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2011年8月31日 (水)

ナガバノコウヤボウキ

 まずは下の写真を見てください。 左上に互生の卵型の葉が写っています。 そして右下には上よりも細長い葉が輪生しているような枝があります。

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 じつはこれ、両方ともナガバノコウヤボウキの枝です。 左上のはっきり互生と分かる枝は、今年伸びた枝です。 そしてこの枝が冬に葉を落とし、2年目に、前年度に落ちた葉の腋芽がほんの少し伸び、そのたいへん短い枝にたくさんの葉がついて、まるで葉が輪生しているように見えているのが右下の状態です。
 1年目の、どんどん伸びる枝を「長枝」といいます。 そして2年目のほとんど伸びない枝を「短枝」といいます。 長枝と短枝については、タカノツメのところなどに書きましたが、様々な植物でいろんなバリエーションがあります。 ナガバノコウヤボウキの場合は、長枝と短枝で、そこにつく葉の形まで違ってきます。 また、ナガバノコウヤボウキでは、長枝とは1年目に伸びた枝(以後「1年目の枝」と書きます)であり、短枝とは1年目の枝の腋芽が伸びた枝(以後「2年目の枝」と書きます)ということになります。
 確認の意味で、下に長枝の葉と短枝の葉の様子を載せておきます。

Nagabanokouyabouki110828_4     長枝の葉

Nagabanokouyabouki110828_5     短枝の葉

 ナガバノコウヤボウキは、宮城県以南の本州・四国・九州に分布する落葉低木(といっても3年目の枝は無く、草に近い木)で、以前記事にしたコウヤボウキとは同じ属です。
 じつはコウヤボウキにも同様に長枝(=1年目の枝)と短枝(=2年目の枝)があるのですが、両者の葉の形はそんなに変わらず、短枝にも3~4枚の葉がつくだけです。
 それにコウヤボウキでは短枝が目立たない大きな理由があります。 私たちはどうしても花に目が奪われがちですが、コウヤボウキの花は1年目の枝(つまり長枝)の先に咲きますので、その下になっている短枝の存在には、なかなか気付きません。
 それに対し、ナガバノコウヤボウキの花は2年目の枝(つまり短枝)の先に咲きます(下の写真)。 これで大きく植物の印象が違ってきます。

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 保育社の「原色日本植物図鑑」(草本編3巻+木本編2巻)には、コウヤボウキもナガバノコウヤボウキも草本編に入れられています。 これは読者がどうしても木ではなく草と見てしまうだろうとの好意だと思いますが、気になるのは葉についての記載です。 この図鑑では、コウヤボウキの葉には圧毛があるが、ナガバノコウヤボウキの葉にはほとんど毛が無く質も少し硬い旨のことが書かれています。 上の写真の葉について「ほとんど毛が無い」と言っていいものでしょうか。

 ナガバノコウヤボウキの花のつくりは、細かく見ればいろいろ違いはあるのですが、基本的にはコウヤボウキの花と同じです。 下に拡大した写真を載せておきます。

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2011年8月30日 (火)

ツバメシジミ

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 ツバメシジミの名前は、後翅にある尾状突起にちなんでいます。 ユーラシアの温帯に広く分布する蝶で、日本でも北海道から九州まで分布し、公園や平地の草原などで3月~10月に見られますが、この間、年に4~5回発生しているようです。 幼虫の草食はシロツメクサやカラスノエンドウなどのマメ科の植物です。
 ヤマトシジミなどと共に身近なシジミチョウですが、これくらいの大きさになると、とまっているところを近づいて見ないと、ヤマトシジミと区別がつきません。

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2011年8月29日 (月)

エダナナフシ

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 上はモチツツジの上にいるエダナナフシです。 名前は「枝に擬態したナナフシ」という意味でしょうね。 昨日のナナフシモドキと区別できますか? 体色はナナフシモドキにも緑のものがいますし、このエダナナフシも、緑色のものも、茶褐色のものや灰褐色のものもいます。
 ところで、昨日のナナフシモドキの名前についてですが、「モドキ」というからには、モドキではないナナフシがいるはずです。 「ナナフシの仲間」ではなく種としてのナナフシには Phraortes elongatus という学名がつけられています。 ところがこのナナフシはエダナナフシ(学名は Phraortes illepidus )と同種ではないかと考える人も多くいます。 身近なナナフシの仲間についても、これほど混乱しています。
 最初に戻って、エダナナフシとナナフシモドキとは、別種です。 別種どころか属も異なりますし、エダナナフシはヒゲナナフシ亜科に分類され、ナナフシモドキはナナフシ亜科に分類されるという、亜科レベルで違うとされています。
 ちなみに、エダナナフシとナナフシが仮に別種だとしても、ナナフシはヒゲナナフシ亜科に属し、ナナフシ亜科ではないということになります。

 エダナナフシとナナフシモドキは亜科レベルで違うのですが、よく混同されます。 いちばん分かりやすい区別点は、上でヒントを書きましたが、エダナナフシはヒゲナナフシ亜科で、ヒゲつまり触角が長いのです。 最初の写真のように、エダナナフシの触角は前肢と同じくらいの長さです。 昨日のナナフシモドキと比較してみてください。

 最後に、エダナナフシも顔のアップを載せておきますが、触角は長いだけではなく、その付け根も逞しいですね。

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2011年8月28日 (日)

ナナフシモドキ

 ナナフシの仲間は日本では現在のところ18種類とされていて、分類も見直されつつあるのですが、大阪付近で見ることのできるナナフシの仲間といえば、ナナフシモドキ、エダナナフシ、トビナナフシ、トゲナナフシくらいでしょう。
 下の写真のナナフシ(の仲間)は上記の4種の範囲で同定すると、ナナフシモドキでしょう。 以下、ナナフシモドキとして書いていきますが、腹部の一部が膨れているのが気になります。
※ そらさんから、腹部が膨れているのは卵を持っているためではないかというコメントをいただきました。 なるほど!

