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2010年12月30日 (木)

イチジクコバチの「裏切り者」

 大阪府の高槻市にJT生命誌研究館という、生命誌に関する研究と普及活動をしている所があり、そこから「季刊生命誌」が発行されています。 この「季刊生命誌」には、毎回付録が付くのですが、今回(67号)の付録はイチジクコバチに関するモビール(下の写真)でした。

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 イチジクは漢字で「無花果」と書くように、花はみあたりません。 しかし、食べるイチジクの部分は「花嚢(かのう)」と呼ばれていて、その中で花が咲き、野生のイチジクの仲間では種子ができます(日本で栽培されているイチジクは、改良されていて、硬い種子はできません)。
 この人の目に触れない花の花粉を媒介するのがコバチ(小蜂)の仲間です。 野生のイチジクの仲間であるイヌビワとコバチの関係については、次の内容を私のHPに載せています。
  ・イヌビワの雌株の花嚢の様子
  ・イヌビワとイヌビワコバチの関係について
  ・野生のイチジクの仲間のいろいろ

 今回のモビールをもう一度見てみます。 赤っぽい成熟した花嚢から花粉をつけたメスのコバチが緑の未熟な花嚢に向かっています。(このモビールには6匹のコバチがついていたのですが、モビール製作中に1匹のコバチはどこかへ飛んでいってしまいました。) 赤い成熟した花嚢の中には、メスコバチより少しだけ早く生まれ、メスコバチの交尾相手としての役割を終え、一生花嚢の外に出ることの無いオスコバチが取り残されています(下)。

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 メスのコバチは体に黄色い花粉をつけています。 ところがよく見ると、1匹だけ花粉を運んでいません(下の写真の左側)。

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 コバチは花粉を運んでやる代わりに、花嚢内を産卵場所として利用させてもらっています。 イチジクの仲間とコバチの仲間は、イヌビワとイヌビワコバチの関係のように、1種対1種の共生関係を1億年以上も続けてきました。 花粉を運ばないコバチの行動はイチジクに対する裏切りです。
 最近の研究では、裏切り者のコバチが花嚢に入ると、イチジクは花への栄養を十分送らずに、コバチが育つ前に花嚢を枯らす事が分かってきました。
 世界の野生のイチジクを見ると、この「裏切り者」に対する制裁機構はイチジクの種類により強弱があるようです。 制裁力の強いイチジクの仲間ほど裏切り者の数は少ないようなのですが、例えば奄美大島以南に分布するアカメイヌビワ(下の写真)では、裏切りコバチの数がたいへん多く、制裁機構がうまく働いていないようだということです。 アカメイヌビワなどでは、共生関係を維持するために、何か別のしくみをもっているのでしょうか。 野生イチジクとコバチの関係、奥の深いおもしろい関係です。

Akameinubiwa990731_1    アカメイヌビワ '99.7.31.西表島にて撮影

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2010年12月29日 (水)

ツグミが池で

 池の近くに生えている木と池のスイレンの上とをツグミが盛んに行き来していました。 水浴びをしているわけでもありませんし、餌を食べに来ているのかもしれませんが、餌を食べている所は目撃できませんでした。 もしかしたら、水面近くに飛んでいる、離れていては見えないような小さな虫を狙っていたのかもしれません。
 ツグミが来ている理由はともかく、いろんな角度からツグミの羽を広げた姿を撮ることができました。

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2010年12月28日 (火)

イソギク

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 イソギクは千葉県~静岡県や伊豆諸島の磯に自生するキク科の多年草です。 花期は自生地では10~11月頃ということですが、栽培されたものでは、育て方によって少し前後するようで、写真は12月18日に撮ったものです。
 花は筒状花のみで、舌状花はありません。 総苞片には黒い縁取りがあります。 葉は乾燥しやすい海岸に適応するために厚く、葉の裏側には白い毛が密生しています。

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2010年12月27日 (月)

