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2011年12月31日 (土)

シイタケの胞子紋

 胞子紋とは、キノコのひだにある胞子を紙の上に自然に落下させてできる紋様のことです。
 キノコの同定には胞子の様子、つまり胞子の形態や大きさ、色が大切になってきます。 また、ひだの様子も大切な要素です。 これらのために、胞子紋を取る方法がよく用いられます。
 キノコの標本は乾燥させて作りますが、乾燥させるとみじめな形となり、色も変わってしまいます。 大阪市立自然史博物館などでは、フリーズドライで標本を作ったりしていますが・・・。
 ですから、キノコの記録には、標本と共に、スケッチや写真、胞子紋を取る事等を組み合わせて行われます。

 新鮮なシイタケをいただいたので、このシイタケの胞子紋を取ってみました。

Siitake111223_1  傘を紙に密着させるため、柄を少し残す程度にして切り落とします。

Siitake111223_2  傘を紙の上に置きます。 今回は黒い紙を使いましたが、白い胞子以外の場合は、白い紙を用います。

Siitake111223_3  胞子が落ちる時に風に影響されないよう、容器をかぶせておきます。

 1日置いた後の結果が下です。 1日でこれだけの胞子が落ちるのですね。

Siitake111223_4    (画像はクリックで拡大します)

 シイタケのようなキノコでは、若いうちはひだは内被膜で覆われて保護されています。 今回用いたシイタケは採られてひだを上にして置かれているうちにかさが開いたのでしょうか、所々内被膜がひだにくっついていて、その部分だけは胞子が紙に落ちてきていません。

 このシイタケはお正月の鍋に使われる予定です。 良いお年を。

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2011年12月30日 (金)

死環③

 今日の内容は死環①と死環②の続きです。 最初にこの記事に来られた方は、死環①からお読みください。

Soyogo111221_b

 前回の問題は、上の写真(ソヨゴの葉)のように、既に死環のできている葉で、死環の近く(上の写真の赤い×の位置あたり)に再度熱を加えて死環を作らせると、どうなると考えられるか、でした。 上の写真では死環を作る時に少し焦げ目がついてしまいましたが、死環は焦げ目とは別のものであることを示すことにもなるので、そのままにしてあります。
 理論的に考えてみましょう。 死環は酵素反応により褐色の物質が新たに形成される反応の結果として作られるものでした。 死環の内側では、熱のために酵素が変性し、活性を失っていますから、もう反応は起こらないはずです。 つまり前回の問題図の1とはならないでしょう。
 死環では熱の影響で新しい物質ができてしまっていますから、もうこれ以上熱による変化は無いはずです。 つまり前回の問題図の3とはならないでしょう。
 残るは2ですね。 実際に試してみました。 結果は下のようになりました。

Soyogo111221_c

 考えたとおりの結果になるということは、考えたことが正しいのではないか、ということになりますね。 みなさんの考えはどうだったでしょうか。

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2011年12月29日 (木)

ホシダ・イヌケホシダ

Hosida091229_1

 ホシダは、福島・新潟以西から九州にかけての人為的な撹乱の多いところによく生えるごく普通の常緑性のシダです。 名前は長い頂羽片を「穂」と見たものです。 ただし、環境などによっても形態的には差異が生じるのは植物の常ですが、ホシダはその変異の幅が比較的大きなシダです。 またこれに似て細かい毛がビロード状に生えているケホシダもあります。 さらに、最近では南方系のイヌケホシダが冬でも暖かさが保たれている市街地でどんどん増えてきています。
 上の写真と下の写真は、どちらも胞子をつけているのですが、雰囲気的にはかなり違います。 上はホシダで、下はイヌケホシダだと思います。

Hasigosida111213_1

 イヌケホシダの葉を手で触ると、ザラザラした印象があります。 下は葉の表の一部を拡大したもので、左が葉の先端です。 羽片の基部の上向きの裂片は他の裂片より少し大きくなっています。 各裂片の中軸に最も近い側脈は互いに結合しています。 裂片の側脈は単条で先端は葉縁に達しています。

Hasigosida111213_2

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 下は葉の裏です。 胞子のう群は辺縁近くにつき、包膜は円腎形ですが、写真では時期的に苞膜は縮れてしまっていて、形の確認はできません。 胞子のう群は比較的大きいので、成熟した時には、写真のように互いにくっついて一列に見えることが多くあります。
 葉の中軸や 葉の裏の羽軸にはたくさんの毛があります。

Hasigosida111213_3

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2011年12月28日 (水)

ヒノキゴケ

 寒空の下でも瑞々しい緑を保っている植物はいろいろあります。 ヒノキゴケもそのひとつです。

Hinokigoke111221_1

 ヒノキゴケは蘚綱マゴケ亜綱ホンマゴケ目ヒノキゴケ科に分類されています。 ちなみに「ホンマゴケ」というのは「本当の真のコケ」という意味で、いわゆるコケらしい姿をしている仲間です。 また「ヒノキゴケ」というのは、ヒノキの樹形に似ているからというのですが、これはどうでしょうか。
 コケの仲間では、胞子体の胞子が入っている部分は「さく(蒴)」と呼ばれています。 マゴケの仲間では、さくはふたをもっていて、多くの場合は、このふたがとれると、さく歯があるのがわかります。 写真のヒノキゴケは、ちょうど円錐形のふたが取れて、さく歯が見える状態でした。

