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2010年8月31日 (火)

キアゲハ

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 キアゲハは黄色いアゲハ。 でもアゲハ(=ナミアゲハ)も少しは黄色みを帯びていますし、キアゲハもこすれて鱗粉が落ち、色が薄くなっている場合もあります。
 キアゲハとアゲハの見分け方のいちばん確かな所は、アゲハでは前翅の表の中室の基部寄りに4本の縦じまが見られるのに対し、キアゲハではこの部分(下の写真の赤い楕円の部分)に白条はありません。 アゲハと比較してみてください。

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 成虫は上記のようによく似ているのですが、幼虫の様子はかなり異なります。 まず食餌植物が違います。 アゲハはミカン類の葉ですが、キアゲハはセリ科植物の葉です。 下はシシウドの葉を食べているキアゲハの幼虫です。

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 アゲハの幼虫は、よく知られているように、大きな目玉模様と3本の曲線を持った緑色のイモムシですが、キアゲハの幼虫は上の写真のように黒と緑の縞模様で、黒い部分にはオレンジ色の斑点があります。
 ところで、アゲハやキアゲハなどの幼虫は、体に刺激を受けると、頭部から肉角(にくかく)と呼ばれるツノを出し、すっぱい嫌なにおいを周囲に撒き散らします。 この様子を撮ろうとしたのですが、1人での撮影は、なかなか難しい・・・。 刺激して肉角を出させてからカメラを構えると、その時にはもう肉角を引っ込め始めています。 それに刺激を何度も与えていると、次第に慣れてきて少ししか肉角を出さなくなります。
 キアゲハの幼虫の肉角をどうにか撮ったのが下の写真ですが、左側の肉角は伸びきっていません。 アゲハの幼虫の肉角は黄色ですが、キアゲハの幼虫の肉角はそれよりも少し色が濃く、オレンジ色です。

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2010年8月30日 (月)

水中のカイツブリ

 滋賀県立琵琶湖博物館は淡水魚の生態展示で有名ですが、その魚を捕えるカイツブリの生態も観察できるコーナーがありました。
 カイツブリが潜水し餌を採る様子を見ていると、体のつくりが潜水に適していることがよく分かります。 船のスクリューと舵が船尾にあるように、水かきの発達した体に比較して大きな足が体の後ろについていて、これで水を蹴って自在に泳いでいました。

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※ カイツブリに関しては、これまでに、冬羽の様子子育ての様子などを記事にしています。

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2010年8月29日 (日)

オイカワ・カワムツ・ヌマムツ

 以前に小さなオイカワヌマムツの1月の様子を記事にしましたが、婚姻色は小さなうちははっきり出ません。
 夏はオイカワなどの婚姻色がきれいになる季節ですので、淡水魚の生態展示で有名な琵琶湖博物館に行ってきました。 予想通り大きく育ったオイカワなどが美しい婚姻色になっていて、追星(おいぼし:産卵期の雄に現れる白色の瘤状小突起物)もよく出ていました。

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 オイカワ、カワムツ、ヌマムツは、いずれも尻びれが発達していて、よく似た体型をしています。 特にカワムツとヌマムツは、どちらも体側に黒い縦帯があるなどよく似ていて、最近まで1種だと考えられていました。 しかし、大きく育ったこの時期のオスでは、カワムツとヌマムツは色も違いますし、追星の配列も違います。

Oikawa100811_1    オイカワ

Kawamutu100811_1    カワムツ

Numamutu100811_1    ヌマムツ

 上の写真のとおり、カワムツはヌマムツに比較して、体側の縦帯の色がやや濃く、鱗が大きく、またヌマムツの胸びれと腹びれの前縁が赤いのに対し、カワムツは黄色です。

 まだカワムツとヌマムツが区別されていない頃、当時京都大学におられた川那部浩哉先生が、滋賀県の宇川で、オイカワとカワムツの関係について調べられています。
 この研究によると、カワムツとオイカワの両方が生息する川では、オイカワが流れの速い瀬にいるのに対し、カワムツは流れのゆるい淵の川底にいます。 ところが、この両者にアユが混じると、両者の位置関係はなんとみごとに逆転してしまい、アユとカワムツが川の浅瀬部分に分布し、オイカワは淵に集まります。
 河川が改修されて平瀬が増えると、オイカワが増えてカワムツが減る事が知られています。 つまり、瀬ではオイカワの方が有利なのです。 これらのことから、オイカワとカワムツの分布の逆転現象は次のように考えられます。
 アユのいない状況では、オイカワがどんどん餌の流れてくる瀬を独占し、カワムツは淵に追いやられている。 ところがそこに力の強いアユが加わると、アユが浅瀬を占め、オイカワは淵に追いやられ、淵にいたカワムツは瀬に追い出されて、アユに“遠慮”しながら生活しているのではないかと考えられます。
 この研究のカワムツは、たぶんヌマムツではないカワムツだったのでしょうね。

※ この記事との関連で、以前のオイカワやヌマムツの記事は書き直しています。

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写真などを追加しました

6月28日のウリノキの記事にその実の写真を、
8月21日のハクサンフウロの記事にイブキフウロの写真を、
8月26日のバイカモの記事にハリヨについて、
追加しています。

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2010年8月28日 (土)