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 上のナナフシモドキは、写真の場所からするとオスでしょうか、と言いたいところですが、ナナフシモドキのオスは自然界ではほとんど見かけず、メスだけで単為生殖を行っているようです。
 ナナフシモドキは枝に擬態して静かに暮らす草食性の昆虫です。 身を守るのは、もっぱら落下作戦です。

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 上はナナフシモドキの顔の拡大です。 ナナフシの仲間はヨーロッパの昆虫愛好家の間では人気があるようです。

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2011年8月27日 (土)

コシダの胞子のう

 コシダが胞子を飛散させるのは、今年は例年より少し遅かったようで、大阪付近では8月中旬でした。 コシダの胞子のうは今年展開した葉の裏にできるので、春の気候不順が影響して全体の進行が遅くなったようです。
 複雑な分岐をしているコシダの葉がどのような経過を経て展開するのか、今年はコシダに注目して、その経過を2月5日6月12日に記事にしました。 こうなると、生殖に関する胞子のうに触れておかないわけにはいかないか、というわけで、今回はコシダの胞子のうについてですが、結論から書くと、コシダはウラジロと同じ科に分類されていて、ウラジロの所で書いた内容とほとんど同じです。
 ウラジロの所で書いた内容を簡単にまとめておくと、胞子のうの中の胞子を飛散させるしくみとして環帯があるのですが、コシダやウラジロの環帯は「完全環帯」で、完全環帯は原始的で機能的には不完全な環帯で、ルーペで見てもはっきりしないということでした(詳しくはウラジロの記事を見てください)。

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 上がまだ破れていないコシダの胞子のう群で、下が胞子のうが破れて胞子を飛散させた胞子のう群です。 コシダの胞子のうは薄緑色をしていてなかなか美しいのですが、数が少ないのもウラジロと同じです。 やはり地下茎で群落を大きくしていく方に重点を置いた繁殖戦略を取っているのですね。

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2011年8月26日 (金)

サルスベリの花

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 サルスベリは中国南部原産だけあって、夏の暑さにも負けず、まさしく夏の花と言えるでしょう。
 サルスベリの花は、双子葉植物には珍しく、6の数を基本としています。 ガクは合生して筒状になっていますが、先端では6裂していますし、花弁は6枚です(下の写真の黄色い番号)。 オシベは花の中央付近に葯の黄色いオシベはたくさんありますが、その周辺にある長いオシベは6本です(下の写真の水色の番号)。 メシベは下の写真の花では右下の方に伸びています。

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 中央の黄色い葯は虫を呼ぶためにあり、稔性のある花粉は長いオシベの目立たない色の葯から出す、というしくみは、ツユクサなどと同じです。 そこでもう少し、訪花昆虫を利用する花側の工夫について、ツユクサの花とサルスベリの花を比較してみることにします。
 どの方向から虫が来てもいいようにしておくのか、虫の来る方向を想定しておくのかで、花の基本的なつくりは決まります。 ツユクサの花のつくりには、上下、左右、前後がありました。 ツユクサの花は、特定の方向から来る虫に効果的に花粉媒介してもらえるように、左右相称の花のつくりになっています。 では、サルスベリの花はどうでしょうか。
 サルスベリの花は、一見放射相称の花に見えます。 でも、注意して見ると、必ずメシベは片方に寄っています。
 サルスベリの花弁とオシベの配列をもう一度注意して見ると、花弁は1枚がメシベの下に来て(上の写真の黄色の6番)、他の5枚はその反対側に寄り気味です。 そして長いオシベは、逆にメシベ側に寄っています。 サルスベリの花は左右相称の花になろうとしているのかもしれません。
 花のつくりは花粉媒介者との関係で考えなければなりません。 しかし自生のサルスベリは日本にはありませんし、日本のサルスベリは品種改良で自生の状態とは花も少しは異なっているかもしれません。 自生地ではどのような花粉媒介者が活躍しているのでしょうか。 なお、このことと関連して、サルスベリの花のガクは、日本のサルスベリを訪れる昆虫を考えるなら、少し丈夫すぎるような気がします。
 それともうひとつ、気になっていることがあります。 それは花の終わりになると、オシベとメシベがクルクルと縮れることです(下の写真)。 この点もツユクサによく似ています。

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 この動きの中では当然メシベの柱頭は長いオシベの葯に触れることが予想されます。 そのまましおれてしまうのではなく、わざわざクルクルと運動するのは同花受粉を狙ってのことではないでしょうか。
 サルスベリの花は同花受粉で種子形成ができるのか、あちこち調べてみましたが、残念ながらこの答を見つけることはできませんでした。 機会があればぜひ調べて見たいと思います。
 サルスベリの花とツユクサの花が種子形成に似たしくみを持っているのは「他人の空似」でしょう。 しかし効率よく種子を生産しようと“他人”が同じ目的で同じ方向に進化したとも言えます。 サルスベリとツユクサ、同じ暑い夏に咲く身近な花の類似点がおもしろく、記事にしてみました。

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2011年8月25日 (木)

ツユクサ(2)

 時々、1つの苞から2つの花を咲かせているツユクサを見かけます(下の写真)。 まずはこの花で、昨日記事にしたツユクサの花のつくりを復習してみてください。

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 上の写真で、全ては見えていませんが、ガク片と花弁は理解していただけたでしょうか。 長いオシベも中くらいのオシベもたくさんの花粉を出しています。 そしてメシベは・・・。 上の花にはメシベがありません!
 じつはツユクサの花にはオシベとメシベが揃っている、つまり雄性と雌性が揃っている両性花と、メシベが退化している雄花とがあります。 上の写真のように、両者は一見区別がつきません。
 下の写真のツユクサも、1つの苞から2つの花を咲かせています。 しかしこちらの花は、2つとも両性花です。

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 下は上の写真の苞を破り、その内側を見たものです。 ツユクサの花柄は、苞の中で上下2本に分かれています。 理解のしかたとしては、苞も葉の変化したものですから、頂芽が伸びたものと、苞の腋芽が伸びたものとの2本と考えればいいでしょう。
 上の写真の下の花柄には3個のツボミも見えます。

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 下は別の株ですが、上よりも時間が経過した状態で、果実ができています。 ツユクサは1つの果実の中に4つの種子まで育つことができ、その場合は果実の真ん中にくびれができます。
 上の写真と下の写真で、たまたま花の数は同じです。 下の写真では、上の花柄には1つの花が咲き、果実ができています。 つまり両性花だったということになります。 下の花柄では最初に咲いた花と2番目に咲いた花は両性花で果実ができ、3番目に咲いた花には果実はできていません。 3番目に咲いた花は、たぶん雄花だったのでしょう。 4番目の花は、まだツボミです。