Hinokigoke111221_2

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 ホンマゴケの仲間は2重のさく歯を持っています。 さく歯が開いて胞子が飛散するのですが、上の写真では、左側のさくは右側のさくより若く、内側のさく歯(内さく歯)は外側のさく歯(外さく歯)の内側で固く閉じているらしく、写真には写っていません。

Hinokigoke111221_4

 ヒノキゴケは園芸的にはヤマゴケと呼ばれることもあり、コケ庭などによく利用されています。 しかし、ヤマゴケと呼ばれているコケには多くの種類があり、関東と関西でも違うようです。

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2011年12月27日 (火)

ハンカチノキ

 大阪府河内長野市の岩湧山麓にある岩湧寺の近くにハンカチノキが植えられていて、たくさんの実がなっていました。

Hankachinoki111221_1

 ハンカチノキは中国の四川省・雲南省の高原に自生する木で、標高約500mのこの地がよく合うのか、毎年たくさんの花を咲かせ、実をつけます。
 下は上の写真の一部を拡大したものですが、私が気になったのは果柄がまっすぐに果実についていないことと、果実のつけ根の膨らみ(下の写真の赤い矢印)です。 この膨らみは何でしょうか。

Hankachinoki111221_3

 果実の分からないところは、果実の元である花にヒントを求めるのも1つの方法です。 下は京都府立植物園で撮ったハンカチノキの花です。 白いのは苞で、「ハンカチノキ」の名前は、この苞を白いハンカチに見立てたところからです。

Hankachinoki110506_1

 下は2枚の苞の中央に位置する花を拡大したものです。 この花のつくりはどのようになっているのでしょうか。 たくさんあるのはオシベでしょうが、花被は? メシベは?・・・斜めについている!!

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 ハンカチノキは、遺伝子を元にした新しいAPG植物分類体系ではヌマミズキ科に分類されています。 このヌマミズキ科はミズキ科に近縁です。 例えばミズキ科のハナミズキでは4枚の苞の中央に花の集団があります。 ハンカチノキの2枚の苞の中央にある球形のものは、球形の花托にたくさんの花が咲いている状態のようです。 同じヌマミズキ科に分類されているカンレンボクも、たくさんの花が球形に集まっていました。 ただハンカチノキの花の集団は、ほとんどがオシベばかりの雄花で、雌花は1つだけのようです。

 1つの雌花の子房が膨らみ、1つの果実になっていくのですが、雌花も球形の花托に咲いていました。 雌花の子房が果実になるとき、その果実には球形の花托のなごりがくっついているはずで、それが2枚目の写真の矢印の部分でしょう。


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2011年12月25日 (日)

シダ植物の前葉体

 今までこのブログにも、いろんなシダ植物が登場し、そこでも書いてきたように、シダ植物は胞子で増えます。 しかし胞子そのものの作られ方は、種子植物の花の受粉のように有性生殖により作られるものではありません。
 有性生殖は、オスとメスあるいは2個体のさまざまな遺伝子を混ぜ合わせ、遺伝的多様性を生み出す元となっています。 遺伝的に多様であることによって、進化も起こり、環境が変化してもどれかの個体が生き残る可能性が生じるわけです。
 シダ植物には有性生殖は無いのでしょうか。 結論を先に出してしまうと、一部を除き、多くのシダ植物は、下に書くように、有性生殖を行います。
 シダ植物の葉から飛散した胞子がその後の生長に適した所に落ちることができると、前葉体というものが作られます。 下の写真が、その前葉体です。
 下の写真には前葉体が3つ写っています。 大きさは1cmもありません。 ハート型をしていますが、多くの種類のシダで前葉体はこのような形になります。 写真は何というシダの前葉体かは分かりません。

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 「前葉体」の名前は、私たちがよく見るシダの葉になる前の体という意味でしょうが、この前葉体に造卵器と造精器がつくられ、そこで卵細胞と精子が作られます(顕微鏡レベルの大きさです)。 この精子が雨や水がかかった時に泳いで卵細胞にたどりつき、受精卵となり、この受精卵が細胞分裂してシダの幼植物になっていきます(下の写真)。
 生殖活動できるということは、生物にとって“大人(おとな)”です。 卵細胞や精子をつくる前葉体は、姿は小さくても“大人”ということになります。 つまりシダには2種類の“大人”の姿があり、1つは私たちが普段よく目にする、胞子を作る(=無性生殖をする)シダであり、もう1つは有性生殖をする前葉体である、ということになります。 1種類のシダに2種類の“大人”の姿があるわけですから、別の名前が要ります。 そこで、私たちが普段目にする胞子をつける体の方を「胞子体」と呼びます。 前葉体は配偶子(=卵細胞や精子)を作るわけですから、「配偶体」とも呼ばれます。

Zenyoutai091115_1

 前葉体は小さいので、普段私たちは無視してしまいます。 ウラジロに2種類の体があるからといって、わざわざ「胞子体のウラジロ」とは言いません。 しかし、上に書いたように、シダ植物の前葉体と胞子体は、決してオタマジャクシとカエルの関係ではありません。 オタマジャクシは、姿は違っても、カエルの子供です。 しかし前葉体は、いくら小さくても“大人”であり、決して子供の姿ではありません。 たしかに前葉体は胞子体の胞子からできますが、その胞子体は前葉体から生まれます。
 同一種の“大人”の姿に2種類あるというのは、動物では考えられません。 植物を理解するためには、動物の常識から離れなければなりません。

