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2010年5月31日 (月)

ホソサビキコリ

 樹液を出しているアカメヤナギがあり、その樹液を求めて、いろんな昆虫たちが集まっていました。 下の写真で、最も目立つのは左中央のオオスズメバチでしょう。 いろんな虫たちがオオスズメバチが飛び去るのを待って遠巻きにしています。 オオスズメバチの右にはヨツボシオオキスイが、下にはホシアシナガヤセバエが、上にはハエの仲間が2頭いますが、もう1種類、オオスズメバチとヨツボシオオキスイとの間に、影の薄い存在があります。 これがホソサビキコリです。 ホソサビキコリはこの写真の右上隅にも写っています。

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 ホソサビキコリはいわゆるコメツキムシの仲間ですが、サビキコリの仲間の前胸背板の後角は、尖らずに、少し丸くなっています。 花にも来ますが、蜜を求めて来る時は、幹にへばりつき、錆のような光沢の無い体色で、とにかく目立たずに、そっと蜜に近づこうとしているようです。 目立たないために、平気でオオスズメバチなどにも近づけるようです。

 サトキマダラヒカゲに頭を踏んづけられても・・・

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 ヨツボシオオキスイに体の上を歩かれても・・・

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 それは目立っていない証拠。

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2010年5月30日 (日)

ファウストハマキチョッキリ

 チョッキリゾウムシと呼ばれる昆虫のグループ(以下、「チョッキリの仲間」と書きます)があります。 チョッキリの仲間やオトシブミの仲間なども、広い意味でのゾウムシの仲間(ゾウムシ上科)になり、多くの種で口吻が長くなっています。
 チョッキリという名前は、この仲間に葉や茎などを切って加工する種が多いからで、新芽やツボミや葉や実などの産卵部を枯れさせて植物が食害を防衛しようとするしくみを無くそうとするもの、揺籃を作って産卵するものなどがいます。
 チョッキリの仲間に揺籃を作る種がいることから、チョッキリの仲間は以前はオトシブミの仲間(オトシブミ科)として扱われていましたが、最近はオトシブミ科とは別のチョッキリゾウムシ科( Rhynchitidae )として扱われることが多くなってきました。 揺籃を作る場合でも、オトシブミの仲間はたいへん精巧な揺籃を作り、1つの揺籃に1つの卵を産卵するのに対し、チョッキリの仲間は1つの揺籃に複数の卵を産卵する場合が多くなります。
 ハマキチョッキリの仲間は、その名のとおり、葉を巻いて揺籃を作ります。 葉柄または茎に切れ目を入れ、葉をしおれさせて巻きます。 チョッキリの仲間のうちで、ハマキチョッキリの仲間は比較的大型で(と言っても、ファウストハマキチョッキリで4mm前後ですが・・・)美しい金属光沢を持っています。

Fausutohamakichokkiri100522_1    コナラの葉で作った揺籃の上にいるファウストハマキチョッキリのペア

 ファウストハマキチョッキリは、コナラやクヌギなどのブナ科やサクラ、イロハカエデなど、いろいろな葉で揺籃を作ります。 背側は濃赤紫色、腹側は緑がかった濃紺色で、触角の付け根付近の口吻の背側が少し盛り上がっています。

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2010年5月29日 (土)

若鳥の季節

 木々の若葉が野や山に光り、その若葉を食べる幼虫が増えるなど、鳥たちにとって栄養豊富な動物食材の多い季節です。 ヒナたちに与える餌も豊かで、あちこちのブログを見ても、鳥たちの子育て情報が見られるようになりました。

 下はヒバリの若鳥です。 昨年の5月30日に、堺市の鉢ヶ峯で撮りました。

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 下はカササギのヒナです。 巣から落ちてしまったらしく、まだ飛べません。 このヒナを心配してか、上では親鳥がやかましく鳴いているのですが・・・。
 この時期、こんな不幸な出来事もよく発生します。

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2010年5月28日 (金)

マメグンバイナズナ

 マメグンバイナズナは北アメリカ原産の帰化植物です。 2年草で、ロゼットで冬を越し、春に茎を伸ばして次々と小さな花を咲かせます。 花が咲く頃には根出葉は枯れてなくなっています。
 花の命はたいへん短く、すぐに軍配型の果実になっていきます。 アブラナ科の花は、アブラナのようにある程度の大きさの花では、ガク片や花弁が4枚で、オシベは6本の場合が多いのですが、マメグンバイナズナのような小さな花ではオシベは2本になっているようです。 ただし下の写真では3つ咲いている花のうちの左側の花ではオシベは3本になっています。

