オキナグサ
オキナグサは本州、四国、九州の日当たりのよい草原に自生するキンポウゲ科の多年草です。
日本のように雨が多く植物の生育に適した気候では森林が発達し、草原の多くは人の手により維持されてきました。 しかし近年になり、草原は放置されたり開発されたりで、たいへん少なくなってしまいました。 それに加え、見栄えのする山野草は栽培目的で採取され、オキナグサは各地で激減しました。 今では自生のオキナグサを見ることは稀になり、苗を買って育てる植物になってしまいました。
オキナグサはツボミの時から絹毛を密にまとっていて、うなだれた姿は風情を感じさせてくれます。
ツボミを外から見ると、ガクと花弁のどちらかが無いことに気付きます。 今まで、花弁が退化し、ガクが発達した多くのキンポウゲ科の植物を記事にしてきましたが、オキナグサの場合も、これだけ毛を生やした花弁というのも考えにくく、花弁は退化してガクが発達した植物だと言えます。
オキナグサの花は下向きに咲きます。 中を覗いてみると、たくさんのオシベに囲まれて、たくさんの糸状の柱頭があるのが確認できます。
花は受粉を終えると。花茎を伸ばしながら次第に上を向いてきます。 暗紫色であったメシベは緑色となり、長く伸びてきます。
ガクを散らして長く伸びた花柱は銀色に輝きます。 この銀色は花柱に圧着したたくさんの毛によるものです。
花柱に圧着した毛が広がると風に乗って種子散布を行う準備ができたことになります。
このようにオキナグサはいろんな段階で楽しませてくれます。 オキナグサの名は、もちろん翁の白い毛に由来しているのですが、さて、どの状態を翁の白い毛に見立てたのでしょうか。
オキナグサはいろいろと楽しませてくれる植物ですが、有毒植物です。 植物の汁がつくと皮膚炎になる恐れもあり、もし誤食すれば消化器系や循環器系に異常を起こし、心停止に至る恐れもあります。 もちろん毒と薬は紙一重、漢方ではオキナグサの根を乾燥させたものが白頭翁です。
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コメント
>オキナグサの名は、もちろん翁の白い毛に由来しているのですが、さて、どの状態を翁の白い毛に見立てたのでしょうか。
ズバリ
最後の写真の状態
うつむきかげんに咲く可憐なお花・・・
毛むくじゃらですね。
投稿: わんちゃん | 2010年5月 6日 (木) 22時57分
私的にはいちばん気に入っているのは後ろから2枚目の写真の状態なのですが、この姿に注目すると「ケヤリグサ」になってしまうかな・・・。
投稿: そよかぜ | 2010年5月 7日 (金) 23時42分
アネモネに似た植物ですね。
斎藤茂吉の歌に
『 かなしきいろの紅や春ふけて白頭翁(おきなぐさ)さける野べを来にけり 』
があります。
投稿: S.ひでき | 2010年5月 8日 (土) 18時19分
この花の紅色を「かなしきいろ」と詠んだ茂吉の心にハッとさせられます。
この時代には野辺に普通にオキナグサが咲いていたのでしょうね。
写真に歌を入れてみました。
「そよかぜ日記」に載せておきます。
投稿: そよかぜ | 2010年5月 8日 (土) 21時16分
はじめまして!
日本のオキナグサですね
私の家には、セイヨウオキナグサが植わってます。
綿毛みたいになる光景はみたことないかも…
山野草について、漠然としかわからないので、勉強になりました。
投稿: Floribunda | 2010年5月 8日 (土) 23時58分
Floribundaさん、はじめまして。
西洋オキナグサの方が花が大きく前を向いて咲くようですね。
西洋オキナグサは神戸市にある六甲高山植物園にもたくさん植えられていました。
投稿: そよかぜ | 2010年5月 9日 (日) 07時16分