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2011年12月24日 (土)

死環②

 前回の死環①で、死環は熱による細胞の破壊の結果、新しい酵素反応が起こり、水溶性タンニンが難水溶性タンニンに変化するために生じるのだと書きました。
 タンニンとは分子構造に共通点を持つ複数の物質の総称で、1種類ではありません。 いろんなタンニンの一例として、ソヨゴの葉の死環とある意味で似た、柿の水溶性タンニンと難水溶性タンニンを挙げておきます。
 渋柿には水溶性のタンニン分子が含まれていて、これが舌の味を感じる部分と反応して渋味を感じます。 一方、甘柿の果肉には、所々褐色の斑紋が見られます。 この斑紋は、水分の多い柿の中で、水と仲良くなれない難水溶性のタンニン分子同士がくっつきあい、目に斑紋として見える大きさにまでなったものです。 このように分子どうしがくっついて大きくなったものは、舌の味を感じる部分と反応するには大きすぎて反応しなくなり、渋くなくなります。 なお、柿の甘みは糖分によるもので、タンニンとは無関係です。 渋柿にも糖分はありますから、渋柿の水溶性タンニンをいろんな処理(いわゆる渋抜き)をして難水溶性のタンニンに変えると、渋みに隠されていた甘さが分かるようになります。

 ソヨゴはたいへん死環を作りやすい葉ですので、これまでソヨゴの葉を使ってきましたが、死環はソヨゴに特有なものではありません。 上に書いたように、タンニンは1種類ではなく、植物によって持っている種類も量も異なりますが、多くの植物が持っている物質です。 また植物の持つ酵素も種によって微妙に異なります。 つまり、植物によって、死環のできるものもできないものもあり、死環のできるものも、色が褐色であったり黒色であったり、死環の現れるまでの時間も異なります。 言い換えれば、死環を見ることは、名前の分からない植物の名前を知る1つのヒントにもなるかもしれません。
 モチノキ科やモクセイ科の常緑樹は、ほとんど死環が出るのですが、他にもツバキ科のモッコク、スイカズラ科のサンゴジュ、バラ科のシャリンバイやバクチノキ、ミズキ科のアオキ、ツツジ科のシャシャンボ、トベラ科のトベラ、クスノキ科のタブノキ、モクセイ科のキンモクセイなど、多くの科の植物で死環を見ることができます。 また死環が現れるのに時間がかかる植物としては、タイミンタチバナ、クスドイゲ、ヒメユズリハなどがあります。

Soyogo111221_8    クロガネモチの葉の表の死環(上)とキンモクセイの葉の裏の死環(下)

 細胞の破壊の結果として死環が生じるのだとすれば、細胞が破壊される要因が熱以外の場合でも、褐色の物質は作られるはずです。
 事実、死環が生じる植物の葉を、細胞が壊れるように圧迫してやっても、褐色の物質が生じます。 ただ、葉の破れやすい植物や細胞の壊れにくい葉もあり、死環のようにきれいな結果が出るとは限りませんが・・・。
 下はソヨゴの葉を先の丸い棒で強くこすった結果です。

Soyogo111221_9

 なお、このような変化は生きている組織内の化学変化として起こるものですから、元気な葉で行う方が、結果はきれいに出るようです。

【理解度テスト】
 死環①と死環②を読んでいただき、死環のできかたは理解していただけたでしょうか。 では死環のできるしくみからして、死環の近くを熱して、再度死環を作らせるとどうなるでしょうか。
 下の図の「0」のように、死環のできた葉の×の位置を熱すると、どのようになるでしょうか。 下の図の「1~3」から正解に最も近いと思われる番号を選んでください。

Soyogo111221_a
 正解はこちらです。

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Wishing you a very Merry Christmas !

 24日と25日は画面に雪を降らせています 

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2011年12月23日 (金)

死環①

 昨日はソヨゴの葉を熱すると爆ぜることを記事にしましたが、それよりも控えめに、ほんの少し(1~2秒)ソヨゴの葉の一部を熱すると(下の写真)、

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 1分も経たないうちに、熱した周囲がリング状にジワ~ッと褐色になってきます(下の写真)。

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 これは熱により葉の一部の細胞が死ぬときに見られる環ということで「死環」と呼ばれています。 昨日も書きましたが、この褐色の部分は、でき方からしても、焦げたものではありませんし、もちろん煤(すす)がついたわけでもありません。 褐色に見えるようになったということは、褐色の物質が新しく作られたからだと考えられます。
 植物でも動物でも、生体内で起こっている化学反応は、ほとんど全て酵素反応です。 褐色の物質が作られたということは、褐色の物質を作る酵素反応が進行した結果だと考えられます。
 死環のでき方は次のように考えられます。 まず、一般的に酵素は熱に弱いものですから、熱せられた場所では酵素はその活性を失ってしまいます。 つまり化学反応は進まず、葉は緑のままです。
 しかし熱せられた周辺では、熱による細胞の破壊により、細胞内外の酸素が葉の中の物質を変化させ、褐色の物質が作られるのだと考えられています。 この反応は、化学的にはかなり複雑なようですが、褐色の物質になる元の物質は水溶性のタンニンで、これが変化して難水溶性のタンニンを作るためだと言われています。
 このように、死環は葉の内部で起こる反応ですから、片方から熱しただけで、葉の表でも裏でも(葉の内部でも)同じ死環を見ることができます(下の写真)。