アゲハの吸水・排尿

 アゲハが翅を震わせながら湿った地面に口を伸ばしていました。 かなりの長い間、こんなことをし続けます。
 以前、ミヤマカラスアゲハの同様の行動を記事にしましたが、時々こんなことをしているチョウに出会います。

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 そして時々お尻から水を出します。 この行動を何と言ったらいいのか・・・。 放尿とか排尿とか言われることもありますが・・・。 吸った水のほとんどを短時間で出しており、ほ乳類などの「尿」とは根本的に違うのですが、「排水」というのも何かピッタリしなくて・・・・。
 ほぼ一定の周期で水を出すので、写真は水を出す時を予想してシャッターを切ったものです。

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 この行動の目的は何でしょうか。 水分補給ならこんなに長時間水を吸い続け排尿し続けることは無いでしょうし、体を冷やすためなら、もっと水の飲みやすい所があるはずです。 この行動を見るのは、いつも湿った土の上で、水に直接口を差し込んでいる所は見たことがありません。
 この行動は、たぶん土から溶け出した塩分などの補給が主目的だと思います。 ほんのわずかしか含まれていない塩分などを取り込むために、延々と吸水と排尿を繰り返すのでしょう。

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2010年8月27日 (金)

オオナンバンギセル

 8月15日、岩湧山にオオナンバンギセルが咲いているというので行ってきました。 なかなか見つからず、あきらめかけた頃にやっとみつけました。

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 その後、よく岩湧山に来て写真を撮っておられる方と情報交換をすると、今年は山焼きを行ったのでカヤも元気で、オオナンバンギセルも今年はあちこちでたくさん見られるとのこと。 このあたりに出るはずと分かっていれば、簡単に探せるのかもしれません。
 ちなみに、この山頂のカヤを焼くことは、ここ数年中止されていたのですが、今年は文化庁の補助金が出て、河内長野市の主催で3月28日に実施されました。

 オオナンバンギセルはナンバンギセルよりも標高の高い所で見られます。 花の時期は、ナンバンギセルよりも早く咲き、7月~9月です。 名前のとおりナンバンギセルより大きく、高さは20~30cmに達します。
 大きさ以外のナンバンギセルとの違いは、オオナンバンギセルでは花弁の縁にきょ歯が見られるというのですが、写真のオオナンバンギセルは花が終わりかけで縁が縮れだしていて、この点ははっきりしません。 またガクの先端部分が尖らないのもオオナンバンギセルの特徴です。

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2010年8月26日 (木)

バイカモ

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 写真は滋賀県醒ヶ井のバイカモです。 ニュースなどで見て一度行ってみたいと思っていたのですが、実際に見て思っていた様子といちばん違ったのは、水中に咲く花が断然多いということでした。
 水中に咲く花をきれいに撮ろうと思えば、カメラを水中に沈めなければなりません。 簡単にきれいな花を撮ろうと思えば、水面から顔を出している花を狙うことになります。 つまり、少し大げさに言えば、事実と違った形で紹介されることになります。
 私も防水のコンデジを持っているのですが、報道された映像を信じ、普通のカメラしか持って行かず、結果として私も水面から顔を出している花を狙うことになってしまいました (^_^;

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 水中に咲く花と水面上に咲く花が混じるということは、受粉のしくみについて疑問を抱かせます。 水中に花が咲き、受粉するというのなら、花粉が水によって運ばれる「水媒花」でしょうし、水面上の花が受粉するというのなら、花のつくりからして昆虫によって花粉が運ばれる「虫媒花」であろうと思われます。 水媒花なら水媒花として、虫媒花なら虫媒花として進化してきたはずです。 バイカモが両方の受粉様式を兼ねているとは思えません。
 本やネットで調べてみると、水媒花であると書かれてあるものが多いのですが、具体的に詳しく受粉の様子について書かれてあるものには出会うことができませんでした。 また、虫媒花と水中の閉鎖花に近い繁殖様式による種子生産を行っているのではないかと書かれてあるものもありましたが、これも確認が必要なようです。
 水中に咲く花と水面上に咲く花の比率は、水量や季節などによって変化するのかもしれません。 しかし、醒ヶ井の場合は湧水ですので、そんなに水量の変化は無いでしょうし、ライトアップのために水中にライトを設置してありましたから、花期を通して水中に咲く花が多いのでしょう。
 いずれにしても、バイカモの種子生産に関しては、今の私にとっては謎です。 近くにバイカモが生育していれば詳しく調べることもできるのですが・・・。

 このバイカモの間にはトゲウオ科のハリヨが住んでいます。 といっても、下の写真は水槽内のハリヨですが・・・。

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 このハリヨ、年間の水量が一定した湧水地や、そこから流れ出る水のきれいな川にのみ見られる魚で、現在では滋賀県東部と岐阜県西濃地方でしか生息が確認されていない貴重な魚です。

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2010年8月25日 (水)

アサギマダラの雌雄

 伊吹山の山頂付近では、アサギマダラが優雅に飛び回っていました。
 アサギマダラが毒をもつチョウであることや長い旅をするチョウであることは、以前こちらで記事にしましたので、今回はオスとメスに関して書くことにします。

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 アサギマダラのオスとメスは性標の有無で区別することができます。 オスの後翅には黒斑状の性標があり、メスにはこの性標がありません。