コブハクチョウ

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 大阪市立長居植物園の池にコブハクチョウ2羽が優雅に泳いでいます。
 コブハクチョウの分布の中心はヨーロッパと中央アジアです。 わずかに中国東部や朝鮮半島で越冬するものもいるのですが、コブハクチョウはハクチョウの中でも優雅であるとして、昔からあちこちで飼われ、それが逃げ出したものもいて、日本でコブハクチョウを見ても、それが野生個体が飛来したのか、飼われていたものなのかは、はっきりしません。
 しかし長居植物園のコブハクチョウは、はっきりしていて、2007年の秋に北海道の旭山動物園から譲り受けたものです。

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 コブハクチョウの瘤の黒い部分は、露出している皮膚の色です。 下は上の一部を拡大したものですが、このように拡大すれば皮膚だというのが分かるでしょう。

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2010年12月26日 (日)

コサギの飛翔

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 こちらへ向かって飛んでくる鳥を大きく撮ることができるチャンスは、そう多くはありません。 (写真はクリックで拡大します。)
 これだけ大きく撮る事ができれば、羽根の様子などもよく分かります。

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2010年12月25日 (土)

タラヨウ

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 写真は大阪市にある長居公園で見かけたタラヨウです。 タラヨウはあちこちでよく見る木ですが、薄暗い林の中ではそんなにたくさん実をつけることはありません。 しかし写真の木は、公園の日当たりのいい所に植えられて、たくさんの実をつけていました。
 タラヨウは雌雄異株で、花は4~5月頃に咲きます。 下は雄花で、雌花には太いメシベがあるのですが、花の色は雄花同様淡黄緑色です。

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 タラヨウの葉の裏を尖ったもので圧迫すると、圧迫された細胞が壊れて酵素が出され、この酵素による反応で、黒い物質が作られます。 つまり尖ったもので文字などを書くと文字が黒く浮かんできます。 この文字は葉が枯れても、何年もそのまま残ります。
 ところで、インドなどでは、タラジュ(多羅樹)とよばれるヤシ科の葉をなめしたパピラと呼ばれるものに、鉄筆で文字を書き、その凹んだ所に墨と植物性油脂を混ぜたものを塗り込み、経文を書いていました。 文字の書ける葉「タラヨウ(多羅葉)」の名は、この文字を書いた葉であるタラジュ(多羅樹)から来ています。
 なお、セイヨウバクチノキも、タラヨウのように、葉の裏面に文字などを書くことができます。

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2010年12月23日 (木)

アズキナシ

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 アズキナシは低山帯からブナ帯の下部にかけて分布するバラ科ナナカマド属の落葉樹です。 葉は重鋸歯があり、葉脈はほぼ等間隔に並行に走っています。

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 果実はアズキを連想させる大きさと色です。

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2010年12月22日 (水)

アカエグリバ

 アカエグリバもアケビコノハ同様、枯葉に擬態した蛾です。 ただし、虫に食われた枯葉のつもりなのでしょうか、えぐられたような葉の形ですので「エグリバ」です。
 アカエグリバもアケビコノハ同様、果実に害を与えます。 下はスズメウリを狙って来ていたアカエグリバですが、ミカンやリンゴなど、いろんな栽培されている果実も狙います。

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 そしてやはり擬態に自信があるのでしょうか、アケビコノハ以上に触れても動きません。 こんな昆虫の撮影は、ほんとうに楽ですね。

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 同じ属の蛾でヒメエグリバがいます。 ヒメエグリバの方がクシャクシャになった枯葉に似ているのですが、顔を見れば、たいへんよく似ています。
 アカエグリバもヒメエグリバも、幼虫はアオツヅラフジなどの葉を食べて育ちます。

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2010年12月21日 (火)

アケビコノハ

 12月18日の問題の答です。 赤い円の中にアケビコノハがいます。 枯葉そっくりの擬態ですが、周囲はクヌギの枯葉できょ歯がありますが、アケビコノハの翅にはきょ歯のようなものはありません。