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 死環②に続く

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2011年12月22日 (木)

ソヨゴ

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 1週間ほど前にクロガネモチについて記事にしましたが、ソヨゴもモチノキ科モチノキ属の常緑樹で、クロガネモチ同様、雌雄異株です。 雌株はこの時期、長い柄の先に赤い果実をぶら下げています(上の写真)。
 ソヨゴは関東地方・新潟県以西に分布し、乾燥気味の尾根筋などによく見られるなど、乾燥に強い木です。 本来高木になることができるようですが、私の見る多くのソヨゴは林冠に達することなく、林内で育っています。

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 上の写真でも幹が斜めに写っていますが、太いソヨゴはよく傾いています。 ソヨゴの根は直根を持たず、ほとんどの根が地表に近いところを横に走っているようです。 そのため、下が岩で土壌が浅いような所(=乾燥しやすい所)でも、降った雨をいち早く吸収できる反面、地上部を支持する力が弱く、風などで倒れやすく、そのために風当たりの強くない林内に納まっているようです。 なお、幹が傾くと、根際から萌芽が生じ、新しく上に伸びる幹を再生していきます。
 ソヨゴの葉は、触ると滑らかで柔らかいのですが、乾燥に耐えるしくみのひとつとして、葉の表皮は硬く丈夫で、葉の内部の水分を逃がさないようにしているようです。 そのため、風で葉がこすれあうとカサカサと音がし、これが他の木の葉より際立っていることから、「そよぐ」に由来して「ソヨゴ」の名前がつけられたと言われています。
 丈夫な表皮を持つ葉を熱するとどうなるか。 葉肉間にある気体が膨張しても水が気化しても逃げ出せないわけですから、それが限界に達すると、パチッと音がして、葉が爆ぜます。 下は葉の表から熱して、爆ぜた裏側を撮ったものです。 やはり海綿状組織の方が細胞間の隙間が多く、葉の裏側の方が爆ぜやすいようです。

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 ところで、上の写真で、葉の熱した部分の周囲が褐色になっています。 もう少し時間を置くと、もっと褐色が濃くなります。 これは焦げたものでもありませんし、反対側を熱しているわけですから、もちろん煤(すす)ではありません。 では、これは何か、明日はこのことについて書くつもりです。

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2011年12月21日 (水)

クロコブタケ

Kurokobutake111220_1

 コナラの枯れた所にたくさんの黒い塊がくっついているのを、堺自然ふれあいの森でみつけました。 触るとカチンカチン。
 これは、ブナ科の倒木や枯れた幹などに群生するクロコブタケという子嚢(しのう)菌の仲間です。 シイタケのほだ木にも発生し、シイタケの害菌としても知られています。
 木から剥して、ナイフで断面を作ってみました(下の写真)。 断面を作る時の感じは、まるで炭を切ったようでした。
 断面を見ると、小さな部屋が表面近くに埋め込まれています。 この小さな部屋を「子嚢殻」といい、子嚢殻を取り囲んでいる部分を「子座」と呼んでいます。

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 写真では子嚢殻は既に空っぽになっていますが、ここは胞子が入っていた所です。 もう少し早く見つけていたら子嚢殻の中にたくさんの「子嚢」が入っている状態を見ることができたでしょう。 この子嚢の中には8個の「子嚢胞子」が入っているのですが、もちろん胞子は顕微鏡レベルの大きさです。

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2011年12月20日 (火)

青目補正

 暗い所でフラッシュを光らせて人を撮ると、目が赤く写ることがよくあります。 しかし最近のカメラには赤目自動補正機能がついているものもありますし、赤目補正機能を持った画像編集ソフトはたくさんあります。 ところが、暗い所で犬や猫などを撮ると、人の目よりも強く光り、しかも赤目ではなく、青目です。

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 このままでは愛犬のいい顔が台無しなので、“青目補正”をしてやらねばなりません。 でもその前に、そもそもなぜ赤目や青目になるのでしょうか。
 人の場合、赤目になるのは、目から入った強い光が目の奥を照らし、その色が写真に写るからです。 つまり、目の奥にある網膜の色素上皮や網膜の奥にある脈絡膜のメラニン色素、それに脈絡膜の血管の血液の色が重なり合った色が写真に写る事になります。
 では、犬や猫ではどうでしょうか。 犬や猫に限らず、多くの哺乳類は、暗闇で人よりも物がよく見えます。 人は進化の過程で、物の形や動きを見ることを犠牲にして、色彩を見分ける能力を発達させてきました。
 多くの哺乳類で、人と比較して暗闇でも物がよく見えるしくみというのは、視細胞の種類が異なる以外に、網膜の下にある脈絡膜にタペタムまたは輝膜(こうまく)と呼ばれる反射層を発達させています。 目から入った光は網膜の視細胞を興奮させ、網膜をすり抜けた光はタペタムで反射して再度網膜を通り、視細胞を興奮させます。
 つまり、多くの哺乳類に暗闇で急に強い光を当てると、瞳孔が広がった状態でたくさんの光が目に入り、タペタムで反射され、目のレンズを通して集められた光が外に出てくることになります。 つまり端的に言ってしまえば、赤目は脈絡膜などの色を見ていることになりますし、青目は脈絡膜で反射された光を見ていることになります。

