムシ)」とは俗称で、次の2通りの昆虫を指します。 1つは、ユスリカやシロアリの羽蟻などの羽のある小型の昆虫のこと、もう1つは、鳥の羽毛に寄生するハジラミなどの昆虫のことです。 上で書いたのは、もちろん後者のことで、この羽虫は羽を餌にしていますから、放置しておくと、羽がボロボロになり、ひどい場合は飛べなくなります。 なお、「ハムシ」にはもう1種類、植物の葉を食べる「葉虫」がいます。 このブログに登場している「ハムシ」の大部分は、この「葉虫」です。

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2012年2月17日 (金)

ウスイロカモドキサシガメ

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 アラカシの葉の裏にいたウスイロカモドキサシガメです。 堺自然ふれあいの森での撮影です。 体長は7mmほどです。 長い脚を伸ばして体を葉に密着させて冬眠していますので、全身を撮ろうとすると、上のような写真になってしまいます。 ただし、写真はクリックで大きくなりますから、ぜひ拡大して見てください。
 脚が細くて触角と区別できないほどですが、前方に突き出している前脚は少し太く、2つに折りたたんでいるので、よけいに太く見えます。

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 いろいろ撮っていると、体を持ち上げて動き出しました。

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 腹側に折りたたんでいる口吻を撮ろうとしたのですが、前脚の間にあって、なかなかうまく撮れません。

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 腹側から撮ると、少しは口吻の様子が分かるでしょうか。

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※ ウスイロカモドキサシガメ同様に細長いサシガメであるヒゲナガサシガメの、幼虫の越冬の様子はこちらに載せています。

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2012年2月16日 (木)

カシラダカ

Kasiradaka120210_1      (写真はクリックで拡大します)

 カシラダカは以前にも記事にしています(こちら)が、近づいて撮ることができたので再度載せておきます。
 写真はオスの冬羽のような気がしますが、この時期はメスとよく似ているので自信はありません。 もう1ヶ月もすれば、夏羽への換羽がはじまり、オスなら顔が黒くなりはじめるのでしょうが・・・。 何かの参考になるかもしれないと思い、顔の正面と後からの写真も載せておきます。

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2012年2月15日 (水)

スズキクサカゲロウ

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 今まで全身はこちらに登場したスズキクサカゲロウですが、少しはっきりした顔の拡大が撮れましたので、載せておきます。

Suzukikusakagerou120109_1

 スズキクサカゲロウでは、小腮鬚(1)も下唇鬚(2)も、各節の基部のみが淡色で、大部分は黒色です。 また、頭下部から頭楯脇にかけて、複眼には接しない黒斑が弧を描いています(3)。

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2012年2月13日 (月)

アリスイ

 アリスイはキツツキ科の鳥ですが、キツツキらしくありません。 幹に垂直にとまることはほとんどありませんし、自分で巣穴を掘ることもせず、他のキツツキの古巣を使います。 また、下に書くように、渡りをします。
 平成23年10月23日のNHK総合「ダーウィンが来た!-生きもの新伝説-」では「鳥の敵に化ける鳥 アリスイ」と題して放映されていました。 いろんなアリスイの生態が紹介されていましたが、タイトルになっている部分の内容は、アリスイが子育てしている巣をコムクドリが乗っ取りに来るのですが、その時にアリスイは巣の中から蛇に似た行動や蛇のような長い舌で、コムクドリに蛇がいると思わせ、追い払うというものでした。
 しかしアリスイは、北海道や本州北部では夏鳥ですが、本州中部以西では冬鳥ですので、こんな子育て行動を近畿地方で見ることはできません。 それでも独特の風貌がなんともユーモラスで、バードウォッチャーには人気者の鳥です。
 アリスイは動物食で、主食はその名のとおり、主にアリです。 長いネバネバした舌を伸ばし(このあたりはキツツキらしい)、地表や朽ち木にいるアリをくっつけて食べます。 生息地は開けた林縁や、草原・湿地などです。