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 上のヨツバヒヨドリに来ている2枚のアサギマダラの写真はオスです。 伊吹山の山頂付近でヨツバヒヨドリに来ているアサギマダラは、そのほとんどがオスでした。
 一方、7月31日の伊吹山山頂付近では、メタカラコウの花にも、よくアサギマダラが来ていましたが、メタカラコウに来ているアサギマダラは、ほとんどがメスでした。

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 下はメタカラコウの多い所で飛んでいるアサギマダラで、やはりメスです。 この場所にはヨツバヒヨドリは生えていませんでした。

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 以前、メタカラコウによく似たオタカラコウに来ているアサギマダラの写真を載せましたが、この場合も全てメスでした。

 なぜこのように雌雄で訪れる花が違うのか、その理由は次のように考えられます。
 オスがメスを誘うフェロモンを生成するためには、ヨツバヒヨドリやフジバカマなどのヒヨドリバナの仲間の蜜に含まれるPA(ピロリジディンアルカロイド)という物質が必要になるのです。
 一方、メスは花を選ぶ必要が無く、蜜を吸い易い花を訪れます。 ヨツバヒヨドリなどはアサギマダラにとっては頭花を形成する1つずつの花(小花)が小さすぎ、効率的に蜜が吸えないのでしょう。
 チョウにはそのサイズに応じて蜜を吸い易い花があるようです。 花の少ない所では選り好みはできないでしょうが、いろんな種類の花が咲いている場所では、やはり蜜を吸い易い花に行こうとします。 例えば7月31日の伊吹山山頂付近でも、たくさん咲いていたクガイソウの花に来ていたチョウは、ほとんどがオオウラギンスジヒョウモン、ウラギンヒョウモン、アカタテハなど、サイズのよく似たタテハチョウ科のチョウでした。
 ヨツバヒヨドリとメタカラコウはどちらも同じキク科ですが、頭花を形成する小花の大きさはかなり違い、大型のチョウであるアサギマダラにとっては、メタカラコウの花の方が蜜を吸うには適しているのでしょう。

 伊吹山の花や虫などを約3週間にわたって記事にしてきました。 まだ記事にしていないものもあるのですが、季節の変化も進んでおり、このあたりでいったんは打ち切りとしたいと思います。

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2010年8月24日 (火)

ヨツバヒヨドリ

 ヨツバヒヨドリはヒヨドリバナの変種とされていて、ヒヨドリバナの葉が対生であるのに対し、ヨツバヒヨドリの葉は3~4枚輪生しています。

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 ヒヨドリバナよりも涼しい所がお好みらしく、ヒヨドリバナが日本各地に分布するのに対し、ヨツバヒヨドリの分布は四国の山の上と近畿地方以東です。 伊吹山でも山麓にはヒヨドリバナが、山頂付近にはヨツバヒヨドリが分布しています。
 下は伊吹山の山頂付近で撮ったもので、手前はシモツケソウとアカソ、左下から右上へ、そしてその奥に帯状に咲いている白い花がヨツバヒヨドリです。

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2010年8月23日 (月)

マルバダケブキ

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 昨日に続いて伊吹山で咲いていたメタカラコウ属( Ligularia属 )をもう1種、マルバダケブキです。
 同じメタカラコウ属ですが、メタカラコウオタカラコウの花序が房状になるのに対し、マルバダケブキの花序は散房状で、頭花の数も少なくなります。 その点では、葉の形は全く違いますが、同じメタカラコウ属のハンカイソウと似た花のつき方だと言えます。
 いずれにしても、メタカラコウ属は大きな頭花を多数つけ、よく目立つキク科の植物です。

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2010年8月22日 (日)

メタカラコウ

Metakarakou100731_2    メタカラコウ 奥のピンクはシモツケソウです

 メタカラコウは草丈も1m程度にまでなり、花の色もよく目立つ黄色ですので、伊吹山のなかでも目立っている花の1つです。
 一般的には、山地や深山の沢沿い、湿った草地、湿原に自生すると言われている植物ですが、伊吹山では、日当たりの良い、そんなに湿ったように思えない所にもたくさん生えています。 伊吹山では積雪量が多いので、たぶん生育期には雪解けで湿地に近い環境が作られるのでしょう。 伊吹山の山頂付近では、湿地を好む植物が、他にも多く見ることができます。

 メタカラコウ(雌宝香)はオタカラコウ(雄宝香)に対する名前で、両者は同じ Ligularia属(メタカラコウ属)に分類されています。 もちろん同じ植物の雌株・雄株の関係ではありません。 なお、「タカラコウ」の語源については、オタカラコウの所に書いておきました。
 根出葉はフキに似て長い葉柄があり、オタカラコウの葉身は楕円形的なイメージがあるのに対し、メタカラコウの葉身は三つの角が尖っていて、三角状心形です。 また、茎につく葉の葉柄は茎を抱いています。

Metakarakou100731_1    メタカラコウ 脇に生えているのはアカソです

 メタカラコウの花期は6月から9月です。 総状花序の下から上へ順に頭花を咲かせていきます。 1つずつの頭花を見ると、オタカラコウの頭花の舌状花が5個から9個程度であるのに対し、メタカラコウは1個から3個程度です(最初の写真をクリックして拡大してご覧ください)。

