オイカワ・カワムツ・ヌマムツ
以前に小さなオイカワとヌマムツの1月の様子を記事にしましたが、婚姻色は小さなうちははっきり出ません。
夏はオイカワなどの婚姻色がきれいになる季節ですので、淡水魚の生態展示で有名な琵琶湖博物館に行ってきました。 予想通り大きく育ったオイカワなどが美しい婚姻色になっていて、追星(おいぼし:産卵期の雄に現れる白色の瘤状小突起物)もよく出ていました。
オイカワ、カワムツ、ヌマムツは、いずれも尻びれが発達していて、よく似た体型をしています。 特にカワムツとヌマムツは、どちらも体側に黒い縦帯があるなどよく似ていて、最近まで1種だと考えられていました。 しかし、大きく育ったこの時期のオスでは、カワムツとヌマムツは色も違いますし、追星の配列も違います。
上の写真のとおり、カワムツはヌマムツに比較して、体側の縦帯の色がやや濃く、鱗が大きく、またヌマムツの胸びれと腹びれの前縁が赤いのに対し、カワムツは黄色です。
まだカワムツとヌマムツが区別されていない頃、当時京都大学におられた川那部浩哉先生が、滋賀県の宇川で、オイカワとカワムツの関係について調べられています。
この研究によると、カワムツとオイカワの両方が生息する川では、オイカワが流れの速い瀬にいるのに対し、カワムツは流れのゆるい淵の川底にいます。 ところが、この両者にアユが混じると、両者の位置関係はなんとみごとに逆転してしまい、アユとカワムツが川の浅瀬部分に分布し、オイカワは淵に集まります。
河川が改修されて平瀬が増えると、オイカワが増えてカワムツが減る事が知られています。 つまり、瀬ではオイカワの方が有利なのです。 これらのことから、オイカワとカワムツの分布の逆転現象は次のように考えられます。
アユのいない状況では、オイカワがどんどん餌の流れてくる瀬を独占し、カワムツは淵に追いやられている。 ところがそこに力の強いアユが加わると、アユが浅瀬を占め、オイカワは淵に追いやられ、淵にいたカワムツは瀬に追い出されて、アユに“遠慮”しながら生活しているのではないかと考えられます。
この研究のカワムツは、たぶんヌマムツではないカワムツだったのでしょうね。
※ この記事との関連で、以前のオイカワやヌマムツの記事は書き直しています。
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コメント
1月から比べるとお魚たちも大人に?なった?のですね?
目立っていますね、顔の白いブツブツ・・・
が、婚姻色の追星(おいぼし)なんですね?
と、聞いて
ふ~~ん そうなんですか???
と、納得のわんちゃんなんですが・・・
合ってます?
三者が遭遇するとアユが一番強くって、オイカワが次、その次がカワムツという、力関係なんでしょうか?
投稿: わんちゃん | 2010年8月31日 (火) 17時49分
成熟にまで2~3年かかる魚たちですから、8月にも小さな(=若い)魚もいます。
婚姻色は体の色で、追星を普通は婚姻色には含めないと思います。
三者の関係は強い弱いだけの関係だけでは無いと思います。例えばケンカ好きか平和主義者か、といったことも関係するかもしれませんし、餌に対するこだわりの強さも関係するかもしれません。雑食性が強ければ、ケンカする時間を他の食べ物を取る時間に回した方が得かもしれません。
投稿: そよかぜ | 2010年8月31日 (火) 23時21分