カンレンボク(キジュ)
カンレンボクまたはキジュは中国の長江以南の標高1,000m以上の所に分布する落葉高木です。 分類学的にはヌマミズキ科またはオオギリ科になります。 ミズキ科に近いとされていますが、この科で日本に自生の植物はありません。 光沢のある葉は、10~30cmと大きく、新葉は赤紫色を帯びています。
花は8月から9月のはじめにかけて咲きます。 花序はたくさんの花が集まり、球形になります。 花は雄性先熟です。
下は咲きかけで、5枚の花被片があります。 花序としてはよく同調し、一斉に咲くのですが、それぞれの花でのオシベは一斉には伸びないようで、花粉を出す期間を長くしているようです。
下はオシベが全て伸びた状態です。 早くから花粉を出していたオシベの葯は、茶色くなったり取れてしまったりしています。
下は上の写真の一部を拡大したもので、既にほとんどの花被片は失われてしまっています。 花の中央からはメシベが伸びかけています。 花盤からは蜜がたくさん出ています。 花にはハチの仲間がたくさん来ていました。
下は雌性期です。 オシベは既に全て外れてしまっています。 オシベのついていた所は、暗色になっています。 オシベに替わってメシベが長く伸び、柱頭は3裂しています。 花盤からは蜜が引き続き出されています。
花が終われば、上の写真の脂肪の部分は細長く延び、小さなバナナが球形に集まったような姿になります。
カンレンボクは中国での表記「旱蓮木」をそのまま読んだものです。 「蓮」はハスのイメージが強いですが、本来の意味は、くさかんむりに連なるで、くっついている果実のことを意味しているようです。 そして「旱」は日照りの意味ですから、水に生えるハスではなく、乾いた土に生える木を意味しているのかもしれません。 もしかしたら雨緑樹林の木であることを示しているのかもしれません。
キジュも漢字では「喜樹」ですが、この木はよく育つ木で、それを健康長寿や子孫繁栄に結びつけて「喜樹」と呼ばれている、とも言われています。 また一説には、カンレンボクには果実を含む植物全体に抗ガン作用のある物質が含まれていて、1770年代に中国でこの木の薬効が発見された時、「人類を救う、幸運をもたらす木」として名付けられた、とも言われています。 この物質は1属1種であるカンレンボクの学名 Camptotheca acuminata の属名からカンプトテシン(camptothecin)と名付けられましたが、副作用も強く、臨床試験は中断されています。
※ この記事の写真は、'09年8月23日に六甲森林植物園で撮影したものです。
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コメント
9月18日京都府立植物園で、この実がなっているのを観察しました
>花が終われば、上の写真の脂肪の部分は細長く延び、小さなバナナが球形に集まったような姿になります。
ちょうど、そんな時でした。
色はまだ緑色、来月中旬頃には黄色くなると教えていただきました、ミニミニバナナが・・・ですね。
このお花の情報アリガトウです
リンクさせていただきました。
ところで、京都府立植物園でのカンレンボクの実は、は~るか上の方に生ってました
六甲森林植物園では白いハリネズミのようなお花は目の高さのところで咲いていたのでしょうか?
投稿: わんちゃん | 2011年9月26日 (月) 09時53分
京都府立植物園のカンレンボクも、たくさんの実がなっていますね。
六甲森林植物園のカンレンボクは数本あって、みんなかなりの高さに育っていますが、どうにか手の届く高さでも咲いていました。
投稿: そよかぜ | 2011年9月26日 (月) 22時01分