ロウバイの種子散布
長い間楽しませてくれたロウバイの花も、木によってはそろそろ花の終わりを迎えています。 花が終わり、これから果実を作っていこうというそんなロウバイの木に、まだ昨年の果実(ほんとうの果実ではなく偽果:下で書きます)がついています。 下は園芸的に改良されたソシンロウバイですが、ロウバイでも同じです。 ロウバイは、いったいいつ、どのような方法で種子散布をしようとしているのでしょうか。
ふとロウバイの根元を見ると、昨年の偽果が落ちていて、ボロボロになって、中に種子のようなもの(じつはこれがほんとうの果実で、中に1つの種子が入っています)が見えています(下の写真)。
このようにして種子が地面に接して発芽したとしても、これでは親株のすぐ近くに子ができるだけで、これが本来の種子散布の姿だとは思えません。 ロウバイは中国原産ですので、日本では見られないロウバイの種子散布を手伝う動物が現地にはいるのでしょうか。
改めて偽果を見ると、おもしろい形をしています。 種子(じつは果実)を入れた袋の口が開きそうで開かない・・・ そんな偽果です。 この偽果はどのようにしてできるのでしょうか。
下は4月5日に撮ったロウバイです。 果実のように見えるものが大きくなり始めていますが、その周囲には、花弁やオシベの取れた跡が見えます。
今まで果実と種子についてややこしい書き方をしてきましたが、果実の元になる子房から花弁やオシベが生じるわけは無く、花弁やオシベの取れた跡のついているものは果実ではありません。 果実のように見えて果実ではない、ですから「偽果」と言います。 この部分は複数の子房(複数の「胚珠」ではありません)を包み込んでいる「花床」と呼ばれている部分です。
ロウバイの花では、ガクと花弁が明確に分化しておらず、花床にらせん状についていますし、オシベも上下に乱れて付いています。 このような形質は、まだ花のつくりがきちんと整理されていないことになり、古い形質だとされています。 また、花粉の表面を顕微鏡で観察すると、通常の被子植物では花粉管が延びてくる発芽孔が3本の溝状に見える(3条溝)のですが、ロウバイの発芽孔は無いか、2本しかありません(2条溝)。
ロウバイの種子を蒔けば、よく発芽します。 にもかかわらず、自生地は限られていますし、ロウバイ属も、中国に2種あるだけです。 もしかしたらロウバイは、あれだけ丈夫なイチョウの自生地が限定されているのと同様、種子散布に協力してくれるパートナー的動物を失った遺存種的存在なのかもしれません。
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コメント
ロウバイの果実は面白い格好をしているなーと思っていましたが、
偽果というものだったのですね。
そんなこととはつゆ知らず、昨年ブログにも載せてしまいましたので、
これを読んでろうばいしました。
うちの園芸種のソシンロウバイの偽果を開けてみましたら、びっしり
8個も種子(果実)が詰まっているのもありました。
たしかに株の下からだけ2世が育ちます。
投稿: 夕菅 | 2010年2月16日 (火) 08時45分
たしかに検索してみると、ロウバイの果実を種子と書いているブログはたくさんありますね。
大阪城の梅林にもロウバイが植えられていて、まだ花を咲かせていました。
変ったウメだとか、ウメでは無いとか、狼狽している人がたくさんいましたよ。
投稿: そよかぜ | 2010年2月17日 (水) 00時06分
じゃぁ、
あわてず騒がず、そのロウバイの偽果とやらを検証してみましょう
って?
出来るかな?興味は扇のように広がっていくんですけどぉ・・・・・
投稿: わんちゃん | 2010年2月17日 (水) 15時22分
偽果って、けっこうたくさんあるんですよ。
リンゴも梨もドラゴンフルーツも、みんな偽果です。
投稿: そよかぜ | 2010年2月18日 (木) 06時56分