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 上の花柄に咲く花は1~2個です。 たくさんの花を咲かせるのは、つまり生殖活動の中心になるのは下の花柄に咲く花です。
 両性花と雄花の関係については、上の花柄に咲く花は、雄花であることが多いのですが、両性花を咲かせる場合もあります。 どうも花の咲き始めの時期では両性花が多く、後に咲くものは雄花が多いようだということです。 また、下の花柄に咲く花は、最初のうちは両性花を咲かせているのですが、後になって咲く花は雄花になるようです。 あまりたくさん種子を生産しようとすると、栄養分の補給ができなくなるのでしょう。

 ここまで読んでいただいて、驚くべき結論に気が付かれたでしょうか。 ツユクサの花はたった半日しか咲かないのに、種子を作ることのできる両性花は、ほぼ全ての両性花が、と言っていいほど、種子を作っているのです! しかし、ツユクサの花に、そんなにたくさん花粉媒介をする昆虫が来ているとは思えません。
 じつは多くのツユクサの花では、花の咲き始めから、ほとんど(山田:1991によれば93%)の花の柱頭に花粉がついています。 つまり同花受粉です。 ツユクサでは自身の花粉が柱頭についても、ちゃんと種子が作られることが確認されています。 そして、花粉媒介をしてくれる昆虫が来てくれたら他家受粉も行い、遺伝的多様性を保とうとしているのでしょう。
 そしてさらに念のために、とでもいうのでしょうか、花が閉じる時に長いオシベとメシベはいっしょになってクルクルと花の中心部へと巻き込まれていくのですが、この時にまた長いオシベの葯とメシベの柱頭は接触することになります。
 つまりツユクサの両性花は、他家受粉できなかった花(この方が多い)についても、ほぼ完全に同花受粉はしている、ということになります。
 さらに、同花受粉でいいのなら、閉鎖花でもいいのではないかということになります。 実際、ツユクサの花は、苞の外に出ず、苞の内側に隠れたまま、そっと種子を作っている閉鎖花も咲かせています。 この閉鎖花は、気温が下がる花の終わりの時期に多くみられるようです。 花を開く元気がなくなっても、自身の花粉で種子は作れる、ということかもしれません。

 ツユクサとは、両性花と雄花をバランスよく配置して種子の生産量を調節し、花のつくりを工夫して訪花昆虫による他家受粉も行いながらも、それが不可能な場合には同花受粉で確実に種子を作る、という植物だったのです。
 ツユクサの花の花弁もガク片も薄く、たしかに長持ちしそうな花ではありません。 ツユクサの戦略とは、元手をかけずに、目立ち、かつ受粉のうまいしくみを持った花を作り、そんな元手のかかっていない花でも種子は確実に作り、その種子は丈夫な苞でしっかり守っていくという戦略のようです。

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2011年8月24日 (水)

ツユクサ(1)

 ツユクサはツユクサ科の一年生草本です。 その名の由来にはいろいろあって、朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説があります。 また、ツユクサの花弁の青い色が衣服などに着き易いところから「着き草」と呼ばれ、それが優雅な「月草」となり、この「つきくさ」が転じてツユクサになったという説もあります。 「月草」の表記は、万葉集などの和歌集でよく用いられています。
 このようにツユクサは万葉の時代から親しまれている身近な植物です(こちらもどうぞ)が、その花のつくりはなかなか複雑です。

Tuyukusa071013_1     (写真はクリックで拡大します)

 ツユクサは単子葉植物ですので、花のつくりは3の数を基本にしています。 3枚のガク片は小さく半透明です。 花弁も3枚ですが、そのうちの1枚は小さく半透明です。 オシベは3+3で6本ですが、そのうちの3本は短く、葯は鮮やかな黄色で、「π」または「x」の形をしています(この葯の形や色には、かなりの個体差があります)。 また1本は中くらいの長さで、葯は「人」の形をしています。 残りの2本は長く、葯は褐色で、目立つ派手さはありません。 メシベは1本です。 上の写真ではメシベと長い1本のオシベがくっついて写っています。 ぜひ写真をクリックして拡大してご覧ください。
 ツユクサの花は蜜を出しません。 短い3本のオシベは、その色で虫を呼び寄せているのでしょう。 写真を見ても花粉を出しているようには見えません。 少しは出しているのですが、この花粉には生殖能力はありません。 黄色い色に惹かれて来た虫が蜜も花粉も無いでは花には来てもらえなくなるでしょう。 この短いオシベの花粉は、来た虫へのご褒美として使われているのかもしれません。 この短いオシベのように虫をひきつけるために使われ、生殖能力の無いオシベは、「飾りオシベ」または「仮オシベ」と呼ばれています。
 中くらいの長さのオシベも仮オシベと呼ばれていました。 長さだけではなく、色も短いオシベの葯と長いオシベの葯の中間的な色をしています。 しかしこのオシベの葯はたくさんの花粉を出しています。 またこの花粉は生殖能力を持っていることが分かってきました。
 1本だけある中くらいの長さのオシベの役割については、丑丸敦史博士ら(2007)の研究によると、訪花昆虫に正規の止まり方をさせ、長いオシベの花粉が“ただ食い”されるのを防いでいるということです。
 そして長い2本のオシベの葯は目立たず、そっと訪花昆虫の体に生殖能力のある花粉をつけて運んでもらうのでしょう。

 ここまでの内容でも、ツユクサはけっこう複雑なことをしているようです。 しかし、花にこれだけいろんなしくみを作りながら、この花は朝に開いて昼にはしぼむ半日花です。 いったいツユクサは何を“考えて”いるんだ、と、つっこみたくもなります。 でも、このこととも関係するのですが、じつはツユクサの“戦略”は、まだまだあるのです。 この続きはこちらで・・・。

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2011年8月23日 (火)

