テイショウソウ
テイショウソウは関東南部から近畿地方にかけてと四国に分布します。 葉は細長いハート型で、葉の細胞間にある気体の乱反射のために白く見える模様があります。
葉を数枚地面近くに広げるだけなので、他の植物に上を覆われると、光合成できなくなります。 私がテイショウソウを見るのは、薄暗い樹林下で、植物が生活できるギリギリの明るさ、つまりこの明るさで育つことのできる植物は限られているが、テイショウソウなどはどうにか育つことができる、そんな環境です。
上記のことを逆の見方をすると、光合成に有利なように葉を上に持ち上げようとして丈夫な茎を作ろうとすると、茎の細胞が呼吸によってエネルギーを消費します。 テイショウソウはエネルギーの消費を極力押さえ、つまり“設備投資”をできるだけ抑えて大きく儲けることはあきらめ、薄く大きい葉を地面に広げ、少ない光で細々と光合成という生産活動を行う“堅実な”生き方を選んだ植物なのです。
日日の生活で細々と稼ぎ、でも子孫を増やすためにはその儲けを一挙に吐き出し、種子ができるだけ遠くに飛ぶようにと高い花茎を伸ばします。
テイショウソウはキク科モミジハグマ属( Ainsliaea属 )に分類されています。 キク科の植物の花は舌状花または筒状花が複数集まって頭状花序(頭花)をつくり、これがひとつの花のように見えるのですが、モミジハグマ属の頭花は3個の花(小花)からなります。 「テイショウソウ」の名前の由来は不明とされていますが、もしかしたらこの3小花を鼎(かなえ;音読みはテイ)の足に見立て、「ショウ」は総苞を釣鐘(鐘の音読みはショウ)にみたてたのかもしれません(この語源については、Shu Suehiro さんの「ボタニックガーデン」でヒントを得ました)。
下は1つの頭花を拡大して撮ったもので、それぞれの花(小花)の5枚の花弁がカールして、なかなか美しいものです。
モミジハグマ属の花のもうひとつの特徴として、冠毛(通常の花のガクに相当します)が羽状の枝を持っていることが挙げられます。 下の写真では長く伸びた羽状の枝を持った冠毛も写っています。
上の花はまだ若く、互いにくっつきあったオシベの葯から花粉が出はじめています。 葯に囲まれたメシベは見えていません。 もう少し時間だ経つと、メシベが伸びだしてきて、柱頭が2裂します(下の写真)。
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