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 マメグンバイナズナは植物体の大きさの割には葉が少なく、この写真のマメグンバイナズナでは、その少ない葉も、ほとんど落ちてしまってします。

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2010年5月26日 (水)

アカサシガメ

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 5月19日にアカシマサシガメを記事にしましたが、今回は縞の無いアカサシガメです。 この写真の後、飛んで逃げられてしまいました。 ヨコヅナサシガメなどでは、飛んで逃げられることは、まず考えられないのに・・・。 どうも赤いサシガメは動きが活発なようです。
※ この写真は昨年の5月23日に撮ったものです。 これまではこのブログは基本的には土日に撮った写真を順次記事にしていくスタイルを取っていましたが、これでは記事が写真を撮った日より1週間、場合によっては2週間以上遅れることがしばしばでした。 特に春は半月遅れると、野外の様子はすっかり変わっています。 むしろ1年(以上)前の写真の方が今の時期の様子をよく反映していることになります。 そこでこれからは、写真もかなりたまってきたこともあり、1年(以上)前の同時期の写真を積極的に使って記事を書いていくことにしたいと思います。

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2010年5月25日 (火)

ソクシンラン

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 蘭でないランはたくさんあるのですが、このソクシンランもラン科ではなくユリ科の多年草です。
 ソクシンランの名前の由来にもいろいろな説があります。 「束心蘭」説では、束になった蘭のような細い葉の中心から花茎を出すところから、ということですし、「束針蘭」説では、葉の細い3本の葉脈が目立ち、これを針に見立てて、針を束ねたような葉の蘭、ということのようです。
 とにかく、葉は地際から束ねたように出る根出葉だけですから、他の植物に上を覆われると光合成に困難をきたします。 したがってソクシンランの生えている場所は、日当たりは良いがやせ気味の土地で、他の植物が元気に育つには適した場所とは言えないような所です。
 じつはこのソクシンランは昨日記事にしたイシモチソウやトウカイモウセンゴケのすぐ近くにありました。 イシモチソウはやせ気味の場所で自分で虫などを捕えて肥料にしているわけですが、ソクシンランはじっと耐え忍んで生きているのでしょうか。
 ソクシンランの花を拡大して見ると、花被の外側にも花茎にもびっしりと毛が生えていて、この毛をよく見ると、毛の先は丸くなっています(下の写真)。 つまり腺毛です。 ソクシンランもイシモチソウと同じように腺毛を持ち、粘液を出しているのでしょうが、この腺毛は小さすぎてそんなに粘るようではありませんでした。
 白い6枚の花被片は3枚のガク片と3枚の花弁からなっています。 ガク片と花弁とはほぼ同じ大きさですが、ガク片の先端の方が、わずかにピンク色を帯びる傾向が強いようです。

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2010年5月23日 (日)

イシモチソウ

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 モウセンゴケと同じ属に分類されている食虫植物イシモチソウが花の時期を迎えています。 モウセンゴケの葉は根生葉ですが、イシモチソウの腺毛は茎生葉に付きます。
 花は5月から6月にかけて咲き、白い花弁は5枚、オシベは5本、メシベの柱頭は細かく分かれています。 下の写真、花弁の間から見えるガクも縁が細く切れ込んでいます。

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 上の花は9時54分に撮ったものですが、どの花も新鮮、つまり咲いたばかりです。 イシモチソウの花は、午前10時頃に開花し、午後には閉じてしまう花なのです。

 イシモチソウの名前は、葉に生える腺毛の粘液にくっついた小石を、茎が伸びるにつれて持ち上げることができるところからの名前です。 この腺毛に昆虫などがくっつくと、周囲の腺毛もその方向に曲がってきて(傾性運動)、獲物を包み込み、粘液に含まれる消化酵素によって捕えた昆虫などを溶かし、養分とします。

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 上の写真で、捕えられたハエは盛んに暴れていましたが、逃げ出すことは無理なようでした。 また下の写真では、捕えられたガガンボは既に死んでいましたが、複数の葉でこのような大きな虫も捕えることができるようです。