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 みつけたアリスイは、ほとんど場所を移動せず、ひたすら土を掘るか休むかでした。 動かないのはそこに餌があるからでしょうが、枯草の陰になって、長い舌も見えません。
 30分ほど見ていたのですが、いろんな鳥を見たかったので、枝止まりの撮影はあきらめて移動しました。

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Arisui120210_2    餌を狙う時は、かわいい目も鋭くなります。

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2012年2月12日 (日)

ウメノキゴケ

 ウメノキゴケは、その名のとおり、樹皮の粗いウメの木によくついていますが、何もウメの木に限ったことではなく、いろんな木に着生しています。 この記事の写真は、エノキの幹に着生しているウメノキゴケです。
 ウメノキゴケはごく普通種の地衣類で、地衣類の代表として高校の教科書などでもよく取り上げられています。 しかし類似の種も多く、「ウメノキゴケの仲間」という意味で、よくこの名が用いられています。
 昨日記事にしたマツゲゴケもウメノキゴケの仲間で一見よく似ていますが、よく見るといろいろ違いが見えてきます。
 ウメノキゴケはたくさんの裂片に分かれていますが、これを全体としてみるとほぼ楕円形で、周辺部はすべすべしており、中心部は“つや消し”になっています(下の写真)。

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 “つや消し”の原因は、葉状体の表面に細かい裂芽が密生しているからです。 下は裂芽の有る部分と無い部分との境界付近を少し拡大したものです。

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 「裂芽」とは地衣体の表面にできる小突起で、これが分離して生長し、新しい地衣体となります。
 昨日のマツゲゴケの所で、菌糸と藻類が絡まった粉末状のものを「粉芽」と呼ぶ旨のことを書きました。 裂芽と粉芽は、どちらも地衣類の無性生殖器官で、よく似た機能を持っているのですが、区別されています。 ウメノキゴケでは、マツゲゴケで見られたような、裂片の周辺部のソラリアは見られません。
 下は裂芽をもう少し拡大したものです。

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 葉状体の裏面(腹面)は、周辺部は白っぽい褐色ですが、その内側は濃い褐色で、この部分からは偽根がまばらに出ます。 マツゲゴケとは裏面の色も違いますし、シリアはありません。

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2012年2月11日 (土)

マツゲゴケ

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 マツゲゴケは低地~低山地でよく見る葉状の地衣類で、ウメノキゴケの仲間です。 地衣類というのは、アカミゴケツメゴケのところでも書きましたが、菌類(カビ・キノコの仲間)と藻類が深い共生関係になり、あたかも1種類の生物のように暮らしているものです。
 上で、マツゲゴケは普通に見られると書きましたが、大気汚染には弱く、都市部では見ることができません。 このため、他のウメノキゴケ属の地衣類と同様、大気汚染の指標になります。 写真は枚岡公園で、ソメイヨシノの幹に着生しているマツゲゴケを撮ったものです。
 マツゲゴケの名は、深裂した裂片の縁から、まつ毛のような黒い毛のようなもの(これをシリアと呼んでいます)が伸びだしているのが見えるからです(下の写真)。 また、裂片の先端部のあちこちには、ソラリアまたは粉芽塊と呼ばれる、菌糸と藻類が絡まったものが粉末状に集まったものが見られます。 よく見ると、微細な網目状の模様も観察できます。

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 マツゲゴケの裏(腹面)は黒色ですが、ソラリアがついている部分は白くなっています。 シリアは黒い部分に生え、ソラリアのついている裂片には生えていません。

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 マツゲゴケに近縁のものに、オオマツゲゴケやニセマツゲゴケがあります。 オオマツゲゴケの腹面はソラリアのついている部分も黒く、ニセマツゲゴケでは、ソラリアのついている裂片にもシリアが生えます。

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2012年2月10日 (金)

