ウラジロの幼植物
お正月にちなんで、お正月につきもののウラジロの生長記録です。
※ この記事は「前葉体」や「胞子体」の意味を理解していただいていることを前提に書いています。 「それって、な~に」という方は、まずはこちらからお読みください。
前に、ウラジロというシダ植物は、 1年に左右1対の羽片のみを広げ、つまり毎年葉の一部のみを展開し、何年もかかって1枚の葉を広げていくシダ植物であることを書きました。(詳しくはウラジロの芽およびウラジロの葉の展開をご覧ください。)
上記の葉の性質は、ウラジロの幼植物ではどうなんでしょうか。 それよりも、こんな葉の性質を持つウラジロの幼植物はどんな姿をしているのでしょうか。
(1) 前葉体からのスタート
はじめから、あの大きなウラジロの葉ができるわけはありません。 ウラジロの胞子体(私たちが普通に見るウラジロ)も、1cmに満たない前葉体からスタートするはずです。
(2) 葉全体が大きくなることはない
ところで、ウラジロの葉は、毎年毎年1対の羽片を展開し続け、どんどん高くなっていくのでしょうか。 答は No です。 高さ10mのウラジロなんて、見たことがありません。 ではなぜ生長を続けられないのでしょうか。 理由は、葉は太らないからです。
高く伸び前後左右に枝を伸ばし葉を茂らせる木がそのように生長できるのは、それらを支える幹が太るからです。 しかし葉の中軸は太ることがありません。 ある意味、太ることができるかできないかが、葉の中軸と茎との違いと言っていいでしょう。 それに、展開した羽片がさらに横に伸びることもありません。 つまり、葉全体がひとまわり大きくなるというようなことは考えられません。
太ることができない葉は、茎から葉ができる最初の段階で大きさの限界が定まっていることになります。 大きくなる限界が定まっているウラジロの葉は、その限界にまで達すると、もうその葉は伸びません。 古くなって枯れていくだけです。 その葉の光合成でかせいだ養分を使い、次の新しい葉を作っていくことになります。
(3) 幼い胞子体の姿
(1)と(2)を組み合わせると、ウラジロの生長する様子が見えてきます。 前葉体の受精卵からスタートしたウラジロの胞子体は、まず小さな葉を作り、その葉はそれ以上大きくはなれませんが、その葉の光合成で得た養分でもう少し大きな葉を作り、ということを繰り返して、次第に大きなウラジロの葉を作っていくことが予想されます。
これらの小さい葉では、左右に羽片を出すウラジロ独特の葉の特徴は、どのようになっているのでしょうか。 実際の様子を見ていくことにします。
上は、ちょうど右から左へ、ウラジロの前葉体から幼い胞子体が作られていく様子がわかるように並んでくれています。 幼い胞子体には、まだウラジロらしさは見られません。 前葉体は胞子体が大きくなるにつれ、縮小していきます。
上の写真では、ウラジロ特有の左右対称の羽片と、後から伸びる部分(赤い矢印)もできてきています。
下の写真では、葉はa、b、cの順に作られたと考えられます。 aは上の写真の赤い矢印の部分が展開したものでしょう。 最下羽片は少しウラジロらしかったのですが、こうなるとウラジロらしくはありませんね。
aの次にできたと考えられるbの葉になると、ウラジロらしくなります。 cはまだ最下羽片だけですが、よく見ると、まだ最下羽片も完全に展開しきっていません。 この上にさらに新しい羽片が展開していくことでしょう。
上の写真の葉は、全てこの1年でできたものだと思います。 ウラジロの胞子体は、大きくなると1年に1対の羽片を展開するだけですが、小さいうちは、上の写真のように、短期間のうちに何枚もの葉を作り、何対もの羽片を展開していくようです。
| 固定リンク
「植物(種子植物以外)」カテゴリの記事
- チャボヒラゴケ(2014.03.12)
- ヒロハツヤゴケ(2014.02.09)
- タチヒダゴケ(2014.01.29)
- カラフトキンモウゴケ(2014.01.28)
- イワヒメワラビ(2013.08.09)
コメント