センブリの花粉媒介をする昆虫たち
下は11月1日にセンブリの花に来ていた虫たちです。
ニクバエの仲間(?)
ツマグロキンバエのメス(上)とオス(下)(注1)
上の写真では、蜜腺の蜜が光っているのですが、このツマグロキンバエは蜜腺には興味を示さず、ひたすら花粉を舐めていました。
ツマグロキンバエは上の2種よりはかなり小さなハエの仲間ですが、この大きさでも、花の上を動き回れば花粉媒介は十分可能でしょう。
センブリの蜜腺の周囲に生えている毛は、花粉媒介に何か役に立っているのでしようか。
この毛は適度に蜜腺を覆って、昆虫が花の上を長く動き回るように、“じらし戦法”を取っているのではないかと考えたこともありましたが、見ている限りでは、この毛は花の上を動き回る昆虫から蜜腺を保護することに役立っているようにも思えました。
センブリ(イヌセンブリも同じです)の花冠の裂片は水平に開き、メシベもオシベも上に向かって伸びています。 この花のつくりは、昆虫が花に覆いかぶさるように訪花する場合にうまく花粉媒介されそうです。 短時間の観察のみで結論を出すのは危険で、時期と場所を変えてもっと観察を続ける必要はありますが、今回の観察に限って言えば、上の写真のように、ハエやアブの仲間がセンブリの花に覆いかぶさるように動き回り、体の下部でしっかりと花粉媒介しているように見えました。
10月14日の記事で、アケボノソウの花粉媒介をする昆虫は、アケボノソウの花に覆いかぶさるような大きな昆虫ではないかと書きました。 しかし、そんな昆虫がアケボノソウの花に来ている所は、あまりたくさん観察されていません。
アケボノソウとセンブリは分類上は同じ属で、花の大きさは違いますが、花のつくりはよく似ています。 今回の観察は、アケボノソウの花も、花に覆いかぶさるような大きな昆虫によって受粉される仮説を、少しは補強できるものだと思います。
(注1) ツマグロキンバエのオスとメスについて
ハエの仲間の多くは、オスでは複眼がくっつき、メスでは離れています。
| 固定リンク
« メリケンカルカヤ | トップページ | ナベヅル »
「草1 合弁花」カテゴリの記事
- ウラジロチチコグサ(2014.06.26)
- ハルジオンとヒメジョオン(2014.05.31)
- ヤセウツボ(2014.05.22)
- フナバラソウ(2014.05.19)
- オオカワヂシャ(2014.05.05)
コメント
一匹の昆虫がブ~~ンと飛んでいたんじゃなくって、いっぱいの虫たちが訪れていたのですね
センブリのお花たち、みごとにまとまって咲いていたのかな?
”じらし戦法”って・・・・
センブリと虫たちの攻防戦でしょうか?
投稿: わんちゃん | 2009年11月14日 (土) 18時50分
蜜よりも花粉が食欲をそそるということもあるのでしょうか。
蜜の池を荒らされないように繊毛で覆って、多くの昆虫の訪れを待つ?
センブリにしてもアケボノソウにしても・・というか植物全般なのでしょうけど、仮説があれば、その実証は観察による裏付が必要ということになると、気の長い話になりますね。
しかも多くの植物は1年のうちの1時期だけの出会い・・。
その気の長い話がいつも楽しみです。
投稿: ひとえ | 2009年11月14日 (土) 21時38分
わんちゃんへ
花弁の蜜腺の蜜は少量なので、ペロッと舐められてすぐ出て行かれるよりは、蜜を吸うために毛をかき分けるなどいろいろもがいているうちに花粉の受け渡しの機会が多くなり、センブリの花はそのことを狙っているのではないかというのが“じらし戦法”仮説です。
その他にも、毛はアリから蜜を守っているなど、いろんなことが考えられそうです。
ひとえさんへ
蜜は炭水化物で、効率の良いエネルギー源、花粉はたんぱく質が豊富で体を作るのに必要と、かなり意味合いは違ってきます。
気の長い話であるということは、毎年花を見る楽しみが続くということにもなります。それに観察する人が増えれば、それだけ多くの観察結果が蓄積されることになり、結論を早く出せるかもしれません。
投稿: そよかぜ | 2009年11月14日 (土) 23時20分
>(注1) ツマグロキンバエのオスとメスについて
ハエの仲間の多くは、オスでは複眼がくっつき、メスでは離れています。
2009.7.17のblogの追記としてリンクさせていただきました。
事後承諾で・・・・・
投稿: わんちゃん | 2009年11月15日 (日) 21時38分
了解です。
投稿: そよかぜ | 2009年11月16日 (月) 07時09分