アミメクサカゲロウ

 アミメクサカゲロウは成虫で越冬します。 下の写真、半分以上は触角ですが、それでもほとんど画面いっぱいにアミメクサカゲロウの全身が写っているのですが、パッと見て分かりますか? これでもフラッシュで目が光って分かりやすくなっています。
 分かりにくい人は、写真をクリックして拡大して見てください。(他の写真もクリックで拡大します。)

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 上の写真はヤツデの葉の裏ですが、下はツバキの葉の裏にいた別個体です。 こちらの方は、光の当たり方で、存在が分かりやすくなっていますが、やはり体を葉の主脈の側に寄せて目立たないようにしているようです。

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 アミメクサカゲロウは、クサカゲロウの仲間では最大です。 幼虫はアブラムシなどを捕食し、成虫はアブラムシの甘露を嘗めて暮らします。
 前翅は幅広く、長さは22~26mmもあり、中央付近には黒紋があります。 段横脈は多く、前翅を拡大すると、たくさんの毛が生えています。

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 長い触角の基節外側には紫褐色の条があり、また頭楯の両脇にも太い褐色条があります。

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 それにしても、クサカゲロウの仲間の眼は、フラッシュの光を当てると、どうしてこんなにも美しい色になるのでしょうね。

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2012年2月 9日 (木)

トラフズク(幼鳥)

 淀川の河岸林にトラフズクが来ていると聞き、5日に行ってきました。 トラフズクはよく淀川の河岸林にいるのですが、今は成鳥と幼鳥がいるようです。 しかし夜行性で昼間はほとんど飛びませんから、どこにいるのか、みつけるのはたいへんです。
 鳥を探すのではなく、鳥をみている人を探す・・・地元ではなく、情報の乏しい私には、この方法しかありません。
 昼頃に行ってみると何人か観察しておられました。 いたのは褐色の成鳥ではなく、白っぽい幼鳥の方で、樹上ではなく地面でくつろいでいる様子。 聞くと朝からずっとこのままだとか。 草は撮影の邪魔になるし、なかなかこちらを向いてくれませんし、目もなかなか開けてくれません。

Torafuzuku120205_1    横顔

Torafuzuku120205_2    後姿 羽角(外耳状の羽毛)2本はよく分かります

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2012年2月 8日 (水)

セモンジンガサハムシの越冬

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 セモンジンガサハムシは林床の落葉下などで成虫越冬すると言われているのですが、どういうわけか、地上150cmほどのツバキの葉の裏で越冬していました。 ちなみに食餌植物もサクラ、リンゴ、ナシなどのバラ科と言われているので、これもツバキとは関係ありません。
 下は横から撮ったもので右が頭です。 冬眠中でもいつものとおりキラキラ光っています。

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 色や模様はイチモンジカメノコハムシに似ていますが、、セモンジンガサハムシの方が一回り小さく、背に「X」の紋があります。

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2012年2月 7日 (火)

カケス@金剛山

 雪の中でも元気に飛び回っていたカケスです。

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 金剛山のカケスは、これまで2回このブログに載せています( ①090509 と ②110227 )。 これらと今回のカケスを比較すると、今回のカケスは、目の付近の黒い模様がはっきりしません。 また、②のカケスは喉が白いのですが、今回のカケスは喉が白くなく、腹が白くなっています。
 カケスの雌雄は同色とされています。 目の付近の色の違いは、今回のカケスが若いからではないかと思っているのですが、どうでしょうか。 喉と腹の色は個体差にすぎないのかもしれません。 とにかく、もう少しいろいろ調べてみる必要がありそうです。

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2012年2月 5日 (日)