ウシタキソウ

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 先日ミズタマソウを記事にしましたが、このミズタマソウと同じ属で分布域も重なる植物に、タニタデとウシタキソウがあります。
 ウシタキソウはミズタマソウと比較すると、
  ・ 茎には毛が多く、節部は紅紫色にならない
  ・ 葉身の基部はハート型で長い葉柄がある(下の写真)
  ・ 葉にも細かい毛がいちめんに生え、長い開出毛も混じる
 などの違いがあります。

Usitakisou040912_2      ウシタキソウの葉

 ついでにタニタデについても書いておくと、
  ・ 茎は赤く染まる傾向があり、ほとんど無毛
  ・ 花の柄も無毛
  ・ 葉身の基部は円形
  ・ 花弁は浅く3裂することも多い
 ということになります。
 (タニタデについてはエフさんのブログでどうぞ)

 つまり、毛深さからすると、
  ウシタキソウ>ミズタマソウ>タニタデ
 ということになり、
 茎の紅紫色に染まりやすさからすると、
  タニタデ>ミズタマソウ>ウシタキソウ
 ということになります。
 また、葉身基部から葉柄への移行の連続性からすると
  ミズタマソウ>タニタデ>ウシタキソウ
 ということになります。

 でも、このように似ている近い仲間同士の植物ですので、これらの種の間には雑種ができます。 つまり中間の形質を持つものもあるので、いっそうややこしくなります。

 ところで、ウシタキソウの名前は、牛滝山に由来するのですが、この牛滝山が大阪府の牛滝山なのか、富山県の牛滝山なのかは不明のようです。

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2011年8月22日 (月)

フタオビコヤガ

 フタオビコヤガ(二帯小夜蛾)というイネの害虫がいます。 写真のように2本の帯状の模様がある蛾です。

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 もちろん、稲の葉を食べるのは、その幼虫(下の写真)で、イネアオムシとも呼ばれています。 昔からいたイネの害虫ですが、最近全国的に発生が多発するようになってきたということです。 田への薬剤散布が減少したことも原因しているのかもしれません。

Futaobikoyaga090816_2

 フタオビコヤガは蛹で越冬し、春先に羽化した成虫が水田に飛来し、イネの葉に産卵します。 その後は羽化と産卵を年数回繰り返します。 イネ以外の幼虫の食餌植物は、現在のところ見つかっていません。 蛹はイネの葉を折りたたんだ中にいます。
 このフタオビコヤガの幼虫(=イネアオムシ)に寄生するハチにホウネンタワラチビアメバチというのがいて、このハチの蛹が豊年俵だということは、以前記事にしました。
 ところで、最初の成虫の写真をよく見ると、この成虫はカビに侵されています。 昔、養蚕が盛んだった頃、フタオビコヤガはカイコの害虫とされていました。 フタオビコヤガが増えると、それに寄生する菌類が増えます。 この菌がフタオビコヤガ以外の蛾にも感染することができる菌ならカイコにも感染する(例えば緑きょう菌)というわけです。

 田を舞台にした生き物たちの複雑な関係の一例を紹介しました。 「風が吹けば桶屋が儲かる」のは、生き物たちの世界では、ごくあたりまえのことのようです。

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2011年8月21日 (日)

サギソウ

 サギソウは日当たりのいい湿地に生えるラン科の多年草ですが、開発による自生地の減少と盗採で、残念なことに自生地はたいへん少なくなってしまいました。

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 サギソウは花が終わると、通常2~3本伸びた地下茎の先に芋状に肥大した部分ができます。 この部分が年を越して新しい株になっていきます。 育てられているサギソウではほとんど種子ができませんが、それは花粉媒介者が来ないためで、自生地でのサギソウは、ちゃんと種子も作っています。
 サギソウの花は夜に目立つ白い色をしています。 もしかしたら唇弁の糸状に伸びた部分もカラスウリなどの花と同じ効果を狙っているのかもしれません。 それに長い距を持っていることからしても、長い口を持ち、長距離を飛び回ることのできるスズメガの仲間に花粉媒介をしてもらおうとしているのではないかと考えられます。
 下はサギソウの「ずい柱」(オシベとメシベが合体したもの)付近を拡大したものです。 花粉塊は葯室にしまわれていて、粘着体とつながっています。 花粉媒介者が蜜を吸おうと、距の入口に口を差し込み、ずい柱に近づいて粘着体に触れると、粘着体が体にくっつき、花粉媒介者が花から離れる時に、粘着体とつながっている花粉塊が運ばれるというしくみです。 そして花粉塊をくっつけた花粉媒介者が別のサギソウの蜜を吸おうと近づいた時に 柱頭に花粉塊が渡されるということになります。
 サギソウの仲間では、柱頭は距の入口を囲むように逆さU字型になり、受粉できる部分が左右に分かれています。 下の写真の嘴体の部分も、受粉はできませんが、柱頭の一部が変化したものです。

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2011年8月20日 (土)

ツクツクボウシ

 子供の頃、ツクツクボウシの声を聞くと、夏休みが終ってしまうのか・・・という気持ちになりました。 翅の透明な、身近なセミシリーズも、ツクツクボウシで締めくくりたいと思います。
 ツクツクボウシまたはツクツクホウシも、成虫はわずかながら7月から発生しているのですが、よく鳴き声が聞かれるようになるのは、上に書いたように8月下旬からです。

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 日本のセミはそれぞれ鳴き声に特徴があり、姿よりも鳴き声でその存在を知ることが多いのですが、特にツクツクボウシは警戒心が強いようで、なかなか近づいて写真に撮ることができません。 下はたまたま出会った、弱り気味のツクツクボウシです。

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 このように大きく撮ると、印象はミンミンゼミなどともよく似ているのですが、実際の大きさはかなり違っているので、間違う心配は無さそうですね。
 もちろん抜け殻も小型で、前後に細長い形をしています。 ニイニイゼミのように泥まじりではありませんが、クマゼミの抜け殻などに比較すると、光沢は少ないようです。

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2011年8月19日 (金)

クマゼミ

 私の子供の頃、大阪で夏のセミといえば、ニイニイゼミに始まり、アブラゼミが中心でした。 たまに大きく力強いクマゼミをみつけると、とても嬉しかったことを思い出します。 頭部の横幅が広いのも、より大きく感じる原因かもしれません。
 それが1980年代以降、クマゼミが急に増えだし、アブラゼミを見かけることが珍しくなりました。 昆虫の分布がこんなに簡単に変るのかと驚きました。 ところが最近はまた少しアブラゼミが多くなっているようです。 これらのセミの個体数の変動の原因は何なんでしょうか。 地球温暖化も影響しているのかもしれませんが、それだけでは説明がつかないようです。