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 写真のイシモチソウの傍では、トウカイモウセンゴケがもう花をつけていました。 トウカイモウセンゴケは夏の間中花を咲かせ続け、冬でも葉が丸まったような姿で地上で確認できますが、イシモチソウは夏になると、塊根による休眠に入り、地上からは姿を消してしまいます。

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2010年5月22日 (土)

エゾヒメゾウムシ

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 ヨモギにいた体長約4mmのこのゾウムシの写真は、このブログの'07年5月30日の記事に、ヒメゾウムシの仲間だと思うが種名は不明だとして載せていたものですが、21日、ヒメゾウムシを調べておられたyosiさんから、これはエゾヒメゾウムシ( Baris ezoana )で、ヨモギにつくゾウムシだと教えていただきました。
 3年ぶりに名前が分かったわけで、写真をしまいこんでいたら永久に日の目を見ないでしょうが、いったんブログに載せておけば、いつか誰かが見てくれるかもしれない、という有難さを実感しました。 これからも種名に自信の無い写真も種名が全く分からない写真も、どんどん載せていくことにします (^-^)v

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2010年5月21日 (金)

クロアゲハ

 今まで黒いアゲハとしては、ミヤマカラスアゲハジャコウアゲハを記事にしてきましたが、今回はクロアゲハです。

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 クロアゲハの幼虫はユズやカラタチなどのミカン科の木の葉を食べて育ちますので、人里近くのチョウなのですが、そのような木が植えられることも少なくなり、クロアゲハも昔ほど頻繁に見ることもなくなりました。
 見る機会が少なくなったこともあって、飛んでいるところを見ることはあっても、なかなかとまってくれず、いい写真が撮れませんでした。 今回も少し翅が破れていますが・・・。

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2010年5月20日 (木)

ハクサンチドリ

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 ハクサンチドリは中部地方の高山帯より北に自生するラン科の多年草です。 夏の花ですが、六甲高山植物園では5月の中旬に咲いていました。
 名前は白山に多く、花が千鳥の飛ぶ姿に似ているからというのですが、1枚目の写真のように上から見下ろしていると、鳥の飛ぶ姿は、あまり見えません。 ところが、視線を少し下げてよく見ると・・・ 私には、たくさんの飛んでいる鳥の後ろ姿のように見えました。 左右に開く側ガク片が鳥の翼のように見えます。

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 下はシギ・チドリの仲間のハマシギの飛翔です。 似ていると思いませんか。

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2010年5月19日 (水)

アカシマサシガメ

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 カメムシの仲間のうちでサシガメの仲間は肉食で、他の昆虫などに口吻を差し込んで体液を吸います。
 サシガメの仲間は、これまでにもヨコヅナサシガメシマサシガメや、近縁のアカマキバサシガメなどを記事にしてきました。 上記のこれまで記事にしてきたサシガメの仲間たちは、いずれもゆっくりとした動きで、そっと獲物に近づいてブスッと口吻を差し込むイメージでした。
 ところが今回のアカシマサシガメの動きの速いこと、時期的なものなのか、この種の特性なのか、セカセカと歩き回っていました。 植物の上を歩き回っていましたが、多くの場合は地表を徘徊してヤスデ類を好んで捕食するということです。

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※ 縞の無いアカサシガメはこちらで記事にしています。

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2010年5月18日 (火)

クロユリ

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 この項の写真は六甲高山植物園で撮ったものですが、本来のクロユリは本州中部以北に咲く高山植物です。
 このクロユリは、コバイモなどと同じユリ科バイモ属に分類されています。 そのように意識して見れば、花被の外側に出張った様子など、よく似ています。
 花のにおいは、人には決していいにおいとは言えません。 クロユリの花粉を媒介するのはケブカクロバエが中心で、このにおいでこのハエを呼び寄せているようです。
 小関裕而作曲の「黒百合の歌」の2番に、「黒百合は魔物だよ 花の香りが沁み付いて 結んだ二人は離れない」という歌詞がありますが、これが“魔の香り”なのでしょうか。 花言葉も「恋」「呪い」「復讐」です。

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 葉は花に近い所では互生ですが、少し下になると葉と葉が接近し、輪生状になります。