 さて、“青目補正”です。 “青目補正”専用のソフトが無いのですから、画像編集ソフトの機能を使ってやるしかありません。 私はフリーソフトの「 Jtrim 」を使いました。 ある色の部分を別の色で塗りつぶしていくことになるのですが、ある色を一度に別の色に置き換えてしまうと変なことになります。 青目だって細かく見れば青の濃い所もうすい所もあります。どの範囲の色をどの程度置き換えるのか(具体的には「許容範囲」と「不透明度」を調整して)、少しずつ何度も繰り返し、徐々に色を変えていきます。
 最初の写真を上の方法で“青目補正”したのが下の写真です。 いかがでしょうか。

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2011年12月19日 (月)

ヤマトカギバの幼虫

(2012年3月12日に記事内容を全面的に書き換えました。)
 11月26日にクリの木を見に行ったところ、写真のような幼虫がいました。 ちょうど11月23日の記事にしたヘリヒラタアブのことが気になっていた時で、11月26日に再度見に行くとこの幼虫がいて、アブの幼虫の呼吸筒のようなものを持っていたので、自信の無いまま、ヘリヒラタアブの幼虫として、当初のタイトルも「ヘリヒラタアブの幼虫(?)」としていたところ、Aclerisさんに、ヤマトカギバの幼虫だと教えていただきました(コメント参照)。 尾脚が退化し、肛上板の先端が角状に伸びていて、イモムシらしくはありませんが、これがカギバガの仲間の特徴だということです。
 ヤマトカギバの成虫は、4~6月と8~9月に出現し、私の家の近くでもよく見る蛾です。 幼虫はブナ科のコナラ、クヌギ、クリなどの葉を食べます。 11月26日の様子は、動きは活発ではありませんでしたが、頭を前に後ろへと動かしていました。

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2011年12月18日 (日)

クリオオアブラムシの卵のその後

 11月29日の記事にしたクリオオアブラムシのその後が気になり、12月16日に見に行ってきました。
 11月26日にクリオオアブラムシは卵を産み始めていました。 産み落とされた卵は褐色で(こちら)、卵はその後黒い色になり、冬越しをするはずです。 ところが、12月16日に行ってみると、黒い色になっていて見つけにくいのは承知で、熱心に探してみたのですが、いくら探しても卵は見つかりませんでした。 何かに食べられてしまったのでしょうか。
 クリの木もほとんど葉を落としてしまいました。 静かに冬を越すことでしょう。

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 明日はこの卵を食べたかもしれないヘリヒラタアブの幼虫について書く予定です。

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2011年12月17日 (土)

ディモルフォセカ②

※ この記事は昨日の続きです。 最初にこの記事に来られた方は、昨日の記事からお読みください。

 写真で分かるとおり、ディモルフォセカはキク科です。 キク科の1つの花のようにみえるものは、じつはたくさんの花の集まり(=花序)です。 このような花序は頭状花序または頭花と呼ばれています。 そして、ディモルフォセカのようなタイプの花では、2種類の花が集まっていて、頭花の周囲には舌状花が並び、中心付近には複数の筒状花があります。
 下はディモルフォセカの花を真上から撮ったものですが、これに上の話を当てはめてみると、いちばん外側の白い部分は舌状花が並んだ部分で、その内側の黄色い部分は、色からして花粉を出している筒状花、そして中心部の青い部分は筒状花のツボミの部分だろうということにります。 ただ、この青い部分の、上から見るとウメの花のようなツボミというのは、他にあまり例がありません。 これはツボミの花弁なのでしょうか、それとも花弁が見えず、5本のオシベの葯がくっつきあっているのでしょうか。

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 頭花のつくりを確認するために、断面を作ってみました(下の写真)。 この写真をじっくり見れば、5つセットの青い部分の謎をはじめ、いろんなことが分かります。 それに、青い色の下には、表面的にはけっして見えない赤紫の色、こんな美しい色を隠し持っているとは“贅沢な”花です。

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 上の写真を見ると、頭花がたくさんの花からできていることがわかります。それぞれの花の下には黄緑色の子房があり、この子房は平たく、左右に翼のようなものが張り出しています。

 ひとつずつ確認していくことにします。 まずは舌状花です(下の写真)。 舌状花にはオシベは見当たりません。 メシベの柱頭は2裂しています。

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 そして、5つセットが問題の筒状花です。 下の写真のように、筒状花をバラバラにして写すと、何の不思議も無いですが・・・。

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 青い部分は花弁でした。 2つの筒状花が写っている上の写真で、上がツボミ、下の筒状花は、花弁が5裂し、その中央からオシベの葯が伸びだし、その中央から花粉があふれ出ています。 この花粉を押し上げているのは、くっつきあったオシベの葯の中央にあるメシベでしょう。 このメシベは見えていませんが、大きな子房を持っていることから、筒状花は両性花だろうと思います。
 このようにしてみると、ディモルフォセカの花のつくりは、きわめて普通のキク科の花なのですが、筒状花の5枚の花弁の先が丸く厚く膨れていて、この5枚の花弁がくっつきあっているツボミの状態を上から見ると、梅の花のように見えるということのようです。 最後に、咲いている筒状花を斜めから撮った写真を載せておきます。

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 今回は色の美しさに導かれて、キク科の花のつくり、つまり頭状花序、舌状花のつくり、筒状花のつくりを確認することになりました。