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 大阪に住む私にとっては現在のクマゼミはあまりにも“ありふれた”存在ですので、上のような書き出して始めました。 上の写真のように、この夏もあちこちでクマゼミの抜け殻がいっぱいです。(セミの抜け殻に見える白い糸のようなものについては、こちらでどうぞ。) しかし、世界的にまた全国的に見ると、クマゼミは日本特産ですし、国内の分布も関東・北陸以南に限られています。

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 さて、体の色についてですが、黒光りするクマゼミはいかにも強そうで、上の写真でもセグロアシナガバチが近づいてきても全く動じる様子はありませんでした。
 クマゼミの体は、このように艶のある黒い色が中心で、腹部の中ほどには左右一対の白い斑紋があります。 ヒグラシを赤っぽいセミ、ミンミンゼミを緑っぽいセミとするなら、クマゼミは黒っぽいセミとしていいでしょう。
 ところで、下もクマゼミです。 羽化してからの時間が経過していないのはどちらでしょうか? 下は艶のある黒い色が剥げてきている?

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 じつは羽化から数日間は、クマゼミの背中側は金色の微毛で覆われています。 それが抜け落ちて艶のある黒い色になっていきます。

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2011年8月18日 (木)

ミンミンゼミ

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 翅の透明な身近なセミの2回目はミンミンゼミです。 鳴き声は、その名のとおり、私の耳には「~ンミンミンミ」と聞こえます。

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 昨日、ヒグラシは夏のセミでありながら涼しいのが好みだと書きましたが、ミンミンゼミはもっと気温に敏感なようで、その地域の夏の暑さで体の色が違うようです。
 黒い色は熱を吸収しますが、北海道などの涼しい所では黒色の部分が多く、暑さの厳しい所では青緑色の部分が多く黒色のほとんど無いタイプ(ミカドミンミンと呼ばれています)が分布しています。
 大阪付近のミンミンゼミの体の色は、胸部と腹部の境界付近が白く、他は緑色と黒色と褐色で、標準的なタイプと言えそうです。 それでも大阪の市内の夏の暑さは好まないようで、大阪付近では山地に入らないと、ミンミンゼミの声を聞くことはできません。

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2011年8月17日 (水)

ヒグラシ

 今日から連続で、翅の透明な、身近なセミを取り上げたいと思います。 まず今日はヒグラシです。

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 体の色は、赤褐色をベースに、頭部や胸部には緑色と黒色の模様があります。 ただし、他のセミ同様、体色には個体変異があり、山地のものは黒っぽくなる傾向があるようです。

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 ヒグラシは涼しいのがお好きなようで、日の出や日の入り前後や、曇って薄暗くなった時や気温が下がった時によく鳴きます。 また、林内の暗い所では、日中でも鳴いていることがあります。 このなかで多くの人が山などにでかけて印象に残るのは、やはり夕暮れが近づいたときのヒグラシのカナカナカナカナと鳴く声でしょう。 「ヒグラシ」の名前も、「日を暮れさせる」ところからきているようです。
 「涼しいのが好き」と書きましたが、その印象で、俳句では秋の季語とされています。 しかし成虫が見られるのは6月下旬頃からで、他の夏のセミより早く鳴き始めます。 9月中旬頃まで鳴き続けますので、鳴く期間としては長いセミだと言えるでしょう。

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2011年8月16日 (火)

ミズタマソウの花

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 ミズタマソウはアカバナ科の、山野の林下に生える多年草です。 葉は対生し、節は赤褐色を帯びています。
 ミズタマソウで目立つのは果実です。 果実の周囲に密生した白い毛のために、特にこれから涼しくなって朝露に濡れているところなどは、その名のとおり水玉が連なったように見えます。 8~9月に咲く花は小さく、ほとんど注目されません。
 しかしその注目されない小さな花も、拡大して見れば、なかなかおもしろい花です。 “水玉”の連なった様子は、うまく撮ることができれば(今まで撮った写真で満足できるものがありません・・・)秋に紹介することとして、今回は花をとりあげてみました。

Mizutamasou110815_2      (この写真はクリックで拡大します)

 ガク片は2枚で、花弁も2枚なのですが深い切れ込みがあり、4枚のように見えます。 オシベは2本で、メシベは1本、花の大きさの割には大きな柱頭があります。
 子房下位の花で、ガク片の下には透明感のある白い毛をまとった子房があるのですが、この子房は受粉する前から生長を始めており、花の咲く頃にはかなり大きくなっています。
 子房に生える毛は先が曲がっていて、果実が完成した時には、この毛で動物の体などにくっつきます。(つまり、ひっつきむしの1種です。)

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2011年8月15日 (月)

ナガコガネグモ

Nagakoganegumo110813_1

 草むらで美しいクモを見かけたので、とりあえず撮っておきました。 それが上の写真です。
 帰ってから名前を調べてみたのですが、ナガコガネグモくらいしか似たクモは見つかりませんでした。 ナガコガネグモなら以前からよく知っているクモで、もっと大きくなるのですが・・・。
 ナガコガネグモは、草原などでよく見られるクモです。 網は多くの場合、大人のひざよりも低い位置に張られますので、気づくことが少ないのですが、ジョロウグモと共に普通にいるクモです。
 下は9月下旬に撮っていたものですが、ナガコガネグモの張る網の特徴として、網の中央に縦にジグザグ模様のかくれ帯があります。

Nagakoganegumo060923_1

 最初の写真のクモでは、網の中央にいるのですが、このようなかくれ帯はありません。 まだ幼体だから、という理由も成り立ちません。 ナガコガネグモの幼体は、コガネグモ類全種で共通のジグザグの渦巻状のかくれ帯を作ります。 下は6月下旬に撮ったナガコガネグモの幼体の写真です。

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 最初の写真は、ナガコガネグモのオスでも無さそうです。 ナガコガネグモのオスは小さく、体全体が褐色ぎみで、黄色や黒の鮮やかな模様はありません。 下はナガコガネグモのオスだと思っている写真です。

Nagakoganegumo110813_2

 結論としては、最初の写真は、やはりナガコガネグモのメスで、もともと横縞の少ない個体で、大きさからしても、もう一度脱皮してもう少し2枚目の写真に近づくのかもしれません。 それとも・・・?

