ネムノキ(2)
この記事はネムノキ(1)からの続きです。
上の写真のネムノキの花には、ヨツスジハナカミキリでしょうか、遠くてよく分かりませんが、とにかくカミキリの仲間が来ています。(写真はクリックで拡大します)
でも、細いオシベでは足場にするには頼りなく、かなり悪戦苦闘しているようですが・・・。
花に虫が来るのは、蜜または花粉を求めてです。 ネムノキの花はどちらを提供しようとしているのでしょうか。 細いオシベの先の葯は小さく、そんなにたくさんの花粉があるとは思えません。 蜜を貯めておく事も難しそうにも見えますが・・・。
ネムノキの1つの花のように見えるのは、じつはたくさんの花の集まりだと昨日書きましたが、その花の集まりの中に、少数ですが、他とは違った形態の花(上の写真の緑の矢印)が混じっています。 この花の花冠は他の花に比べて長く、このことは大きくなったツボミの時から違っています(上の赤い矢印)。
下はもう少し拡大した写真です。 多くの花はメシベもオシベも上方に伸びて、両者の区別は難しいのですが、この花冠の長い花については、メシベはまっすぐ上に伸びています(黄色の矢印)が、オシベは水平方向に広がっています。 これだけ長い花冠であれば、その中に蜜をためておくことはできそうです。 オシベが水平方向に広がっているのも、蜜を吸いやすくしているのだとも考えられます。
ネムノキの花は、蜜を入れた少数の花を用意しておき、その蜜を求めて飛来する昆虫にたくさんの花の花粉媒介を頼るしくみなのでしょう。 長いたくさんのオシベは、メシベやオシベの先端と蜜のある場所との距離を一定に保っています。 つまり、この蜜を利用できるのは、オシベの長さの口を持った昆虫ということになります。 夜に花が咲いていることも考えれば、ネムノキの花は、空中でホバリングして長い口を伸ばすスズメガの仲間に花粉媒介をしてもらうことを期待しているのではないでしょうか。 虫がとまるのには頼りない細いメシベとオシベは、他のいろんな昆虫には蜜を盗られたくないという“意思表示”なのかもしれません。
上のように考えると、ネムノキの花は、そのしくみは違いますが、カラスウリの花と同様の結果を“期待”して進化してきた花だとも言えそうです。 しかし、もしそうであれば、カラスウリの花同様、白い花の方が夜には目立つでしょうし、昼間に咲いている必要もありません。
ネムノキの仲間は熱帯に多く分布します。 下は京都府立植物園の温室で撮ったボリビア産のオオベニゴウカンですが、熱帯に育つネムノキの仲間には鮮やかな色の花を咲かせるものもたくさんあります。 ネムノキの花を理解するには、これらの花の花粉媒介者のことを知る必要があるのかもしれません。
【 ネムノキ(3)に続く 】
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コメント
拡大して見ました
キレイに撮れててスゴイです。
投稿: わんちゃん | 2011年7月29日 (金) 21時44分
1枚目の写真は、みなさんにぜひ拡大して見てもらいたいですね。
投稿: そよかぜ | 2011年7月30日 (土) 07時59分
私はネムノキの雌しべがどこにあるのか分かりませんでした。雄しべは上の方をピンクに染め分けていますが,上から下まで白い物が雌しべだと分かりました。
おかげでネムノキについて参考にさせて頂きながら記事が書けました。
有難うございます。
蜜壺の外にも蜜腺があるなんて驚きです。自分でも確かめたいと思っています。
投稿: itotonbosan | 2013年3月17日 (日) 08時43分
花以外の場所にある蜜腺(花外蜜腺と呼ばれています)は、けっこういろんな植物で見られるんですよ。
投稿: そよかぜ | 2013年3月17日 (日) 23時57分