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2010年8月21日 (土)

ハクサンフウロ

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 高山の雪渓周辺でよく見かけるハクサンフウロの「ハクサン」は石川県と岐阜県の境にある白山からきています。 ハクサンフウロの分布は東北地方から中部地方にかけてですが、伊吹山はその北尾根から尾根伝いに遠く白山にも続いている山で、ハクサンフウロの分布の南限とされています。 7月31日に行った伊吹山の山頂付近で、ハクサンフウロは元気に咲いていました。 なお、フウロ(風露)の語源はよくわからないようです。
 ハクサンフウロの学名は Geranium yesoemse var.nipponicum で、エゾフウロの変種とされています。 エゾフウロと比較すると、ハクサンフウロは、ガクや茎の毛がエゾフウロより少なくなっています。 しかし、伊吹山のハクサンフウロとエゾフウロは、この毛以外の目だった差はなく、両者の中間の形質をもつものも見られますので、伊吹山は全てエゾフウロだとする人もいます。

 下には3つの花が写っていますが、下方の2つの花のメシベは閉じたままで、上方の花では既にオシベはほとんど失われており、メシベの柱頭が開いています。 つまりハクサンフウロは、雄性先熟の花です。

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 ハクサンフウロは、その属名( Geranium )から分かるように、ゲンノショウコなどの仲間です。 伊吹山に咲く Geranium属としては、昨日のヒメフウロやこのハクサンフウロ以外にも、もう少し早い時期(5月下旬~6月下旬)にはグンナイフウロが、8月~10月にはミツバフウロが見られます。 またイブキフウロが7月~8月に咲くのですが、これは7月31日に行った時には、残念ながら見落としてしまったようです、と書いていたら、
(以下8月24日追記)
わんちゃんからイブキフウロの写真を送ってきてくれました(下)。

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 イブキフウロは花弁の先端が3裂しています。

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2010年8月20日 (金)

ヒメフウロ

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 伊吹山が石灰岩の山であることは前に書きました。 石灰岩は土壌をアルカリ性にし、特有の植物が見られることとなります。 ヒメフウロもそのような植物の一種で、伊吹山や四国の剣山などの石灰岩からなる所に点々と分布します。
 ヒメフウロはフウロソウ科の越年草で、花は5月~8月頃、葉は3全裂して小葉はさらに深裂します。 ガクや茎には長い腺毛が多く見られます。

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 ヒメフウロにはシオヤキソウという別名がありますが、これは全草に塩を焼いたようなにおいがあることによります。
 なお園芸的には、地中海原産の Erodium属の植物を「ヒメフウロ」という流通名で扱っている場合があるので注意が必要です。

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2010年8月19日 (木)

ルリボシカミキリ

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 ルリボシカミキリは中型のカミキリムシで、日本の固有種です。 青い地色に黒模様の美しい外見であるところから、日本を代表するチョウがオオムラサキであるのなら、日本を代表する甲虫はルリボシカミキリだという人も少なくありません。
 青と黒の模様は徹底ていて、脚もそうですし、触角も節が黒で他は青です。 そしてこの美しい青い色を貴重にしているのは、標本にすると次第に赤褐色化してしまうことで、青い色の美しさを長期間保つことはできません。
 卵はブナ、ナラ、クルミなどの枯木や伐採木の樹皮の隙間に産み付けられ、幼虫はその枯死材部を食べ、約3年かけて育ち、成虫になります。 成虫も、大型のシロスジカミキリやゴマダラカミキリのように生木を食害することはありません。
 伊吹山の山頂付近にいた写真のルリボシカミキリは、ほとんど動きませんでした。 お昼寝中ならいいのですが、弱っているようにも見えました。

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2010年8月18日 (水)

シュロソウ

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 シュロソウはユリ科の多年草で、茎の基部に残る枯れ葉の繊維がシュロの毛に似ているところからの名前です。 葉は茎の下部に集まっていて、基部は鞘状になって茎を包んでいます。 伊吹山の山頂付近には、あちこちで1mほどの高さになって、たくさんの花をつけていました。 1つひとつの花は目立たない色であっても、これだけ高くなれば目立ちます。
 上で目立たない色の花と書きましたが、花粉は鮮やかな黄色で、花粉を出している葯は、きっと昆虫にもよく分かることでしょう。 このあたりがシュロソウの戦略の一つかもしれません。
 シュロソウは同じ株に雄花と両性花をつけます。 両性花は種子が完成するまでちゃんとついていなければなりませんから、枝の丈夫な部分に、雄花は枝の先端部など、細い枝に多く見られる傾向があります。

 下は雄花の集まった枝で、花粉を出し始めています。

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 上の写真で、花被の基部から2/5ほどが少し盛り上がって段差ができています。 この段差は、若い花で明瞭で、両性花でも同様です。
 この盛り上がり部分の機能について書かれたものはないかと、いろいろ調べてみたのですが、見つけられませんでした。 もしかしたら蜜腺に関係しているのではないかと思っています。

 下は咲いてから時間の経過した両性花を拡大したもので、オシベの葯は既になくなり、花糸だけが残っています。 盛り上がっていた部分は、もう平らになり、その境さえ分かりにくくなっています。