冬のブナ林@金剛山

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 ブナ林の土はブナの落葉が積み重なり、保水力が高いと言われています。 またブナ自身も水を蓄えた土を好みます。 つまり自身の枯葉で好む環境を作っているのですが、水の供給が無ければどうしようもありません。 特に春に葉を展開する時には多くの水が必要になるのですが、この春の水の供給源として、冬の雪が重要になってきます。
 日本海側のブナの葉と太平洋側のブナの葉を比較すると、前者の方がかなり大きな葉をつけていますが、これは冬の雪の量の差ではないかと言われています。
 そんな雪が大好きなブナ林の雪景色を見たくて、金剛山に登ってきました。 上に書いたように、近畿中部に位置する金剛山の雪はそんなに多くはなく、ブナにとっては不満でしょうが、見学者にとっては楽に見ることのできる美しい景色です。
 細い枝は霧氷が一面についてまっ白、美しさを増していました。

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 生長盛りの若いブナは、葉をつけたままで冬を迎えることがあります。 ギリギリまで光合成を行い、落葉の準備が不十分だったのでしょうか。

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※ 「そよかぜ日記」でも、冬の金剛山の様子を載せています。

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2012年2月 3日 (金)

カシトガリキジラミの5齢幼虫

 キジラミとは「木につくシラミ」で、木の汁を吸って生きています。 とは言っても、シラミは咀顎目でキジラミはカメムシ目ですので、両者は系統的にはかなり違う昆虫です。 このブログで取り上げたキジラミの成虫としては、ムクノトガリキジラミヤツデキジラミなどがあります。
 この時期、アラカシの葉の裏を見ると、あちこちのアラカシでカシトガリキジラミの5齢幼虫を見ることができます(下の写真)。

Kasitogarikijirami120119_1      (写真はクリックで拡大します)

 5齢幼虫の体長は2~2.5mmほどです。 体の周囲には、ロウ物質を出す毛がたくさん生えています。 体は写真のようにペチャンコです。 ちなみに、ヤツデキジラミの幼虫もペチャンコです。

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 このカシトガリキジラミの生活史については、当時の大阪府立大学農業短期大学部の宗林正人氏が詳しく調べられています(昆蟲27(3),1959)。 それによると、5齢幼虫は、大阪付近では多くは3月中旬に羽化します。 羽化した成虫は、アラカシの未展開新葉の隙間から葉面に産卵します。 卵は4月下旬に孵化し、0.4mmほどの1齢幼虫は活発に歩行し、固着する場所を探します。 そして4月下旬から5月上旬に脱皮して2齢幼虫になります。 2齢幼虫は動かないまま夏を越し、12月上旬に脱皮して3齢幼虫に、12月中旬に脱皮して4齢幼虫に、そして12月下旬に脱皮して5齢幼虫になります。 最初の写真には脱皮した後の殻も写っています。
 葉面にくっついたままの生活で、排泄物はどうするのかというと、幼虫の腹面の排泄孔の周囲にはロウ物質を出す孔があり、水滴状の排泄物は薄いロウ物質に包まれて筒状になり、幼虫の体にくっつくことなく放出されます。 下の写真では、この排泄物の入った筒状のものが腹部の下に写っています。

Kasitogarikijirami120119_3

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2012年2月 2日 (木)

冬のネジキ

 幹がねじれているからネジキ、分かりやすい名前です。 しかし樹皮だけでなく材もねじれていますから、加工し難く利用しにくい木です。
 ネジキは日当たりのいい乾燥気味の所でよく見られます。 アカマツ林などにもよく生えていたのですが、アカマツ林そのものが森林の遷移と共に減少しています。

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 日のよく当たる所のネジキの昨年伸びた枝は、冬に美しい赤い色になります(下の写真)。 この赤い枝は生け花などに用いられます。