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2011年8月14日 (日)

ザトウムシについて(アカサビザトウムシ)

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 薄暗い森の中で体をゆらゆらと揺らせて歩くザトウムシ、体の先端を見ても眼らしきものは見当たらず、それに長い脚で前を探りながら歩く様子から、ザトウムシ(勝新太郎主演「座頭市」の「座頭」です。もう少し詳しくは、下の「メモ」をどうぞ)という名前が付けられています。 なお、英語では Daddy Longlegs(足長おじさん)です。

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 上で「長い脚」と書きましたが、4対の歩脚のうちの前から2番目の1対は特に長く、これを触角のように使います。 上の写真(クリックで拡大します)では、この脚の1本は赤い矢印まで伸びていて、この脚と対になっているもう1本の脚は途中で失われています。 自切したのかもしれません。
 なお、この4対の歩脚とは別に、体の前端には一対の触肢があります(下の写真で分かると思います)。 触肢は獲物をつかんで口のすぐ横にある小さな鋏角に渡すなどの働きをしています。

 上で「4対の歩脚」と書きましたが、ザトウムシは広い意味ではクモの仲間です。 しかし狭義のクモのように頭胸部と腹部の間にくびれは見当たらず、頭胸部と腹部は密着していて、楕円形の体型になっています。

 この記事の最初に、ザトウムシには眼が無いように見えると書きました。 しかしカメラを近づけたりすると、長い脚に触れなくても、葉の裏に回ったり、逃げようとしたり、明らかに見えている行動を取ります。
 では眼はどこに・・・。 じつは頭胸部の真ん中(=4対の歩脚の真ん中)に、小さな突起があり、その側面に1対の眼があります(下の写真の水色の矢印の場所)。

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 背板には臭腺もあります。 ここからはにおい物質が分泌されているのですが、このにおいは、防御や情報伝達に用いられていると考えられています。

 以上、いろいろ書いてきましたが、じつはザトウムシは1種類ではありません。 上に書いたことは比較的よく見られる大型のザトウムシ(これにもたくさんの種類がいて、写真はアカサビザトウムシだと思います)についてのことで、ザトウムシの仲間は世界中では約4,000種ほどが知られています。 色も住む場所も様々で、日本でも海岸の岩陰に住むものもいます。
 ザトウムシの仲間は、大きくは脚の長さで、短いもの、中くらいのもの、長いものの3つのグループに分けられます。 もちろん上に書いたのは脚の長いグループですが、脚の短いものは小型で、一見ダニのような姿で土壌動物として生活しています。

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(メモ)座頭とは
 鎌倉時代、平家物語を語る琵琶法師(盲目の人々が多かった)は「当道座」と言われる座(組合)を形成していました。 彼らは四つの位階に分けられていましたが、座頭(つまり座の頭)はその頂点に立つ官位段階です。 江戸時代に入ると当道座は盲人団体として幕府の公認と保護を受けるようになりましたが、当道に対する保護は、明治元年(1868年)に廃止されています。

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2011年8月13日 (土)

カンレンボク(キジュ)

 カンレンボクまたはキジュは中国の長江以南の標高1,000m以上の所に分布する落葉高木です。 分類学的にはヌマミズキ科またはオオギリ科になります。 ミズキ科に近いとされていますが、この科で日本に自生の植物はありません。 光沢のある葉は、10~30cmと大きく、新葉は赤紫色を帯びています。

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 花は8月から9月のはじめにかけて咲きます。 花序はたくさんの花が集まり、球形になります。 花は雄性先熟です。
 下は咲きかけで、5枚の花被片があります。 花序としてはよく同調し、一斉に咲くのですが、それぞれの花でのオシベは一斉には伸びないようで、花粉を出す期間を長くしているようです。

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 下はオシベが全て伸びた状態です。 早くから花粉を出していたオシベの葯は、茶色くなったり取れてしまったりしています。

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 下は上の写真の一部を拡大したもので、既にほとんどの花被片は失われてしまっています。 花の中央からはメシベが伸びかけています。 花盤からは蜜がたくさん出ています。 花にはハチの仲間がたくさん来ていました。

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 下は雌性期です。 オシベは既に全て外れてしまっています。 オシベのついていた所は、暗色になっています。 オシベに替わってメシベが長く伸び、柱頭は3裂しています。 花盤からは蜜が引き続き出されています。

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 花が終われば、上の写真の脂肪の部分は細長く延び、小さなバナナが球形に集まったような姿になります。

 カンレンボクは中国での表記「旱蓮木」をそのまま読んだものです。 「蓮」はハスのイメージが強いですが、本来の意味は、くさかんむりに連なるで、くっついている果実のことを意味しているようです。 そして「旱」は日照りの意味ですから、水に生えるハスではなく、乾いた土に生える木を意味しているのかもしれません。 もしかしたら雨緑樹林の木であることを示しているのかもしれません。
 キジュも漢字では「喜樹」ですが、この木はよく育つ木で、それを健康長寿や子孫繁栄に結びつけて「喜樹」と呼ばれている、とも言われています。 また一説には、カンレンボクには果実を含む植物全体に抗ガン作用のある物質が含まれていて、1770年代に中国でこの木の薬効が発見された時、「人類を救う、幸運をもたらす木」として名付けられた、とも言われています。 この物質は1属1種であるカンレンボクの学名 Camptotheca acuminata の属名からカンプトテシン(camptothecin)と名付けられましたが、副作用も強く、臨床試験は中断されています。

※ この記事の写真は、'09年8月23日に六甲森林植物園で撮影したものです。

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2011年8月12日 (金)

チチタケ

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 チチタケは夏から秋にかけて広葉樹の林で見られるベニタケ科のキノコです。 傘はやや漏斗型で細かいビロード状になり、表面の色は黄褐色~赤褐色、幼時は暗色(上の写真)です。 ひだは密で白色から淡黄色です。 柄の表面は傘とほぼ同様です。