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2011年12月16日 (金)

ディモルフォセカ①

 寒空の下、ディモルフォセカが元気に咲いていました。

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 ディモルフォセカはアフリカ南部原産で、園芸的によく栽培されています。 これとよく似たものにオステオスペルマムがあります。 ディモルフォセカもオステオスペルマムも属の名称ですが、両者は属を分けるほどの違いは無いというのが一般的ですし、両者は交配され、その性質は混ざりあっていますので、少なくとも園芸種では神経質に区別する必要は無さそうです。

 ディモルフォセカの茎を持つと少し粘り気を感じます。 下は茎を拡大して撮ったものですが、小さな腺毛がたくさん見えます。

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 花の色は園芸的にいろいろ作られているのですが、花を撮っている時に、私は特に白い花の中心部の青い色に惹かれました。

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 下は花の中心部の青い部分を撮ったものですが、5つずつセットになっています。 色だけでなく形態的にも興味を持ちました。

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 この青いものは何でしょうか。 そして5つずつセットになっているのはなぜでしょうか。 この続きはこちらで・・・。

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2011年12月14日 (水)

クロガネモチ

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 昔、金属のことを「かね」と呼んでいました。 「黒いかね」は鉄の古称です。 クロガネモチの「クロガネ」は、紫色になることが多い若い枝の色からでしょう。 そして「モチ」は、モチノキ同様、この木の樹皮から「とりもち」を作ることができるからです。
 「とりもち」といっても、若い人には分からないかもしれませんね。 粘着性物質で、「もち」はネバネバを意味しているのでしょう。 このとりもちを枝に塗っておき、そこにとまってくっついた小鳥をつかまえるのですが、今は小鳥を保護する観点から、もちろん許されていません。 私の子供の頃は、長いさおの先にとりもちをつけて、セミもこれでくっつけて取ったものです。

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 クロガネモチに話を戻します。 クロガネモチは雌雄異株で、本州の茨城・福井以西と、四国・九州・琉球列島に分布していますが、乾燥に強く、明るい場所を好む性質から、庭木や街路樹などにもよく使われています。
 クロガネモチはモチノキと同じ属で、どちらも庭木に使われますが、少なくとも私の近くでは庭木としてはクロガネモチの方が好まれていて、ややこしいのは植木屋さんが「もちのき」と言っているのは、たいていクロガネモチだということです。 しかしクロガネモチの名前を意識して使っているところもあり、そこではクロガネモチの名前を「金持ち」に結びつけたり、さらには「苦労がねー(苦労が無い)金持ち」などと言われたりします。
 私の家の庭には鳥の糞から生えたクロガネモチがあります。 まだ30cmほどですが、この木が大きくなる頃には苦労しないで金持ちになっているのでしょうか。

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2011年12月13日 (火)

カネタタキ

 マサキの果実が裂開し、仮種皮におおわれた種子がぶら下がりはじめています。 そのマサキの果実にカネタタキのメスが来ていました。 長い尾角の間に産卵管があります。

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 カネタタキの成虫出現時期は8月~12月で、直翅目(キリギリス、コオロギ、バッタの仲間)のうちでは自然環境下で最も遅くまで鳴き声を聞くことができます。 「カネタタキ」の名前は、このチン・チン・チン・・・という小さな鳴き声からきています。
 樹上性の昆虫で、街路樹や庭木にも生息しているのですが、夜行性で、夏の間は鳴き声も夜しか聴くことができませんが、温度が下がってくると昼間でも鳴いています。
 写真は成虫ですが、翅がありません。 メスはこのように翅が無く、オスの翅も小さくて鳴くことにのみ使われているようです。
 カネタタキの成虫は、飼育下では蜂蜜やドッグフードなどで育てることができるようなのですが、自然環境下で何を食べて生きているのか、じつはよく分かっていません。 今回見ていると、カネタタキはマサキの仮種皮に惹かれているようでした。 しかしカメラを近づけたため、カネタタキに逃避行動をとらせてしまうことになり、仮種皮をかじるなどの行動は確認できませんでした。
 マサキの種子散布戦略は、仮種皮の色からしても、種子を鳥に食べて運んでもらうことでしょう。 しかし、仮種皮の表面にはカネタタキの好む物質があるのかもしれません。

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2011年12月12日 (月)

大阪ステーションシティの緑

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 この春オープンした大阪ステーションシティに行ってきました。 大阪ステーションシティは、JR大阪駅の抜本的な改良に併せ、駅整備とまちづくりの視点に立ち、駅とその南北にあるサウスゲートビルとノースゲートビルとが一体化した施設です。 緑の空間が取り込まれていて、ビルに囲まれた都会生活をする人たちに安らぎの場を提供する試みとして注目されます。

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 大阪ステーションシティにおける緑に関係する施設としては、あちこちの広場に設置されている可動式の大きなプランターを除けば、ノースゲートビル10Fの「和(やわ)らぎの庭」、11Fの「風の広場」、14Fの「天空の農園」、サウスゲートビル15Fの「太陽の広場」が挙げられます。

Osc111210_3    風の広場

Osc111210_4    天空の農園

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2011年12月11日 (日)

トギレエダシャク?

