イヌカタヒバ②
まずは昨日のクイズの正解から・・・
昨日の2枚目の写真では、左右に10枚ほどの葉があるようにも見えますが、それではいちばん先についている葉はどれ? と聞かれると困ります。
これがシダの仲間だと見破った人は、シダの葉は普通大きく、木性シダを除いて普通のシダの茎は地下または地表近くにあり、だからこれは1枚の葉だと思った人もいるかもしれません。 しかし、昨日の写真を拡大していただければ分かりますが、小さい葉がいっぱいついています。 これが1枚の葉の切れ込みと言ってしまうには、あまりにも不自然ですし、それに小さい葉は立体的についています。 1枚の葉なら平面的なもののはずです。
この小さい葉は、よく見ると、中央の軸にも付いていますし、左右の葉状に広がったものを形成している小さな葉と同じものです。
つまりこれは葉の付き方からすると、メタセコイアの葉の付き方とよく似たつき方をしている、ということになります。
ですから、昨日の2枚目の写真の中央の軸は、葉の中心にある軸ではなく、茎ですし、枝分かれして左右に伸びているのも茎、その先で分かれているのもみんな茎で、その茎に小さな葉がギッシリとついている、ということになります。
つまり、昨日出題の答は③ということになります。 下に、昨日の写真の一部を拡大したものを載せておきます。 上に書いたことを確認してみてください。
上の写真で、中央を左から右に横断している茎が、昨日の写真で葉の中心の軸のように見えていた部分です。 ここで注意してほしいのは、そこから左右に伸びている茎(上の写真では上下に伸びている茎)につく葉に2種類あるということです。
上の写真は、昨日の2枚目の写真を1枚の葉と見立てるなら、葉の表側から撮ったものです。 そこで、この2種類の葉は、大きい方(写真では下側の葉)を「腹葉(ふくよう)」、小さい方(写真では上側の葉)を「背葉(はいよう)」と呼んでいます。
このあたりで、名前のことも書いておきます。 「イヌカタヒバ」の名前は「つまらないカタヒバ」と言う意味でしょうし、「カタヒバ」は放射状に茎を伸ばすイワヒバに対し、片方に、つまり一方向にのみ茎を伸ばしていくところからの名前でしょう。
この時期、茎の先端には、上の写真のように、茶色いツボミのようなものが見られます。 これは無性芽で、この部分が地面に落ち、新しいイヌカタヒバが育っていきます。 胞子は胞子のう穂で作られるのですが、日陰で育ったせいか、写真のものにはついていませんでした。
イヌカタヒバは、大きな意味で、シダの仲間です。 少し前まで、シダ植物を大きく小葉類と大葉類とに大別していました。 私たちの見る多くのシダは大葉類で、ウラジロもノキシノブもマメヅタもみんな大葉類です。 これまでにこのブログに載せた中で、小葉類としては、トウゲシバがあります。
ところが最近は互いのDNAを比較する分枝系統学的手法による、新しいAPG分類体系が作られています。 このAPG分類体系に基づく『高等植物分類表』(平成21年10月20日初版発行、北隆館)によれば、まずヒカゲノカズラ類(小葉類)と大葉類に分類し、大葉類の中に大葉シダ植物と裸子植物と被子植物とがあることになっています。 つまり、このイヌカタヒバやヒカゲノカズラなど(小葉類)とウラジロやワラビなど(大葉類)とはかなり分類的にかけ離れていて、むしろウラジロやワラビなどと被子植物との方が近い“親類関係”にあるのではないかと言われているわけです。
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