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 アカエグリバなどもそうですが、どうも擬態に“自信”のあるものは、動けばかえって目立つということなのでしょうか、積極的に動こうとはしません。 もちろん遠くまで飛ぶことのできる飛翔力は持っているのですが、この時期は寒さのため、飛ぶためには予め翅を振動させ( = 筋肉の収縮を繰り返して熱を発生させ )、体温を上げてからでないと、飛翔に必要な筋力を出すことができません。 ですから、簡単に「手乗り蛾」にすることができます。

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 指に乗せたのは、どうにかして後翅を撮りたかったからなのですが、どんなに触れても、一瞬前翅を開いて後翅を見せてくれるのですが、撮る間もなく、すぐに閉じてしまいます。 後翅には鳥などを驚かすに十分な、橙色の地に黒い斑紋の鮮やかな模様があるのですが・・・。
 翅を閉じれば枯葉そっくりで、後翅には鮮やかな模様があり、幼虫の姿もおもしろく、昆虫好きの人には人気のあるアケビコノハですが、果樹園を経営する人にとってはたいへんな害虫で、いろんな果物にストローのような口を刺し込み、果実を傷めて売れなくしてしまいます。
 下はその口を撮ろうとしたものですが、きれいに巻かれて収納されており、その場所の切れ目しか分かりません。

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2010年12月20日 (月)

キンクロハジロ(表情)

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 キンクロハジロについては、以前に書いていますので、今日はいろいろ書きません。

 写真はクリックで拡大します。

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2010年12月19日 (日)

ヒマラヤザクラ

 大阪市立長居植物園でヒマラヤザクラがもうすぐ満開を迎えようとしています。(この記事の写真は'10.12.18.の撮影です。)

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 ヒマラヤザクラ( Prunus cerasoides )は、ヒマラヤ原産と考えられている桜の野生種の1つで、インド、中国南西部、ミャンマーなどの、海抜1200mから2400mに分布しており、1月~2月に花を咲かせるとのことです。
 日本の高温多湿には弱いようですが、注意深く管理されている長居植物園では元気に育ち、例年この時期から咲きだしているようです。
 花はピンクで、ツボミの時は色が濃く、咲くと白っぽくなります。

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 果実は卵形で、黄色から赤に変化し、食べることができるようです。 また、幹からはガムを得ることができるようです。
 さらに、二酸化炭素や窒素酸化物の吸収率が高いので、地球温暖化対策の面でも注目されている植物です。

Himarayazakura101218_3    樹皮の様子

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2010年12月18日 (土)

枯葉の中に

 下の写真に昆虫が1頭写っているのですが、探してみてください。
 (いつものように、写真はクリックで大きくなります。)

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 できるだけヒント無しに探してみてください。

 でも、どうしても分からない人のために大ヒント、こちらの中のどれかです。

 

 正解はこちら

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2010年12月17日 (金)

クロスジフユエダシャク

 12月5日、「堺自然ふれあいの森」の一角で、クロスジフユエダシャク(オス)がたくさん飛んでいました。 周辺を歩いてみても、あちこちで飛んでいます。
 クロスジフユエダシャクは、いわゆるフユシャクの仲間で、メスの翅は退化し、飛ぶことができません。 この翅の退化したメスの様子を撮りたいと以前から思っていましたが、多くのフユシャクの仲間の活動は夜が中心です。 しかし、クロスジフユエダシャクは昼行性の蛾です。 フユシャクのメスを撮るチャンス!
 でも、フユシャクの仲間は、そんなに大きな蛾ではありません。 翅が無ければたいへん小さなものです。 探してもなかなか見つけられないでしょうから、飛び回っているオスに探してもらおうと思いました。
 フユシャクのメスはオスを呼ぶフェロモンを出しています。 これは私たちには感じることはできませんから、オスの後をついて行って、オスがフェロモンに惹かれてメスに近づくのを待ち、メスを見つける作戦です。
 オスは地表近くを飛び続けます。 あきれるこど休憩しないで飛び続けます。 オスはメスを見つけるために飛び続けているわけですから、それだけメスを見つけるのは難しいということなのでしょう。 メスが少ない時間帯なのでしょうか、オスとメスとの個体数に絶対的な違いがあるのでしょうか、それともフェロモンが拡散されてメスをなかなか見つけられないのでしょうか。 
 飛び続けるオスも、時には休憩します。 ここに載せた写真はその時に撮ったものです。 オスがとまると、そこにメスがいるのではないかと喜んでかけつけるのですが、この日はそんな休憩ばかりでした。 数時間オスの後を追いかけたのですが、結局この日はメスの姿を見ることはできませんでした。