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 下は両性花ばかりの枝です。 3裂した子房が、下の方の早く咲いた花ほど発達しはじめており、最初は花被と同じ暗紫色だった子房は緑色を帯びてきています。 そしてこのようになっても、花被はほぼそのままの状態で残っています。

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 ガクが花後も残存し、いろんな役割を担っていることは、クサギヤマホオズキアケボノソウタヌキマメなど、これまでいくつかの植物について記事にしてきました。
 シュロソウの花被は花弁とガクからなります。 花弁も花の後に残っているのは珍しいことですし、その姿は花の時期と同じように見えます。 シュロソウの花後も残っている花被は、何かの役に立っているのでしょうか。

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2010年8月17日 (火)

シモツケソウ

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 シモツケソウは、高原の日当たりのよい草地などに群生する多年草です。 夏の伊吹山でもたくさん咲いていました。 というより、いちばん目立っていたのがシモツケソウかもしれません。
 たくさんの淡紅色の小さな花が集まって咲いていて、拡大してみると、バラ科の花らしく、たくさんのオシベがあります。 花には大小いろんな虫たちが訪花していました。 下の写真で後ろに写っているのはトラマルハナバチです。

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 「シモツケソウ」を略して「シモツケ」と言ってしまうと、これは別の植物になってしまいます。 一般的に名前は短い方が“本家”でしょうから、下野国(栃木県)にあった木のシモツケに似た花を咲かせるのが、草のシモツケソウなのでしょうね。

※ 果実の様子はこちらでどうぞ。

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2010年8月16日 (月)

ホウジャク

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 伊吹山の山頂で、ミヤマコアザミに来ていたホウジャクです。
 ホウジャクの仲間は昼に活動する蛾で、何種類かいて、私の家の近くに多いのはホシホウジャクなのですが、写真はホウジャクというホウジャク(の仲間)です。
 ホウジャクの幼虫の食餌植物は、カワラマツバなどのアカネ科の植物です。 伊吹山の山頂付近にはキバナカワラマツバやカワラマツバなどがたくさんありましたから、これらを食べて育ったのでしょう。

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2010年8月15日 (日)

ミヤマコアザミ

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 アザミの仲間は日本では100種以上あるとされており、種間の雑種も多く、研究者によって一致しない部分もあり、分類が難しいグループです。
 伊吹山にも複数のアザミがあるようで、少し調べてみたのですが、なかなかきちんと書かれたものには出会えませんでした。
 写真は伊吹山山頂付近で'10.7.31.に撮影したもので、ミヤマコアザミだと思います。 なお、伊吹山に多く見られるアザミについては、今の私の理解では次のようになります。

ミヤマコアザミ(Cirsium japonicum var. ibukiense)
 ノアザミが石灰岩地に適応した変種で、高原のノアザミは花柄が長くなるのが一般的ですが、ミヤマコアザミでは逆に花柄は短く、トゲや白毛が多くなっています。 伊吹山では山頂部に分布しています。 ノアザミ同様、開花時期は早く、7月から咲きます。

コイブキアザミ(Cirsium confertissimum)
 伊吹山特産で、山頂付近で多く見られます。 花期は8月中旬以降で、小さな頭花を密集させてつけます。 花柄はほとんどありません。

ヒメアザミ(Cirsium buergeri)
 近畿地方以西から四国・九州の野原や山地に分布し、1~2mの高さになります。 茎や茎葉は細く、葉は羽状に浅裂~中裂し、基部は茎を抱きます。 花は8月から10月頃、頭花の下には苞葉があります。

イブキアザミ(Cirsium confertissimum var. herbicola)
 コイブキアザミとヒメアザミの中間型と考えられています。 伊吹山では中腹に多く見られ、花は8月下旬~9月に咲きます。

 なお、はじめに書いたようにアザミの種類はたいへん多く、保育社の『原色日本植物図鑑(改訂版)』にはミヤマコアザミの名もイブキアザミの名もありません。

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2010年8月14日 (土)

クサフジ

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 クサフジは北半球の亜寒帯から温帯に広く分布するツル性の多年草です。 伊吹山でも、あちこちで咲いていました。
 最近は河原や道路の法面などの日当たりのいい場所で、ヨーロッパ原産のナヨクサフジの花をよく見ますが、クサフジはこれよりも涼しい所がお好みの様子で、「ナヨ」が無い分、ややしっかりした感じがします。

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Kusafuji100731_3  クサフジ(上)とナヨクサフジ(下)をちゃんと見分けようとすれば、花の色は変異があって、あまりあてにはできません。 花の爪部(旗弁の元の方の筒型に巻いた部分:右の写真のa)と舷部(旗弁の広がって立った部分:右の写真のb)を比較すると、ナヨクサフジは爪部(a)が舷部(b)のほぼ2倍の長さがあるのに対し、クサフジではほぼ同じ長さです(右の写真)。

Nayokusafuji080601_1    ナヨクサフジ

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2010年8月13日 (金)

