« ミヤマウコギ | トップページ | クサタチバナ »

2009年7月 4日 (土)

タチカモメヅル

 タチカモメヅルは、日当たりのいい湿った場所に生育するツル植物で、本州の近畿以西から、四国、九州に分布します。
 カモメヅル属(Vincetoxicum属)は、従来はガガイモ科に分類されていましたが、新しいAPG植物分類体系ではキョウチクトウ科に分類されています。
 多年生植物で、「タチ」は、春に芽が出てしばらくは、他のものに巻きつかなくてもグングン上に向かって伸びるからですが、その後は他の植物などにゆるやかに巻きついて伸びていきます。
 ちなみに、「カモメ」の語源は、暗紫色の花からも、植物全体の様子からも、鳥のカモメは想像できません。 この仲間は花の大きさのわりにはビックリするような大きな果実(袋果)をつけますが、この果実が割れると、中には長い白毛を生やしたたくさんの種子がありますから、その様子をカモメに見立てたのだと思われます。

Tachikamomezuru090627_1

 葉は対生し、葉腋に群がって生じる花は、径が1cmに満たない大きさで、色も暗紫色ですので、ほとんど目立ちません。 この花は、6月の終わり頃から咲き始め、夏中咲き続けます。
 小さな花ですが、花のつくりは複雑で、暗紫色の花冠の先端は深く5つに切れ込み、同色の副花冠がオシベとメシベを取り囲んでいます。 オシベで作られる花粉は、花粉塊と呼ばれるかたまりになっています。

Tachikamomezuru090627_2

 花の蜜は多く、上の写真でも、花冠があふれ出た蜜で濡れています。 上で人の目には目立ちにくい花であることを書きましたが、蜜が多い花には虫たちは敏感で、いろんな虫が集まっていました。 下の1枚目はカナブン、2枚目はアリたちです。

Tachikamomezuru090627_4

Tachikamomezuru090627_3

 花に集まる虫たちを狙ってでしょうか、葉の上にはアリグモも来ていました(下の写真)。

Tachikamomezuru090627_5

※1 この記事の写真は全て、6月27日に、「堺自然ふれあいの森」で撮影したものです。

※2 花と訪花昆虫との関係、特に共進化について、コメント欄にいろいろ書いています。

|

« ミヤマウコギ | トップページ | クサタチバナ »

ツル植物」カテゴリの記事

コメント

このお花がいかにちっちゃいのか
よ~く解りました。

カナブンがスゴク大きく見えます
アリもそこそこ大きく見えます。

このお花の名前って、
とても素直な付け方だと思います
タチカモメヅル
立ち鴎蔓・・・かな?

投稿: わんちゃん | 2009年7月 5日 (日) 22時06分

漢字で書けは「立鴎蔓」でしようね。
ちっちゃな複雑なつくりの花、タチカモメヅルはどんな昆虫に花粉媒介してもらおうと思っているのでしょうね。

投稿: そよかぜ | 2009年7月 5日 (日) 22時49分

>タチカモメヅルはどんな昆虫に花粉媒介してもらおうと思っているのでしょうね。

どんな昆虫にきてもらおうかなぁ・・・
なんて、選り好みする?
昆虫たちはどんなにちっちゃな複雑なつくりの花でもちゃんと知ってるみたいですね。

投稿: わんちゃん | 2009年7月 6日 (月) 11時46分

擬人的に書きましたが、“選り好み”はあります。
花は有性生殖のための器官であり、エネルギーを使って作った花粉や蜜を生殖に役立たない形で盗られるのは大きなマイナスですから、効率よく花粉媒介してくれる特定の昆虫にだけ来てもらえるようになった花が繁栄するわけです。
虫も特定の花に適した形態となり、そこに行けば必ず蜜を得ることができるとなれば、助かるわけで、特定の花と特定の虫との結びつきは強まっていきます。
このように花と昆虫が互いに結びつきを強めていくことを「共進化」と呼んでいます。
つまり、“選り好み”させているのは、「進化」です。

投稿: そよかぜ | 2009年7月 7日 (火) 00時49分

こんばんは♪
オオカモメヅルの小さな花を見つけました
大と呼ぶには花が小さすぎてしばらく名前がわかりませんでした
持ってるイメージと合わないと謎の植物になってしまいますね
共進化ってどっちかがいなくなると共倒れってことなんですね
選り好みってヤバくないですか

投稿: エフ | 2009年7月 7日 (火) 22時57分

> 共進化ってどっちかがいなくなると共倒れってことなんですね
> 選り好みってヤバくないですか

花と昆虫の関係が、例えば○○の仲間の花と△△の仲間の昆虫といった具合に、緩やかなものなのか、それともイヌビワのように厳密に1:1の関係なのかでも話は違ってくるでしょうね。
1:1への方向に進んだことでの問題も起きてきています。
例えば、早春に咲く花とその花の受粉に関係する昆虫の活動時期が、地球温暖化でずれてしまい、植物が種子を残せなくなってきているなどの現象が報告されています。
1:1への方向に進むことが有利なのか、不利なのか、それにはいろんな条件が絡み合っているのでしょう。
事実はひとつ。共進化という現象がいろんなところで見られるということです。
共進化が進みすぎて絶滅する種も出て来るでしょう。でも、環境の変化によって絶滅する生物がいるのは、いつの時代でも同じです。だからこそ、いつの時代にも、生物は環境にうまく適応しているように見えるわけです。
ただ、現在問題になっているのは、人間による急激な環境変化のために、絶滅する種が激増しているという事実です。

投稿: そよかぜ | 2009年7月 8日 (水) 22時13分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: タチカモメヅル:

« ミヤマウコギ | トップページ | クサタチバナ »