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 あきらめきれず、12月11日にも同じ場所に出かけました。 この日もクロスジフユエダシャクのオスは飛びまわり、2時間ほどオスの後を追いかけたのですが、やはりメスを発見することはできませんでした。 そのうちに曇ってきてオスの動きが少なくなってきたので、あきらめました。

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2010年12月16日 (木)

アゲハの蛹

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 寺の境内の石灯篭にアゲハの蛹、こんなに開けた所で蛹になって、よく鳥などに狙われないものです。

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 拡大してみると、けっこう重厚感がありますね。

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2010年12月15日 (水)

ススキの小穂

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 上はススキの花、9月20日の撮影です。 オレンジ色のオシベがたくさん垂れ下がって、なかなか美しく、オシベの先に花粉の出る穴が開いているのもおもしろいものです。 黒っぽいのはメシベの柱頭です。 小穂はぴったりくっつき合っています。
 そして下が12月5日に撮ったススキ、小穂の基部に生えている白毛は水平に開き、小穂の1つずつが、はっきりと認識できます。 小穂の先からは、長いノギが突き出し、途中で屈折して「く」の字になっています。

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 ススキとオギはよく混同されますが、この小穂の様子を見れば違いは明らかで、オギの小穂の基部に生える毛は小穂の長さの3~4倍あり、オギにはノギはありません。

※ ススキの群生の様子はこちらでどうぞ。

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2010年12月12日 (日)

カマツカにタケノアブラムシ

 カマツカは葉が硬く、条件によっては葉の表と裏の色が異なる美しい紅葉を見せてくれます。 その紅葉の様子を撮ろうとカメラを向けると、何やら葉の裏に黒い点々が・・・。

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 拡大してみるとタケノアブラムシでした。

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 アブラムシ類の生活環はたいへん複雑で、環境の変化に対応して、単性生殖/両性生殖、胎生/卵生、無翅形/有翅形などを組み合わせて変化するのですが、これが種類によって様々です。
 越冬形態も、卵態のものや胎生雌虫で行うものなどがありますし、寄主植物を季節的に変えるもの(移住型)や、寄主を変えないもの(非移住型)もあります。
 タケノアブラムシは、その名のとおり、夏の間は竹や笹の葉に寄生している( こちら )のですが、冬季にはカマツカに寄主転換するものが出てきます。 もっとも、有性生殖はカマツカで行われるので、竹や笹が中間寄主ということになります。
 もう少し詳しく、以下、宗林正人氏の論文( 昆蟲30(4),221-229.1962.)にあるタケノアブラムシの生活環の部分のみの要旨を簡単に書くと、次のようになります。
 タケノアブラムシの生活環には、完全生活環と不完全生活環の2型があります。 まず完全生活環について書くと、次のようになります。
 カマツカに産みつけられた卵は、冬を越し、3月下旬にふ化し、4月中旬に幹母の成虫(第1代)が現われます。 そこから生まれる第2代には全て翅があり、竹や笹などの中間寄主に移住します。 中間寄主上では翅の無い胎生雌虫の世代をくり返し、よく繁殖しますが、10月下旬には有翅雌虫が現われ、カマツカに戻り、両性雌虫(産卵雌虫)を産みます。 11月になると雄虫が現われ、カマツカで両性雌虫と交尾し、両性雌虫は11月中旬から産卵を始めます。 下の写真の中央が、その両性雌虫なのでしょう。

