ウメバチソウ(オシベの変化)
このブログの'08年10月10日に、六甲高山植物園で撮ったウメバチソウのことを記事にしました。 その中で、いろんな状態の花の写真を撮ることができず、オシベのおもしろい変化を紹介できずに残念だと書きました。
手許に、神戸新聞総合出版センター発行の「六甲山の植物」という本があります。 著者のお一人からいただいたのですが、この本の巻末にいくつかのトレッキングコースが紹介されていて、それによれば、ウメバチソウは六甲山系では減少しているものの、あちこちで見られるようです。
今回は六甲山系のウメバチソウの自生地で、オシベの変化を確認することができましたので、記事にしてみました。
ウメバチソウの花には5本のオシベと、枝分かれした5本の仮オシベがあるのですが、今回は花粉を出すことのできるオシベに注目して見ていくことにします。
開花したばかりの花では、5本のオシベは全て子房にくっついています。 下の写真では、そのうちの1本が伸びてメシベの真上に来て葯が裂開し、花粉が出はじめています。 この伸び始めたオシベを①とします。
ウメバチソウの花は放射相称ですから、花をどちらから撮るかで、上の①の位置は変化します。 下の写真では、①のオシベは伸びてメシベを離れ、①の隣のオシベがメシベの真上で花粉を出し始めています。 このオシベを②とします。 このように、伸びていく順に、オシベに番号をつけていくことにします。
上の写真では、②は花を上から見たときの①の左隣ですが、②が①の左隣になるのか右隣になるのかは、たくさんの花を見ると、両方のケースがありました。
下の花では②は①の右隣になっていますが、①の葯は花粉を出し終えて既に取れてしまっています。 ②のオシベも伸びてメシベを離れ、①から見て②の反対側にあるオシベが伸びだしてきています。 このオシベを③とします。
下の写真では、②の葯も取れてしまい、③のオシベも伸びきり、仮に①を「真上」とすると、②の下にあったオシベも花粉を出しながら伸びてしまっています。 これを④とします。 オシベは5本ですから、最後に伸びるオシベ⑤は、自動的に決まります。
下は花弁もかなり古くなっていて、5本のオシベの葯は全て落ちてしまっています。 そしてメシベの柱頭は大きく開いています。
ウメバチソウの1つの花は、10日以上も咲き続けますが、その間、上で見たように、オシベは順々に立ち上がり、花粉を出し、そして5本のオシベが花粉を出し終えて雄性期が終わった後にメシベの柱頭が開き、雌性期に入ります。
下は上の写真よりもさらに時間が経過した花で、花弁も落ちてしまっています。 美しかった仮オシベも色彩を失いつつあります。
下の写真を載せた理由は他にもあって、この花が奇形だからです。 この花のオシベは6本あり、メシベの柱頭は5裂しています。
ウメバチソウは、新しいAPG植物分類体系では、新設されたウメバチソウ科に分類されています。 ウメバチソウ科に近いユキノシタ科では、ユキノシタ、ダイモンジソウ、ジンジソウなど、左右相称の花がたくさんあります。 ウメバチソウは放射相称の花ではありますが、オシベの変化を見ると、4枚目の写真の説明で「真上」という語句を使いましたが、左右相称的要素を持っている花と言えるのではないでしょうか。
明日はウメバチソウの花の蜜について考察したいと思います。
| 固定リンク
「草2 離弁花」カテゴリの記事
- ドクダミの花(2014.06.29)
- ヤブニンジン(2014.05.29)
- シロバナマンテマ-ホザキマンテマとの関係について-(2014.05.26)
- ハマダイコン(2014.05.16)
- レンリソウ(2014.05.13)
コメント
段階を追って花を撮してらっしゃるところが、さすがですね~。
最後は特別サービス、花びら一枚おまけなのですね。
ウメバチソウさんのために、番号のない清楚な画像も一枚リクエストしたいで~す(笑)。
「六甲山の植物」、図書館にあることを確認したので、今度借りてみます。
投稿: ひとえ | 2009年10月 8日 (木) 21時59分
> ウメバチソウさんのために、番号のない清楚な画像も一枚リクエストしたいで~す
今回は1つの記事にしては使った写真の枚数も多いので、写真のクリックで拡大させることも止めました。
1枚で魅せる写真は1枚で見せる時に・・・。いつか写真展を開きたいと思っているのですが、いつになることやら・・・
投稿: そよかぜ | 2009年10月 9日 (金) 06時39分
>そうなんだぁ~~
そよかぜさんはキキョウの時のように
このお花のオシベの変化を、
複数枚の写真で・・・・
と、思てはったんやね?
いろんなオシベが撮れて良かったね。
何にも思わないで撮ってて、手元にあるウメバチソウの写真を慌てて見てるわんちゃんです。
投稿: わんちゃん | 2009年10月 9日 (金) 11時37分
写真展!
いいですね~。
知ることも楽しいし、見ることも楽しいです。
その時は是非お知らせ下さいな~。
投稿: ひとえ | 2009年10月 9日 (金) 21時08分
わんちゃんへ
オシベが変化するのは知っていたのですが、その法則性をきちんと確認しておきたかったんです。
最初は下のように遠い側が伸びると思っていたのですが、
①
③ ○
○ ②
実際は
①
② ③
④ ⑤
のようになるのは意外でした。
ひとえさんへ
今はとても時間がなく、写真展はいつか開きたいと思っている夢ですから、気長に待っていてくださいね。
投稿: そよかぜ | 2009年10月10日 (土) 07時45分
オシベが変化する法則性
またまた新しいコトバに目を白黒。
番号順に見てみると
”左右相称的要素を持っている花”
と、なんとなく分かるような気がします
ビュッといっぺんには伸びないのですね
その順番があるんですね、ということも。
投稿: わんちゃん | 2009年10月13日 (火) 06時19分
本数の少ないオシベではみんな平等であるのが多くの花で、このような順序がある花は少数派で、そのことに関心があったわけです。
投稿: そよかぜ | 2009年10月13日 (火) 23時22分