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 12月7日の夜、堺市の自宅近くの高倉寺に犬の散歩に行った時に、写真の蛾がいました。 その時はカメラも持っていなかったのですが、10日の夜に通ると、全く動かずに同じ場所にいました。 このまま死んでいくのか、既に死んでいるのかもしれません。
 寺の高い所ですので、斜め下から撮る形になってしまい、これ以上は近づけないのですが、どうもトギレエダシャクのオスのような気がします。 しかし、トギレエダシャクは3月~4月に出現する蛾です。 またこれに近い模様の蛾もたくさんいます。
 もしトギレエダシャクではないのならばご指摘いただきたいですし、トギレエダシャクならこんな時期にも出現することもあるという記録の意味で、載せておくことにします。 なお、トギレエダシャクはフユシャクの一種で、メスの翅が短く、途中で途切れているような翅であることからの名前でしょう。 もちろん、メスは飛べません。

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2011年12月 9日 (金)

ヨシガモの群

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 近くの池(堺市南部)にヨシガモの群が来ていました。 聞くと毎年群が飛来しているようです。
 この日いたのは16羽、上の写真はその一部ですが、みんなお昼寝中で、泳いでいるのはオオバンです。 上の写真では小さいですが、くちばしを背中につっこんで振り向いた姿勢で寝ていると、後頭部の緑の羽毛が伸びてナポレオンハットのようになっているのがよく分かります。
 この日、この池にヨシガモの他にいたのは、数羽のオオバンと1~2羽のヒドリガモのみ。 普段ならオシドリもいるということですが、小さな池をヨシガモが占領しているようでした。
 ただしこの池の水鳥たちは、警戒心が強く、人にも慣れていないので、近づくことはできません。 ここで撮れるのは上のような写真のみですので、もう少し人に慣れた、他の場所で撮ったヨシガモの写真を載せておきます。

Yosigamo090221_3    緑の羽毛の後頭で伸びているのがよく分かる角度から

Yosigamo090221_1    オスとメス

Yosigamo090221_2    翼の表も裏も見せてくれました

※ ヨシガモの記事はこちらにも載せています。

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2011年12月 8日 (木)

タラノキの実

 芽は山菜としてよく知られているタラノキ、そのは以前記事にしましたが、今回はその実です。 といっても、鳥に食べられたのか、ほとんど残っていませんが・・・。 花序の軸もきれいです。

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 このようにしてみると、ウドとタラノキが同じ属だというのも納得できます。

 下はトゲだらけのタラノキの枝です。 これだけを見ていると、とてもウドとは同じ属だとは思えませんね。

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2011年12月 7日 (水)

キノカワガ

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 樹皮に似たキノカワガ、写真は遊歩道脇のセメントで作られた偽の樹皮にとまっているところですが、本物の樹皮にとまっていたなら、もっと分かりにくいのかもしれません。 さらに、この翅の模様は個体変異が大きく、いろんな樹皮にどれかの個体が似るという“戦略”をとっているようです。
 キノカワガはこのまま成虫越冬し、早春に卵を産み、孵化した幼虫はマメガキやカキなどのカキノキ科の葉を食べて育ちます。 成虫が見られるのは6月頃からで、途中もう一度発生し、今の時期に至ります。

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2011年12月 6日 (火)

メグスリノキ

 堺市の南部にある感応寺に植栽されているメグスリノキが美しく紅葉しています。

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 メグスリノキは、その名のとおり、目の病気を改善する成分を持っているとともに、肝機能を向上させる成分も有しています。 この薬効でよく知られていて、サプリメントとして販売もされ、苗木も販売されたりしていますが、紅葉が美しいことは、あまり知られていません。 効用は知られていても、紅葉は知られていないわけですね (^-^ )v

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 「目薬」と聞くと西洋医学を連想し、最近になって導入された木であるようにも思いますが、じつは日本に自生している木です。 それどころか、日本にしか自生していない木で、青森県・秋田県を除く本州、四国と宮崎県・鹿児島県・沖縄県を除く九州の、標高700m前後の山中を中心として分布しているカエデ科の落葉高木です。
 カエデ科といっても、タカオカエデやイタヤカエデなどの見慣れたカエデとは異なり、3出複葉です。 ただ、カエデ科の特徴のひとつに葉が対生であることが挙げられますが、この特徴はメグスリノキにも当てはまります。 毛の多い植物で、葉柄や葉の裏、それに枝には、たくさんの毛が生えています(下の写真)。

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2011年12月 5日 (月)

マメヅタ

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 マメヅタは樹木や岩の上などに茎をはわせる着生のシダ植物で、山間部ではごくごく普通に見ることができます。
 このブログは身近な動植物こそ、きちんと取り上げたいと思っています。 しかし、どうしても少し珍しいものを発見すると、それを取り上げてしまい、普通種は後回しになってしまいます。 マメヅタも、もう既に取り上げたつもりでしたが、まだでした。

 マメヅタの葉も、光合成を専らにする栄養葉と、主に胞子を散布するための胞子葉に分かれています。 丸い栄養葉は樹木や岩の表面にくっつくように存在し、葉の裏には胞子のうはありません。 一方の胞子葉は細長く、葉の裏にはたくさんの胞子のうをつけ、胞子が風に乗って遠くまで散布されるよう、葉を持ち上げています。

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 シダ植物には胞子のう群を保護する「包膜」を持ったものも多いのですが、マメヅタには包膜は無く、これに代わって楯状の鱗片が保護します。 下は1月上旬の撮影で、もうほとんどの胞子のうは胞子を飛ばしてしまい、取れてしまっていますが、楯状の鱗片は、そのまま残っています。