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 一方、不完全生活環は次のようになります。 10月下旬から11月上旬に竹や笹上に現われる翅のある胎生雌虫は他の竹や笹に移り、翅の無い胎生雌虫を産みます。 この翅の無い胎生雌虫は、冬も子を産み続けながら冬を越します。

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2010年12月11日 (土)

ゴンズイノフクレアブラムシ

 ゴンズイの果実を撮ろうとカメラを向けると・・・ 奥の枝に何やら白いものがいっぱいついています。

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 近づいてみると、ゴンズイノフクレアブラムシでした。 このアブラムシはゴンズイやミツバウツギを主寄主としていますが、夏季には、ヤブカンゾウやニッコウキスゲなど、ユリ科の植物でもよく見られます。
 アブラムシの仲間は、有翅型で飛んで分布を広げ、無翅型の単為生殖でどんどん増えるのですが、下の写真の右側に有翅型の翅が写っています。 回り込んで近づいて撮りたかったのですが、川縁に生えているゴンズイで、回り込めませんでした。

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 有翅型はオレンジ色の体をしているのですが、無翅型の体には白い粉がふいてきます。 どちらのタイプも、足、触角、角状管などは黒い色をしています。
※ 角状管(かくじょうかん)については、キョウチクトウアブラムシの所で少し書いています。
 上の写真を見ると、無翅型には、オレンジ色の体に粉がふいて白くなってくるものと、最初から白い体のものが写っています。
 ゴンズイノフクレアブラムシの「フクレ」とは、有翅形の胸部付近が膨れているからなのですが、無翅型でもオレンジ色の個体には胸部付近が膨れているものが多く、色だけでなく、体型も有翅型に似ているものが多いようです。
 そんなことを思いながら写真を撮っていると、オレンジ色で胸部付近が膨れている個体で、とても短い翅の生えている個体を見つけました(下の写真の右側)。

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 アブラムシのアブラムシの生活環は複雑で、種類によっても異なりますが、無翅胎生雌虫、有翅胎生雌虫、中間型胎生雌虫、両性雌虫(産卵雌虫)、雄虫など、様々な生活型(モルフ)が出現します。
 下の写真の右側の個体も、やはり短い翅が生えているタイプで、これが中間型胎生雌虫と呼ばれているものなのでしょうね、無翅胎生雌虫と有翅胎生雌虫の中間の体型を示しているようです。 同じオレンジ色でも、左の個体は無翅胎生雌虫なのでしょう、体型は全く違います。

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2010年12月10日 (金)

ツルムラサキ

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 かなり寒くなってきましたが、近所の市民菜園にツルムラサキがまだ残っていました。
 ツルムラサキは熱帯アジア原産で、自生地では多年草ですが、日本では1年草として扱われているツル植物です。 葉と茎を食用にしますが、独特の粘り気があります。 日本ではおひたしや味噌汁の具などとして使われていますが、中華料理では炒め物にすることが多いようです。 茎の色には、写真のような緑色のものと紫色のものとがあります。
 ツルムラサキはツルムラサキ科に分類されている植物で、花は夏から秋にかけて咲きますが、花弁はなく、厚いガクがあります。 花が咲くといっても、このガクが上の方で少し開くだけで、ほとんどツボミと花との区別はつきません。 そして花が終わっても、このガクは残り、厚みを増し、次第に黒紫色となり、1個の種子を包みます。

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2010年12月 8日 (水)

柿を食べるスズメ

 たくさんのスズメが柿を食べに集まっていました。

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 それがどうした!? と思う方もおられるでしょうが、考えてみてください。 スズメはイネ科の種子や虫などを食べる鳥で、時にはサクラなどの花の蜜を狙うスズメが話題になったりします。 しかし、少し前までは、柿などの果実を食べるスズメなど、聞いたことがありませんでした。 ところが最近、あちこちで柿を食べるスズメの話を聞くようになりました。

