シオガマギク
シオガマギクは暖温帯上部から冷温帯域の全国の草原に生育するゴマノハグサ科の多年草です。 葉は重きょ歯があり、茎の基部では対生で、上部では互生になります。
花は近畿地方では8月から9月に見られます。 ねじれた唇形の花で、上唇はくちばしのようにとがり、その先から柱頭が顔を出しています。 下唇は幅広く、端は浅く3裂しています(上の写真)。 このようにねじれた花は、マメ科のホドイモ、ノアズキ、クロバナツルアズキなどでも見られ、ねじれ方はそれぞれ少しずつ違うのですが、受粉の時にどのような昆虫が訪れ、どのように有利に機能するのか、たいへん興味があります。
シオガマギクには、葉の様子や花のねじれ方など、いくつかの変種があります。 最近の葉緑体DNAを使った研究からは9種のタイプがあり、地理的にまとまっているようです。
またこの仲間は、半寄生性の植物、つまり自らも光合成をしますが、周囲のイネ科やカヤツリグサ科の植物の根からも養分を奪うとも言われているのですが、特に葉に比較して花が多いようには思われないのですが・・・。
シオガマギクの花は上記のようにねじれていますが、名前についても、かなりひねられています。 「キク」については、葉がキクに似ているからということですが、シオガマについては・・・
昔、海水から塩を取る時には、藻に海水をかけて日光で水分を蒸発させ、最後はたくさん塩のついた藻を焼いて塩を得ました。 この藻を焼いて塩を得るための釜が「塩釜」です。 森鴎外の「山椒大夫」にもあるようにこの塩作りはたいへんな重労働だったようですが、浜に作られた塩釜から立ち昇る煙は風情があったようで、いろんな歌や物語にも登場しています。
万葉集第七巻 1246首には、
志賀の白水郎(あま)の 塩焼く煙 風をいたみ
立ちは上らず 山に棚引く
と歌われていますし、源氏物語「須磨」の第五段には、
煙のいと近く時々立ち来るを、これや海人の塩焼くならむと思しわたるは・・・
という場面が出てきます。
話をシオガマギクに戻します。 シオガマギクの花は美しいのですが、じつは葉も、形が整っているばかりではなく、美しく紅葉します。 今の時期は紅葉にはもちろん早いのですが、下の写真の葉を美しいとは思われないでしょうか。
この植物は「葉まで美しい」→「はまで美しい」→「浜で美しい」→「塩釜」(バンザ~イ) というわけです。
宮城県塩釜市には鹽竈神社があり、昔はこの塩釜が並ぶ風光明媚な場所であったようです。 しかし塩釜市も東北地方太平洋沖地震で大きな被害を蒙りました。 被災された皆様方には心からお見舞い申し上げると共に、一刻も早い復旧・復興で美しい観景が戻ることを願わずにはおれません。
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コメント
美しい花はカザグルマ?扇風機の羽?かな、
みたいに思いました。
シオガマギク を漢字名で見ますと
塩竈菊とありました。
海辺に咲く花かな?と思いました。
>シオガマギクは暖温帯上部から冷温帯域の全国の草原に生育するゴマノハグサ科の多年草です。
なんですよね。
>この植物は「葉まで美しい」→「はまで美しい」→「浜で美しい」→「塩釜」(バンザ~イ) というわけです。
どう考えてもムリがあるけど・・・
>昔はこの塩釜が並ぶ風光明媚な場所であったようです。
この景観が戻ることを願っています。
投稿: わんちゃん | 2011年9月15日 (木) 21時09分
塩竈菊となると、海の近くの植物だと思いますよね。
ちなみに、「竈」は「かまど」の意味で、「釜」はその上に載せる容器なんですが、「竈」と「釜」を知る人も、次第に少なくなってきましたね。
投稿: そよかぜ | 2011年9月16日 (金) 07時36分