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2011年12月 3日 (土)

イヌカタヒバ②

 まずは昨日のクイズの正解から・・・
 昨日の2枚目の写真では、左右に10枚ほどの葉があるようにも見えますが、それではいちばん先についている葉はどれ? と聞かれると困ります。
 これがシダの仲間だと見破った人は、シダの葉は普通大きく、木性シダを除いて普通のシダの茎は地下または地表近くにあり、だからこれは1枚の葉だと思った人もいるかもしれません。 しかし、昨日の写真を拡大していただければ分かりますが、小さい葉がいっぱいついています。 これが1枚の葉の切れ込みと言ってしまうには、あまりにも不自然ですし、それに小さい葉は立体的についています。 1枚の葉なら平面的なもののはずです。
 この小さい葉は、よく見ると、中央の軸にも付いていますし、左右の葉状に広がったものを形成している小さな葉と同じものです。
 つまりこれは葉の付き方からすると、メタセコイアの葉の付き方とよく似たつき方をしている、ということになります。
 ですから、昨日の2枚目の写真の中央の軸は、葉の中心にある軸ではなく、茎ですし、枝分かれして左右に伸びているのも茎、その先で分かれているのもみんな茎で、その茎に小さな葉がギッシリとついている、ということになります。
 つまり、昨日出題の答は③ということになります。 下に、昨日の写真の一部を拡大したものを載せておきます。 上に書いたことを確認してみてください。

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 上の写真で、中央を左から右に横断している茎が、昨日の写真で葉の中心の軸のように見えていた部分です。 ここで注意してほしいのは、そこから左右に伸びている茎(上の写真では上下に伸びている茎)につく葉に2種類あるということです。
 上の写真は、昨日の2枚目の写真を1枚の葉と見立てるなら、葉の表側から撮ったものです。 そこで、この2種類の葉は、大きい方(写真では下側の葉)を「腹葉(ふくよう)」、小さい方(写真では上側の葉)を「背葉(はいよう)」と呼んでいます。
 このあたりで、名前のことも書いておきます。 「イヌカタヒバ」の名前は「つまらないカタヒバ」と言う意味でしょうし、「カタヒバ」は放射状に茎を伸ばすイワヒバに対し、片方に、つまり一方向にのみ茎を伸ばしていくところからの名前でしょう。

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 この時期、茎の先端には、上の写真のように、茶色いツボミのようなものが見られます。 これは無性芽で、この部分が地面に落ち、新しいイヌカタヒバが育っていきます。 胞子は胞子のう穂で作られるのですが、日陰で育ったせいか、写真のものにはついていませんでした。
 イヌカタヒバは、大きな意味で、シダの仲間です。 少し前まで、シダ植物を大きく小葉類と大葉類とに大別していました。 私たちの見る多くのシダは大葉類で、ウラジロノキシノブマメヅタもみんな大葉類です。 これまでにこのブログに載せた中で、小葉類としては、トウゲシバがあります。
 ところが最近は互いのDNAを比較する分枝系統学的手法による、新しいAPG分類体系が作られています。 このAPG分類体系に基づく『高等植物分類表』(平成21年10月20日初版発行、北隆館)によれば、まずヒカゲノカズラ類(小葉類)と大葉類に分類し、大葉類の中に大葉シダ植物と裸子植物と被子植物とがあることになっています。 つまり、このイヌカタヒバやヒカゲノカズラなど(小葉類)とウラジロやワラビなど(大葉類)とはかなり分類的にかけ離れていて、むしろウラジロやワラビなどと被子植物との方が近い“親類関係”にあるのではないかと言われているわけです。

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2011年12月 2日 (金)

イヌカタヒバ①

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 イヌカタヒバは琉球列島に自生していますが、山野草として栽培されていたものが逃げ出し、現在では本州各地に広がっています。
 さて、下の写真には何枚の葉が写っているでしょうか。

 ① 一枚の葉の一部
 ② 約10枚
 ③ 約5,000枚

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 このブログによく来ていただいている方には簡単すぎるかな?

 答はこちら

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2011年12月 1日 (木)

ペカン

 ペカンはクルミの仲間の落葉高木で、その種子はナッツとして利用されます。 米国中西部からメキシコ東部が原産で、日本には大正時代の初期に入ってきています。
 果実(堅果)は中に1つの種子があり、10月頃に成熟し、成熟すると果皮が裂けて種子を落とします。 下の写真は11月20日に長居植物園で撮ったものですが、樹上に残っているのはほとんど裂けた果皮ばかりです。 地面を見ると、種子を落としてしまった果皮もたくさん落ちていました。

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 下は地面に落ちていた、裂けた果皮です。 果実には4稜があり、この稜の部分で割れています。

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 そして下が種子です。 種子の表面には模様があります。 クルミと異なり、外種皮は薄くて手でも割ることができます。

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 下は種子を割ったところです。 中はほとんどが複雑な形をした胚乳です。

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 この胚乳は、製菓材料としたり、軽く煎ってサラダや炒め物に加えたり、生食も可能です。 胚乳はクルミとよく似た味がしますが、成分的にはクルミよりずっと脂質が多く含まれています。
 この写真の後、胚乳の多くは私の胃袋にしまわれましたが、室内犬が寄ってきたので与えたところ、喜んで食べていました。

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