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 チチタケの特徴は、何と言っても、その名前のとおり、傷がつくと、そこから多量の乳液が分泌されます。
 乳液は初め白いが、次第に褐色になり、ねばりがあります。 このねばりの元はポリイソプレンですが、ポリイソプレンはゴムの主成分です。
 乳液をなめてみると、やや渋味が感じられます。

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 チチタケの食用キノコとしての評価は分かれます。 ベニタケ科全体の傾向ですが、ぼそぼそした食感が好まれない場合もあります。 しかし、うどんやソバの具として用いると、つゆに独特の香りがうつります。 特に栃木県では「チタケ」の名で好まれ、「ちたけそば」は代表的な郷土料理だということです(私はまだ食べたことがありません)。

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2011年8月11日 (木)

夏のニシノヤマタイミンガサ

 以前、ニシノヤマタイミンガサの葉が土の中から出てきたばかりの姿を、「春のニシノヤマタイミンガサ」として記事にしましたが、今回はその夏の様子です。

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 ニシノヤマタイミンガサ( Cacalia yatabei var.occidentalis )はヤマタイミンガサの変種で、ヤマタイミンガサが中部地方以北と四国に分布するのに対し、ニシノヤマタイミンガサは本州の中部地方以西と四国・九州に分布します。
 葉は掌状に中裂し、タイミンガサやヤブレガサのような楯状の葉ではありません。 花は総苞片が3~4個で、小花の数は3個を中心として、2~4個です。 この点でも、総苞片が5個のヤブレガサとは異なります。

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2011年8月10日 (水)

ササクレシロオニタケ

「キノコのある風景」その2

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 このような形態のキノコを見れば、テングタケ科のキノコだろうということはすぐに判ります。 しかしそれからが難しい・・・。
 キノコは発生する条件によっても、地上に出てからの時間によっても、見かけは変ってきます。 それに、まだよく分かっていない種もたくさんあります。
 上はササクレシロオニタケだと思いますが、これには形態的に似た不明種もいくつかあると考えられています。 ササクレシロオニタケなら食毒不明ですが、テングタケ科のキノコには猛毒を持つ種類も多く、鑑賞に限る方がいいのかもしれません。

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2011年8月 9日 (火)

アカヤマドリ

「キノコのある風景」その1

Akayamadori110730_1         (写真はクリックで拡大します)

 この夏はこれまで大気が不安定なことが多く、夕立的な雨の頻度も高かったようです。 雨が多い夏は夏のキノコも多く見ることができます。
 上の写真のキノコはイグチ科のアカヤマドリです。 夏から秋にかけて、広葉樹林や、針葉樹と広葉樹の混交樹林に発生する大型菌です。 食べることはできますが、少し古くなると肉が柔らかくなり、このキノコを食べる小さな虫たちも管孔や傘の肉に潜り込むこととなります。
 キノコの胞子は風で散布されるだけではなく、虫たちに食べてもらうことで運んでもらっているようです。

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2011年8月 8日 (月)

ムカゴイラクサ

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 ムカゴイラクサは、秋にムカゴを作るイラクサの仲間で、山地の陰湿地に生える多年草です。 上の写真のように、この時期には、まだムカゴはできていません。
 そして鋭い刺毛を持っていて、これに触れると痛くてイライラする草です。 同様の刺毛を持つイラクサ属の葉が対生であるのに対し、ムカゴイラクサ属の葉は互生です。

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 花は風媒花で、7月下旬から9月に咲き、雌雄同株です。 雌花序は頂の葉腋から上に伸びます。 それぞれの雌花は、基部の緑色の子房から、白く長い糸状の柱頭が伸びています(上の写真)。
 一方の雄花序は頂から少し下がった葉腋から出ています。 下は雄花序の一部を拡大したものですが、小さい花が咲く時期をずらして次々と咲き、長い期間花粉を飛ばすしくみになっています。

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 はじめに少し書いたように、ムカゴイラクサには、葉の表にも裏にも、茎にも、イラクサなどと同様の刺毛を持っていて、草食動物による被食を防いでいます。

Mukagoirakusa110730_4    葉の表

Mukagoirakusa110730_6    葉の裏

Mukagoirakusa110730_7    茎

 下は葉の表の刺毛を拡大したものですが、この刺毛の基部にはヒスタミンとアセチルコリンを含んだ液体が入っており、この液体が皮膚に触れると強い痛みを感じます。

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 ちなみに、イラクサの中国名は蕁麻で、この蕁麻に触れた時と同様の発疹が見られるのが蕁麻疹(じんましん)というわけです。 もちろん見た目が似ているだけで、一方は痛みであり、他方はかゆみです。

 立場を変えて見ますと、イラクサやムカゴイラクサの仲間は、このような刺毛で“武装”しなければ、どんどん食べられてしまうほど美味しい植物だということにもなります。
 刺毛の毒は茹でると消えます。 ムカゴイラクサと同じ属のミヤマイラクサは、東北地方や新潟県などでは、「あいこ」と呼ばれ、昔から親しまれている美味しい山菜です。 またイラクサ属のセイヨウイラクサは、ヨーロッパでは料理やハーブとしてよく使われています。

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2011年8月 7日 (日)

コウヤホソハナカミキリ

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 コウヤホソハナカミキリの成虫は6~8月に見られ、リョウブやノリウツギの花上によく集まっています。 7月30日の岩湧山で、ノリウツギに来ているたくさんのカミキリのうち、個体数の最も多いのがコウヤホソハナカミキリでした。

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 コウヤホソハナカミキリの模様のパターンはオオヨツスジハナカミキリなどとも似ていますが、大きさが違います。 下は右がコウヤホソハナカミキリ、左はヨツスジハナカミキリです。 この3種の大きさを比較すると、オオヨツスジハナカミキリ>ヨツスジハナカミキリ>コウヤホソハナカミキリ となります。

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 コウヤホソハナカミキリの「コウヤ」は和歌山県の高野山にちなんだ名前です。 高野山は人が入り易い自然豊かな場所で、「コウヤ」という名のついた動物や植物が多く見られます。
 コウヤホソハナカミキリは本州と四国の低山帯~中山帯に分布します。 高野山は空海が開いた聖地ですが、コウヤホソハナカミキリの和名が付けられた時、分布が空海と関りの深い本州と四国ということは意識されていたのでしょうか。