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2010年5月17日 (月)

ミツガシワ

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 ミツガシワはミツガシワ科に分類される、北半球の寒冷地の湿地に生える多年草です。 日本では尾瀬沼や東北・北海道などで見られますが、京都市内の深泥池にもあり、深泥池のミツガシワは氷河期の残存植物と考えられ、天然記念物に指定されています。
 深泥池のミツガシワの花の見頃は4月10日頃、見に行くつもりをしていたのですが、この春は忙しく、時期を逸してしまいました。 ところが、六甲高山植物園でこのミツガシワの花に会うことができました。 深泥池のように一面に、とはいきませんが・・・。
 京都市内の平地で4月10日頃に見ごろの花が六甲山頂では5月中旬、そしてもっと寒冷地に行けば夏の花になるのでしょう。
 「カシワ」とは「大きい葉」を意味するのでしょうか。 ミツガシワの葉は3小葉からなる複葉です。 葉よりも花序が高い位置に来るので、花がよく目立ちます。

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 ツボミはピンクがかっていますが、花はほぼ純白に近い色をしています。 花冠は5裂し、裂片の内面は白い毛が密生しています。

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2010年5月16日 (日)

ハマシギ(夏羽)

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 昨年の3月20日にハマシギ(冬羽)について書きましたが、そのハマシギが夏羽に替わっています。 冬羽は似た種類が多く、頭を悩ましますが、夏羽は腹に大きな黒班があり、識別し易くて助かります。

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 採餌中のハマシギはくちばしを忙しなく上下させて泥をつついて、なかなか頭を上げてくれません。
 下の写真には、4羽のハマシギと、1羽のトウネン(左端)が写っています。

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2010年5月15日 (土)

ジュウジチビシギゾウムシ

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 コナラにいたジュウジチビシギゾウムシです。 体長は2mmほどでした。
 前にホウロクシギチュウシャクシギなどについて記事にしましたが、このような鳥のシギのように口吻の細く長いゾウムシの仲間をシギゾウムシと呼んでいます。 コナラで見られる昆虫にコナラシギゾウムシというのがいるのですが、これは写真のシギゾウムシの4倍ほどの体長がありますし、体の模様も違います。
 これで歩く速度はたいへん速く、最初見つけたときは、ダニかな、と思いました。

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※ この記事は最初「シギゾウムシの一種」としていたのですが、種名が分かりましたので、タイトルを変更しています。

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2010年5月14日 (金)

イワカガミ

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 イワカガミの名前は、岩場に生え、光沢のある葉を鏡に見立てたところからの名前です。 写真のイワカガミも、岩の上に乗った薄い土壌に生えていました。
 光沢のある常緑の葉は全て根生葉で、鋭くとがったきょ歯が並んでいます。

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 花弁は深く5裂し、その先端は房のように細かく切れ込んでいます。 イワカガミはイワウメ科に分類されていますが、イワウメ科のオシベは5本、子房は3室で柱頭も3裂しています。

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2010年5月13日 (木)

コムクドリ

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 八重桜にコムクドリのメスがいました(5月5日撮影)。 見上げる角度での撮影で、特徴である腰の白いところは撮れませんでしたが、大きさからしてもコムクドリに間違いないでしょう。
 くちばしと足が黒い色をしています。 口の中が真っ黒であるのが印象的でした。 オスは頬に茶色の班があります。
 コムクドリは本州北部や北海道で繁殖する夏鳥ですが、渡りの途中だったのでしょう。 少し離れた所にムクドリがいましたので、混群を作っていたのかもしれません。

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2010年5月12日 (水)

カヤラン

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 カヤランは着生ランの一種で、その名前は葉がカヤの葉に似ているところからきています。 谷川沿いの林などの空中湿度の高い所に行けばそんなに珍しくはないランですが、木の高い所に着生していることが多く(手の届く所は取られてしまう?)、双眼鏡で見たり、台風の後に吹き飛ばされて落ちているのを見たりするだけ、というのが、今までの私のカヤランとの出会いでした。 ところが今回、手の届くところできれいに咲いているカヤランに出会うことができました。

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 葉は垂れ下がって葉をつけ、その先に花を咲かせます。 根は樹皮にぴったりと張り付いています。 花を拡大すると、たしかにランの仲間の花のつくりです。