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 赤い枝についている芽に注目しましょう。 これまで何度か、芽には頂芽と側芽(=腋芽)があることを書いてきました。 頂芽は枝の先端にあり、伸びてきた枝が冬になって伸びることを休んでいる状態です。 側芽は葉の腋に作られた芽です。 例えばトチノキの冬芽の所でも書いたように、どんどん伸びて高くなろうとする木は頂芽を発達させます。 枝にたくさんついている側芽が伸びると、枝は四方に広がり繁りますが、伸びる勢いが分散され、高くなりにくくなります。
 ネジキはそんなに高くなる木ではありません。 上の枝の写真の右上に、長芽のつくあたりの拡大を入れておきました。 よく見ると枝の先端が取れてしまっています。 たまたまこの枝の先が折れたのではありません。 これを「枝痕」と呼んでいます。 頂芽のような顔をしているのは、枝の先端に最も近い所にある側芽で、葉痕の上にあります。 このような芽を「仮頂芽」と呼んでいます。 仮頂芽は枝痕を伴うことで頂芽と区別されます。

※ ネジキの花や紅葉の様子はこちらに載せています。

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2012年2月 1日 (水)

ウスバフユシャク、クロテンフユシャク、ウスモンフユシャク

 冬に現れ、オストメスとで異なる形態を持つ蛾(例えばシロオビフユシャクのオスとメスはこちら)である冬尺(ふゆしゃく)については、これまで何度か書いてきました。
 冬尺と呼ばれているのは1種類ではなく、フユシャク亜科の14種、ナミシャク亜科の6種、エダシャク亜科の15種の合計35種が知られていることも何度か書きましたが、このうちのフユシャク亜科のウスバフユシャク、クロテンフユシャク、ウスモンフユシャクは、いずれも普通種であり、オスもメスも互いによく似ています。 今回はこの3種のオスの比較をしてみました。
 さて、下の4枚の写真は、この3種を並べたものです。 ということは、どれかの種の写真が2枚あるということですが、分かりますか?
 後の説明のために左上の写真には番号をつけていますが、番号の所も着目ポイントとして見てください。 なお、上に書いたシロオビフユシャクもフユシャク亜科で、フユシャク亜科の冬尺たちは、いずれもこのように翅を重ねてとまりますが、左の翅と右の翅のどちらが上にくるかは、種によって決まっていません。 

Usubafuyushaku110123_2 Usubafuyushaku100124_10

Kurotenfuyushaku110206_1 Usumonfuyushaku120115_3

 では、この3種の違いを整理していくことにします。 まず、蛾の翅の紋様で、①のように横に走るものを外横線と呼んでいます。 この外横線の、ちょうど①の番号のあたりの前縁付近で、ウスバフユシャクはほぼまっすぐなのですが、クロテンフユシャクとウスモンフユシャクでは曲がっています。 また、ウスバフユシャクでは外横線の外側が白くなる傾向があります。 なお、この外横線の内側にもうひとつの横線模様(これを内横線と呼んでいます)が見られる場合があります。 右上や左下の写真で、ぼんやりと内横線の存在が分かりますが、この模様は個体による違いが大きく、あまり同定には役立たないようです。
 次に、上の写真の①の黒斑については、ウスバフユシャクでは黒斑はあるのですが、薄くなることもあります。 クロテンフユシャクでは、その名前のとおり、多くの場合明瞭な黒斑があります。 ウスモンフユシャクでは、この黒斑は小さいか、ほぼ消失しています。
 ③で示した翅頂から斜めに外横線に近づく黒線は、ウスバフユシャクやクロテンフユシャクにはあるのですが、ウスモンフユシャクでは消失しているケースが多くなります。
 以上を簡単に下の表にまとめてみました。

ウ ス バ クロテン ウスモン
①前縁付近の外横線 一直線 曲がる 曲がる
②黒点 有(明瞭) 無~小
③翅頂からの黒線 (無)

 

 3種の違い、理解いただけたでしょうか。 右上の写真と左上の写真は、どちらもウスバフユシャクですが、模様も違うように見えますし、少し翅を広げただけで違った印象になりますね。 そして左下はクロテンフユシャク、右下がウスモンフユシャクということになります(と思います : 少し不安・・・)。 
 なお、メスはもっとよく似ていて、メスだけでは生殖器を調べなければ種名は分からないようです。

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