ツユクサ(1)
ツユクサはツユクサ科の一年生草本です。 その名の由来にはいろいろあって、朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説があります。 また、ツユクサの花弁の青い色が衣服などに着き易いところから「着き草」と呼ばれ、それが優雅な「月草」となり、この「つきくさ」が転じてツユクサになったという説もあります。 「月草」の表記は、万葉集などの和歌集でよく用いられています。
このようにツユクサは万葉の時代から親しまれている身近な植物です(こちらもどうぞ)が、その花のつくりはなかなか複雑です。
(写真はクリックで拡大します)
ツユクサは単子葉植物ですので、花のつくりは3の数を基本にしています。 3枚のガク片は小さく半透明です。 花弁も3枚ですが、そのうちの1枚は小さく半透明です。 オシベは3+3で6本ですが、そのうちの3本は短く、葯は鮮やかな黄色で、「π」または「x」の形をしています(この葯の形や色には、かなりの個体差があります)。 また1本は中くらいの長さで、葯は「人」の形をしています。 残りの2本は長く、葯は褐色で、目立つ派手さはありません。 メシベは1本です。 上の写真ではメシベと長い1本のオシベがくっついて写っています。 ぜひ写真をクリックして拡大してご覧ください。
ツユクサの花は蜜を出しません。 短い3本のオシベは、その色で虫を呼び寄せているのでしょう。 写真を見ても花粉を出しているようには見えません。 少しは出しているのですが、この花粉には生殖能力はありません。 黄色い色に惹かれて来た虫が蜜も花粉も無いでは花には来てもらえなくなるでしょう。 この短いオシベの花粉は、来た虫へのご褒美として使われているのかもしれません。 この短いオシベのように虫をひきつけるために使われ、生殖能力の無いオシベは、「飾りオシベ」または「仮オシベ」と呼ばれています。
中くらいの長さのオシベも仮オシベと呼ばれていました。 長さだけではなく、色も短いオシベの葯と長いオシベの葯の中間的な色をしています。 しかしこのオシベの葯はたくさんの花粉を出しています。 またこの花粉は生殖能力を持っていることが分かってきました。
1本だけある中くらいの長さのオシベの役割については、丑丸敦史博士ら(2007)の研究によると、訪花昆虫に正規の止まり方をさせ、長いオシベの花粉が“ただ食い”されるのを防いでいるということです。
そして長い2本のオシベの葯は目立たず、そっと訪花昆虫の体に生殖能力のある花粉をつけて運んでもらうのでしょう。
ここまでの内容でも、ツユクサはけっこう複雑なことをしているようです。 しかし、花にこれだけいろんなしくみを作りながら、この花は朝に開いて昼にはしぼむ半日花です。 いったいツユクサは何を“考えて”いるんだ、と、つっこみたくもなります。 でも、このこととも関係するのですが、じつはツユクサの“戦略”は、まだまだあるのです。 この続きはこちらで・・・。
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