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 花は春から初夏に咲き、その後、細長い果実を作ります。 昨年の花の後にできた果実の、種子を飛ばしてしまったものが残っていました(下の写真)。

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2010年5月11日 (火)

キアシシギ

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 キアシシギも旅鳥で、春にはシベリア北東部やカムチャツカ半島などの繁殖地に向かう途中の4月から5月によく見られるシギです。 越冬地は東南アジア、ニューギニア、オーストラリアと、比較的広範囲に分散し、繁殖活動後はゆっくり南下するので、7月下旬から10月ごろまでと比較的長期間観察することができ、九州や南西諸島では越冬する個体も見られます。
 名前のとおり足は黄色で、くちばしは黒色、体の上面は灰褐色で、夏羽では顔・頸から脇・胸に斑の細かい模様が見られます。
 浅い水の中や水際でカニや昆虫などを食べていますが、下の写真では魚を捕えています。

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2010年5月10日 (月)

ホウロクシギ

 昨日記事にしたチュウシャクシギよりも、もっとくちばしの長いシギがいます。 ダイシャクシギとホウロクシギです。
 下の写真は、右はチュウシャクシギで、左がホウロクシギです。 ホウロクシギの顔は写っていませんが、チュウシャクシギより体が大きく、くちばしもチュウシャクシギよりもかなり長いのが分かるでしょう。

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 ホウロクシギは、シギの仲間としては最大級の大きさです。 ダイシャクシギもほぼ同じ大きさですが、ダイシャクシギは飛翔時に腰と翼の下面が白く見えますし、羽をたたんでいても、下腹部が白く、全体的に褐色味が少ない色をしています。

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 ダイシャクシギもそうですが、ホウロクシギのくちばしの長さは、頭の長さの3~4倍あります。 写真ではくちばしが重そうな感じがしますが、実際の行動を見ていると、軽やかに長いくちばしを振り回しています。

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2010年5月 9日 (日)

チュウシャクシギ

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 チュウシャクシギは写真のように長く下に反り返ったくちばしをもつ旅鳥です。 「シャク」は杓、つまり「ひしゃく」(漢字では「柄杓」または「杓」1文字で表記する)のことで、くちばしをその長い柄に見立てたものでしょう。
 「チュウシャク」と言うからには「ダイシャク」も「コシャク」もいるのですが、特にコシャクシギを観察することは少なく、このチュウシャクシギを見ることが最も多いようです。
 旅鳥ですので、南の越冬地と北の繁殖地を行き来する時に日本に立ち寄るのですが、どういうわけか秋にはあまり見かけず、特に春によく見かけるシギです。
 くちばしが長く下に曲がるシギには、チュウシャクシギ以外にも、上に書いたコシャクシギ、ダイシャクシギの他、ホウロクシギがいるのですが、これらからチュウシャクシギを区別するポイントとしては、
 ・くちばしの長さは頭の長さの約2倍
 ・飛ぶと腰が白く、翼の下面は白くない
などの点で見分けることができます。

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 くちばしの長い鳥が飛ぶ姿は、それだけでなんだかうれしくなります。

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 チュウシャクシギの餌は、草地で昆虫類を捕えることもありますが、主に干潟に住むカニ等の甲殻類です。 カニは鳥の姿を見ると素早く巣穴に逃げ込むのですが、チュウシャクシギはこの長いくちばしをカニの穴に差し込み、捕えます。 もちろん巣穴も深くて単純ではないのですが、例えば小さなカニはなかなか深くまで穴を掘れないなど、カニにもいろんな事情があって、チュウシャクシギも満足できるようです。
 下のチュウシャクシギも、少し分かりにくいですが、カニを捕らえています。

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2010年5月 8日 (土)

アシハラガニ

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 アシハラガニも河口や干潟に、やはり穴を掘って住んでいるカニです。 「芦原蟹」という名前ですが、住んでいる所は、ヨシの生えている所よりは海側になります。
 上の写真で左後ろにいるハクセンシオマネキと比較して分かるように、干潟に住むカニとしては大型です。

