ノキシノブ
上は河内長野の駅前にある長野神社のクスノキについているノキシノブで、8月8日の撮影です。
ノキシノブはこのように樹木や岩の上などに着生するシダです。 このような水が十分供給される所とは思えない場所で乾燥を忍び、桧皮葺や茅葺の屋根の軒下などにも生えるところから「軒忍」と名付けられたのでしょう。
上の写真では葉の裏の胞子のう群はまだ発達しておらず点状に見えますが、1月3日に千早赤阪村で見たノキシノブの胞子のう群は丸く盛り上がり、葉からこぼれんばかりでした。
下はノキシノブの2枚の葉の裏を拡大したものです。 円形の集団を作っている小さな粒の一つひとつが胞子のう(=胞子が入ってある袋)です。 左は少し若く、胞子のうが成熟すると右のように全体が褐色になってきます。
下は、胞子のうを横から見ようとして、葉の断面を撮ったものです。
胞子のうのへりに色の濃い部分があります。 この帯状の部分は「環帯」と呼ばれています。 環帯を作っている細胞の3方は細胞壁が厚くなっていて、その部分が濃い色に見えています。
乾燥してくると、環帯を構成している細胞は水分を失って縮むのですが、細胞壁の厚くなっている部分は変形できず、細胞壁の薄い部分が縮み、それが1列につながっているものですから、環帯全体が反り返るようになり、結果として胞子のうを破ります。 その一方で、環帯を構成している細胞壁の弾力は元の状態に戻そうとします。 環帯が反り返るにつれてから、この元に戻ろうとする力は強くなりますから、あるところで反り返ろうとする力と元に戻そうとする力が逆転し、急に元に戻ることになり、その勢いで胞子を飛ばすことになります。
下は別のシダですが、この環帯の変化の様子が YouTube にありましたので、リンクさせておきます。 なお、この映像は時間を縮めたりはしていません。 顕微鏡下で観察できるそのままの映像です。
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コメント
なんだか虫さんみたいですね…
しかし生命を感じます(*´ω`*)
投稿: トトロン | 2010年1月22日 (金) 16時34分
ノキシノブさんはいろんなこと試そうとしてますね。
だれ(虫とか蝶々とか)の助けも借りないで
自分一人でやってるンですか?
投稿: わんちゃん | 2010年1月22日 (金) 18時10分
トトロンさん、もちろん植物だって生きているんですからる
わんちゃん、ノキシノブの胞子のうがあまりにもたくさんついていたので、胞子のうのことを少し詳しく書きましたが、この胞子のうの胞子を飛ばす運動は、多くのシダ植物で共通です。
最初シダ植物が地上に出現した時代には虫も鳥もいなかったので、生殖に虫や鳥を利用する“発想”はシダにはありません。
投稿: そよかぜ | 2010年1月22日 (金) 22時04分