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 「文化」を「社会の成員として獲得する振る舞いの複合された総体」とするなら、これはスズメ社会の「文化」が変化したことになります。
 鳥の社会の様子も永年同じ状態が続くわけではありません。 森で生活していたオオタカが町に住みだしたことは先日記事にしました。 ハヤブサチョウゲンボウも町に住みだしました。 昔は町では夏にしか見ることのできなかったヒヨドリも、今は1年中見ることができます。 一時は町の中から完全に姿を消していたカワセミも、公園などに帰ってきました。
 人の生活の様子が変ってきたように、鳥の生活の様子も変っているのですね。

※ 今回の写真は、犬の散歩の途中で、持っていたコンパクトカメラで撮ったものです。 光条件も良くないうえに、大トリミングをしていますので、画質はたいへん荒れています。

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2010年12月 6日 (月)

ミヤマホオジロ(メス)

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 日陰で2羽、カシラダカなのかミヤマホオジロなのか、近づくと別方向に少し飛んで、それぞれが単独行動になりました。 そして相変わらず日陰で、地面に落ちたイネ科の種子やイヌタデの種子などを熱心に食べ続けますので、かなり近づくことができました。 保護色に自信があるのでしょうか。

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 この記事は、最初はカシラダカとして書いていましたが、コメントでミヤマホオジロのメスではないかと教えていただき、書き直しました。 最初に記事を書く時も悩んだのですが、両者の区別はほんとうに難しいです。
 腰が見えていれば、カシラダカには鱗のような模様があり、ミヤマホオジロにはそれがなくて区別が容易なのですが、写真の個体はこの部分が翼できれいに隠されています。 もう少しいろんな時期の両者の写真を集めて比較したいと思います。

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2010年12月 5日 (日)

アトリ@紅葉

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 本日は難しい話は抜きにして、アトリが美しく撮れましたので観賞用に載せておきます(写真をクリックすると拡大します)。 背景はイロハモミジの紅葉です。

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2010年12月 4日 (土)

オオタカ

 オオタカは翼を開くと長さ約100~130cmになる里山を中心に分布する猛禽類です。 留鳥として周年生息する個体もありますし、越冬のため南へ渡るオオタカもいます。 飛翔能力の高い優れた“ハンター”で、鷹狩りに使う鷹は、このオオタカです。
 1980年代までは森に行かなければ見ることのできなかったオオタカですが、どういうわけか、最近は町で生活するオオタカが増えてきました。 堺市の大泉緑地にも、昨年に続いて、今年もオオタカがいます。 ドバトやバンなどを餌にしているようです。
 今は成鳥と幼鳥の2羽が住んでいます。 成鳥は、頭から背が青味のある灰黒色で、目の後方に黒い眼帯があり、よく目立つ白い眉斑があります。 胸や腹は白く、灰黒色の横斑があります。 幼鳥は背面が褐色で、下面には黒褐色の縦斑が、また尾には4本の黒っぽい帯があります。

 この時期、成鳥はよく幼鳥の所へ飛んで行き、鳴いて威嚇しているようです。 たぶん親から離れて独り立ちすることを促しているのではないかと思います。 幼鳥も親に脅かされ、でも親から遠くには離れられず、少し飛んではとまります。 餌を狙う時だけではなく、このような行動をするので、今はよく飛びます。 この飛ぶ姿を撮ろうと出かけたのですが、なかなかうまく撮れませんでした・・・。

 成鳥

Ootaka_a101127_1    今年のオオタカ('10.11.27.撮影)

Ootaka091029_1    昨年のオオタカ('09.10.29.撮影)

Ootaka_a101127_2    成鳥の飛翔 シャッター速度が遅く、ブレブレ・・・

 幼鳥('10.11.27.撮影)

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2010年12月 3日 (金)