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2011年8月 5日 (金)

ムラサキニガナ

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 ムラサキニガナは山地性の多年草で、暗い林内で見かけることもありますが、平地で見かけることは、あまりありません。
 花は淡紫色で、下向きに咲きます。

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 ムラサキニガナの名は、花が紫で、ニガナ( Ixeris dentata )に似ているから、と言われるのですが、そんなにニガナに似ているとは思えません。
 ムラサキニガナの学名は Lactuca sororia で、アキノノゲシと同じ属です。 花の色は違っても、アキノノゲシにはよく似ています。
 ニガナとムラサキニガナを結び付けようとすれば、 ニガナの仲間( Ixeris 属)にハナニガナがあり、ハナニガナはアキノノゲシ属( Lactuca 属)のヤマニガナに似ていて、ヤマニガナがムラサキニガナに似ているということかもしれません。

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 花は下向きでも、果実期には垂れていた柄が上を向いてきます。 痩果には深い溝があります。

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 葉は変化に富んでいて、上方のものは披針形で、中央部は上の写真のような特徴的な形をしており、下方のものはこれが羽状に裂けています。

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2011年8月 4日 (木)

アカハナカミキリ

 ノリウツギの花にアカハナカミキリが来ていました。

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 アカハナカミキリは体長が1~2cmの、背中側から見れば全身が茶色がかった赤色のカミキリで、成虫は日本全国の平地から亜高山帯までの広い範囲の真夏の林で見られます。
 幼虫は他の多くのカミキリ同様、枯木や伐採木を食べていますが、特に針葉樹がお好みのようです。

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2011年8月 3日 (水)

カメムシタケ

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 地面から伸びた小さな“燈台”、じつはこれ、冬虫夏草の一種のカメムシタケの子実体で、先端のオレンジ色の部分で胞子が作られます。 そっと掘り出してみると、土の中のカメムシから生えています。

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 上の写真で犠牲になっていたのは、ハサミツノカメムシのオスでしょうか。 たぶん越冬するために土の中に潜り込んだところを、カメムシタケの菌糸に取り付かれ、体を乗っ取られたのでしょう。

 少し離れた所に、カメムシタケがもうひとつ。 こちらのカメムシは種類までは分かりません。

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 二つのカメムシタケを並べてみました。 どちらの子実体も、カメムシの胸と腹の境から伸び出しているようです。

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2011年8月 2日 (火)

ハグロトンボ

 ハグロトンボは5月~10月頃まで見られますが、特に7月~8月にはよく見られます。 名前のとおり翅の黒いトンボで、平地から低山地の緩やかな流れで発生し、ひらひらと飛ぶ様子は涼しさを感じさせてくれます。

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 上はオス、太陽の光の下の体の緑色の金属光沢を撮ろうとしたのですが、なかなか思う方向を向いてくれないばかりか、金属光沢もうまく表現できませんでした。 そして下はメスで黒褐色です。

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 ハグロトンボは東アジアと北米に分布します。 英名は Ebony Jewelwing、ebony は黒檀(こくたん)や漆黒(しっこく)を意味しますから、「まっ黒な、宝石の輝きの翅」という意味でしょう。 翅については光の当たり具合で光る様子を言っているのでしょうか。

 住んでいる環境は違いますが、ハグロトンボによく似たトンボにアオハダトンボがいます。 メスのアオハダトンボの翅には白色の偽縁紋がありますが、オスを見分けるのは難しそうです。 両者の翅の大きさに違いがあるのですが、これは両者を見慣れていないと難しいでしょう。 アオハダトンボのオスは腹部の後端の下側が白いのですが、これを確認するには横からか、見上げるように撮らなければなりません。

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2011年8月 1日 (月)

バイケイソウ

 バイケイソウは地下茎を持ち、群生する傾向が高い植物です。 春にはみずみずしい姿を楽しませてくれます。

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 ただし、この芽が出た姿は、山菜として知られているオオバギボウシ(ウルイ)やギョウジャニンニクと似ているため、毎年のように誤食が起こっているようですが・・・。 バイケイソウに含まれるアルカロイドは血圧降下作用を持ち、中毒した場合の重症例では死亡する場合もあります。 根茎は白藜蘆根(びゃくりろこん)という名で用いられたこともありましたが、催吐作用や強い毒性のため、現在では使われていないようです。 毒性を利用して東雲草(しののめそう)という名で殺虫剤としても使われたくらいです。

 そのバイケイソウが花の時期を迎えています。 高山植物としてよく知られているコバイケイソウに比較して、「コ」の付いていないバイケイソウの方が“本家”のはずなのですが、あまり注目されません。 林床に咲くバイケイソウでは、花の時期には葉が痛んでいて、高い草丈がかえってみすぼらしい印象を与えてしまうのでしょうか。

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 緑白色の花の色も地味です。 それに花弁3枚とガク片3枚の計6枚からなる花被片は長く残ります。 この性質はバイケイソウと同じ属の、以前記事にしたシュロソウと同じ性質なのですが、パッと散るサクラを好む日本人には見苦しく感じるのでしょうか。
 花は全て両性花です。 この点がよく似ているコバイケイソウとの区別点の一つで、コバイケイソウでは花茎の先端部には両性花が咲き、横に伸びる枝につく花は雄花です。

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 上の写真では、6本のオシベと、その間から強く外曲した花柱が見えます。 なお、柱頭は外曲した内面に存在します。
 子房には軟毛が密生しています。 下は成長した子房で、さく果になっていきます。

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 DNA解析の手法によるAPG植物分類体系では、バイケイソウは、シライトソウショウジョウバカマツクバネソウエンレイソウなどと共にユリ科から別れ、メランチウム科(またはシュロソウ科)に分類されるようになりました。
 メランチウム科は北半球の温帯を中心に分布しています。 ちなみに、メランチウムも北アメリカに分布する、雰囲気的にはバイケイソウに似た多年草です。

 バイケイソウの名は、花がウメ、葉がケイランに似ているから、と言われているのですが、私にはそんなに似ているとは思えないのですが・・・。 ちなみにケイラン(蕙蘭)は台湾と中国の広東省を主な原産地とするシンビジウム属の植物です。

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