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 このカニの形態的な特徴としては、全身はほぼ緑青色で甲羅などの縁やハサミは淡黄色であること、左右がほぼ同じ大きさの大きなハサミを持っていて、ハサミの表面には模様が無く滑らかなこと、甲羅の左右の側面にはノコギリの歯のような4つの尖った突起があること、両眼の間が窪んでいることなどが挙げられます。
 餌は主に腐りかけた植物質ですが、時にはこの大きなハサミで小さなカニなどを捕食することもあるようです。

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 次回はこのアシハラガニやハクセンシオマネキなどを餌として狙う鳥について書くつもりです。

※ このアシハラガニの写真は、2015年7月11日~9月23日開催に東京都江戸川区の篠崎文化プラザで開催の企画展示「えどがわ海のはなし」で、葛西臨海公園の干潟に棲む生物の紹介に使われる予定です。(コメントを参照ください。)

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2010年5月 7日 (金)

ハクセンシオマネキ

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 ハクセンシオマネキは、伊勢湾以西の本州太平洋岸、四国、九州、朝鮮半島南部沿岸のに分布する、甲の長さが2cm足らずの小さなカニで、河口域の泥まじりのやや堅い砂浜や転石地帯などに穴を掘って暮らしています。 大阪湾沿岸では開発や環境汚染などで生息地は減少していますが、まだ見ることはできます。

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 ハクセンシオマネキの雄のハサミは片方がたいへん大きくなっています。 「ハクセンシオマネキ」の名前を漢字で書けば「白扇潮招」ですが、名前の由来は、この大きなハサミを白い扇子(せんす)に見立て、それを振って潮を招いているように見えるところからです。
 このハサミを振る様はウェービングと呼ばれていますが、もちろん早く満ち潮になれと踊っているのではなく、メスを誘う行動です。
 ここに載せた写真や映像は5月1日に撮ったものですが、この時期の行動は、シギなどの旅鳥を気にしながら自らの餌をとるのに忙しく、繁殖行動の盛りは6月から8月にかけてです。 しかし少数ではありますが、もうウェービングを行っている個体もありました。

 メスが近づくと、ウェービングは変化し、ハサミを上下に急激に動かします。 下の映像は、三脚を使わなかったうえに光の条件もあまり良くなく、少し見づらいので、予めメスとオスの位置をおさえたうえで見てもらおうと、写真を用意しました。 赤い矢印の所にメスが、水色の矢印の所にオスがいます。

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2010年5月 6日 (木)

オキナグサ

 オキナグサは本州、四国、九州の日当たりのよい草原に自生するキンポウゲ科の多年草です。
 日本のように雨が多く植物の生育に適した気候では森林が発達し、草原の多くは人の手により維持されてきました。 しかし近年になり、草原は放置されたり開発されたりで、たいへん少なくなってしまいました。 それに加え、見栄えのする山野草は栽培目的で採取され、オキナグサは各地で激減しました。 今では自生のオキナグサを見ることは稀になり、苗を買って育てる植物になってしまいました。

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 オキナグサはツボミの時から絹毛を密にまとっていて、うなだれた姿は風情を感じさせてくれます。
 ツボミを外から見ると、ガクと花弁のどちらかが無いことに気付きます。 今まで、花弁が退化し、ガクが発達した多くのキンポウゲ科の植物を記事にしてきましたが、オキナグサの場合も、これだけ毛を生やした花弁というのも考えにくく、花弁は退化してガクが発達した植物だと言えます。

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 オキナグサの花は下向きに咲きます。 中を覗いてみると、たくさんのオシベに囲まれて、たくさんの糸状の柱頭があるのが確認できます。

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 花は受粉を終えると。花茎を伸ばしながら次第に上を向いてきます。 暗紫色であったメシベは緑色となり、長く伸びてきます。

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 ガクを散らして長く伸びた花柱は銀色に輝きます。 この銀色は花柱に圧着したたくさんの毛によるものです。

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 花柱に圧着した毛が広がると風に乗って種子散布を行う準備ができたことになります。
 このようにオキナグサはいろんな段階で楽しませてくれます。 オキナグサの名は、もちろん翁の白い毛に由来しているのですが、さて、どの状態を翁の白い毛に見立てたのでしょうか。

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 オキナグサはいろいろと楽しませてくれる植物ですが、有毒植物です。 植物の汁がつくと皮膚炎になる恐れもあり、もし誤食すれば消化器系や循環器系に異常を起こし、心停止に至る恐れもあります。 もちろん毒と薬は紙一重、漢方ではオキナグサの根を乾燥させたものが白頭翁です。

