ナガバノコウヤボウキ
まずは下の写真を見てください。 左上に互生の卵型の葉が写っています。 そして右下には上よりも細長い葉が輪生しているような枝があります。
じつはこれ、両方ともナガバノコウヤボウキの枝です。 左上のはっきり互生と分かる枝は、今年伸びた枝です。 そしてこの枝が冬に葉を落とし、2年目に、前年度に落ちた葉の腋芽がほんの少し伸び、そのたいへん短い枝にたくさんの葉がついて、まるで葉が輪生しているように見えているのが右下の状態です。
1年目の、どんどん伸びる枝を「長枝」といいます。 そして2年目のほとんど伸びない枝を「短枝」といいます。 長枝と短枝については、タカノツメのところなどに書きましたが、様々な植物でいろんなバリエーションがあります。 ナガバノコウヤボウキの場合は、長枝と短枝で、そこにつく葉の形まで違ってきます。 また、ナガバノコウヤボウキでは、長枝とは1年目に伸びた枝(以後「1年目の枝」と書きます)であり、短枝とは1年目の枝の腋芽が伸びた枝(以後「2年目の枝」と書きます)ということになります。
確認の意味で、下に長枝の葉と短枝の葉の様子を載せておきます。
短枝の葉
ナガバノコウヤボウキは、宮城県以南の本州・四国・九州に分布する落葉低木(といっても3年目の枝は無く、草に近い木)で、以前記事にしたコウヤボウキとは同じ属です。
じつはコウヤボウキにも同様に長枝(=1年目の枝)と短枝(=2年目の枝)があるのですが、両者の葉の形はそんなに変わらず、短枝にも3~4枚の葉がつくだけです。
それにコウヤボウキでは短枝が目立たない大きな理由があります。 私たちはどうしても花に目が奪われがちですが、コウヤボウキの花は1年目の枝(つまり長枝)の先に咲きますので、その下になっている短枝の存在には、なかなか気付きません。
それに対し、ナガバノコウヤボウキの花は2年目の枝(つまり短枝)の先に咲きます(下の写真)。 これで大きく植物の印象が違ってきます。
保育社の「原色日本植物図鑑」(草本編3巻+木本編2巻)には、コウヤボウキもナガバノコウヤボウキも草本編に入れられています。 これは読者がどうしても木ではなく草と見てしまうだろうとの好意だと思いますが、気になるのは葉についての記載です。 この図鑑では、コウヤボウキの葉には圧毛があるが、ナガバノコウヤボウキの葉にはほとんど毛が無く質も少し硬い旨のことが書かれています。 上の写真の葉について「ほとんど毛が無い」と言っていいものでしょうか。
ナガバノコウヤボウキの花のつくりは、細かく見ればいろいろ違いはあるのですが、基本的にはコウヤボウキの花と同じです。 下に拡大した写真を載せておきます。
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