ザトウムシについて(アカサビザトウムシ)
薄暗い森の中で体をゆらゆらと揺らせて歩くザトウムシ、体の先端を見ても眼らしきものは見当たらず、それに長い脚で前を探りながら歩く様子から、ザトウムシ(勝新太郎主演「座頭市」の「座頭」です。もう少し詳しくは、下の「メモ」をどうぞ)という名前が付けられています。 なお、英語では Daddy Longlegs(足長おじさん)です。
上で「長い脚」と書きましたが、4対の歩脚のうちの前から2番目の1対は特に長く、これを触角のように使います。 上の写真(クリックで拡大します)では、この脚の1本は赤い矢印まで伸びていて、この脚と対になっているもう1本の脚は途中で失われています。 自切したのかもしれません。
なお、この4対の歩脚とは別に、体の前端には一対の触肢があります(下の写真で分かると思います)。 触肢は獲物をつかんで口のすぐ横にある小さな鋏角に渡すなどの働きをしています。
上で「4対の歩脚」と書きましたが、ザトウムシは広い意味ではクモの仲間です。 しかし狭義のクモのように頭胸部と腹部の間にくびれは見当たらず、頭胸部と腹部は密着していて、楕円形の体型になっています。
この記事の最初に、ザトウムシには眼が無いように見えると書きました。 しかしカメラを近づけたりすると、長い脚に触れなくても、葉の裏に回ったり、逃げようとしたり、明らかに見えている行動を取ります。
では眼はどこに・・・。 じつは頭胸部の真ん中(=4対の歩脚の真ん中)に、小さな突起があり、その側面に1対の眼があります(下の写真の水色の矢印の場所)。
背板には臭腺もあります。 ここからはにおい物質が分泌されているのですが、このにおいは、防御や情報伝達に用いられていると考えられています。
以上、いろいろ書いてきましたが、じつはザトウムシは1種類ではありません。 上に書いたことは比較的よく見られる大型のザトウムシ(これにもたくさんの種類がいて、写真はアカサビザトウムシだと思います)についてのことで、ザトウムシの仲間は世界中では約4,000種ほどが知られています。 色も住む場所も様々で、日本でも海岸の岩陰に住むものもいます。
ザトウムシの仲間は、大きくは脚の長さで、短いもの、中くらいのもの、長いものの3つのグループに分けられます。 もちろん上に書いたのは脚の長いグループですが、脚の短いものは小型で、一見ダニのような姿で土壌動物として生活しています。
(メモ)座頭とは
鎌倉時代、平家物語を語る琵琶法師(盲目の人々が多かった)は「当道座」と言われる座(組合)を形成していました。 彼らは四つの位階に分けられていましたが、座頭(つまり座の頭)はその頂点に立つ官位段階です。 江戸時代に入ると当道座は盲人団体として幕府の公認と保護を受けるようになりましたが、当道に対する保護は、明治元年(1868年)に廃止されています。
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コメント
そよかぜさん、おはようございます。
ザトウムシは背中に目があるなんて、今度出会ったら、よく見てみます。それから、海岸で岩のすき間にたくさんザトウムシがいるのを見たことがあります。海にもいるのか・・・と思ったのだけど、いろんな種類がいるのですね。ありがとうございました。
投稿: panda | 2011年8月14日 (日) 08時14分
そうですか、海の岩場のザトウムシは群でいるのですか・・・。
それにしても以前もラミーカミキリやカツオゾウムシなどにもコメントをいただいていますが、pandaさんの関心も植物に留まらないのですね。
投稿: そよかぜ | 2011年8月14日 (日) 21時04分
ザトウムシというのですか?・・・・・
投稿: わんちゃん | 2011年8月15日 (月) 14時52分
ザトウムシまたはザトウグモです。
投稿: そよかぜ | 2011年8月16日 (火) 07時08分