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2010年5月 5日 (水)

コバノガマズミ

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 コバノガマズミは日当たりの良い丘陵地や山地に普通な落葉低木です。 名前のとおりガマズミより葉は幅狭く小型で、特に葉柄はガマズミが1cm以上あるのに対し、コバノガマズミの葉柄は5mmもありません。

Kobanogamazumi100430_2  葉は対生、葉には表・裏ともに星状毛があります(右の写真)。 若い枝にも星状毛が密生しています。

 花はガマズミが5~6月であるのに対し、コバノガマズミの花は少し早く、4~5月に咲きます。 上の写真は堺自然ふれあいの森で4月30日に撮ったものです。 花冠は5裂、オシベは5本です。

(以下、'11年10月21日追記)
 秋になると赤い実が熟します。 下は10月9日に撮ったものです。

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 下は葉の裏の拡大です。 小さな星状毛も葉脈上の長絹毛(写真では褐色に写っています)も、秋になってもしっかり残っています。

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2010年5月 4日 (火)

カマツカ

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 カマツカの花がきれいに咲いていました。 まん丸ツボミもなかなかかわいいものです。 葉の縁には細かいきょ歯があり、若葉の頃にはこのきょ歯の部分がほんのり色づき(写真ではもうかなり薄れています)葉も美しい木です。 短枝と長枝がはっきりしているのも特徴のひとつです。
 1つの花を見ると、オシベは一見たくさん適当に生えているようですが、よく見ると、①5枚の花弁の真上に1本、②花弁と花弁のちょうど間に1本(これで10本)、そしてこの①と②の間に1本ずつあって、つまりオシベは20本になります。 メシベは柱頭が3裂しています。

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 カマツカは明るい林に見られる落葉低木です。 材は粘り強くて折れにくいのですが、残念ながら真っ直ぐな長い材を期待することは無理なようです。 で、鎌などの柄(つか)にならちょうどいい、ということで「カマツカ」です。

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2010年5月 3日 (月)

アカモンナミシャクの幼虫

 若い柔らかい葉が出てくると、それを食べるイモムシ・毛虫もいろいろ現れてきます。 アカモンナミシャクの幼虫もそのうちの1種、アラカシの葉を食べていました。 体の色は、褐色の鱗片のついた緑の伸びつつある枝に擬態しているのではないでしょうか。

Akamonnamishaku100425_1    腹側から 左には食べつくした葉の葉柄だけが残っています。

Akamonnamishaku100425_2    背中側から

Akamonnamishaku100425_3    顔のアップ

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2010年5月 2日 (日)

コナラの花 アラカシの花

 コナラは葉の展開と共に花をつけます。 コナラの花は雌雄異花、雄花序は前年枝の芽から出て長く垂れ下がります。 また雌花序は新枝の先端近くにつきます。 雄花序はすぐに確認できると思いますが、下の写真はクリックすると大きくなりますので、小さな雌花を探してみてください。

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 雄花にメシベは見当たりません。 4~6本のオシベと5~7深裂する花冠があるだけです(下の写真)。
 風媒花ですので花粉がメシベの柱頭につくのは風任せ。 花粉はたくさん用意しなければなりません。

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 雌花にはオシベは無く、1本のメシベがあるだけです。 メシベの柱頭は3裂傾向にありますが、それぞれの裂片にはさらにくびれがあります(下の写真)。

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 コナラと同じQuercus属のアラカシも同じ時期に花を咲かせます。 下はアラカシの雌花です。 こちらのメシベの柱頭は、はっきり3裂し、この様子はドングリになっても残っています。

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2010年5月 1日 (土)

ムネアカアワフキ

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 写真はムネアカアワフキのメスの成虫です。 メスは写真のように小楯板と前胸背が赤いのですが、オスは小楯板のみが赤い色をしています。 体長は約5mm、4月から6月頃にかけて見る事ができます。
 ムネアカアワフキはアワフキの仲間には違いないのですが、トゲアワフキ科に分類されていて、幼虫はシロオビアワフキなどのようにアワを作りません。 幼虫はサクラやウメなどの小枝に石灰質の小さな巻貝のようなものを作り、その中から木の汁を吸います。

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