ウラジロ
私の住む大阪付近では、ウラジロは、鏡餅に敷いたり、しめ飾りなどに用いたりと、正月飾りによく用いられ、ワラビやゼンマイのような芽を食用にするシダ植物を除けば、最も身近なシダ植物かもしれません。 しかし、ウラジロの分布は本州中部以南ですので、日本全体を見れば、ウラジロを身近に見ることのできない地域も多いはずです。
ウラジロは地下茎がよくはい回り、大きな群落を作ります(上の写真)。 その分、胞子はそんなにたくさん作りません。
シダ植物の胞子は「胞子のう(嚢)」と呼ばれる袋の中で作られ、この胞子のうが破れて胞子が飛び散ります。
胞子のうは集まって「胞子のう群」を作っていますが、他の多くのシダ植物と比較すると、ウラジロの胞子のうは大きく、胞子のう群は数個の胞子のうが集まっているだけです(下の写真)。 以前記事にしたノキシノブの胞子のう群と比較してみてください。
胞子のうを破り、胞子を飛散させる装置として「環帯」というものがあります。 この環帯についてもノキシノブの所で書いていますが、ノキシノブを含む多くのシダ植物では、環帯が胞子のうの周囲を完全に1周せずに「不完全環帯」と呼ばれています。 胞子のうは、この環帯の無い部分で破れ、環帯は胞子を効率よく飛散させることができます。 つまり名称は「不完全」であっても、機能的には優れています。
ところがウラジロなどでは、この環帯が完全に胞子のうの周囲を1周しており、「完全環帯」と呼ばれています。 この場合、環帯は不完全環帯の場合ほどうまく機能していないようです。 下はウラジロの胞子のうを拡大したものですが、ウラジロでは環帯と他の胞子のうの部分との色の違いもほとんど無くて判別し難く、機能的にもうまく分化していないようで、胞子のうの破れる位置も、環帯との関係がよく分かりません。 こんなことからも、ウラジロの繁殖戦略は、胞子よりも地下茎を重視しているのだと思われます。
明日はウラジロの葉のおもしろい特徴を記事にする予定でいます。
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コメント
こんにちは。
シダ植物の種類も多いですね。少しずつ名前を覚えていきたいのですが、まだまだシダ植物まで頭が回らないのが実情です。こちらのブログを参考にさせていただき勉強します。
投稿: 多摩NTの住人 | 2011年1月29日 (土) 15時27分
シダと種子植物はいろんな点で違いが見られます。
花や虫の少ないこの時期、これから何回かに分けて、ウラジロ関連の内容で、シダ全体に関わることを記事にできないかと思っています。
投稿: そよかぜ | 2011年1月29日 (土) 20時55分
シダ類はみ~んな一緒に見えてしまいます
と、思っていましたが、
つい最近のこと、2~3種類については
どうにか名前が解るようになりました
でも2~3種類じゃぁまだまだ先は遠いでしょうねぇ・・・
投稿: わんちゃん | 2011年1月30日 (日) 21時16分
シダの種類数は種子植物に比べるとず~っと少ないのですが、シダ植物を難しく感じるのは、我々の生活に関わりを持つシダが少ないからなんでしょうね。
投稿: そよかぜ | 2011年1月31日 (月) 06時57分