オオウラギンスジヒョウモン

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 オオウラギンスジヒョウモンは山地の明るい草原や渓谷沿いの草地に見られるチョウです。 幼虫の食草はスミレ類で、年1回、夏に発生します。 低山地では真夏に一時夏眠するようですが、伊吹山では夏中活動しているようです。
 ヒョウモンチョウの仲間は特に翅の表はよく似ていますし、オス・メスの違いになると、さらに小さな違いになるのですが、オスには前翅の表側に性標が3本あります。 またメスには前翅の先端に小さな白い矢じり状の斑紋があります。
 年1回発生するチョウでは多くの場合、オスの方が早くあらわれ、メスの出現を待ちます。 7月31日に伊吹山の山頂で見たオオウラギンスジヒョウモンは、全てオスでした。 調べてみるとメスは8月以降にならないとあらわれないと書かれてありました。 もっともメスがもう現れていたとしても、メスは個体数も少なくオスほど飛び回らないのかもしれませんが・・・。
 オオウラギンスジヒョウモンの名は、翅の裏側に銀色の筋があるように見える大型の豹(ひょう)紋のある蝶、という意味ですが、メスの方がオスより大きいサイズです。

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 伊吹山ではオオウラギンスジヒョウモンは、上の2枚ともがそうであるように、クガイソウの花によく来ていました。 クガイソウの花はタテハチョウ科の蝶のサイズによく合うのでしょうか、ウラギンヒョウモンやアカタテハなどもクガイソウの花を訪れていました。

Uraginhyoumon100731_1    ウラギンヒョウモン

Akatateha100731_1    アカタテハ

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2010年8月12日 (木)

ヒヨクソウ

 今回は分類的には前回のルリトラノオに近く、オオイヌノフグリにはもっと近い、ゴマノハグサ科クワガタソウ属の多年草ヒヨクソウです。
 「ヒヨク」についてですが、中国の伝説に「比翼の鳥」がいます。この鳥は雌雄が1つずつの目と翼を持ち、一緒でないと空を飛べず、男女の深い契りの例えに用いられます。
 「ヒヨクソウ」の名前は、葉の腋から左右に長い花柄を伸ばすので、この様子を比翼の鳥に例えたものです。 が、写真のヒヨクソウは花柄の伸びだしている所は他の植物の葉に覆われていて撮れませんでした。 一方で、小さな花はできるだけ大きく撮りたいし・・・と、悩んだ結果が下の写真です。 この写真で2本の花柄がセットになっていることが理解いただけるかどうか・・・。

Hiyokusou100731_2

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2010年8月11日 (水)

ルリトラノオ

Ruritoranoo100731_1

 ルリトラノオはゴマノハグサ科の多年草で、自生地に限って言えば伊吹山の特産種です。 よく栽培もされていますが、栽培種は少し園芸的に改良が加えられているのか、外国産のものをベースにして品種改良されている可能性もあります。
 とにかく、伊吹山山頂では、クガイソウと咲き競っていました。 昨日の記事のクガイソウのところで、クガイソウの葉は輪生だがルリトラノオは対生だと書きましたが、それ以外にも、細かく見ればいろんな違いが発見できます。
 開花時期はクガイソウより少し遅いようです。 '10.7.31.の様子は、クガイソウは日当たりのいいところでは花は穂の中ほどまで咲き進んでいましたが、ルリトラノオは咲き始めたばかりでした。
 花の色も微妙に異なり、ルリトラノオの方が青色が強く、オシベの葯の白い色の影響もあるのか、私には華やかな印象でした。 なお、葯の色はクガイソウは褐色で花粉も黄色ですので、いい区別点になるのかもしれませんが、栽培されているルリトラノオにもあてはまるのかは確認していません。
 よく見ないと分かりませんが、もっと本質的な違いとしては、個々の花を見ると、クガイソウの花冠には長い筒部がありますが、ルリトラノオの花冠は深く切れ込み、まるで離弁花類の花のようです。

Ruritoranoo100731_2

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2010年8月10日 (火)

クガイソウ

Kugaisou100731_1

 クガイソウは山地の草原や林縁などに自生するゴマノハグサ科の多年草です。
 葉は4~8枚ほどが輪生しており、これが数層になっているところから、九階草または九蓋草と書かれるようになったと考えられます。

Kugaisou100731_2

 紫の花でよく似たものにヤマトラノオやルリトラノオなどがありますが、クガイソウの葉が輪生であるのに対し、ヤマトラノオやルリトラノオは対生です。
 小さな花がたくさん集まって穂状に咲いているのですが、1つの花に注目すると花冠は4裂し、2本のオシベが突き出しています。 この様子を花の正面から見ると、オオイヌノフグリなどの Veronica属(クワガタソウ属)の花に似ています。 クガイソウの学名は Veronicastrum sibiricum ですが、この属名 Veronicastrum は、「 Veronica + astrum(似ている)」が語源です。

Kugaisou100731_3    花の拡大 後ろにいるのはオオハナアブ

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「ホソオチョウ観察記」追記のお知らせ

 わんちゃんからホソオチョウの幼虫とサナギの写真を送っていただきました。 このブログでは現在伊吹山の植物などを連続して載せていますので、ホソオチョウの幼虫とサナギについては、新しい記事にせず、2009年8月8日の記事「ホソオチョウ観察記」に追記することにしました。
 写真を送っていただいたわんちゃんに感謝です。

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2010年8月 9日 (月)