マヒワの個体数変動

Mahiwa101127_1    マヒワ 左がオスで右がメス

 色続きで、昨日のアオゲラに続いて今日はマヒワについてです。
 今年はマヒワの大きな群が、あちこちで観察されています。 マヒワについては、以前にも記事にしましたが、撮るのに苦労した鳥が、今年は町の中の公園にも群でいて、簡単に撮ることができます。 この記事の写真は、堺市にある大泉緑地で撮ったものですが、大阪城公園などにも大きな群が見られます。 そしてこのマヒワの群にベニヒワが混じっているケースもあるようです。

Mahiwa101127_2    少数のカワラヒワが混じったマヒワの群

 鳥の渡りの様子は年ごとに多少の特徴が見られるものですが、渡り鳥の中にはその変動幅がたいへん大きなものも知られています。 このような渡りは、英語では irruption または invasion と言われています。
 1985年に出版された「 A Dictionary of Birds 」( B.Campbell and E.Lack )の irruption の項によれば、このような irruption には、次の3つのケースがあるようです。
① ノネズミやノウサギの個体数は年による変動がとても大きく、これらを主な餌としているタカやフクロウの仲間で渡りをする種の中には、どの地域にどれくらいの個体数が南下するかが大きく違う場合がある。
② 樹木の種子も木の種類ごとに年によって変動の幅があり、これらの種子を餌にする小鳥類の中には、種子が不作の年には餌を求めて大挙して南下するものがある。
③ 乾燥地帯の鳥で、干ばつが長引いた場合に、餌を求めて南下する。

 日本での irruption の例としては、2008年のケアシノスリが①のケースではなかったかと言われています。 今年のマヒワやベニヒワは②のケースにあてはまるのかもしれません。

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2010年12月 2日 (木)

アオゲラ

 アオゲラは背面や翼が黄緑色をした全長30cm足らずのキツツキの仲間です。 食性は、アリや他の昆虫などの動物食の傾向が強いのですが、果実も食べていて、写真のカラスザンショウの木には、連日、数回ずつ来ています。

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 写真はオスで、オスは額から後頭にかけて赤い羽毛で覆われていますが、メスのこの部分の赤色部は後頭部のみです。 また顎線にある赤色部も、メスよりオスの方が大きい面積を占めています。

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 日本のキツツキの名前は、オオアカゲラ、アカゲラ、アオゲラ、コゲラなど、みんな「○○ゲラ」です。 ケラの語源については、寺の山門をつつく姿の「テラツツキ」が訛って「ケラツツキ」になり、「ケラ」に転じたとか、木をつついて虫ケラを食べるので「ケラツツキ」となったとか、アカゲラの鳴き声を「ケラケラケラ」と聞きなして“ケラ”となったとか、いろんな説があります。

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2010年12月 1日 (水)

カラスザンショウ

 カラスザンショウはミカン科のサンショウ(山椒)やイヌザンショウの仲間なのですが、これらよりはるかに大きな複葉で、葉にも枝にも幹にも刺が多く、かなり印象は違います。
 能勢妙見山の広場の縁に、数本のカラスザンショウが生えています。 カラスザンショウは、伐採跡などの裸地に、他の樹木に先駆けて素早く成長し、大きく葉を広げる先駆植物です。 能勢妙見山でも、広場を作った際の新しくできた斜面に生えたものでしょう。
 そのカラスザンショウにたくさんの実ができ、その実を狙っていろんな鳥が来ていました。 下の写真に写っているのはジョウビタキのメスです。(写真はクリックで大きくなります)

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 写真を見ると、果実が開いて黒い種子が見えているものもありますが、閉じたままの果実も多いようです。 春になると、この果実は房ごと落ちてしまいます。 落ちてから開く果実もあり、一方では鳥によって種子を遠方に運んでもらうと共に、他方では自分の生えている場所の近くに種子を散布する狙いかもしれません。

 花は7~8月、上向きに咲くので、この花を撮るには高い所から下の方に生えているカラスザンショウを狙わなければなりません。

Karasuzanshou010803_1

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