オオバノイノモトソウ
オオバノイノモトソウは山のふもと近くなどに普通に見ることのできるシダです。
下の写真にはたくさんの葉が写っていますが、どれが1枚の葉かを理解し易いのは、左上の新しく出て緑の浅い3枚の葉でしょう。
一般に、1枚の葉は軸状の「葉柄」と面状の「葉身」からできていますが、二つ以上の部分に分かれた葉身をもつ葉を「複葉」と言い、分かれたそれぞれの葉身を「小葉」と呼んでいますが、シダについては多くの場合、慣習的に小葉のことを「羽片」と呼んでいます。
オオバノイノモトソウの1枚の葉に注目すると、葉柄に続く軸(「中肋」と呼んでいます)の左右に羽片が並んでいます。 このような複葉を「1回羽状複葉」と呼んでいます。 オオバノイノモトソウのそれぞれの羽片は、たいへん細長いものです。
上に書いたように、オオバノイノモトソウの羽片は細長いものですが、上の写真を見ると、特に細長いものと、それよりは少し幅の広い羽片が見られます。
写真の左上の若い葉の下方には緑色が濃くなった葉があり、両者の羽片の幅は変わりません。 しかしそのすぐ右には、たいへん細い右辺を持つ葉があります。 じつは前者は「栄養葉」と呼ばれ、専ら光合成をする葉で、後者の幅の細い羽片を持つ葉は「胞子葉」とよばれていて、胞子はこちらの葉にのみ形成されます。
下は今の時期のオオバノイノモトソウの胞子葉の裏側を少し拡大して写したものですが、胞子のう(=胞子を入れておく袋)は見当たりません。 でも、葉の縁が裏側に折れ曲がってきているのが分りますし、一部その折れ曲がった部分が破れていて、そこでは空気にさらされて枯れたようになっている胞子のうらしきものが見えています。
下はオオバノイノモトソウの胞子葉の裏側を3月下旬に撮ったものです。 裏側に折れ曲がった葉の縁に保護されるように、たくさんの胞子のうができています。 このように、オオバノイノモトソウでは胞子のうは葉の裏側の縁に形成され、葉の縁は裏側に折れ曲がって、胞子のうを保護しています。
オオバノイノモトソウは普通に見ることのできるシダですが、生活史を追いかけると有性生殖を行うものも無融合生殖を行うものもあり、染色体数にも多くの変異があるようです。 これらの遺伝的に異なるものが、分布や生態などにどのような異なる点があるのか、興味のあるところです。
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コメント
シダが生えている傍を通っても
ぜ~~んぶ「シダ」って思ってました
こんなに個性的だなんて・・・・・
どうしよう・・・・・
投稿: わんちゃん | 2009年12月27日 (日) 22時52分
> どうしよう・・・・・
ルーペを持ち歩きましょう。
投稿: そよかぜ | 2009年12月28日 (月) 07時02分