キンバイソウ

Kinbaisou100731_1

 キンバイソウはキンポウゲ科の多年草です。 花弁のように見えるのはガクで、ほんとうの花弁は細長く立っています。 オシベは多数、その内側に多数のメシベがあるのですが、花弁もオシベもメシベも黄色で、写真では見分けがつきにくいですね。 でも、下の写真には果実へと変化しかけた花がありますから、これを小さくして黄色にしたのがメシベだと考えることができます。

Kinbaisou100731_2

 キンバイソウは、本州特産の植物で、伊吹山が分布の西南限になります。

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2010年8月 8日 (日)

キリンソウ

Kirinsou100731_1

 上は'10.7.31.に伊吹山で撮影したキリンソウです。
 キリンソウをネットで調べてみると、多くのHPやブログで「麒麟草」と書かれています。 でも、いくら首を長く伸ばして観察しても、動物園にいるキリンと似ている点を発見することは困難でしょうし、ビールのラベルに書かれてある伝説の動物麒麟にも似ているようには見えません。
 もともと和名はカタカナで書くことになっていて、漢字は勝手に当てはめているのですが、 キリンソウはきっと「黄輪草」なのでしょう。 つまり黄色い花が輪になって咲く草です。
 キリンソウは Sedum属(マンネングサ属)の多年草です。 同じマンネングサ属には、ツルマンネングサや、園芸的によく植えられているメキシコマンネングサなどがあります。 これらの葉は細く小さく多肉で、この葉に蓄えた水分で乾燥にも強くて丈夫なイメージから「万年も生きる草」という名をつけられているようですが・・・。
 キリンソウは上記のマンネングサ属に比べると大型で、葉も多肉質であることは変わりないものの、幅広の大きい葉です。
 上の写真の左端にこちらを向いて咲いている花がありますが、花は花弁が5枚、オシベは10本、心皮は5個で離生しています。

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2010年8月 7日 (土)

キバナカワラマツバ

Kibanakawaramatuba100731_2

 キバナカワラマツバは、昨日のキヌタソウと同じ Galium属(ヤエムグラ属)の植物で、河原や海岸の砂地から高山帯の草地にまで、広い範囲に生える多年草です。
 葉が輪生している(ように見える)ことや、小さい花の花弁が4裂していることなどは共通点ですが、キバナカワラマツバの葉は細く、乾燥に耐えやすくなっています。

Kibanakawaramatuba100731_1

 キヌタソウのところで、輪生に見える葉はじつは対生で、他は托葉だと書きましたが、このキバナカワラマツバでも、こんなにたくさんの葉が輪生しているように見えても、じつは葉は対生で、他は全て托葉起源と言われています。 いちどしっかりと葉の組織を調べてみたいものです。
 以前カワラマツバについて書きましたが、キバナカワラマツバとカワラマツバは変種の関係にあります。 伊吹山では、キバナカワラマツバ、カワラマツバの他に、両者の中間のような ウスギカワラマツバも見ることができます。

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2010年8月 6日 (金)

キヌタソウ

Kinutasou100731_1

 上の写真、4枚輪生している(ようにみえる)葉に白い小さな花をつけているのがキヌタソウです。
 1枚の葉には3本の脈が目立ち、葉柄はなく、そのような葉が4枚輪生するように見えますが、じつは本物の葉はこのうちの2枚だけで、他の2枚は托葉がくっついてできたものです。
 キヌタソウは林内に生える多年草ですが、林の無い伊吹山山頂付近では他の草や岩陰に隠れるように群落を形成していました。
 キヌタソウの名前は、小さな果実が布を柔らかくするために打つ道具である砧(きぬた)に似ているところからですが、残念ながら果実を見るには時期が早かったようで、果実の写真はありません。 そればかりか、花の拡大写真もありません。 花の拡大写真は何枚か撮ったのですが、全部ブレブレ。 それまで日の当たる所の植物を撮っていて、そのままの設定で岩の陰のキヌタソウを撮ったためにシャッタースピードが遅くなってしまったのですが、もう少し慎重になるべきでした・・・。 次から次へと花が現れると、どうしても1つの花を撮る態度が荒くなってしまいます。

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2010年8月 5日 (木)

キオン

Kion100731_1 ※ 写真はクリックで拡大できます。

 キオンは北方系の植物で、本州中央部では山地帯~高山帯の日当たりのよい草地に生えている多年草です。
 キオンの名前は、古くから庭などで栽培されているシオンに姿(というよりもサイズかな)が似ていて花が黄色いところから、紫苑(シオン)に対して「黄苑」なのでしょう。
 キオンは Senecio属の植物ですが、Senecio属はキク科の中でも最大の属で、世界に広く分布しています。 キオンやハンゴンソウは日本に自生するSenecio属ですが、外来植物としてはノボロギクやナルトサワギクなどが知られています。

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2010年8月 4日 (水)

イワアカバナ

Iwaakabana100731_2

 伊吹山で撮った写真を紹介しています。
 「イワアカバナ」の名の「イワ」は山地帯~亜高山帯を、「アカバナ」は秋に赤く紅葉する植物を意味します。 少し湿りぎみの所に生える多年草で、白色~淡紅色の花を咲かせます。
 葉は対生し、縁には鋭いきょ歯があります。 花期は7~9月で、花は長い子房を持ち、この子房は花が終わるとさらに長く伸び、細長い果実になります。
 花は径約5mmの小さな花ですが、4枚の花弁は浅く2裂し、細い花柱の先にお団子のような柱頭をつけた、なかなかかわいい花です。 なお、アカバナはこの柱頭がもう少し細長く、棍棒状になっています。

