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2011年10月22日 (土)

アシダカグモは死んだゴキブリも食べる

 前にアシダカグモがゴキブリを食べる様子を、み。さんからいただいた内容を元に記事にしましたが、み。さんから、アシダカグモがゴキブリを食べることについて新しい知見をいただきましたので、お知らせします。
 既に何度か記事にしましたが、み。さんの所には何頭かのアシダカグモが屋内で暮らしています。
 アシダカグモにも、人が近づくと逃げるものから平気なものまで、“個性”があるようです。 今回の“主人公”は1頭のオスですが、おとなしいクモで、積極的に食事をしたのは脱皮前の一時期だけで、春先は目に付く場所でほとんど動かず、目の前にゴキブリを放してやると食べるようなクモだったそうです。 最近はほとんど動かず同じ場所にいて、弱っているのではないかと心配な状況だったようです。
 気温が下がってきたせいか、最近はあまりゴキブリを見かけることが少なくなりました。 昨年はオスの成体2頭が冬を越せなかったこともあり、たたいて死にかけのゴキブリ(触角だけが動いていた)をこのアシダカグモの近くに置いたところ、食べようとはしませんでした。 ゴキブリはその日の午後には触角も動かなくなりました。
 ところが、そのまま放置していたところ、2日後、このアシダカグモが、この死んだゴキブリを食べていたということです。

Shokuji111005_1

 私は、クモは動くものに対してしか餌として捕えようとする行動を起こさないものだと思っていたのですが、そうではなさそうです。
 み。さんによれば、アシダカグモは無用な狩りはしないということです。 「食べている途中で他のゴキブリを見るとそちらも捕える」と言われており、そのような映像もYouTubeにもあるのですが、み。さんによれば、それは産卵や脱皮の準備期にある個体特有の行動ではないかということです。
 また、アシダカグモがクロゴキブリの成虫を完食する率は低いとのことです。 食べ終わると、残りは捨てるようです。 今回の食餌でも、予め紙を敷いておいたところ、下の写真のような状況になりました。

Shokuji111005_2

 もうひとつ注目したいのは、残骸の形態です。 一般には、クモは捕まえた獲物の体内に消化液を注入し、獲物の組織を液体にして吸うのだと言われています。 しかしこの残骸を見ると、明らかに噛み砕かれているように見えます。 果物を齧っているかもしれない観察例もあります(こちら)。

 今回はアシダカグモが動かないものでも餌として認識することを書きましたが、このことと関係して、次回は「アシダカグモは皿の砂糖水を飲みに来る」の予定です。

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コメント

またまた立派な記事にありがとうございます。
補足ですが、この個体は1週間ばかり家中を徘徊したのち
たいして実入りもないままに
気温の低下にともない動作が鈍くなっていたと思われます。
アシダカグモ的にはかなりせっぱ詰った行動だったのではないでしょうか。
見た目は死んでいたゴキブリですが、
もしかしたらアシダカグモは
なんらかの生体反応をキャッチしたのかもしれません。

投稿: み。 | 2011年10月23日 (日) 05時54分

> アシダカグモ的にはかなりせっぱ詰った行動だったのではないでしょうか。
> 見た目は死んでいたゴキブリですが、
> もしかしたらアシダカグモは
> なんらかの生体反応をキャッチしたのかもしれません。

私も最初はそんなことも考えました。
でもそうであれば砂糖水に来る事の説明がつきません。
それに3頭も砂糖水に来るという事は、どのアシダカグモも砂糖水を認識できるということでしょうから。

投稿: そよかぜ | 2011年10月23日 (日) 21時02分

私も行動生態学的な研究をする立場にあるワケではないのですが、

「それに3頭も砂糖水に来るという事は、どのアシダカグモも砂糖水を認識できるということでしょうから」

に関して言えば、それは必ずしもそうであるとは言えないのではないでしょうか?

それは、アシダカグモのように家の中であればどこでも行動できるクモが、確率論的にある水源に複数回来るというが起りうるということです。
砂糖水を好んで飲むということであれば、たしかに面白いことだとは思いますが、証拠としてはまだ脆弱ではないかと思います。

このようなことを言われ続けると、不快やもしれませんが、科学は否定され、反論することこそが科学であるので、悪しからず。

投稿: 肩狭グモ | 2013年2月 9日 (土) 20時07分

メモ的な文章に科学論文的な評価をくださり、ありがとうございます。
アシダカグモが砂糖水に来たことに関して言えば、たった3頭の観察例から何らかの結論を導くことは早計であることは十分認識しています。しかし感想としては、アシダカグモが偶然砂糖水に来たとするよりは、アシダカグモは砂糖水を「認識」していると思える行動だということです。
科学的に何かを結論付けるには、この作業仮説に基づき検証実験をする必要があるでしょうね。

投稿: そよかぜ | 2013年2月 9日 (土) 21時37分

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