Iwaakabana100731_1

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2010年8月 3日 (火)

イブキジャコウソウ

 イブキジャコウソウは伊吹山に生育する麝香草の意味ですが、日本全国から朝鮮、中国、ヒマラヤにまで広く分布しています。 もちろん伊吹山には、特に山頂部に多く、行った日にはピンクのじゅうたんを敷き詰めたように咲いていました。

Ibukijakousou100731_2

 イブキジャコウソウの学名は Thymus serpyllum subsp. quinquecostatus、つまりハーブとして知られているタイムの仲間です。 「タイム」として使用されているのはタチジャコウソウの場合が多いのですが、イブキジャコウソウはこのタチジャコウソウとたいへんよく似た成分を持っています。
 イブキジャコウソウはシソ科の常緑小低木で、冬季は雪の下で静かに春を待ちます。 細い茎は地表を這い、所々から枝分かれして立ち上がり、高さ5~15cmになります。 花は主に6月~7月に咲き、花冠は2唇形で、柱頭が2裂したメシベと4本のオシベが突き出ています。

Ibukijakousou100731_1

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2010年8月 2日 (月)

伊吹山

 7月31日に滋賀県と岐阜県の境に位置する伊吹山に行ってきました。 これからしばらくは、その時に咲いていた花や、そこに集まる虫たちなどを記事にしていきますが、今日はまず伊吹山全体について書いておきます。

Ibukiyama100731_1    山頂付近
   イブキジャコウソウ、シシウド、シモツケソウメタカラコウなど

 伊吹山は約1,300種が見られる植物の宝庫となっていて、特別保護地区となっている山頂部は国指定天然記念物にも指定されていますが、その成立は自然環境と人の営みの結果です。
 伊吹山の山頂付近は、衝上断層(押しかぶせ断層)が起こった結果、石灰岩層で覆われている山です。 石灰岩の主成分は炭酸カルシウムですが、これは風化されにくく、風化されても雨水に溶けて流れてしまいます。 つまり土壌構成鉱物の微粒子が生成しにくく、深く根を張る樹木が育ちにくい環境です。 石灰岩の地では樹木が育ちにくい様子は、藤原岳の所でも少し載せました。
 また、伊吹山は若狭湾と濃尾平野を結ぶ直線上に立ちはだかるように位置します。 このため、日本海から吹き込む季節風が直接当たり、標高1,377mの山としては冬季には大量の積雪がある一方で、太平洋気候にも接する位置にあります。 この立地の関係で、伊吹山は、日本海気候の寒地・積雪型植物も、太平洋気候による暖地系植物も、そして好石灰岩植物も見ることのできる山となりました。

Ibukiyama100731_3    シモツケソウクガイソウイブキトラノオメタカラコウなど

 このように森林の発達が悪く草本の種類が多い伊吹山では、薬草となる植物も多くありました。
 伊吹山の神を征伐するために出向いたヤマトタケルは、山の神の毒気にあてられ、このことが原因で体が弱り、亡くなってしまうのですが、「山の神の毒気」というのも伊吹山の植物と関係があるのでしょうか。

Ibukiyama100731_2    日本武尊像  ※ 写真は拡大できません。

 とにかく、織田信長がこの地に薬草園を設置したのをはじめとして、古くから伊吹山では、薬草の他にも、肥料、飼料としての採草が行われており、適度な人の関わりで、特に山頂付近では昭和40年代までは長期にわたりお花畑などが安定して維持されてきました。
 しかし近年になって、採草が行われなくなって植生の遷移が進むと共に、登山者の増加と共に踏み付け等による裸地化や外来植物の進入がありました。 現代では「伊吹山を守る会」などによる保全活動と植生の復元が行われています。

Kawarahiwa100731_1    お花畑のカワラヒワ 下はコイブキアザミ

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2010年8月 1日 (日)

ギンツバメ

Gintsubame100723_1

 昨日に続いてツバメガ科の蛾をもう1種、ギンツバメです。 とは言っても、昨日のツバメガ科フタオガ亜科はフタオガ科として独立させる考えもあり、その場合は、ツバメガ科に分類される蛾は、日本ではギンツバメとヤクシマギンツバメの2種しか知られていません。 いずれにしても、ツバメガ科(フタオガ科も)は熱帯地方に多く見られる種類です。
 成虫は夏のはじめと秋の2回発生します。 夜行性で、灯火に飛来することも多いのですが、昼間は葉の上で休んでいることが多く、撮りやすい蛾です。 多くの蛾は葉の裏に隠れていることが多いのに、この目立つ色彩で葉の上にいるというのは、どういうことなのでしょうか。
 幼虫はガガイモ科の植物の葉を食べて育ちます。

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写真などを追加しました

 下記の記事について、写真などを追加して、書き改めました。

アオバズク(7月19日の記事)
 子供の写真を追加しました。

クロコノマチョウ(7月15日の記事)
 幼虫、前蛹、サナギ、成虫の、各段階の写真をそろえました。

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